夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
3月の審査結果発表
兼題「春雨」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
春雨が痛い四つ脚轢いてより
熊の谷のまさる@俳句迷子の会
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夏井いつき先生より
季語「春雨」とは、柔らかに静かに降る春の雨。なのに、その雨が「痛い」というのです。
中七の「四つ脚」とは、脚が四本ある生き物。春雨の中を運転していて、いきなり「四つ脚」を轢いてしまったのです。猫でしょうか、犬でしょうか。山を貫く道路で遭遇した、狸か鼬かもしれません。正体は分からないけれど、「四つ脚」であったことだけは、確かな事実。飛び出してきた生き物を避けられなかったハンドルの感触。確かに轢いたと分かるタイヤの感触。それらが、ずっと降り続く「春の雨」を、違うもののように感じさせるのです。
「春雨が痛い」と書くことで、季語「春雨」の本意を逆の方向から表現する。その技量も褒めたい作品です。
春雨を吹き上げ大井ジャンクション
平良嘉列乙
「大井ジャンクション」は湾岸線の分岐点。近くには大井競馬場。羽田空港に向かっているのでしょうか。本来はしとしとと降る「春雨」ですが、「吹き上げ」という描写に、高速道路らしいリアリティがあります。
眠るスワンボートへ春雨の波紋
明後日めぐみ
誰も乗っていない「スワンボート」にひたひたと「春雨の波紋」が押し寄せます。助詞「へ」を、中七のここに置いたことで、鮮やかな映像を確保。「眠る」の擬人化も、映像として機能しています。
ゴリラ舎の献花きらきら春の雨
川内佳代
「ゴリラ舎」に詰まれているのは色とりどりの「献花」。ということは、老いたゴリラの訃報を悼んでの花束なのでしょうか。「きらきら」というオノマトペは、「献花」にも「春の雨」にも及んで。
春雨や厄介な弟死んだ
ふくろう悠々
「春雨や」という詠嘆の後に投げ出される独白。さんざん迷惑を掛けられた、翻弄された、もうウンザリだと思った弟。が、その「厄介な弟」の死を悼むように降る「春雨」。しとどに濡れる我が心よ。
春雨に人を羨む眼を洗ふ
沢拓庵
なぜ「人」を羨んでばかりいるのかという苦い自嘲。苛まれる心を抱えて見上げる「春雨」のなんと優しくて静かなことか。その春雨に「眼を洗ふ」という措辞の、素直で美しい心に、読み手の心も震えます。
春雨にブルーシートの寸足らず板柿せっか
なか卯だけ明るし春雨の東京古瀬まさあき
ながさるる蛭子へ春の雨しづかRUSTY=HISOKA
春雨の眠りの澱にみじろげず朝月沙都子
やに臭き手で春雨のシャツ取り込むふるてい
春雨のシャンパンシャワー誕生日ANGEL
春雨や面相筆の細き眉相沢薫
春雨やジャズの染み入る骨董屋藍野絣
春雨や重い眠気の隙間からあいのびふう
緞帳の鷺の金糸や春の雨あいむ李景
春雨や癌に優しき茶をすする逢來応來
生家より知らぬ速達春の雨青井えのこ
春雨や墓誌の名なぞる一雫青井晴空
ラヂオ消し夜の春雨を聴いてをり青居舞
春雨やみんなの好きな六畳間蒼空蒼子
村岡花子のアン閉じ春雨青空まる
春雨に行き止まりなんだと思ふ青田奈央
珈琲はだめ春雨が来ている青に桃々@いつき組俳句迷子の会
城跡に補修の巨石春の雨赤尾てるぐ
春雨よ進路先空欄のまゝ赤尾双葉
春雨に溶けて小さき嘘ひとつ赤富士マニア
春雨やラジカセはまたA面へ赤馬福助
やっちゃ場の喧騒包む春の雨赤目作
前髪に春雨の玉をんな傘acari
春雨や第二ボタンの剥げ具合赤尾実果
はるさめやひとりのときのなきひとり明惟久里
春雨と期限の切れた定期券敬子
列長き支援窓口春の雨秋白ネリネ
春雨や下宿から見る神田川昭谷
春雨や開けたてのピアスのほてり秋野茜
春雨や古い手紙を読み返す秋野萱
春雨はすみれ色なるアヴェ・マリア秋野しら露
顔なじみの屋台は休み春の雨秋山らいさく
春雨は危険な緑孕み降る芥川春骨
春雨や純喫茶まで一万歩あくび指南
春雨や腕に眠る迷い猫淺井翠
春雨の土のにほひや地鎮祭朝霧さら
春雨やそろそろ辞める潮時か麻場育子
シラバスを独り読むふり春の雨芦幸
飛石は女の歩幅春の雨あじさい卓
春雨や猫はおおかた毛繕いあじさいパスタ
春雨の薬飲む日の指なぞるアシツノカラ
春雨やすきまの狭い夜きれい葦屋蛙城
春雨に映るショパンの夜想曲あすなろの邦
春の雨帰りたこ焼き食べようか麻生ツナ子
春雨を抜け来しひとのにほひかなあたしは斜楽
春雨や前夫の夢を見しよりの足立智美
春雨や静脈さぐる白き指あたなごっち
春雨を発ちたる夜行列車かな熱田俊月
春雨かフランス映画観て行くかあなうさぎ
授業中裏打つ春雨のリズムあねもねワンオ
ジャズバーのドアが重くて春の雨阿部八富利
うろ覚えの路地の中華屋春の雨天風月日
春雨や鞐をはずす指細しあまぐり
春雨のひかり集むる如来の手at花結い
春の雨ピアノ調律ドの連打雨戸ゆらら
春雨や悼む身の奥すずの凜あまぶー
春雨やまだカーテンのない部屋であみま
春雨の鎮む都会のアスファルト雨霧彦@木ノ芽
春雨や回転木馬の軋む音雨李
春雨やひかがみに透くさくら色あやせゆうま
乳色にねむる化石や春の雨綾竹あんどれ
頬にメス入れた日もたしか春雨綾波まこと
春雨や追伸長き母の文荒一葉
春雨や姉の忌ちかき昼さがり新多
剣竜の背を覆うは春雨か在在空空
波トタン受く春雨のブラームス肖草
象嵌のつめたき蝶や春の雨アロイジオ
春雨や乾通りを傘とじて淡湖千優
春雨の詩よ野良着の父の背よアンサトウ
春雨のテラス置き去りの花束安春
春雨や足を揃へて七回忌杏っ子
ママとよむ「おしりたんてい」春の雨あんばいとしき
春雨や硝子をつたふつひのこひ飯村祐知子
貝のいろ春雨のいろ魂のいろいかちゃん
春雨を歩く鴉と文明史池内ときこ
春雨やカラオケで漫画読む二人池田華族
押しあはぬ水輪の淵や春の雨池田桐人
春雨や墓は紫黒を纏ひつつ池之端モルト
春雨や寝て起きて寝て置き手紙イサク
春雨へ駆け出す蹠の無重力いさな歌鈴
珈琲とボストン港と春の雨石井一草
コロッケぱく春雨の商店街いしいるぴなす
春雨や念珠ブレスのゴム緩み石岡女依
春雨浸むビルの瓦礫の底の底石垣エリザ
しりとりのれもんれんこんはるのあめ石塚彩楓
春雨か慟哭からの十二年石の上にもケロリン
さざ波に春雨混じる午後三時石原邦子
春雨や節木増より白きもの石山日滔
二日目はハトバス春の雨の中泉晶子
春雨に滲む葉書の音符かな泉水あやめ
ジュラ紀より同じ甘みを春の雨磯野昭仁
春雨やよこがほ美しき黄のアウディ石上あまね
春雨や明日から無職でも生きる磯むつみ
電柱に犬の張り紙春の雨いたまきし
春雨や今日の糠床いかがかな市川りす
春雨や人に寿命のある不思議いちご一会
校舎まで送ってやるか春の雨無花果邪無
春雨の玻璃しずく追ふ二杯目よ一久恵
死んだふり終え春雨のヌートリア一斤染乃
サックスと春雨融けあうガード下一秋子
ゆがみなき廃業の文字春の雨五つ星
手付かずの仕事かかえて春の雨伊藤節子
春の雨順番待ちの駅ピアノ伊藤亜美子
昇降機に湿る身体や春の雨伊藤順女
春雨や家庭教師は今日限り伊藤なおじい
春雨や鰐のしなりめくW坂伊藤柚良
伝書鳩もどる春雨ふりつづく糸川ラッコ
湯に躍るリボンのパスタ春の雨井中ひよこ号
春雨を虚ろな耳が聴いてゐるいなだはまち
春雨や花柄えらぶ待ち合わせ稲葉こいち
春雨や駆け込む先は「A」ランチ稲葉雀子
きみと子の髪は墨色はるのあめ稲畑とりこ
春雨やメトロノームの針戻す稲畑とりまる
春雨の水かきまでは濡らさざる居並小
春雨を昇りゆく讃美歌犬山裕之
ダムカレーの堰を崩して春の雨井上さち
春雨や句会ライブの黒ベンツ井上右彩
春雨や書架の谷間の本読む子井上れんげ
解剖学の講義終はりて春の雨井納蒼求
春雨と俺と預かるその議論ゐのかたゆきを
春雨の乗り換へ駅や森深し井原昇
春雨の音階ドロップスの色井原冴
体温を吾子と分け合う春の雨今井モコ
手の甲の春雨甘し舞妓帯イマスノリコ
春雨や淡き紗をかけ大都会井松慈悦
春雨や甘酢餡かけめく長屋伊予吟会宵嵐
春雨は優しいと誰が言ったのか伊代ちゃんの娘2
春雨や無言の選挙カー通る五郎八
ひとり行く土手春雨が重い岩木順
しいんと春雨ペッパーミルを挽くいわきりかつじ
春雨やふたりの距離を測りかねいわさちかこ
春雨の空つらぬいて逝かれけり磐田小
春雨やこぐまの傘へ黄の傘へ植木彩由
春雨や脳梗塞の予後の色植田かず子
春雨のほろほろ落つる瓦かな上野徹
春雨や片手あげるだけの別れ上野眞理
青焼きの図面のカスレ春の雨上原淳子
巴里の街絵傘にけむる春の雨上原まり
春雨や東京に見る吾子のかほうからうから
矢は的を射抜いて無音春の雨宇佐美好子
春雨や読後にもらふ明き種うた歌妙
春雨や街角ピアノの「月光」宇田の月兎
春雨の朝よ溶けゆく白味噌よ内田こと
病みそうで病まぬ心に春の雨空木眠兎
春雨や英語の塾の蛍光灯うつぎゆこ
採譜せん春雨にあかるき林靫草子
春雨やジムニーの発車音弾む卯波まり
春雨や埠頭の奥の常夜灯海口竿富
春雨や宿の名大き蛇の目傘海野優
