夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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10月の兼題

「秋の暮」

5月の審査結果発表

兼題「葉桜」

 お待たせしました!5月の兼題「葉桜」の結果発表でございます。今月も夏井先生からの「今月のアドバイス」は必見です。俳句ごとにそれぞれ喜怒哀楽があるのですが、「葉桜」という季語がすべてをどこか爽やかにしてくれるなと感じました。俳句を7月の兼題「水着」もふるってご応募ください。(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
葉桜や微笑疲れの仏たち

とんぼ

夏井いつき先生より

 一読、日本史の教科書に載っていた百済観音のお顔を思い出しました。飛鳥時代の仏像だといわれていますが、古代ギリシャアルカイック期(紀元前七世紀ごろ)の塑像にみられる謎めいたアルカイックスマイルを浮かべています。「仏」の「微笑」を詠んだ句は幾らでもあろうかと思いますが、「微笑疲れ」という詩語に惹かれます。
 花の終わった後にでてくる初々しい若葉、そしてびっしりと茂っていく青葉へ、その変化も味わえるのが「葉桜」という季語です。葉桜のひかり溢れた伽藍の奥に安置されている美しい仏たち。その永久の微笑みに対し、「微笑疲れ」かもと呟く作者のウイット。風にゆれる葉桜もまた、美しく微笑み続けているかのようです。

地
葉桜の朝やひかりの抵抗器

ギル

「葉桜」を何かに比喩する発想の句は沢山ありましたが、「ひかりの抵抗器」とは独自性と真実味を併せもった秀逸な詩語。「朝や」という時間帯への詠嘆も、「葉桜」の下の木漏れ日を存分に表わしていてうっとりさせられた一句です。

葉桜の丘は帆船風孕む

樫の木

 こちらも比喩ですが、丘を遠望する光景。風にゆさゆさと反応する「葉桜の丘」は、まるで海をゆく「帆船」みたいだというのです。丘全体が、初夏の風を孕んでいるかのような映像を、比喩をもって見事に表現しました。

鳥の伝言を葉桜が預かる

鈴野冬遊

 前半「鳥の伝言を」が八音、後半「葉桜が預かる」が九音、足して十七音の破調です。風に鳴る「葉桜」の様子を、鳥の伝言を預かっているのだと解すること自体が詩。破調の硬い調べもまた、内容を引き立てています。

葉桜の中雨太くなりたるか

戸口のふつこ

 ぽつぽつ降り出した雨を避け、びっしり茂った「葉桜の中」に逃げ込んだのでしょう。やれやれと空を見上げる間に、葉桜の揺れや雨音が大きくなってきます。「雨太くなりたるか」という呟きの率直なリアリティに共感します。

葉桜に甘えて風の保健室

七瀬ゆきこ

 保健室の窓の外には、大きな桜の木があるのです。保健室の窓からは、葉桜の風が心地よく吹き込んでくるのです。「葉桜に甘えて」という詩語は、この子(あるいは少し心を病んでいる教員)が本当の意味で甘えたいあれこれを想像させて巧みです。