春雨が染みこむ痛さうな切り株海野あを
春雨や鍵盤重き課題曲うみのすな
春雨や敬語覚ゆる留学生梅尾幸雪
春雨に気付かず長電話は続く梅鶏
春雨の宵や料理は大嫌い梅野めい
春雨のリズムかぽかぽ割る卵浦野紗知
春雨や下駄の音して店の開く麗し
秘事のこぼるる夜の春の雨江川月丸
春雨やけふぬれたくてたつてをり蝦夷の子
ドビュッシーアラベスクめく春の雨蝦夷野ごうがしゃ
春雨や選挙ポスターの皆笑顔蝦夷やなぎ
春の雨はじめに濡れるキリンの角越冬こあら@QLD句会
春雨や絡まる蔓も解けさうな絵十
ヘルパーの右肩ぬらす春の雨笑姫天臼
はるさめやひたにとなふるなむあみだM・李子
春雨止む間一小節を走る犬絵夢衷子
女子大に残る武蔵野春の雨えりべり
地球儀は水色多し春の雨えんかず
春雨や猫は彼方の何を見む縁穐律
物音を消して春雨夜を沈め遠藤千草
春雨を聞きゐるテントサウナかな遠藤一治
春雨の手紙ひとりでかみむすべたよ遠藤波留
墓地使用承継許可を春の雨旺上林加
春の雨陶磁器展に探す影近江菫花
春雨や濡れて届いた汝の葉書大石聡美
有休の子と春雨の日帰り湯おおい芙美子
春雨や会話禁止のジャズ喫茶大江鈴
春雨やなかなか伸びぬ足の爪大岡秋
新歓を抜け春雨の万国旗大紀直家
春雨やブルペンに十年選手大黒とむとむ
遮断機の向かうは淡き春の雨大越マーガレット
陽の色の蜜を紅茶へ春の雨大小田忍
春雨や近づく下駄の音嬉し大阪駿馬
巻き髪の揺るる喪服や春の雨大槻税悦
春雨や傷つけられしランドセル大津美
おねえちゃんのおなまえきけたはるのあめ大史華家
印度から帰国夕暮れに春雨大谷一鶴
春雨や生涯一女書生大山小袖
春雨のショベルカー生家を毀つ大山和水
でたらめに繋ぐ手春雨の双子大和田美信
ぶれないで生きて来たのか春の雨岡井風紋
春雨や五年日記を読み返すオカエサキコ
春雨や電話じりりと旧街道おかげでさんぽ
春雨となるまで話し込む二人可笑式
春の雨駄馬の蹄の響きけり岡田明子
春雨や窓辺に母を待つ姉妹おかだ卯月
春雨や鏡にひとりアラベスク緒方朋子
神橋に巫女の消えゆく春の雨岡田雅喜
春雨のトレモロ聞こゆ蔵の街岡山小鞠
名画座のポスター変わり春の雨小川さゆみ
春雨や肩に預ける子らの傘小川しめじ
元寇の沈みし海に春の雨小川天鵲
春雨や町のはずれに療育園小川野雪兎
松脂のひしぐ切り株春の雨小川都
春雨の環状線のなかにゐる小川めぐる
春雨の琥珀に息をしたるものおきいふ
校庭は眠れる湖面春の雨おきいふ
読み耽る半日春雨の静かオキザリス
春雨のたたく蕾の音ぱぷん沖原イヲ
どういたしましてと返す春の雨沖らくだ@QLD句会
春雨の襞を列車たたんたたん荻原湧
回復室を出づや窓は春雨奥田早苗
白熊の黒き地肌や春の雨小倉あんこ
春雨の宇治橋右を音立てずおこそとの
春雨や僧走り去る東大寺小田和夫
春雨や晩節一人芝居めくおだむべ
郵便受ことり春雨を三歩越智空子
春雨や母の手彫りのオルゴール音羽凜
春雨に俯いてゆく献花かな小野寺さくや
やや厚くシフォンケーキや春の雨おひい
一週間単位の暮らし春の雨おぼろ月
採寸は母と春雨の校舎小山田之介
春雨やカレーライスにある系譜おんちゃん。
春の雨こつこつ白杖聞く駅舎かいぐりかいぐり
春雨のモールス信号は片言快晴ノセカイ
春雨や当直室のガスコンロ海峯企鵝
春雨によれる半紙の「永」の文字かえるゑる
傘ひとつぶん春雨を歌はしむ火炎幸彦
春雨や一人カフェの軽き鬱カオス
産土をおおう光や春の雨加賀くちこ
春雨や蕎麦切る音の耳触り垣岡凡才
3分を詫びる車掌や春の雨化骨
春雨や週に二日も定休日風花まゆみ
春雨や布目を潜る銀の針加座みつほ
鉄階段の音おほつぶに春の雨霞山旅
春雨に反る布教誌を手渡さる樫の木
春雨や下の名でよぶ人待つ日かじまとしこ
春雨に濡れにし花の名を知らず片岡明
そこそこの人生だつたとして春雨片岡六子
生臭き夢のあはひや春の雨片山蒼心
フルートのビブラートめく春の雨花鳥風猫
春雨の子ども食堂子ども待つ葛飾シトロン
春雨やコマなし自転車まだ怖いかつたろー。
卵殻に染め写す草春の雨桂子涼子
寂しくはないという嘘春の雨花伝
春雨の機内画面の飛行距離叶田屋
春雨や兄より借りし整髪料仮名鶫
春雨や床屋のぐるぐるは錯覚金子泰山
春雨や安全島に囚はるるかねつき走流
春雨と土と囁きあひてをり釜眞手打ち蕎麦
物原の愚作に溢る春の雨神長誉夫
春雨や缶詰め部屋の六時間神谷たくみ
春雨の音へギターのアルペジオ紙谷杳子
春雨の鹿せんべいの湿りかな亀田荒太
春雨や誰も通らぬ道がある亀田かつおぶし
子沢山の犀は独りに春の雨亀の
路地奥は春雨の研ぐ石畳亀山酔田
春雨や地球の裏のエアメール鴨の里
生理前かも春雨の保健室花紋
春の雨古墳お前は何度目や唐草もみじ
春雨のなかをドリブル続けをりかりかり久助
家畜車の行き着くまでを春の雨かりそめのビギン
春雨を独り占めして始発待つ枯山日明萌
春雨に点音にぶき古時計河上輝久
春雨や軒下を沿ふさくら猫川越羽流
砂利に春雨書き置きの御朱印カワムラ一重
春雨のおと貝塚の土器いびつ川村ひろの
人体に穴の幾つや春の雨閑々鶏
春雨やジャングルジムの片想い菅野まこ
水桶の荒砥の気泡春の雨閑酉
春雨や折り鶴に無き目鼻立ち喜祝音
春雨や若さ恃みて宿の下駄キートスばんじょうし
春雨や昼サイレンの朦朧と季々諧々
花街の名残の坂や春の雨岸来夢
駆け抜ける馬の湯気立つ春の雨酒暮
春雨や路上の滲みは轢死体季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
春の雨自己紹介はあとでいい北大路京介
春雨へ走り出す制服の新しく北川茜月
窓叩く春雨頬叩く母ちゃん北里有李
春雨や女の爪とわかる爪北野きのこ
春雨や曲がることなく付箋貼る北野都留
春雨や狛犬の尾のうれしさう北藤詩旦
こびり付くものみな削ぎて春の雨北村崇雄
春雨やカーボンコピーの三枚目貴田雄介
春雨や足場作業は珈琲タイムギックリ輪投げ
春雨や行方不明の犬の飯狐雨こじろう
春雨や扱ひ慣れぬ女傘木寺仙游
春雨の紙ストローにふやけたるきのえのき
春雨や伏目の多きテンペラ画木野桂樹
春雨や敬語使えぬ子の手紙木下桃白
手をつなぎ春雨たのし菓子うれし木野まち
春雨や開かずの門の昼灯木原洋子
春雨や父の名探す位牌堂きべし
春雨にバッハの何と新しい木村かわせみ
春雨や去年はこの席母の席木村修芳
初めての仏語の授業春の雨木村となえーる
春雨や吾子の手形の花も咲き鳩礼
ひさかたの春雨袈裟に濡れかかる京野秋水
春雨をゆく包帯のおとうとと杏乃みずな
春雨や任侠映画二本立て清瀬朱磨
春雨の午後縁側にて読了清鱒
春雨のむら妖怪の手は綺麗ギル
すべり台みたいな土下座春の雨銀紙
睫毛に春雨唇に春雨菫久
春雨や時間つぶしに喫茶店銀将
春雨や引継ぎファイル後5冊銀長だぬき
湯豆腐に鬆の立ちはじむ春の雨ぐ
初めての看取り二十歳の春の雨くぅ
春の雨あにいもうとに薄き膜久我恒子
春雨にゆるぶ京大立看板ぐずみ
春雨の孤独にかじる不味きパンくずもち鹿之助
隣家より拙いピアノ春の雨國吉敦子
傘持たぬ君が鎖骨に春雨満ち窪田睡鯨
春雨を弾く革靴面接日久保田凡
耳鳴りは変ホ長調春の雨くま鶉
ものわすれ可笑しと泣きて春の雨熊谷温古
春雨や昨日なかった土竜塚熊本芳郎
春雨の締切日ガウディになりたい曇ゆら
春雨を降るだけ飲んでいる大地倉岡富士子
くわうこつと春雨を安全太郎倉木はじめ
春雨の法螺吹きこころ明朝体眩む凡
春雨の夕暮れを聴く枕かな栗田すずさん
春の雨ディスポーザーに残る種栗の坊楚材
忘れ傘潤んで静か春の雨来ヶ谷雪
春雨やホームシックと認める夜空流峰山
春雨は燦燦カブを初乗りすくるみだんご
春雨や龍角散の字の浮きて久留里61
テレビ無い暮らし春雨を聞いてる紅さやか
春雨や名前呼ばれぬ診察室黒田良@しろい
春雨や骨上げ待ちて眺めをり桑田栞
重なりて春雨奏すオールディーズ慶唯
牛すじを弱火二時間春の雨桂子
草臥れた耳春雨に診てもらう恵勇
春雨の遠く屠畜場の灯りけーい〇
春雨や鍼しづみゆく盆の窪げばげば
春雨のカフェ削除するもの尽きず謙久
春の雨告解室の途切れ、途切れケンG
春の雨トウシユーズの音が鳴る源氏物語
春雨や土のにほひの桜川研知句詩@いつき組広ブロ俳句部
春雨におろす正社員の重荷剣橋こじ
春雨の上野や母の墨絵展小池令香
春雨や土に戻らぬ紙の花こいぬ
春雨や伊勢の空より沁み出でり郷りん
沈黙にワイパー一度春の雨剛海
ストローの無音を含む春の雨公木正
春雨や栞を挟み忘れたる柑たちばな
春雨やピアスのとほりにくき朝幸田梓弓
春雨にふらり名画座二本立て宏楽
春雨やビニール傘は甘い膜古賀
春雨の寝物語や紫煙の香小笹いのり
春雨や玻璃の粉ちらす街路灯小杉泰文
春雨の羽田や満席の離陸木染湧水
春雨や万歩に足りぬ日となりぬ後藤周平
金色の鴟尾つややかに春の雨後藤三梅
春雨や轢かれた猫の顔静か粉山
春雨の中を展望エレベーターこのみ杏仁
まだ届く子宛ての郵便春の雨虎八花乙
春雨のバス待つ間の足湯かな小林昇
枯れてゆく樹となりし母春の雨こひつじ@QLD句会
春の雨保健室まで行けた朝小藤たみよ
春雨に耳傾けし一周忌こま
春雨や本屋の匂ひ嗅ぎたくて小町瑞泉
春雨を閉じ込めている子守唄駒野繭
春雨や座したる尼の白き足袋駒村タクト
春雨は明るい空から降りてくるこむぎ
右腕にきみの体温春の雨小山晃
曇り硝子仄明るし春の雨小山秀行
春雨や石畳から石の声GONZA
イソジンの楽しき苦み春の雨コンフィ
岩峰を薄むらさきに春の雨埼玉の巫女
春雨に噴水濡れてばかりゐる彩汀
春雨や蓄音機から愛の夢齋藤桃杏
北口改札春雨の開業日齋藤ちの
耳鳴りのじくじく春雨の無音さおきち
春雨やロットアウトの原紙積むさ乙女龍チヨ
舌ふたつ寂しく出会う春の雨酒井おかわり
春雨や風めくシャドーピッチングさかえ八八六
つのり来る春雨口をひらかしむ榊昭広
春雨や花街奥の稲荷様坂口いちお
春雨や駆け抜ける馬場湯気が立つ相良まさと
コンパスはくり抜く軌道春の雨さくさく作物
春雨の無声映画をみる窓辺桜鯛みわ
春の雨明日は土をいぢらうか桜月あい
春雨にうたふおもちやのおるがんよさくら悠日
春雨や明治生まれの「ホトトギス」迫久鯨
大仏の緑青豊か春の雨雑魚寝
春雨やなほやわらかき母の頬笹イボ太郎女
吐きとほす嘘はほんたう春の雨佐々木慈子
駅跡の工事現場に春の雨ささきなお
春雨や米の香ふわと炊飯器さざなみ葉
吸啜は鼓動のリズム春の雨笹野夕
春雨や古びた本の蔵書印砂月みれい
春雨や針飛ぶレコード名曲盤佐藤しのぶ
春雨を来て練りきりの聴色佐藤儒艮
春雨がペプシコーラの看板へさとうナッツ
春雨や最終回の教壇へ佐藤浩章
図書室の「モモ」に折り目や春の雨佐藤レアレア
春雨や部屋に独りの一周忌里こごみ
春雨のすうすう静かなる諏訪湖里山子
チリチリと異物が育つ春の雨里羽豊後
春雨を優しき檻と呼ぶ君と真井とうか
影淡し春雨をゆくみな余命錆田水遊
薬草の薬罐しゆんしゆん春の雨さふぁい庵
揉め事は疾うに結着春の雨さぶり
春雨や大人一人のバス乗り場彷徨ういろは
春雨に滲む別府の噴気かな紗羅ささら
日経購読三日目の春の雨さるぼぼ@チーム天地夢遥
恋文に見立てるヴェール春の雨澤田紫
春雨に濡れて牧師の着任す澤田郁子
耳鳴りのせぬはうの耳春の雨山海和紀
春雨やおとがひ細きマリア像三月兎
春雨や息子の家に退院す山月
女子は皆しづかに清書春の雨三尺玉子
春雨数ふ父のお薬カレンダー潮風の台所
春の雨ひらがなばかりの文を読む塩沢桂子
春雨や病室はまた広くなり塩の司厨長
草履行き交ふ春雨の二寧坂四季春茶子
春雨や白湯と十味敗毒湯獅子蕩児
軽トラのギターとエロ本春の雨篠原雨子
春雨や敗戦処理のマウンドへ柴田朱々
送別のコーヒー苦し春の雨柴森爽
店じまいセールの幟春の雨しぶ亭
きずぐちをぬふ春雨のぎんのいと渋谷晶
春雨に獣のにほひ死のにほひ島田あんず
春雨や踊り字畳字ノノ字点嶋田奈緒
春雨や人焼く煙の匂いしてしまのなまえ
春雨や犬に好かれる志村像嶋村らぴ
百台のサドル春雨そぼそぼと清水祥月
合掌や花束震ふ春の雨清水容子
春雨や隣家に赤子越しきたり清水明美
春雨や象のはだへのしわくちゃを清水縞午
鉄橋は列車にやさし春の雨清水三雲
春雨や縁で文読む昼餉あと志村狂愚
退職の荷物二箱春の雨霜月詩扇
春雨も続く反戦デモの旗下丼月光
面会は禁止市バスを春の雨芍薬@独逸
春雨に濡れるひたいのアンダンテじゃすみん
ごぼう抜きしていく背を春の雨沙那夏
春雨のみっちり重き深夜勤砂楽梨
春雨やあれは工藤のホルンのF十月小萩
乳がんの告知梵音の春雨朱胡江
春の雨貨車を引き出す汽笛聞き秋星子
春雨や生き物係に立候補秋雪
春雨の街は明るし髪切らん秋芳
見納めのブレザーに春雨の調種種番外
春雨や更地となりし純喫茶寿松
春雨や音消え入りて香の立ちて獣羅
花屋まで金魚のお供春の雨シュリ
春雨やゆつくり選ぶ旅土産順之介@QLD句会
人形の瞳は硬し春の雨常幸龍BCAD
春雨や会津木綿の筬の音庄司芳彦
春雨を浴びて入庁前夜かな庄野酢飯
お小言に身動ぐ正座春の雨白玉みぞれ
真夜中の着陸成都は春雨白浜ゆい
子を寝かす窓の旋律は春雨四郎高綱
研修タグ艶めく春雨の警備白プロキオン
春雨の似合ふ女となりにけり新開ちえ
ヨコハマの坂へ春雨辞令待つ神宮寺るい
春雨に目覚むる浪人の朝よジン・ケンジ
春雨や赤を含んで待つ言葉新城典午
春雨の介護教室ににんが四新濃健
東京やぬるき春雨をも惜しむ深幽
春雨は春を壊さぬやうに降る水蜜桃
春雨や腐せし乳を下水路に水曜日生まれ
春雨や軒の下なるくくり猿すがりとおる
目を凝らす浮子の上下や春の雨杉尾芭蕉
春雨を聴くカーテンはそのままに杉田梅香
ひやさいの天水桶に春の雨杉本果ら
春雨やダンボール箱たった五個鈴木暮戯
釣人の帆柱めきて春の雨鈴木由紀子
三の糸切れて春雨やみさうな鈴木麗門
石一つの遊女の墓や春の雨鈴子
子規覗きさう春雨の朝の庭鈴白菜実
宿題の運針遅々と春の雨清白真冬
雲梯の錆色にじむ春雨よ鈴野蒼爽
春の雨さはりなきことはなす医者主藤充子
春雨や珊瑚のいろの摩天楼すりいぴい
読み差しの本積み上がる春の雨諏訪次郎
春雨に濡れる新聞「ウクライナ」晴好雨独
こぼれくるショパン春雨の裏道瀬央ありさ
休学せん額に一粒春の雨瀬紀
春雨や鴇鼠色に山おほふseki@いつき組広ブロ俳句部
春雨や慣らし保育を待つ紅茶せとみのこ
春雨にETCのバー震ふ世良日守
春雨や赤の予感の鉢並ぶ千@いつき組広ブロ俳句部
春雨や三分遅らす腕時計全速
春雨は棕櫚のほうきのやはらかさ千波佳山
春雨や駐車場また増えた街早春SOSHUN
野の仏憂いを満たし春の雨惣兵衛
春雨や卍を辿る手書き地図そうり
焼き鳥屋出れば我待つ春雨よ外鴨南菊
春雨の駅のチラシのファラオの目染井つぐみ
春雨や腰の歪みの治る音染野まさこ
春雨や鳩の求愛ダンス疾し空豆魚
香箱のやうな最中や春の雨ぞんぬ
若人も待ち人来ずか春の雨大
春雨は長距離走の孤独かな高岡春雪
春雨さらさら後朝の洗濯機高尾里甫
てのひらは小さき箱庭春の雨高木音弥
割れた爪生えてこぬまま春の雨だがし菓子
春雨傘凭れれば肩すこしかたい髙田祥聖
春雨や表面張力の涙高橋寅次
春雨や花色のなにか楽しく高橋なつ
春雨やピペット掴む白き指高橋ままマリン
歌舞伎座の春雨にほふ学生服たかみたかみ
春雨やたれも通らぬ点滅灯高山佳風
貸出の気配なき本春の雨高山夕灯
春雨や弾くレコード盤の傷滝上珠加
立読みのゐて春雨の貸本屋滝川橋
春雨のごご返信はまだだろか瀧本敦子
春雨や戸ごとに人の居るナポリたきるか
春雨やしみる右肩夜汽車の窓卓女
春雨や巨樹天空へ羽ばたきぬ武田豹悟
春雨やマッチで点ける仏間の灯竹田むべ
先ず君の受験番号春の雨竹八郎
春雨や記憶の底のヴィヴァルデイ武部敞子
春雨やルノワールめくビニル傘多数野麻仁男
ロキソニン効くまで窓の春雨を多々良海月
春雨や全て流るる犬の糞橘陽瀬
春雨や男と逃げた母の椀立石神流
春雨や沓脱ぎ石に黒草履立部笑子
春雨の芝犬「待て」の形して田中勲
積読に手を伸ばす春雨の朝田中紺青
春雨や防風林のまだ低し田中ようちゃん
春雨の中現れし赴任校谷相
春雨や小半日読む方丈記谷町百合乃
春雨や客船けむるグラバー邸たばたなおみ
露わなる崖の地層や春の雨玉井令子
春雨のまづ匂ひから降りはじめ玉木たまね
春雨や全て溶かしてみづの音たまのねこ
刺青に羽織る作務衣や春の雨玉響雷子
卒塔婆に降る春雨ながめせしまに玉響海月
春雨や祖父と似ていし鬼瓦たむらせつこ
春雨やまつろわぬ馬光る肩だんがらり
春雨や骨董屋より電話また丹波らる
春雨を三たび乗りつぎ美術館千夏乃ありあり
春雨の持薬をまとめ一気飲み竹庵
春雨や鰐のかそけき息づかひちくりん
春雨や日にち薬の怪我撫でるちっちのきも
羊水の甘みのほのか春の雨千歳みち乃
てぃぴてぃたっぷ土は踊るや春の雨千鳥城@広ブロ俳句部カナダ支部
春雨や独り荷を積むユニック車ちゃあき
春雨の昼に憩える横断旗千代之人
ずるすると連敗しとしと春の雨彫刻刀
春雨や半音高きボンネットちょうさん
蔵書から外れし絵本春の雨月石幸
春雨に烟る大河の白き皺月岡方円
春雨や花御朱印をたまはりて月影の桃
春雨や滲んだ恋の一画目月丁もち美
離婚日の春雨帰る屋根はないつきのひと
春の雨ぷつぷつホットケーキ焼く月待小石
春雨や脈追ひかける時の針つくも果音
春雨の俯くものにやさしかり辻内美枝子
春雨や大陸訛りの料理長辻野花
春雨や海峡に透く釜山の灯対馬清波
城跡の石垣にほふ春の雨辻美佐夫
春雨や一時停止のヴィヴァルディつちのこ
釣銭は募金へ春の雨しづかつちや海郷
国境の東へ春の雨匂ふ津々うらら
春雨は無音の手まり唄のやう綱川羽音
目薬の鼻咽に甘し春の雨ツナ好
指文字を交わす母子や春の雨つばさ
お互いの肩拭きあって春の雨津幡GEE
黙祷のサイレン春雨の海へ坪山紘士
春雨や二人目のこと話し合ふ丁鼻トゥエルブ
春雨や生まれなかった子等の歌テツコ
春雨のあがる明るさ富士の山哲山(山田哲也)
芝居跳ね銀座の宵は春の雨輝由里
春雨や妻に内緒の借用書テレシア
春雨の匂い居場所のないクラス電柱
春雨や腹つるつるの陶狸でんでん琴女
春雨や図書室はしづかな砦天陽ゆう
春雨や露西亜の菓子の赤きジャムトウ甘藻
春雨や「儒者紀行文」脱稿す峠南門
春雨や荷物寡きコンテナ車藤白月
春雨や父に供ふるスポーツ紙遠峰熊野