人
  • 葉桜はさりさり風の翻訳機古賀

  • 葉桜や風の言の葉翻訳す菫久

  • 葉桜や風の言語は幾種類青田奈央

  • 葉桜を零れる光には密度川村ひろの

  • 葉桜や密度をましてゆく光山内彩月

  • 海知らぬ子よ葉桜のさざなみよRUSTY=HISOKA

  • 葉桜やオルガン遠くすべり台相生三楽

  • 葉桜や雲は土管の色を真似青井えのこ

  • 葉桜や風通り過ぎ波の音青井晴空

  • 葉桜や校を去る子と見送る子青居舞

  • 葉桜をあふぐヒジャブの母と娘と蒼空蒼子

  • 葉桜やこころの振り子まつすぐに青空まる

  • 君のシャツ葉桜の影濃く薄くあおのめ

  • 葉桜や吾亡き後の妻のこと蒼鳩薫

  • 異議なしの役つく葉桜の校舎青水桃々@いつき組俳句迷子の会

  • 葉桜や町にフルート三重奏赤尾てるぐ

  • 葉桜になら暫くは居てもよし赤尾双葉

  • 葉桜や若妻の猥談の輪へ赤馬福助

  • 葉桜や改装さるる定食屋赤目作

  • 葉桜や天守に集う同窓生acari

  • 葉桜や立ち漕ぎの少年眩しあかり

  • 葉桜の朝日を濾してゐるベンチ愛柑

  • 川の面の桜若葉にふくらみぬ明惟久里

  • 葉桜や無言の帰宅せり父は秋月あさひ

  • 葉桜のふるへて初恋のにほひ秋野しら露

  • 葉桜やキャッシュレスには慣れてきた芥茶古美

  • 葉桜や河馬の欠伸をのぞき込むあくび指南

  • 帰還困難の文字覆う葉桜朝雲列

  • 葉桜よ合格守の色はさてあさぎりななみ

  • 退院の頬を葉桜よりの風明後日めぐみ

  • 葉桜よ君は青年だつたのかあさぬま雅王

  • 憂鬱が脈打つ如く葉桜は芦幸

  • 葉桜や何時もの場所に紙芝居あじさい卓

  • 登校日葉桜だけに会いにゆく葦屋蛙城

  • 葉桜や亀はゆつくり雨の中阿曽遊有

  • 葉桜や口紅濃いとパパのいふ藍創千悠子

  • 葉桜はやがて来るピノキオを待つあたなごっち

  • 火葬炉がおおんと響き葉桜へat花結い

  • 葉桜や更新終へしパスポート渥美こぶこ

  • 葉桜の人の良さ気な光かなあねもねワンオ

  • 葉桜や半ドンの日の古書店街我孫子もふもふ

  • 万歳で葉桜並木を駆けぬけた阿部八富利

  • 葉桜や円陣組む背まだ細しあまぐり

  • 葉桜やリハビリ初日靴を履く雨戸ゆらら

  • 葉桜や鬼女は聖女にもどられしあまぶー

  • 葉桜や予鈴に子らは散り散りに天弓

  • 葉桜や今朝はぐずらぬ子を送る雨乙女

  • 葉桜やひとりで祝う誕生日雨李

  • 焼香を終え葉桜の風のなか綾竹あんどれ

  • 葉桜や小さき神馬に尻押され綾竹ろびん

  • 葉桜や宿直あけの缶コーヒー荒一葉

  • 葉桜の影や主演の追悼文あらい

  • 葉桜や退職視野に深呼吸あらいゆう

  • 戦いのニュース北半球は葉桜あらかわすすむ

  • 葉桜や木洩れ日ならぬ木洩れ星荒木響

  • あたらしき水晶体と葉桜と新多

  • 葉ざくらや磔像の腕まつすぐにアロイジオ

  • 葉桜や商家の蔵の壁眩し淡湖千優

  • 葉桜や右の乳房の手術痕アンサトウ

  • 葉桜や教壇に立つ実習生安春

  • 葉桜や色の褪せたる八畳間安藤早智

  • 葉桜のコートで一人シュート打つ飯沼深生

  • 葉桜の木漏れ日太陽を踏む飯沼比呂倫

  • 葉桜やぶらんぶらんとサブバッグ飯村祐知子

  • 葉桜を翅の明度と思ふなりいかちゃん

  • 葉桜や釜師の熔かす鉄とろとろ猪狩鳳保

  • 葉桜や笑わぬ甥と撮る写真いくたドロップ

  • 葉桜や珠洲に未来の筆強き池田悦子