山門を出て春雨の獣臭しとかき星
春雨や髪を切りしは三月前時まる
賽銭を数えし指や春の雨ときめき人
匂い無き裸婦像に浸む春の雨常磐はぜ
春雨の街の流行りは白と黒徳庵
春雨に封の莟の滲みをりDr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
恋文の行間多し春の雨どくだみ茶
柿渋の刷毛跡香る春の雨どこにでもいる田中
春雨やコークス殻の点りをりとしなり
春雨や土蔵の古書を縛る午後十津川ポロ
春雨やぽつねんと待つすべり台戸根由紀
春雨にひとりひとりと沈む街鳥羽ししまる
何かある遺跡春雨上がりけり戸部紅屑
春雨や仔犬は犬の臭ひしてトマト使いめりるりら
春雨やろくろ僅かに歪む音とまや
案内板の曇るアクリル春の雨友@雪割豆
春雨の高速道路混んでくれ鳥田政宗
春雨や河童ひちょひちょ路地を行き豚々舎休庵
閉店のパン屋春雨の匂ひ内藤未来仁
春雨に指紋喪ふくすり指内藤羊皐
春雨や鎌倉五山やはらかに内藤由子
割立ての薪を匂はせ春の雨中十七波
春雨や錆び付く街の散文詩中岡秀次
モーテルの空室表示春の雨中里凜
春雨の御苑歩むに雅楽の音中嶋敏子
春雨や川面に揺れる加賀毛針永田千春
春雨のハトバス人を吐き出しぬ仲操
春雨や検査数値の丸印中村あつこ
春雨や見上ぐる君の喉仏中村すじこ
春雨や水面に空の底を置き中山由
春雨の票を入れたい党が無い新蕎麦句会・凪太
春雨や鶏舎静かな死の匂ひなしむらなし
春雨や盲導犬の募金箱那須のお漬物
春雨や絹の糸めく祖母の髪夏草はむ
春雨の夜の街ゆく口ピアス夏雲ブン太
春雨や金の成る木の肉厚く夏湖乃
春雨のディズニーランド花めきぬ夏野あおのり
春雨の渡り廊下テルーの唄夏雨ちや
春雨や振り向く山羊の髭長しななかまど
春雨を吸ふ木乃伊にもある味蕾七瀬ゆきこ
春雨やゲルニカの月探す朝七森わらび
乳房めく古墳の夜へ春の雨菜々乃あや
春雨や綿飴のごとにほひける⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
差し掛くる傘を待ちつつ春の雨名計宗幸
糠床をかき回してや春の雨名前のあるネコ
好きでしたと言はれてをりぬ春の雨奈良素数
待合へ銅鑼の音七つ春の雨南歩
春雨や紫ばかり咲く庭の西川由野
春雨や出棺の足急きもせず西爽子
クスノキがずんどうで春雨でせう西田月旦
春の雨ゆるゆるフォークからパスタ西野誓光
仄ひかる頸の白さや春の雨螺原トモ
春雨や江戸より続く饅頭屋西村小市
春雨の地に触れてもう雨じゃない二重格子
春雨のるるるしづかな夜をるるる新田ダミアナ
春雨や切手の裏のほの甘きにゃん
消しゴムの温もる匂ひ春の雨仁和田永
春雨や透けてかの世の瞬きぬ庭野環石
ワイパーのやはらかに拭く春雨の香鵺之疾秋
春雨やきのこ雲めく胸の澱暖井むゆき
一日良し三日は長き春の雨沼宮内かほる
春雨やシュプレヒコール近い場所猫辻みいにゃん
春雨の開く漫画の匂いかな猫ふぐ
春雨やラジオをつけぬ朝に居る根々雅水
傘の無き旅を春雨たをやかにノアノア
春雨やドラムロールは不揃いで野井みこ
右肩は傘の外春雨の下校濃厚エッグタルト
賛成と言へぬ会議や春の雨野地垂木
春雨の檻めく母の居らぬ夜はノセミコ
春雨をゆく晩酌はこの豆腐野中苦泉
春雨や就活鞄の角かたし野々かおり
父の忌や春雨に聴くチェロソナタ野ばら
春雨や髪伸びるのを待っている野原茉莉
春雨やルイボスティーの透きとほる登りびと
春雨が昼まで我を眠らすなり野間薫陶
祖父の島春雨を乞う畝立てて海苔和
春雨の戯れ歌流す砌かな白庵
春雨や蔵の解体見積書はぐれ杤餅
春雨や破線でつなぐ天と地とはごろも856
引越しの赤丸は明日春の雨橋爪利志美
ジャズ喫茶より駆く春雨の街へ橋本こはく
春雨や旅立つ吾子に渡す文馬笑
春雨やミシンの音とため息と蓮見玲
病窓を舷窓として春の雨長谷川水素
春雨の音に親しき安普請長谷機械児
春雨やふたりっきりのミット打ち葉月庵郁斗
ケーキ入刀終えて春雨香り立つはっしー
特上の雨雲からの春雨よ八田昌代
春雨に濡れて行こうと思ってやめた服部たんぽぽ
春雨やただ黙々と針遊びハナオカヨシコ
春雨のままに暮れゆくズル休み花咲明日香
光成す夜のマリーナ春の雨花南天あん
龍鳴かす柏手ひとつ春の雨はなぶさあきら
ここですか春雨のなか救急車英ルナ
春雨や八年前の貸し出し印花豆
アシカショーうすき歓声春の雨花和音
春の雨君が代独唱の余韻はのん
名山の輪郭無でし春の雨ぱぷりかまめ
春雨や女房帰らぬ夕餉時浜友輔
春雨や父と最後に帰る旅はむこ
摺り切りの砂糖に起伏春の雨葉村直
春雨に滲むはがきの文字のくせ早川令子
春雨と血が通ふまで歩きたし林省造
春雨や湿布のかほる薬指林眞亜紀
水槽のさかな銀いろ春の雨原水仙
長考の将棋会館春の雨原田民久
春雨や沁みて重たき墨衣針子のネコ
一人つてこんなに楽し春の雨巴里乃嬬
春雨や子規堂拝観50円播磨陽子
ビルビルビル都心を洗う春の雨haru.k
寡黙なるジグソーパズル春の雨春あおい
喧嘩後の煙草の燻(くゆ)る春雨よharu_sumomo
廃寺の宝珠を濯ぐ春の雨晴田そわか
春雨や外湯へいそぐ石畳晴菜ひろ
春雨や昭和の切手縦長に葉るみ
陣取りの青よ春雨搾る雲春海のたり
春雨や流れに乗れぬ教習車はれまふよう
春雨や二周目入る恐竜図鑑パンドラみかん
春雨や骨曲がりたる傘さしてHNKAGA
青年の下手なスキップ春の雨万里の森
春雨やさくりくづるる砂の山東原桜空
モルックの一投砕けて春の雨比企野朋詠
堤防決壊はるさめのもんじや店樋口滑瓢
春雨に裸婦像けむる御堂筋樋口ひろみ
職員室に一人春雨の音火車キッチンカー
ざんばらの力士バス待つ春の雨菱田芋天
春雨やマシュマロまろく溶けゆきぬひすい風香
壁の絵の蠢動したり春の雨美竹花蘭
春雨や運河に匂ふ舫綱ひでやん
春雨や帰路のラジオのラブソング日向こるり
春雨や固き枕の仮眠室ひなた和佳
春雨の汚した程の窓磨くひな扶美子
春雨や老いには重き革鞄比々き
ゆつくりと春雨ゆつたりと褥ヒマラヤで平謝り
入相や二胡の余韻と春の雨姫川ひすい
霊園に重機のアーム春の雨日吉とみ菜
遠煙るボール蹴る子ら春の雨平井千恵子
処置終へて病舍の窓に春の雨平井由里子
春雨の渋谷の傘は白ばかり平岡梅
春雨や武蔵の座禅組みし石平岡花泉
ふしだらな春雨の夜を泳ぎきる比良田トルコ石
足腰を鍛える余生春の雨平林晶子
春雨や僧の読経の良くとほり平林政子
行きてみな消ゆ春雨の交差点平本魚水
春雨の古希の眉ほの光りたる比良山
映写機のしづかな吐息春の雨広木登一
春雨や神は不在の懺悔室広瀬康
春雨や思い思いの靴の音廣田惣太郎
かんだたの糸や洽き春雨は弘友於泥
春雨や海藻に匂ふ首長竜弘中しかもり
彫り深き魚鼓の鱗と春雨と広ブロ&新蕎麦@摂田屋酵道
春雨や黄昏の街は昭和色琵琶京子
春雨のレーザー光は蘇芳色びんごおもて
初めての献血をして春の雨フージー
夜行バス揺れしかば醒め春の雨風慈音
もの言わぬ埴輪に語る春の雨FUFU
とっぷんと鯉跳ねました春の雨ふくじん
春雨や定位置に妣の猫車福田みやき
百均のポンチョと春の雨の中福良ちどり
新しき画布のたわみや春の雨袋小路綴乃
春雨や墓地のチラシのよく入り藤井かすみそう
頬に降る春雨涙と同じ味藤井眞おん
春雨や巻き爪を切る納棺師藤色葉菜
春雨のかくしごとかくしごとかくしごと藤岡美波
春の雨ダナエの髪の黄金色ふじこ
春雨をがぶがぶ川の腹太し藤咲大地
信州の春雨はまだアルデンテ藤雪陽
ヘッドホンして春雨と打ち解けず藤原素粒子
春雨に浮かぶ夜のコンビニへ風友
ガムランは静かに終わり春の雨冬島直(直あらため)
春雨や手水舍の龍活き活きと古庄萬里
春雨やみんな詩人として生まれ碧西里
山寺や春雨は線香消さぬペトロア
春雨や象の絡める鼻と鼻へな☆けん
春雨や何もしないといふ予定べびぽん
春雨や櫟林のやはらかし茫々
春雨や左小指に竹刀胼胝北欧小町
春雨や別れの歌は白花色黒子
春雨や玩具切符へパンチ穴星田羽沖
大観の画集春雨の美容室星月彩也華
春雨に切れ字打つたるごとき鐘星野はいかい
五年目の閉店セール春の雨星乃ぽっち
緑青の螺髪やはらか春の雨ほしの有紀
春雨や犀を吊るした絹の糸甫舟
春雨やぶっとい欅の吊るし切り星善之
春雨やシングルソファは恋の檻細川鮪目
秒針の音こそばゆし春の雨細野めろん
春雨や教科書くくる紐足らんΦポップアップ
春雨に遠き日のごと舌を出す堀隼人
春雨に捨てられし地図海青し梵庸子
鼻唄が君に移って春の雨前田麺
春雨や明けの人工哺育室槇英里
春雨や厩舎に眠る馬の息まこ@いつき組広ブロ俳句部
春雨の僕のうちがわ蒼くつて正岡丹ん
春雨やエコー検査の浅き息増山銀桜
軽々と母は泣くふり春の雨松井くろ
春雨や帽子で済ますお買い物松井酔呆
明日より君は吾の部下春の雨まつたいら西
野良猫の膨らみし腹春の雨松田慶一
春雨の仲見世音声翻訳機松本裕子
ラジオからスウィート・ソウル春の雨までのこうじありこと
清らかな星座が泣いて春の雨真冬峰
冷たくない春雨の中冷たい手まほろば菊池
春雨や高炉の眠り深くしてまめばと
春の雨友のおりづる行儀よくまやみこ恭
春雨やページの肩の染み淡し瑪麗