  • 葉桜やオールの雫盛んなる池田桐人

  • 葉桜葉桜はざはざはざと鳴きさぶらふイサク

  • 葉桜や十年前はCDショップ伊澤遥佳

  • 泣き終へて元気わたしも葉桜も石井一草

  • 葉桜やトランペットの応援歌いしいるぴなす

  • 葉桜やコスメクーポン期限切れ石岡女依

  • 雨の午后葉桜の森のやわらか石垣エリザ

  • 葉桜や段取り通り畑仕事石川明

  • 葉桜になりハローワークへの歩道石川巴里

  • 葉桜や店の木札に準備中石塚碧葉

  • 葉桜や母の衣類に書く名前石塚彩楓

  • 葉桜や今日採血の予定あり石原花野

  • 葉桜の風道祖神囁ける石村香代子

  • 葉桜や幹に持たれて昼の飯石本美津

  • 葉桜へ来たる機関車連写音泉晶子

  • 葉桜やまもなく切れるパスポート和泉攷

  • 葉桜の余白をうめる空の青遺跡納期

  • 葉桜や埃をぬぐふ遺墨集石上あまね

  • 葉桜や明日より開かぬ理髪店いその松茸

  • 葉桜ざわざわ月曜の保健室板柿せっか

  • 葉桜や海から吸って空に吐くいたまき芯

  • 葉桜となりて新廟守りけり一井かおり

  • 葉桜や私の中に鬼がいる市川卯月

  • 葉桜や応援団長は変声期市川りす

  • 葉桜や高台寺にはねねの墓いつかある日

  • 葉桜と上手に言えて退院日一愼

  • 葉桜が光と何か企みぬ伊都

  • 葉桜やひとりひっそり師の逝く日伊藤節子

  • 葉桜や疏水巡りも最終日伊藤亜美子

  • 補聴器の拾ふ葉桜の脈拍伊藤映雪

  • 葉桜や洗礼名の訃報の来伊藤恵美

  • 葉桜の下に俗名赤き文字伊藤順女

  • 葉桜や臨月のまるみのゆたか伊藤柚良

  • 葉桜やおろした道着うす青く伊藤小熊猫

  • 明るさや桜若葉の横に門糸川ラッコ

  • 葉桜やぽつりと昼の滑り台いとへん製作所

  • 葉桜や喃語弾めば相槌も井中ひよこ号

  • 葉桜や貴方の好きな道ですよ伊奈川富真乃

  • 葉桜や証明書待つ納税課稲所恵

  • 葉桜の風のきままさ友として稲葉雀子

  • 葉桜や遅れ来る子を待つてゐる稲畑とりこ

  • 葉桜や実物大の紙の剣いなほせどり

  • 葉桜や書に牛革の栞あり居並小

  • 葉桜や子どもを攫うほどの風井上鈴野

  • 葉桜や看護師めくるカレンダー井上れんげ

  • 葉桜やしづかなる能登さくら駅猪子石ニンニン

  • 葉桜や十年ぶりの電話受く井原昇

  • 葉桜や人のざわめき遠く聴く井松慈悦

  • 「好き」のあと葉桜だけは知っている今乃武椪

  • 葉桜の下は平和な貸しテント今林快波

  • 急く背なに葉桜ざわりざわりかな今村ひとみ

  • 葉桜やベンチは元の場所に置く芋二郎

  • 葉桜や寿陵に彫らるる倶会一処妹のりこ

  • 葉桜や先ずは平仮名習ひたる伊予吟会宵嵐

  • 葉桜や六年生と手をつなぎ伊予素数

  • 葉桜やレッスン初日の靴を選るいわさちかこ

  • 葉桜や前歯に小さき矯正具岩清水彩香

  • 葉桜の下フルートを組み立てる磐田小

  • 葉桜に合わせて開くヴェルレーヌイワンモ

  • 葉桜や車輌に君を探す朝ういろ丑

  • 桜若葉の舞台ヒーローピンチです植木彩由

  • 葉桜や出荷コークス八万トン上原淳子

  • 葉桜の門を男とチェロケースうからうから

  • 葉桜や髪切る理由は秘密です兎野紫

  • 葉桜や消えぬ痛みのある体宇佐美好子

  • 葉桜は左右へ脈を光らせてうた歌妙

  • 音に知る雨よ葉桜打つ雨よ内田こと

  • 葉桜やハインリヒ・ハイネ曝し内本惠美子

  • 葉桜や朝日に透けた瑠璃と玻璃空木眠兎

  • 葉桜にシャトル変声期の跳躍うつぎゆこ

  • 葉桜にやうやう空の落ち着けり靫草子

  • 葉桜や雨のやさしき日曜日卯之町空

  • 葉桜や岬からくる風は青海口竿富

  • 葉桜のベンチで復習うアヴェマリアうみのすな

  • 葉桜や二番の歌詞はうろ覚え梅田三五

  • 再テストを受け葉桜のベンチへと梅田武史

  • 葉桜や横断幕を書く部活梅野めい

  • 葉桜や在校生はあと五人うめやえのきだけ

  • 葉桜や君のあかるき髪と嘘浦野紗知

  • 葉桜やこんぴら歌舞伎幕を閉ず麗し

  • 葉桜の光も音もさらさらと蝦夷やなぎ

  • 葉桜や和紙毛筆のご挨拶越冬こあら@QLD句会

  • 葉桜の光と影を鼓笛隊江戸きりこ

  • 頭下げる仕事葉桜の密度海老名吟

  • 通勤路葉桜が吾の応援団笑姫天臼

  • 葉桜やチョコ溶け噛じるアーモンド絵夢衷子

  • 葉桜やゆめからさめしやうなかほえりべり

  • 葉桜や実験棟へ白衣行く遠藤千草

  • 葉桜や娘に貰ふ長財布円美々

  • 葉桜や野崎参りに船の影近江菫花

  • 葉桜の朝や頷くのみの母おおい芙南

  • 葉桜や下校の子らの悪だくみ大岩摩利

  • 葉桜や会う約束をして会わぬ大越総

  • 葉桜になりて普段の谷中墓地大澤眞

  • 葉桜にネイルサロンの扉押す太田怒忘

  • 葉桜や副葬品は手紙のみ大塚恵美子

  • もう泣かぬ子や葉桜の幼稚園大津美

  • 葉桜や無縁仏になるもよし大道真波

  • 葉桜は暗き急坂ハハキトク大矢香津

  • 葉桜や洗車済ませた消防車大谷一鶴

  • 葉桜や自分で帰る一年生大家港一

  • 葉桜や交番に子が手を振つて大和田美信

  • 葉桜やダムの底なる隠れ里岡邦俊

  • 木のポストへ届く葉桜発の風おかげでさんぽ

  • 葉桜や君のはうから手を握る可笑式

  • 葉ざくらの下きらきらと乳母車岡田ひろ子

  • 葉桜や足真つ直ぐに側転す岡田雅喜

  • 葉桜やローカル線の手動ドア岡山小鞠

  • 葉桜や都電ごとごと小さき旅岡れいこ

  • 葉桜の陣地へ逃げろ二時限目小川さゆみ

  • 葉桜や十二年経しサバイバー小川天鵲

  • 葉桜やステージ袖の戦士達小川都

  • 葉桜や雨の車掌の笛かすれおきいふ

  • 葉桜を一枚けふの栞とする沖庭乃剛也

  • 号泣や葉桜葉桜葉桜荻原湧

  • 葉桜や柩車に緑の影映す奥寺窈子

  • 葉桜の風よ猫背の大仏よ小倉あんこ

  • 葉桜や電話の止まぬ救護室おこそとの

  • 葉桜の陵や戦と恋在りき越智空子

  • 葉桜となりて薬指の軽しおでめ

  • 葉桜やオルガン残る旧校舎御成山

  • 見舞う娘と葉桜の中歩いてる小野ぼけろうじん

  • 葉桜やひかりのしづく仰ぎみむおひい

  • 葉桜やB型にしたベビーカー大日方柚竹

  • 応援合戦終え葉桜の木陰小山田之介

  • 葉桜やポンポン船の会釈せり海音寺ジョー

  • 葉桜や漬け樽十個並ぶ庫裡貝田ひでを

  • 葉桜や顔認証の顔作る海峯企鵝

  • 真白き茶碗葉桜の影が揺れ甲斐ももか

  • 一周目葉桜綺麗後三周かえるゑる

  • 葉桜や転職のこと母のこと風花まゆみ

  • 葉桜や指切りの日の目黒川風花美絵

  • 葉桜や土産物屋の琥珀糖風早杏

  • 葉桜や虚構のバスを待つ無心加座みつほ

  • 葉桜や硯の海の濃く深くかしくらゆう

  • 葉桜の青濃く雨の月曜日鹿嶌純子

  • 葉桜に漉されし風の馥郁と華胥醒子

  • 葉桜の礼拝堂に光射す梶原菫

  • 葉桜に莫迦になれよと独り言KAZU