春雨やお相撲さんの早歩きまりい@木ノ芽
春の雨やうやく母となりにけり慢鱚
春雨のどこも尖らぬひかり方まんぷく
春雨や閉鎖の札の製材所みい
春雨やシースルーエレベーター天へ三重野とりとり
春雨や午後の机の列のズレ帝菜
病院の春雨傘を繕へり水須ぽっぽ
ど演歌の流るる路地や春の雨三田忠彦
春雨の満ちし盥に嘴来巳智みちる
春雨やインジゴ匂ふ染物屋満生あをね
埋まらないヨコの16春の雨みづちみわ
春雨や粒餡炊けてゆく匂ひみつれしづく
春雨や軒下の東北訛りミテイナリコ
春雨やバンドネオンのけぶる街水上ルイボス茶
春雨やクラス名簿が酒のあて港のパン屋
春雨を裂くや主砲の決勝打みのり尼子
春雨や子の留年の通知ありみほめろ@いつき組広ブロ俳句部
春の雨隣のシーツ眩しさう宮井そら
まつすぐな春雨につつまれてゐる宮坂暢介
春雨の道端ペプシ缶に花みやざき白水
本郷は春雨追いコンの果てて宮武濱女
春雨や滲む荷宛は母の筆雅乃珠晃
自販機の『今だけ百円』春の雨宮部里美
切株に明るきあした春の雨みやま千樹
獣医より春雨ふくむ供花届くみわ吉
春雨や裏鉄の音木戸を開けムーンさだこ
春雨のビルはシャンパンめく光麦のパパ
春雨を斜に捉ふ車夫の脚椋本望生
春雨の滲みがおくすり手帳へぽ無弦奏
春雨の檻に守られポストまで睦月くらげ
水底のワニが見ている春の雨村瀬っち
春雨や包丁止めて眺め入る村のあんず
春雨のリズムって不確かなものむらのたんぽぽ
彩子さんと会う春雨の街を行き目黒智子
音楽の万葉仮名やはるのあめメレンゲたこ焼き
春雨の眠い香り猫を包む木曜日
春雨や象は相棒亡くしたばかり望月ゆう
春雨や土偶の母乳とめどなき元野おぺら
春雨のはらこはらこと角膜へ本村なつみ
春雨や下駄と草履のおとそろふ本山喜喜
春雨や煙ぶる麒麟の首長しmomo
たましひを薄墨色に春雨は百瀬一兎
寝付くまで棚田をほぐす春の雨百瀬はな
春雨や野鳥の森に丸太椅子桃園ユキチ
こうづるの眼険しき春の雨ももたもも
春雨や三煎あとの茶葉太り森佳月
エコバッグ忘れた春雨はピアニシモ森日美香
潦つま弾くように春の雨森毬子
助手席の君の耳噛み春の雨森佳三
桂馬指す如く春雨降りはじむもりさわ
春雨や入院三日目の陣痛もりたきみ
売家と吊るされし春雨の隣家森田祥子
春雨やあと二話見たら最終話森太郎
春雨や宅配便は上海から森の水車
春雨やいい音探り木魚打つ八重葉
生温き笛春雨の体育館山羊座の千賀子
膝の水抜きに行く日の春の雨安井コスモス
春雨や走らぬペンを軽く噛み安田伝助
身は解かれ春雨の夜の長湯かな柳咲八
いい式だった春雨の缶コーヒー簗瀬玲子
春雨に町の本屋の香は強む八幡風花
春雨や柳川下り七曲り山内彩月
春雨のおとんとこいくおれもいく山尾政弘
春雨に笹はたはたと岬かな山河穂香
春雨やこの裏道は行き止まり山川たゆ
春雨の街に壁画のゴジラ濡れ山口一青
春雨の音鳥の声君遠し山口香子
春の雨存続決まる地域バス山口たまみ
住職の雄黄の袈裟春の雨やまさきゆみ
覚めやらぬ野辺濃く濃くと春の雨山田季聴
春雨や城跡に張る保護ロープやまだ童子
春雨のサイレンに道ゆづりをり山田どゞこ
大王の名を持つ杉や春の雨山野麓
春雨のあがるともなき色なりき山薔薇
春雨や底の剥がれたスニーカー山彦一水
春雨の粘度よ窓の明るさよ山本先生
春雨にもう濡れてよし学生服山本たか祥
水面の輪と輪に輪と輪の春雨よ山本裕之
春雨の吸い込まれゆく太平洋山吉白米
ひびの入る瓶にいささか春の雨八笑乎
春雨や野良のしつぽの重たさう唯果
春雨に電柱ほどは従わず優木ごまヲ
春雨を不貞寝の耳の拾ひけり柚木みゆき
春雨や吉野の山をとほくして遊羽女
指切りや針千本も春雨も有野安津
松原のにほひ沈まる春の雨宥光
道端のマスクへ春の雨さらさら雪音
遠ざかる列車寡黙な春の雨柚子こしょう
コンサートの行列蛇行春の雨ゆすらご
こんぺいとう前歯にかりり春の雨宙美
春雨や貝塚息吹の刺す形湯屋ゆうや
春雨や羅漢の瞼欠けをるに宵猫
春雨よ上から下へ綴る詩よ八日きりん
春雨や四年並びし乗車位置陽花天
春雨や軋むトラムの鐘の音陽光樹
春雨の満ちて濃色なる逮夜横縞
春雨や父の手にした鉈を研ぐ横田信一
円墳と思しき丘や春の雨横山雑煮
春雨を監視カメラは映せない吉川拓真
春雨や陶土菊練り中の朝吉武茂る
石垣のむかう山城春の雨吉田わさび
絵師彫師摺師春雨憂世生く吉野川
春雨やドラムの張りの強度上げ楽和音
春雨や哲学書読む修行僧リーガル海苔助
錆びつきし鍵穴春雨の実家梨音
春雨や亡母の遺した李の木リコピン
春雨や千年蔵の付喪神柳絮
春雨やミラーボールのくすむカフエ烈稚詠
春雨や原発村のエリアB和光
面会は十分春雨を帰る渡辺香野
春雨や家裁の前へベビーカー渡辺桃蓮
春雨や変はる渋谷に迷ひをり渡辺陽子
春雨や波風立てぬ退職日渡邉わかな
無塩バター焦がし春雨に返歌亘航希
春雨やエンディングノートは真白笑笑うさぎ
春雨よ降れ3タコの就活へサイコロピエロ
刺すごとく防潮堤に春の雨下町古娘
春雨や部活の水は蛇口から広島立葵
春雨やレンジでチンするだけの飯ひなたのくまさん
春雨や私の中に四分音符あすか風涼子
春雨やこの場は夫が先に行く天晴鈍ぞ孤
春雨やおとなの塗り絵教室へ渥美こぶこ
春雨や三十路過ぎても実家暮らしあまどかに
春雨やなめらかにまわる秒針阿波オードリー
更新の写真イマイチ春の雨飯田淳子
春雨や老人ホームの味噌汁の香飯沼深生
春雨や妻と肉じゃが待つ我が家粋庵仁空
春雨や黙して行交ふ人工衛星いくみっ句
春雨にしんみり響く演歌かな池愛子
春雨や鶏は焼かれて部位の名に池田悦子
春雨やライブの熱気窓白く伊縫音々
春雨や原点回帰決めた朝今井みどり
春雨にフラット付くる木々のこゑ伊予素数
春雨や温い粒にも色のあり伊予の大督寺
春雨やミシンかたかた園バッグ彩人色
春の雨まつげにのせるおもさかな岩清水彩香
春雨や天地の果ての径として内本惠美子
春雨や二次会抜けた帰路二人梅里和代
春雨や曇よりいでし富士の山円美々
春雨やサッカーシューズ輝りひかる沢瀉みやこ
春雨の上がれば大地膨らみて亀山逸子
春雨を呑んで山々膨れけり加裕子
教室のふたりの簾めく春の雨加良太知
春雨や行間探す我の声刈屋まさを
春の雨借りた本に落書きす狩谷わぐう
春雨や富士たゆたゆと垂れ下がり城内幸江
春雨や「横櫛の女」に逢いにゆく幸織奈
見つからぬパズルのピース春の雨来冬邦子
更に濃くつややかに春雨の庭古都鈴
春雨の止まぬ静寂や光則寺小嶋芦舟
春雨やとっくりの空く猪の目窓坂上一秀
もし生まれ変はるとしたら春の雨紗千子
春雨やたまの日比谷を洒落歩きさち今宵
春雨や離婚した友しない我さっち
春雨のサ行の布の降りる朝さむしん
人となるために指紋を消す春雨三水低オサム
体内の時計狂いて春雨来る紫瑛
やさしさは時にはさびし春の雨塩原香子
どうやつてそんなやさしく春の雨たけろー
春雨には綺麗な涙と詩が似合うショートケーキ
春雨や電話の声にも紗がかかり森牧亭遊好
京志士濡行可春雨夜酔軒
春雨や流るる青はムスカリのアオ涼風亜湖
春雨やペダルゆっくり二人乗り静江
僕の脳に侵食してく春雨たーとるQ
鐘の音に揺るる春雨山の寺太平楽太郎
春雨や手をひらひらと物言わぬ子平たか子
春雨や電動静か車椅子高橋基人
春雨や飛車を切り捨て詰め将棋たかゆき
春雨や矯正中の歯のきしみ黄昏文鎮@いつき組広ブロ俳句部
春雨やタイムカプセル二十年糺ノ森柊
軒垂れるリズムは緩し春の雨たていし隆松
春雨やサティの調べの白昼夢谷本真理子
春雨や見沼代親水公園種田山頭火マーク2
春雨のやみ間に運ぶダンボール田村みまる
春雨や傘の内へと目が誘う田村モトエ
春雨や脇道ばかり示すナビ田村利平
寄り添えば春雨傘の帳かな千早安寿(旧安寿)
傘もちて春雨に濡れて行く気分辻ホナ
春雨や知恵の輪解けぬ一人夜の辻本四季鳥
春雨や若葉マークか入れてやろツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
春雨の枝先に触れ許しあうてつねこ
その噂たれに聞いたか春の雨どいつ薔芭
春の雨無人の村の花盗む土井ヨドー
心地よく聞きゐる読経春の雨戸口のふつこ
春雨やためらいはらうえもんかけ鳥元優子
春雨や猫の窺う台所内藤清瑶
春雨や濡れて絹糸の遺産群中島圭子
春雨のひねもすごっこ遊びかな沼沢さとみ
父と子の喃語の遊び春の雨ねぎみそ
針落とす刹那のノイズ春の雨乃立喰咽
ささくれの大地修めし春の雨ののさわ麗ら
春雨にアルバムめくり母若し則本久江
春雨やハチ公像は背筋伸び白山一花
春雨の宵彼の分も荷解き華樹
春雨に選挙ポスター泣いている花弘
春雨の帰路よ異動辞令胸に原島ちび助
春雨や医師から電話異状あり榛名
春雨や閨窓ごしの画角かなひぐちいちおう(一応)
春雨や婿と一緒に芝目読む藤永桂月
春の雨二時からシャワー浴びて待つ船橋こまこ
「やむまでね」座りなおす春雨の夜古川しあん
春雨は地球の軸をずらしおり星影りこ
春雨や猫の目光り街を出るまこと(羽生誠)
阿と吽の互い見遣らず春の雨町田勢
春雨や潤う喉で読む答辞澪那本気子
春雨が戸板を奏づマレットに三日月なな子
いつか見た製造過程の春雨や三粂ニ乙
春雨の駅に母娘でうどんかな岬ぷるうと
春雨や池に水輪のはしやぎをり三崎扁舟
春雨や微か混じる人魚の声三隅涙
春雨や枕押し当て虫歯痛美月舞桜
春の雨まさりけるあを引き寄せぬ紫小寿々
春雨や将軍様の忘れ物村先ときの介
春雨やきみの寝息を聞く夜明け村野はちこ
春雨や懐かしき友訪ねゆく室依子
春雨や学生服の後始末毛利尚人
春雨や三線響く水牛車桃衣ゆらら
口髭に白いもの増え春の雨モリコリゴリ
春雨や母の甘さの炒り卵森中ことり
春雨や昭和歌謡の口を出づ山川腎茶
春雨は鋏で梳いて落ちてくるやまな未
春雨よウクライナは豊穣の地陽子
母亡くて義母を看てゐる春の雨羊似妃
春雨にニーグリップ解く峠かなヨーダ鍵
処女にして受胎告知や春の雨横浜J子
プリキュアの録画忘れて春の雨吉行直人
春雨や解けぬ数独やり直すルージュ
春雨や角々の棘融かし行くわかなけん
剪定枝焼く煙に春雨の碧しわたなべすずしろ
太秦に「カット」の響き春の雨渡邉竹庵
春雨に御端折りからの緋の襦袢あ・うん
聞く人のおらぬため息春の雨あぁ三輪白米
靴紐の右ばかり解け春の雨Early Bird
春雨や猫は窓辺で何見てるあいあい亭みけ子
春雨をパフュームにして身にまとい間岳夫
しどけなき寝顔に触れぬ春の雨青井季節
春雨の地球の涙降り止まず蒼月子
春雨やいかで過ごすか病の友は大竹八重子
春雨をものともせずに園庭へあおのめ
春雨や銀座青山六本木蒼鳩薫
春雨や銀灰の静寂なりて茜咲
春雨は鳩よけネットすり抜けてあかり
春雨や隣家の夫の怒声にも空地ヶ有
春雨は体に毒と抱きすくめ空き家ままごと
春雨や手袋探しポケットに天空海まりん
春雨や甘くぬるき母乳に似てアクエリアスの水
駅ナカに響くピアノや春の雨あさいふみよ
さようならのつぶやき春雨に溶け朝雲列
春雨や南座前の橋の上淺野紫桜
手のひらの春雨眼をつむり涙す朝の竹の子
春雨に打たるるままに負け投手あさのとびら
マスク取る花粉流せし春雨に朝日雫
春雨隠すきみの別れのしずく亜紗舞那
墓石を伝う春雨笑う親明日良い天気
春雨や父の眼うるむつの隠しあすなろの幸
春雨にちょっと手を触れ濡れて行く阿曽遊有
春雨や咥え煙草の火は消えぬ愛宕平九郎
春雨やノイズ溶けゆくジャズの店新子熊耳
春雨の聲に包まれ微睡みてアツシ
お泊りの朝は春雨ひとつ傘渥美謝蕗牛
春雨や狭庭の草木色気増し跡部榮喜
春雨に低く連める雀かな姉あね猫
母急ぐ春雨の中式開始天川滴翠
春雨に出発の人送りおり数多未完
春雨に少し溜め息紅差してあまねくみぞれ
春雨やうす桃色の並木道アマリリスと夢
春雨や泥を蹴り上げ穴馬が網野れいこ
軒先の母子のしりとり春の雨雨乙女
春雨にストーブを炊く母九十雨降りお月さん
冬越えの難き吾を溶せぬるき春雨文子
地下より見上ぐ躍ねやわらかに春雨よあややaya
春雨や胸の鼓動を内に聴きあらあらかしこ
春雨じゃないか銃弾じゃないでしょあらかわすすむ
春雨や花の代わりのボーリングあらたひなた
春雨や今日はいつもと違ふ道荒星笑石
春雨や湧き立つ緑の界開きあらら
窓に寄り春の雨見るリハビリ期蛙里
前髪を上げて拾はむ春の雨ありいかな
春雨や花屋の奥の黄花たち有本としを
春雨は見えず聞こえず通り過ぎ飯田むつみ
春雨が見えぬ二人も肩濡らし粋田化石
春雨や優しい君の眼が怖いいくたドロップ
春雨や駆け来る君の長き髪郁松松ちゃん
春雨やウォーキングの影ふたつ池田炭
園帰りぎゅっとつなぐ手の春の雨いけだひさえ
春雨や森は静かに養生す池田ゆきの
春雨や餞別の傘打つバス停池ノ村路
春雨やさすが四番だ度肝抜く池谷勝利
春雨やしばしを病の妻の許石井卓次郎
鉢植えの追肥を溶かす春の雨石垣
生き物はうごめく春雨の仕業石垣葉星
春雨の音を探しに窓際へ石川明
春雨の降りくる匂い手のひらに石川初子
春雨や犬の鼻に花びら一枚石崎京子
春雨や小町のやうな憂へあり石塚碧葉
傘貸して生む親しさや春の雨石原花野
春雨に行方の見えぬ道標石間毅史
たおやかに娘は春雨の髪ぬぐう石本美津
春雨と涙ひとすじウエディングベール石山知子
春雨や舞台演芸水の泡泉恵風
春雨や鳥の餌場の溜水和泉攷
春雨や優しき人の声のごといずみ節子
春雨や紅茶の香り煙る窓伊泉不洋
シャンシャンの待ち受け滲む春の雨遺跡納期
軒下の鉢に届かぬ春雨よ市川卯月
春雨に濡れてもあほ毛なほ立ちぬゐてふ@QLD句会
春雨や君の肩にも雨の粒市川卯月
バスの背に手を振る母に春の雨いつかある日
春の雨セイロンティーの水の色石川巴里
水色の淡き紅茶に春の雨樹魔瑠
春雨や東北の地に祈りあり一歩千金
春雨やショパン流るる昼下がり伊藤薫
春の雨やさしくたたくリトマス紙伊藤映雪
春雨やひみつうちあけ明ける夜伊藤れいこ
春雨や地面スレスレ子の画板伊藤小熊猫
春雨や紅のペディキュア下駄は黒伊ナイトあさか
春雨や頑張つたねと母の声稲垣良一
嫁入りか今日の春雨七色で伊那寛太
春雨や目にしみいる京の苔井上幸子
朝まだき静かに写経春の雨今井淑子
春雨や矢切の渡し傘忘るいまいやすのり
春雨が優しく古木撫で下ろす居間喜多瑠
つれづれに妻と演奏春の雨今西知巳
春雨やシティポップの歌詞聞こゆ今乃武椪
春雨や骨折れ傘も粋のうち今林快波
ほたほたと跡を残して春雨は今村ひとみ
琵琶湖より京へ春雨水路閣妹のりこ
春雨のなか納骨の始まりぬ色葉二穂
春雨や耳を澄ませば選挙カー岩清水星斗
春雨や行き交う傘の有りと無し岩本稔
春雨も濡れればやはり熱が出たvivi
洗濯機は六回鳴る春雨の都会ウィステリア
春雨やゆっくり歩く秋田犬うさぎと
春雨や移動初日の路線バスうちだまみ
毛の表面や春雨を舐める猫宇野翔月
春雨や指サックほろりキー叩く梅原もずく
春雨や君の別れを聞く間うめやえのきだけ
いきのね死す獣に春の雨吽田のう
春雨の当たらぬやうに子を抱きぬ詠頃
春雨のなまめく頬にかかりたる江口朔太郎
春雨や去年の草ぐさ其処此処にS・葉子
春雨に角の本屋で待ち合わせ越後縮緬
春雨にきらきら光る君の髪榎本奈
春雨やハートの出ない七並べ海老海老
春雨や路面電車の加速音朶美子
春雨や母を思いて琴を弾くえみばば
筆談で交わす近況春雨やえりいも
春雨のミュート画面に降るがごと遠藤玲奈
春雨を吸ひてあしたの開花かな大久保加州
春雨に色なくす街小走りに大越総
春雨も号泣の如しウクライナ大島一声
通学の友の傘追ふ春の雨大嶋宏治
春雨に流してもらう花粉症大島薄
春雨や裾をからげて謝恩会大谷如水
天井の染みはヘビ型春の雨大塚恵美子
ランデブー濡れて行こうよ春の雨大野喬
春雨や誰のせいにもしないから大野美波
春雨や退職する人させる人大原妃
背中越し春雨煙る飛行場大原雪
春雨の夜濡れ歩き警官危惧岡由紀阿希
春雨や窓にターナー描き出す岡崎蹊
春雨や針目揃える細き指岡田瑛琳
春雨や主待ちわぶ遊具かな岡田恵美子
春雨にけむるビル群コピーの音岡田ぴか
あたらしい朝の春雨背をのばすおがたみか
散歩道つなぐ手に染む春雨の岡塚敬芳
春雨やまったり眠る父と猫岡部つよっち
春雨やお二階の子の駆ける音オカメインコ
春雨や傘に音なし浅野川岡本
春雨や濡れて笑顔の待ち合わせ丘るみこ
春雨の波紋よ失せし我が恋よ小川葉月
小鼓の音も潤ふ春の雨奥寺窈子
春雨に濡れた髪結い解く嫁小栗福祥
春雨に目顔で珈琲をねだる人おさだ澄恵
春雨や茶葉ゆるゆるとひらきをり小沢史
春雨や石庭の朝寂としてお品まり
春雨やしづしづ上る煉瓦坂小島やよひ
春雨や未来へ育つ未知の種尾田みのる子
春雨や告別式の翌日の落句言
春雨や待ち受け画面を龍へ変えおでめ
春雨に想う小さな恋心お寺なでしこ
春雨に手振る別れの曖昧さ音のあ子
春雨や鳩の歩みはモノレールおなかぺこぺこ丸
春雨の人混み歩く心濡れて小野ぼけろうじん
ピアノの音子犬のワルツと春の雨尾華ちえ蔵
母看取る春雨の窓音の無く小山田智
秒針に降る春雨やまた訃報海瀬安紀子
抱擁に無音の呟き春雨よ械冬弱虫
胎内に居るごとし春雨の優海堂一花
春雨のY字路暮れのたちばなし灰頭徨鴉
寂しさを言い訳にせず春の雨案山子@いつき組広ブロ俳句部
春雨が火照りを冷ます彼の肩笠江茂子
春雨や君の部屋には傘がない風花美絵
病窓に滋養の如き春の雨梶浦和子
一面を淡き画とせん春の雨梶浦正子
春雨のベールは淡く遊園地鹿嶌純子
春雨や猫じやれあきぬちり紙玉華胥醒子
春雨やワインの木の根地に深く柏原淑子
春の雨弾くトタンの子守唄花純
春雨や親のおもいに焼かれる子風早杏
春雨を見ながら飲むや薄にごり片岡龍一
思ひ出は肩のあたりに春の雨片桐洋
春雨の匂ひも包みフランスパン加田紗智
春雨や二日休んで畑に出で勝瀬啓衛門
春雨や甘き吐息の橋の上桂葉子
鳥の声にわかに止みぬ春雨や加藤暖
春雨に濡れし蕾の秘めた香を加藤雄三
春雨や濡れ髪香る夜の橋かなえの
春雨やさっきの愚痴は聞き流し金田由香
春雨や赤茶けてゐるトタン屋根かぬまっこ
春雨や傘差す人のいない街金子あや女
春雨や天を見上げて立てる襟金子敏明
窓際はほのかに明るい春の雨兼宗遥
春雨やジョギングコース靴のあとカバ先生
春雨や退職の日の師の笑顔花星壱和
春雨は頬を伝いて地に還る神谷朋代
春雨浸むよ砂丘さして流れず神谷米子
春雨ややをら流るる琴の音亀井汀風
春雨や傘さす人の極まばら亀田?