  • 葉桜や母子同室の一日目風薫子

  • 葉桜の足湯に開く指の股加田紗智

  • 葉桜や逢ったばかりのキリン逝く花鳥風猫

  • 葉桜や書斎は父の秘密基地かつたろー。

  • 葉桜や米軍基地の錆びた鍵ひだまりえりか

  • 葉桜の蔭静寂の畳の間桂子涼子

  • 葉桜よまた前職の夢を見たかときち

  • 葉桜や逆子に諭す三十週金子泰山

  • 葉桜の母校横断幕眩しかねつき走流

  • 葉桜や繊維の光りたる反古紙加能雅臣

  • 葉桜や土手の下では川ざらえカバ先生

  • 葉桜もブラスバンドも笑ふ、笑ふ神島六男

  • 葉桜を五ポンド銀貨のトス越えて神長誉夫

  • 葉桜の並木敬語にも慣れて神谷たくみ

  • 葉桜や緑の眩暈さそう風紙谷杳子

  • 葉桜や雨でも富士はそこに居り亀子てん

  • 葉桜を気にする女見ぬ男亀田荒太

  • 葉桜や母の大きな塩むすび亀田かつおぶし

  • 葉桜や手作り市の人だかり亀山逸子

  • 葉桜の裏にぽつんと変圧器亀山酔田

  • 葉桜や目を瞑りても青が射るかめよかめ

  • 葉桜や空にボールの高き音鴨の里

  • 葉桜や十日動かぬバイクありかもめ

  • 葉桜やインスリン打つ而立の日加良太知

  • 葉桜や皆出払ひし講師室かりかり久助

  • 月曜の弱虫埋める葉桜に刈屋まさを

  • 葉桜に顔出しパネル二つ折狩谷わぐう

  • 葉桜や牡の大山羊つながれし河上輝久

  • 葉桜や産科の窓に犬張子河上摩子

  • 葉桜を手をつながなくなつた子と川越羽流

  • 葉桜や甘くて重き吾子を抱き川崎ルル

  • 葉桜や光集むる盲導犬翡翠工房

  • 葉桜やシラバスの君の指追う川辺世界遺産の居候

  • 近江商人邸葉桜の茶会川村湖雪

  • 葉桜やトロンボーンは威風堂々河村静葩

  • 葉桜や子の新しき友来たる邯鄲

  • 旅人に葉桜が寄り添つてゐる干天の慈雨

  • 葉桜や引揚館へ影の咲く神無月みと

  • 葉桜や所属なき日のスニーカー看板のピン

  • 葉桜や小箱に亡骸と足環喜祝音

  • 葉桜や太鼓とどろく児童館季々諧々

  • 葉桜や洗つてしまふ生徒手帳岸来夢

  • 葉桜やゆるく始まる道普請喜多丘一路

  • 葉桜の影ブラウスの腕におり北川茜月

  • 葉桜や前の車の手信号北野きのこ

  • 葉桜満開光らざる葉のなかりけり北藤詩旦

  • 葉桜や親の打覆ひは白しきつネつき

  • まだ千年生くるつもりの葉桜か木寺仙游

  • 葉桜を歩きぬ退部届手に着流きるお

  • 葉桜や機械にぬるい油差す城内幸江

  • 葉桜の風のうしろの蘂の星きのえのき

  • 葉桜や先生はもうやめました木下桃白

  • 葉桜の下だるまさんがころんだきべし

  • 葉桜やテヌート豊かなる朝練木ぼこやしき

  • 葉桜や農協ストアセルフレジ木村修芳

  • 葉桜や慈眼におはす露座仏木村隆夫

  • 葉桜や盲導犬の真面目顔木村弩凡

  • 葉桜や介護士が弾くヴァイオリン木村弘美

  • 葉桜の朝や出生届記すQ&A

  • 葉桜や踵に天体図の寝釈迦きゅうもん@木の芽

  • 葉桜や学校便りの第三号鳩礼

  • 葉桜や図書館の窓辺には君霧澄渡

  • 葉桜や今週五度目のカップ酒久我家萬蔵

  • 葉桜やタイムカプセルじみたこと鯨之

  • 葉桜は蒼し出所のウーロンハイ草臥れ男

  • 葉桜や大きな橋を鼓笛隊くつのした子

  • 葉桜や掛け声ひびく駐屯地久保田凡

  • 葉桜や曾孫のはしゃぐ葬儀場くぼたみどらー

  • 葉桜が撫づるかくれん坊の髪倉岡富士子

  • 葉桜や蓋についてる紅生姜倉木葉いわう

  • 葉桜やサンドバッグの傷涸ぶ眩む凡

  • 葉桜やゲートボールの音硬し栗田すずさん

  • 綯い交ぜの猜疑心葉桜に影空流峰山

  • 葉桜や筆圧強き不在票久留里61

  • 葉桜や過ぎたることをわづらはず愚老

  • 伐採印有り見納めの葉桜黒猫さとみ

  • 学割で帰省葉桜映す車窓黒ばあや

  • 葉桜はゲルニカの絵の向こう側くんちんさま

  • 葉桜に失くすルージュの珊瑚色桂子

  • 葉桜や右上へ折る天ぷら紙恵勇

  • 葉桜の木漏れ日咲うみらい館けーい〇

  • 葉桜の隙間わたしを呼ぶ未来月下檸檬

  • 葉桜の土手で娘の本音聞く健央介

  • 葉桜ややさぐれる日は肉捏ねて謙久

  • 葉桜の触れ合ふ音に匂ひ立つケント

  • うらがへりもどり葉桜あはしこし剣橋こじ

  • 葉桜や戦友名簿へ「故」のしるし小池令香

  • 葉桜や名脇役と言い継がれ恋瀬川三緒

  • 葉桜に葉桜当たり葉桜へ剛海

  • 葉桜やしんと原爆資料館公木正

  • ドの音は重く葉桜呼応する紅紫あやめ

  • 葉桜や母に帽子を新調す柑たちばな

  • 葉桜の下のベンチの固さかなこうだ知沙

  • いつからが葉桜いつからが戦前幸田梓弓

  • 葉桜に触れいてひとり人弔うごーくん

  • ねぇ葉桜忘れ物取りに行こうか古烏さや

  • 葉桜や職業訓練生のメモこけぽて丸

  • 葉桜の鬼の神社の御籤かな小笹いのり

  • 葉桜や父の終末期を決めて小園夢子

  • 葉桜やビル群はジグゾーパズル木染湧水

  • 葉桜に向かひスケボー宙返り後藤昼間

  • 葉桜に雨ひとしきり検診日後藤方丈

  • くり返すピース葉桜の花嫁古都鈴

  • 葉桜や友は五回忌だったとさ粉山

  • ごみ拾いラリー葉桜の堤防このみ杏仁

  • 葉桜や甲羅かちあう石の上虎八花乙

  • 抜け道の奥の葉桜濃かりけり小林昇

  • 讃美歌の心は故人に葉桜に小林のりこ

  • 葉桜に光りの粒のがさがさとこま爺

  • 葉桜の球場兄のゐるベンチ駒村タクト

  • 眉はまだ上手く描けずに葉桜に小南子

  • 葉桜や昨夜の辞表の出しそびれ小山晃

  • 葉桜の吉野に墨の老舗かなGONZA

  • 葉桜や猫しゃべりだしそうな午後今藤明

  • 隠るるに良き葉桜の暗さかなこんのゆうき

  • 葉桜や俺は東京都の粒子コンフィ

  • いたずらなしだれ葉桜夜の道埼玉の巫女

  • 葉桜を零るる光あをくさき彩汀

  • 葉桜の夜をフジコのノクターン齋藤桃杏

  • 葉桜へ三輪車の大暴走さおきち

  • 葉桜や古墳登れば寺に着くさ乙女龍チヨ

  • 葉桜や背面飛びの空ぐるんさかえ八八六

  • 葉桜や喪服の襟を緩めたる坂口いちお

  • 葉桜や築八十年を壊す音坂本雪桃

  • 葉桜や紙おしぼりは絵の具の香さくさく作物

  • 葉桜や秋桜子編歳時記ありさくら亜紀女

  • 葉桜や広き額は父に似て櫻井こむぎ

  • 葉ざくらや紐が電車となる魔法桜鯛みわ

  • 葉桜や転校生は一つ上桜月夜

  • 葉桜やリハビリ室の窓を風さくら悠日

  • 廃校や葉桜映す潦雑魚寝

  • 葉桜や厩舎の窓の闇動くさとう昌石

  • 葉桜や研修資料完成す佐藤恒治

  • 葉桜や公園閉鎖の告知板佐藤栞

  • 葉桜よ咲いた痛みは癒えたのか佐藤茂之

  • 葉桜や筆圧強き引継書佐藤志祐

  • 葉桜や結びし髪の結び解く佐藤綉綉

  • 葉桜や歩幅大きく古稀の人さとうナッツ

  • 葉桜や言の葉多き珊瑚婚佐藤浩章

  • 葉桜や吾きつぱりと戀をする佐藤ゆま(歯科衛生子改め)