春雨や待ってみようかあと5分かもめ
春雨やビニールハウスに傘の無く加山シンゴ
春の雨繋ぐその手にビニール傘カラハ
春雨に濡れても平気上着着て川口聡美
春雨や恋の走りのセーラー服川口水明
春雨や晩はベトナム料理店川端芙弥
春雨に焼き鮭と海苔卵飯川辺世界遺産の居候
好きなだけチーズ削られ春の雨川村湖雪
春雨やシネマの女優真似て立つ河村静葩
春雨の音なき音や恋の闇川村昌子
春雨じゃ濡れて行こうとその粋よ樺久美
春雨のやわきヴェールへ包まれに勘八
春雨や模試の結果はC判定看板のピン
春雨が倍速にする旬の色漢方十七錠
春雨やそぞろ歩きの京の町紀杏里
春雨や癇癪でぶち猫起くQey
春雨や眼鏡にしぶき五里霧中聞亭圭輔
春雨の薄墨に溶ける古井戸菊川智春
碌山の「女」も伸びやか春雨に木口まり子
春雨や婆も若返る美容室きさらぎ
こんなはずではなかったと春の雨岸本五月
抱きつきし黄色い帽子春雨の香岸本元世
春雨やテレビアンテナを撫でゆく北川颯
春雨や傘をささずに散歩道北の星
春雨や快晴連れて街の端綺野たえ
春雨や内示に曇る顔のあり木ぼこやしき
春雨よ卵は1人1パック木村かおり
塀越しの回覧板や春の雨木村隆夫
春雨やバイク騒音巻き上げる木村波平
落書きを消すや春雨の高架下Q&A
春雨のハチ公前に君待てりQさん
春雨に吾が身の穢土を洗ふかなきゅうもん@木の芽
春雨やつぎでぶーぶーはちだいめ紀友梨
老母には見えぬ風情の春雨よ銀髪作務衣
春雨に流したかった今や過去クウシンサイ
春雨やゆっくり行こう傘ささず草道久幸
春雨や生徒名簿の綴り解き鯨之
春雨に拾ひ来し猫今やボス葛谷猫日和
春雨や簾の向こう山けぶる楠田草堂
夜に見る星占い春雨彼方工藤雨読
春雨や大きにあける鯉の口工藤遊子
春雨やドリップせずにサイフォンでぐりぐら京子
春雨や悲し嬉しき心かなぐれちゃん
春雨やパーカーでゴミ捨てに行く黒瀬三保緑
春雨や夫婦喧嘩も和みけり桑原和博
常世へと思えし方に春の雨くんちんさま
春雨のひとひの嬉しランドセル家古谷硯翠
心地よしじょうろいらずの春の雨月昭
竹林の膨らんでいる春の雨健央介
春雨や再配達の引出物紫雲英
春雨を集めて醸す惚れ薬恋瀬川三緒
自転車のペダルの早し春の雨コウ
名物の甘酒飲むや春の雨恒産恒心
春雨を優しく退かすワイパーよ紅紫あやめ
春雨や城の石垣色変えり康寿
春雨やお昼寝あとの読み聞かせ幸内悦夫
定年の友春雨に背を伸ばし古烏さや
カタカタとミシン踏む音春雨やこきん
春雨や欄干目指し鯉の群れコケコッコー
外灯のスポットライト春の雨ココヨシ
春雨や流し尽くして前を向き越乃杏
春雨やふつくら空の色添えて小園夢子
春の雨三角耳の猫ちぐら小だいふく
上京の列車の窓に春の雨コウ
春雨や木々の枝先やはらかし虎堂吟雅
春雨にはるさめ思い空見上げ後藤田郁子
春雨や野辺咲く花の嬉しげに後藤方丈
春雨にカタコト揺れるランドセル小鳥乃鈴音
置きっぱの知育玩具や春の雨木花薫
春雨やランドセル用雨合羽小林共捺哉読
春雨や本読み進む終わりまで小林のりこ
春雨じゃ隠し切れない泪かな小林弥生
火葬場で春雨の中涙する小判淳
春雨や思ったよりも大粒でこひのむ
春雨や星占いに励まされ五葉松子
春雨や心寂しく熱き茶をコロンのママ
「春雨ぢゃ」セブンイレブンまで一里今藤明
ごご三時春雨と居る東口西條晶夫
旅立つ子振る手おぼろに春雨や西條恭子
春雨や京の町屋の犬矢来さいたま水夢
胸を張り春雨と歩く帰り道さいとうすすむ
二才の子カッパ楽しい春雨や齋藤鉄模写
春雨や今日はロビーで待ち合わせ齋藤方南
春雨や濡れた片袖初名刺宰夏海
春雨やヤムウンセンウマイウマイ酒井春棋
春雨や小犬ふところ雨宿り榮秋代
春雨や目閉づや勤め辞め去るは坂島回文
寄り添うて行く道けわし春の雨坂田雪華
春雨や耳をすまして庭の夜さかたちえこ
春雨や母の丸帯解きあぐね坂まきか
春雨や稽古の舞の幼き日坂本千代子
春雨や孫と散歩傘飛ばす咲美マキ
春雨や「閉店」の紙剥がれかけ咲まこ
春雨や明治を語る傘二本さくら亜紀女
春雨や祖父の残した煙草盆櫻井こむぎ
春雨の中そっと持つエコバッグ櫻井紫乃
春雨や今日入籍とライン来る櫻井弘子
春雨や六年前の逝去とは櫻井りこ
春雨に濡れた吾子を愛しめり桜華姫
春雨や田舎の子らは傘持たず桜姫5
春雨や門に入る子の手に一枚桜よし榮
春雨に引っ越し荷物しょぼくれるさざんか
春雨や起こせし土の黒々と砂舟
春雨の間に間に濡れて前を向く薩摩じったくい
軒先の雫のふとる春の雨佐藤恒治
大学をやめる言い訳春の雨佐藤志祐
飾窓うつ春雨とのぞく我佐藤綉綉
春雨に憂いが包む小町堂佐藤俊
庭濡らす春雨気づかず二重窓里海太郎
城見上げ泌みる春雨堀巡り佐藤佳子
春雨や紅薄く引きくちづけるサトサナ
春雨や期限の切れしパスポートさやじゅん
春雨や華やか切手選び貼るさわだ佳芳
春雨や庭仕事の手止めぬ父三角山子
春雨や両手に荷物小さな手斬九郎
春雨や病んだ心に染み渡り紫音
春雨のか細き糸が君に似てしかの光爺
野の花の白さ身にしむ春雨や四季彩
春雨や田舎そば屋の詫びの所作志きの香凛
春雨のつぼみ艶やかはれがましじきばのミヨシ
春雨に頃合い座りし外郎やじじちゃん
春雨や蕾が五つ付きました紫檀豆蔵
春雨や最後の授業老教師じつみのかた
春雨や二ポポ刑務所出づる日よ実本礼
保護犬の白髪まつ毛に春の雨篠雪
春雨に葬り去りたい過去もある柴桜子
春雨を浴びて路傍の草笑う芝G
春雨のささやきを避け店に居る字坊人造
日曜の遅き目覚めや春の雨しぼりはf22
すりガラス春雨の描く点と線島じい子
キミ待つ夜春雨に告ぐ不満かな縞子勾苑
春雨の水玉となる蜘蛛の巣よ嶋良二
春雨や包帯取れてショッピング井上哲志
春雨の痛み堪えて夜明けかな釋北城
掌の涙をぼかす春雨やジャスミン
傘持たず春雨降られ散歩するじゃむぱん泉
春雨や稜線の木々はやぼかし秀耕
びゐどろに待つ春雨や坂の窓柊ニ
春の雨ユーザーの家族連絡珠桜女絢未来
気怠きジャズ流る春雨の午後よじゅんこ
春雨や如雨露蹴落とす軒の猫じょいふるとしちゃん
春雨に唄う黄色の傘深く庄司しづく
泣いてるの春雨がかくしてくれた正念亭若知古
春雨や貨物列車に薄化粧白井佐登志
春雨やコロコロ踊る葉のしずく白石梓
春雨と一緒に来たと迷い猫白井百合子
春雨や喃語に返す母の笑み白猫のあくび
春雨の今日は引きこもりにかぎる信州のあっくん
一人啜る屋台ラーメン春の雨しんぷる
春雨に濡るる仔犬の痩せっぽち瑞陽庵
春雨の釜めし食らふ小田原よ杉浦あきけん
春雨や家まで濡れていく夕べ杉浦真子
春雨や乳飲む吾子の息遣い杉沢藍
春雨に軋むワイパー子はぐずる杉柳才
ジミヘンのギター途切れて春雨かな鈴木秋紫
サイン会渋谷迷いし春雨や鈴木もま
春雨や転勤までは後十日鈴野冬遊
春雨や靴に吸い寄るさくら色素敵な晃くん
春の雨生成り色せる街通り砂山恵子
春雨やしとど濡れゆく竹の径青児
羊水の温もりデジャブ春の雨せいしゅう
春雨の町柔らかくけむりけり勢田清
春雨や干した硯に黒き滴青峰桔梗丘
懐かしむ下校のメロディ春雨や星夢光風
雨樋を沁めやかに唾たう春雨よせきどうふふ
春雨を纏いて歩く散歩道関根洋子
犬の背に満遍なく浸む春の雨瀬戸ティーダ
春雨の健やかな母八十路の眼せのひろずみ
春雨や語らふ紳士戦中派そうま純香
春雨の文の開け方恋の数草夕感じ
春雨と鼻歌で部屋模様替えそしじみえこ
君思う滲む景色は春雨の園蜩
咲く花に化粧ほどこし春の雨蕎麦わさび
春雨の匂える傘を受け取りぬそまり
手水舎に小鳥が来たよ春の雨空
春雨やタワークレーンは伸びたまま孫太
春雨や母と小走り手のぬくみ駄詩
子の帰省待つ春雨の無人駅太閤検地郎
春雨や大地に眠る種起こし大ちはる
春雨にそぼつ赤錆のポストや高上ちやこ
春雨や畑の緑の栄養素たかこ姫
春雨の音に沈みし我が恋慕高瀬小唄
春雨が大地の色を七変化高橋紀代子
春雨や止んでも傘は差したまま高橋ひろみこ
春雨の明石海峡霞む橋高見正樹
春雨に写真の夫笑みており田上コウ
春雨や糠こねる母腕まくり竹内菊香
老犬の蓑毛しつとり春の雨たけぐち遊子
往く児らの声に窓開け春雨に多胡蘆秋
春雨のなかでスパークする門出たすく
春雨や「浪漫飛行」で送り出しただ地蔵
春雨の満ちる焦げ目を待つあいだ立川茜
春雨に濡るる緑葉陽が恋し橘春容
膝に猫春雨眺む窓越しの街立花かおる
思い出と流る春雨流せない橘路地
タッグ解消春雨で濡れた服龍??
春雨も小道具の内先斗町ダック
春雨を吸い込む土の匂いかな田鶴子
春の雨入院中の彼を待つ田中善美
制服に春雨かかりそっと拭くたなばたともこ
春の雨芭蕉の句碑に届きたりたなべ早梅
春雨を厭わず濡れてバスを待つ谷口あきこ
春雨に誘われつぼみふっくらと谷口美奈子
春雨や潮の余薫息吹き衝く田上智佳士
キヨスクの傘売り切れて春の雨田畑整
春の雨あり甲子園順延す鳥田政宗
春雨や慣れない部屋と段ボール玉木茉有
母の言う春雨の香を初感知タマゴもたっぷりハムサンド
子の温み時を止めたい春の雨ダメ夫
微睡みの土の香教ふ春雨よ樽熊だん
春雨や吾よりも若き推しの逝去ダンサーU-KI
春雨や花を潤す命みず単武
車椅子出足屈する春の雨知恵さん
春雨や不合格でも母の傘ちえちえ蔵
絶対音感狂わせるの春雨が智同美月
春雨やふつふつ煮える苺ジャム千葉睦女
春雨に酔ひ覚ましつつバスを待つ千葉羅点
春雨に傘取りもどる子汗だく司太郎
春雨や母を見送る二人傘塚本隆二
春雨の努力芽吹いてサクラサク月影未来
春雨や光あふるる国となる月城龍二
新品の傘さし遊山春の雨月見里ふく
ごめんねのメール出そうか春の雨辻瑛炎
春雨や雲の切れ間に畝作り辻栄春
雨なのにうきうきするの春の雨椿律
春雨や義父の旧車の小綺麗さ翼つばさ
春雨や家出の犬の帰り来る露草うづら
春の雨スマホ戯る長きこと鶴富士
春雨の湯上がり友と語り合うデイジーキャンディー
春雨やつかず離れず淡きこひ哲庵
葉に緑山に白刷く春の雨徹光よし季
沈黙のサッカーボール春雨の下手毬まりこ
後輩の結婚報告春の雨天雅
春雨の誘う大盛りざる中華天童光宏
すり減りし心に染みる春の雨てんとかめ
春雨や九回裏のツーアウト土井あくび
閉館の薄暮をふたり春の雨苳
春雨にジャズのレコードうとうとと東野律
春雨やホームの母はリハビリ中道見りつこ
春雨に干されしままの服ふわり藤留衣
春雨や離婚調停成立すとき坊
静かさは贅沢と知る春の雨独星
春雨や父眠る地へ歩きつつ杼けいこ
公園を無声映画化す春雨どてかぼちゃん
春雨や規則正しき猫の腹とば雪華
被災地へ十二年目の春の雨冨川友香理
春雨は何色母を押す朝の冨川きよこ