  • 葉桜やふくふく光る塩むすび佐藤レアレア

  • 葉桜や退職届け出す新人里こごみ

  • 葉桜が喋り出すかに風は今里山子

  • 葉桜のひかりに破れさうな青錆田水遊

  • 葉桜や死亡保険を解約す彷徨ういろは

  • たとへばといふひとの目と葉桜とさむしん

  • 葉桜のあはひにぼうと日は白く紗羅ささら

  • 剥落は空か葉桜間にあふかさるぼぼ17

  • 葉桜や母に及ばぬ我が半生澤田紫

  • 眠れなくなって葉桜が眩しくて沢拓庵◎いつき組カーリング部

  • 声変はりし立てのやうな葉桜よ三角山子

  • 葉桜や旧町名の残る橋三月兎

  • 葉桜や一人で生きてやろうとも山月

  • 葉桜や歩幅の甘いマーチング珊瑚霧

  • 葉桜やみづ打ち鳴らし戦ぎけり三尺玉子

  • 葉桜や渾名で呼び合う仲となり四王司

  • 葉桜やバス停の椅子濡れてをり塩沢桂子

  • 葉桜や亡父のジャケツに伸ぶ背筋塩の司厨長

  • 葉桜や第二志望へ通ふ吾子志きの香凛

  • 葉桜にひとことかけていなり寿司じきばのミヨシ

  • 葉桜や異人ふたりのクリケット獅子蕩児

  • 葉桜や体言止めのおと弾く四條たんし

  • 葉桜や土曜も背負うランドセル紫檀豆蔵

  • 葉桜やセブンのレジに浪人生じつみのかた

  • 葉桜の望洋として墓探す篠雪

  • 葉桜や重機佇む医院跡芝野麦茶

  • かかへたる荷を葉桜にゆるさるる渋谷晶

  • 葉桜やもう歩き出す隣の子しぼりはf22

  • 軽々に好きと言ふのね葉桜に島田あんず

  • 葉桜や母の面倒みる覚悟島田ユミ子

  • 葉桜や若手ばかりの部へ異動清水祥月

  • 葉桜や陀羅尼助売る吉野建清水容子

  • 葉桜や坊主頭は義務じやない清水縞午

  • 葉桜や職転々として嬉し清水三雲

  • 葉桜や歩いて行こう隣町しみず楽翠

  • 葉桜や風とさらさら笑いたり霜川このみ

  • 葉桜よ同窓生は今ドイツ下丼月光

  • 閉校のサイン葉桜とパ・ド・ドゥ芍薬

  • 葉桜やなぞへの大影山を越ゆ洒洒落落

  • 葉桜や何度空蹴るさかあがりじゃすみん

  • 葉桜の午後に補欠のビブもらう沙那夏

  • 葉桜や席替えのくじ透かし見る砂楽梨

  • 葉桜や坂のしまいの窯の煙朱胡江

  • 葉桜や父の享年物語る柊二

  • 葉桜のそよぐ病院までの道柊瞳子

  • 葉桜やネクタイに合う顔となり秋芳

  • 葉桜やレコードの音に土の色種種番外

  • 葉桜や記念校誌の父若し酒天わーい

  • その幹に納めし神気葉桜よシュリ

  • 葉桜やチェロに始まる交響曲じょいふるとしちゃん

  • 葉桜は戦ぐひかりの懐くまで常幸龍BCAD

  • 葉桜や厨の音も昨日今日庄司芳彦

  • 葉桜の下野球部とすれ違う白玉みぞれ

  • 葉桜と我の透き間に注ぐあお白歩明明

  • 葉桜やまたも喘息くる夜間四郎高綱

  • 葉ざくらよやつと告白されました白猫のあくび

  • 鼻で耳で皮膚でひかりの葉桜を白よだか

  • 葉桜や地下鉄駅に忘れ物眞京

  • 葉桜や退部届を出した帰路ジン・ケンジ

  • 石割の葉櫻石を割り続く深幽

  • 葉桜や母よそゆきの笑み少し吹田風香

  • 葉桜や埋まらないマンダラチャート水蜜桃

  • 葉桜を仰ぐ旅愁の男坂すがりとおる

  • 葉桜と空の碧さと鳶一羽杉岡ライカ

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  • 葉桜や木漏れ日散らすアスファルト麗詩

  • 葉桜や飛行機雲の端見えてわかなけん

  • 葉桜の日の斑を纏ひ嬰児立つ若林鄙げし

  • 葉桜に姉と姪との映画館わきのっぽ

  • 葉桜や事務職から営業職和光

  • ひと言が過ぎて散る仲葉桜やわたなべいびぃ

  • 近づけば騒ぐ葉桜見て見て見てと渡辺陽子

  • 葉桜の下にバス待つベンチありワヨ

  • 初恋は散るのがよろし花は葉に岡井稀音

  • 君をまだ「さん」づけで呼ぶ花は葉にクラウド坂の上

  • 花は葉に帯状疱疹癒へし爾後こひつじ@QLD句会

  • 両親の戒名に「青」花は葉に小藤たみよ

  • 雨音はモスキート音花は葉に綱川羽音

  • 花は葉に緘黙の同級生野点さわ

  • 恐竜を脱げば祖母の手花は葉にろまねす子

  • あたらしきあだ名にも慣れ花は葉に朝月沙都子

  • 花は葉に自宅療養明けの朝あなうさぎ

  • 花は葉に古民家に住む新婚さん鶴富士

  • 旅先に人の日常花は葉に姫川ひすい

  • 新しき靴も馴染て花は葉に神酒猫

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

●俳号のお願い二つ

①似たような俳号を使う人が増えています。
 俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。

②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。

※同一アドレスからの投句は、同一人物と見なしております。


俳句の正しい表記とは?

  • 緑と ピンクといえば 葉桜匿名希望
  • 葉桜に 愛する人を 裏切ったギザギザ仮面
  • 葉桜に 菓子思ひ浮かべ 立ち止まるグンパツ
  • 葉桜を 見つめて思う 翌年をしげ3
  • 葉桜で 埋めてください 空いた穴田中恭司

「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪


●兼題とは

  • 花軸を落としさっぱり青葉かな政雄爺

 本俳句サイトでは兼題が出題されています。この句は、葉桜のことを詠んだのだとは思いますが、「葉桜」ではなく「青葉」の句になっています。兼題「葉桜」とあれば、「葉桜」を詠み込むのがルールです。


●「花は葉に」

 兼題「葉桜」ですが、「花は葉に」での投句も相当数ありました。歳時記によって、「葉桜」の傍題として「花は葉に」を載せているものもあるようです。
 これは全くの個人的見解ですが、「葉桜」と「花は葉に」は、感動の種類が違うと考えています。兼題「葉桜」とあれば、まずはこの季語と真っ向勝負をしてみることが、季語を一つ一つ体得していくことに繋がります。


●季重なり

  • 葉桜に夏の気配を滲ませる村田真

  • 葉桜の影涼し日に出る散歩江蓮蒼月

  • 涼しさよ照られて漕いで葉桜へ村崎山藤

  • 葉桜や緑の土手の水涼し焼津昌彦庵

  • 葉桜や毛虫垂れたり風任せ山本蓮子

  • 葉桜の波間を游ぐ吹き流し梶浦和子

  • 花ごろも透かし見る葉桜の空カズ・ハヤタ

  • 今からね紫陽花咲くよ葉桜さん菊野ぼたん

  • 葉桜や朝露浴びてウォーキング月昭

  • 葉桜なり桜堤も草刈りの音さち子

  • 葉桜はツツジ乱舞の幕間かな白梵字

  • 葉桜やメジロは楽しく蜜をすい山下重夫

  • 葉桜や影にひっそり名残花おみ澤おみそ

  • 開花日の初戦今日葉桜の最終戦多胡蘆秋

  • 葉桜になって惜しむは花筏春爺

 一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「葉桜」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。


●文字化け?

  • 葉桜や声に素振りに?風弥栄弐庫

  • 葉桜の蔭ゆら?と千種かな岡崎佐紅

 二句目は「ゆらゝ」? かもしれませんが、ネット俳壇における文字化けは不可抗力……。


●悩ましい……

  • 母を待ち伸ばす指先に豆葉桜鮎風母

「豆葉桜」とは? 豆桜が葉桜になったということ?


  • 葉桜の風をあつめて片恋慕げばげば

「片恋」「横恋慕」はあるけれど「片恋慕」は言葉としてあるのかなあ? 歌のタイトル? 造語?


  • 葉桜や山に移りしかみひとえ松尾美郷

「かみひとえ」は「紙一重」???


  • うす桃を葉桜とせし恋月夜光野フウ子

「うす桃」色? なのに葉桜? 「恋月夜」も解釈に悩む……。


  • 呪文ごと葉桜に降る残照のおぼろ月

「呪文ごと」は「呪文とともに」? 「呪文のたびに」? それとも「呪文のように」?


  • 葉桜や最前列へビート浴むかいぐりかいぐり

「ビート」は音楽? バタ足? 「最前列」とは? うーむ……。


  • はざくらがうなずきあふやちぎのうえ杉浦あきけん

「ちぎ」とは 千木? 地祇? 痴戯? 日本語は同音異義語だらけ……。


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10月の兼題

「秋の暮」

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