春雨や大伯母逝きて三回忌斗三木童
抜根す蕾膨らむ春の雨富田涯現
春雨や尽きることなきエピローグ登盛満
春雨や金鯉引き返す背鰭富山の露玉
春雨や服は次第に重くなりとよ
豪族の小さき墳墓に春の雨とんぼ
春雨の粒ひそやかに肩に背になかかよ
春雨は一日同じ見て勤むなか鹿の子
慣れぬ靴春雨の道に弾む音中川佐千子
やさしさの春雨降りて傘濡らし中澤孝雄
春雨に佇む小鳥何思う中嶋和久
教室の裸婦の眼に春の雨中島葉月
公園の寂しき遊具春の雨長嶋佐渡
春雨や相合傘は外の手で中島走吟
春雨の傘なき乙女の影を追う中島隆
春雨や傘もささずに墓参り中嶋緑庵
ひとしずく頬にふれるは春雨か長洲雪華
傘一つ閉ぢむ逢瀬の春の雨中原柊ニ
ハンコ押すのも飽きてこし春の雨中平保志
春雨の後は密なる庭となる中村こゆき
眼に溜めて一緒にながす春の雨なかむら凧人
春雨や歩行器の母の嬉し顔渚
春雨や耳元母のぐりとぐら凪ゆみこ
春雨の後押しスターバックスへ夏風かをる
春雨よ「安心しな」と姉の云い尚月
春雨やぽっと開くライターの灯夏空なみ
春雨や借りし和傘に旅館の名夏目坦
春雨に濡れて腐葉土湯気の立つ七国独楽男
春雨やてるてる坊主五人組菜々の花畑
春雨の野球の聖地ナイスラン成瀬ぽんぽこ
縁側の猫が寄り添う春雨よ成瀬桃うさぎ
春雨の奥に愛しき君の笑みなわむすびみき
春雨のしなやかな線風も止む南全星びぼ
春雨に木々の先っぽしゃんとして新美妙子
春雨や一日一個の断捨離をにいやのる
春雨や球児の運を左右してにえ茉莉花
春雨に錆びてゆくアスファルトみち西尾至雲
春雨や祖父の遺品の捨てがたさ西尾照常
春の雨ボロアパートのドアへ鍵西村棗
春雨に渇いた街の匂い立つ二和田躬江
春雨や埃絡まる靴揃えねがみともみ
春雨の水輪いくつも円舞めく野口雅也
春の雨ですね会釈の停留所野点さわ
春雨の日に子や育つ妻の内野中泰風
春雨や土の匂いの帰り道のの?楽部
二胡の声匂いものせて春雨の野原一草
春雨や涙の足りぬドライアイ野原蛍草
春雨や甘き匂いに別れ癒ゆ白雨
春雨の線路就職列車行く波止浜てる
階段へ漏る滴春雨の駅橋本有太津
春雨や二の腕重し子の寝息長谷島弘安
春雨や洗い流せよ泣き黒子畑美穂
春の雨こぼるる涙似合ひさう蜂鳥子
春雨やポット苗まだ軒の下葉月けゐ
これでまた畑の甕にも春の雨パッキンマン
春雨や伝えそびれた「ありがとう」初野文子
立ちどまり傘ひろげるや春の雨花咲めだ香
春雨の街の灯あはく風柔(にこ)し英凡水
戦争にNO突き付ける春の雨羽馬愚朗
春雨やどれケーキでも焼こうか浜けい
濡れそぼつ畝に滲み入る春の雨林田リコ
傘の花咲いて潤す春の雨原厚子
幼な子は走り回るよ春の雨原善枝
春雨や職業欄の「無職」かな原野乃衣
春雨やものみなにじむ水彩画ぱらん
春雨やセピア色した恋に逢ふ春爺
春雨やじわりじわりと模様替え春日藤花
春雨や絹糸あんでる軒の下はるる
春雨や石畳濡る神楽坂ピアノおじさん
春雨の泥濘避けて列をなすひーたん@いつき組広ブロ俳句部
春雨や滲むネオンの7丁目ひーちゃんw
春雨や待受の弥陀鎮座して東乃政之助
春雨の民家に歓声三塁打東の山
春雨や里静まりて風柔ら東山たかこ
洗車する我れと大地に春雨よ光散人
選挙戦短所攻め抜き春の雨光源爺
春雨を乗せて緩歩の老犬の背よ匹田ひとみ
春雨に濡れて風邪ひいても独りひと粒の種
窓の外春雨つたい筆を置くひめりんご
やわらかき猫の寝息や春の雨日向守順子
春雨や傘の雫の生温く平松一
春の雨まるでガラスのやうであり平本文
春雨やクマムシひとりのびをする昼寝
春雨の音に合わせて調律す廣重
春雨や公園で飲む缶ビールひろ夢
春雨の夕闇に映えアスファルト風泉
週末の旅は春雨次第なり深町明
春の雨佇むバンクシーの少女深蒸し茶
春雨に取り残されて肌襦袢福川敏機
春雨にあなたの横顔濡れ愛し福田もふもふたん
春雨や誕生餅をつい支え福ネコ
春雨やゆらりゆらりと弥次郎兵衛福原あさひ
紅滲むちびた下駄あり春の雨河豚ふく子
枝渡る蜘蛛の糸切る春雨や福弓
春雨や提灯燈りて吾ひとり藤丘ひな子
春雨にものぐるほしく傘で泣く藤川雅子
春雨や時が薬となる離婚藤田ゆきまち
春雨や花の名ひとつ知る窓辺藤原涼
春雨で客来ず香るグアテマラ伏見レッサーレッサー
春雨やわざわざカフェで本を読む藤原訓子
春雨や産寧坂に下駄の音布施無門
春雨にテイッシュを配る娘かな布野一学
春雨にブルージーンズ色めきぬ冬のおこじょ
春雨や憂き事ひとつ思ひ出す冬野とも
春雨も降り方選ぶあの地にはぶるーふぉっくす
校庭に春雨が染む日曜日古川雄一
フィルターに撥水スプレー春の雨古澤久良
春雨や子らの声満つキッザニア古谷芳明
春雨や小枝咥えし鳩が二羽ふわり子
空を見て春雨涙混ぜ合わすヘッドホン
終活と捨てし荷物に春雨や鳳凰美蓮
畑仕事音なく春雨背中ぬらし望月
手のひらにソッと載せたい春の雨ほうすい
春雨や象の脇腹ハートの絵ほこ
喜怒哀楽を包みて春の雨は星雅綺羅璃
春雨や0・1を切る視力星詩乃すぴか
春雨やゲーム三昧子と孫と細江隆一
交差点犬に傘さす春の雨細川小春
小走りの新しい靴春の雨ほたる純子
春雨や傘も差さずに朝帰り歩楽坂
逢引の日はいつも雨、春の雨堀卓
絶望の隣りに希望春の雨堀籠美雪
春雨のせいと終電見送れり堀邦翔
春雨や大輪の夢なぜ咲かぬ本郷一平
春雨や古屋の漏りを教えます本郷てい
春雨や浅蘇芳浮かぶ並木道ぽんぽこぽんこ
春雨やよしなしごとを書き散らし凡々
雨上がる春雨傘でひと遊び本間美知子
春雨を手繰りて姫の織る天地凡狸子
春雨や門出の子らの高き声前田冬水
春雨や図書館からの帰り道茉叶
春の雨海鮮丼を大盛りで雅蔵
春雨に打たれ笑顔の壮行会眞さ野
脳回路ふやけ春雨似ていない?町屋の日々輝
小田川の歌碑を濡らして春の雨松岡重子
軒を打つ音も優しき春の雨松岡玲子
春雨や産声響き雀躍し松尾祇敲
春雨やほのぼのかおり八十踏かな松尾美郷
春雨に静謐の時明日は晴れ松尾老圃
誰も来ぬ家に聴きおり春の雨松下弘子
春雨や強く肩抱き帰さぬと松平武史
春雨やただたんたんと坂のぼる松高網代
春雨は地上の星の余韻かな抹茶子
郵便の今日も届かず春の雨まつとしきかわ
春雨や庭の雑草いきいきと松野蘭
春雨のあがれば犬の遊歩道松原隆雄
傘もらい春雨待つや孫二歳松本俊彦
春雨やサンダル履きでコンビニへ松本牧子
春雨や猫に恋する引きこもりまどけい
連弾に相手の呼吸春の雨真宮マミ
春雨や笠をかぶりて露天風呂真理庵
春雨の背中にぴたり二人乗りまるにの子
風呂掃除伸びた前髪外は春雨丸山
春雨や産声を待つ控室丸山隆子
春雨やゆっくり買い物アーケード三浦ゆりこ
春雨や窓辺に我を見ゆる猫澪つくし
参道の玉砂利清む春の雨三上栞
春雨やドリップコーヒー薫る午後美乎梛
読み返す「アンの青春」春の雨三茶F
ハンカチに落ちる春雨軒はそこ三島瀬波
春雨をくしゃみ一つで吹き飛ばす水川曜
春雨や非幾何模様の石畳水越千里
春雨やワイパーの音合いの手にMR.KIKYO
春雨や庭石染めし薄黒く水谷未佳
春雨で庭の緑ちから増し水乃江辰
爪先のちょこちょこ歩む春雨よ道端ハコベ
春雨やビニールハウス全開すみちむらまりな
春雨に心織りなす明日の夢光月野うさぎ
静かなる春雨大地呼び起こしミツの会
春雨や犬吃逆をしつつ寝る光峯霏々
春雨や衣擦れの音もどかしい満る
春雨や渋谷を人の渉りあふ南方日午
古希半ば止む気配なく春の雨皆川徳翁
春雨や一葉一葉に滲みわたる湊かずゆき
春雨やご当地アイドル染めてゆく南風草々
春雨や朝刊届くバイク音みなみはな
春雨の迷子の靴にGPS美村羽奏
息吹呼ぶ天の水遣り春の雨見屋桜花
春雨や三味の幽き花柳街みやかわけい子
アルカイックスマイル浮かべ春の雨宮武桜子
春雨や野良の親子の行く先よ宮原みかん
新幹線探せぬ富士に春の雨美山つぐみ
春雨や乗り換えホーム静まりて宮村寿摩子
PTAの会長になれ春の雨宮本モンヌ
春雨の蕾ぽつぽつ放たれる妙
春雨やSwanLakeのBlu-rayミラベル
吾は静止春雨はスローモーションみらんだぶぅ
春雨や坪庭の緑濃ゆくして三輪白米
制服の袖振り合ひて春の雨夢雨似夜
春雨にほほをあずけてあゆむ道霧想衿
春雨やゲームセットを告げる笛むねあかどり
「濡れてくよ」春雨肩に息子発つ村上の百合女
春雨や時計の音を聴いてゐる村松登音
見返りの舞妓の裾や春の雨暝想華
春雨に逢瀬重ねる傘二つ恵のママ
春雨やコートと帽子で濡れてみる目黒千代惠
ひもすがらポテチとコーラ春の雨めでかや
春の雨心の種子も芽吹きたりめらり順子
すぐ乾くこれは春雨泣いてない茂木りん
週末の春雨受くる深夜バスモコ
メール文字化けて春雨止まなくて望月朔
春雨にぼんやり君は誰を恋う樅山楓
くせつ毛の波うつままに春の雨桃香
春雨の音心地よい旅支度もり葵
こだまからひかりへ春雨の車窓森海まのわ
強がりを君の背で知る春の雨杜乃しずか
春雨の上にはスペースデブリかな杜まお実
春雨よそれは恋だと言ってくれもりやま博士
春雨やキジバト夫婦軒下に諸岡萌黄
Yシャツの袖春雨の逡巡もろ智行
春雨や駿河の国の焼津辺の焼津昌彦庵
春雨やさしこむ朝日もやわらかき八木実
敗戦の垂れるこうべに春の雨薬膳容子
青墨の滲みどこまで春の雨野州てんまり
春雨の街をスマホで撮りにゆく痩女
春雨や引越し先は晴マーク柳井るい
春雨やフードで凌ぐ旅の夜柳川耀一郎
春雨やいざスタートへ競馬場やのかよこ
春雨の一滴が呑む小虫かな山口絢子
春雨の中は空洞なにゆゑに山口雀昭
春雨や一人娘の嫁ぐ朝山崎かよ
春雨や花も人もちりちり寂し山崎鈴子
春雨や細き手傘を太き手に山育ち
ヒーターの設定温度弱春雨よ山田一予
本殿を裹む瑞垣春の雨山田啓子
春雨や杖を預けて繋いだ手山田はち
春雨や用無き通話できる友山田蚯蚓
街灯やにわか春雨濡れて行く山田文妙
春雨や屋上庭園むせぶ蒼大和杜
春雨や妊む野良犬佇ずみぬ山村楓
春雨に色めきたつは庭の木々山本康
春雨やカヌレが焼けるまでの時ユ綺
春雨やボンボヤージュと君送り雪ノ下青観
春雨の合間に本の返却へ湯湯婆
春雨やドルチェで弾いて散らさずに夢見月
万物の命はかなし春の雨緩木あんず
春雨の部屋で来期の予定立てゆるランナー
春雨に夜遊び猫が「ドア開けて」夜香
春雨や隣の男はよく喋る横山ひろこ
春雨や猫の鳴く声いずこから吉岡幸一
春雨や平和の願い託す人よしぎわへい
春雨や猫の寝息のリズム良き好子
春雨やハミングで行く通学路吉田蝸牛
畑土が黒く香りて春雨やよしだばあば
青春や春雨の道はしゃぐ声吉藤愛里子
春雨や城址の池の波紋満つ四葉の苦労婆
春雨や軒から軒へ二寧坂余田酒梨
をんな湯の暖簾くぐりて春の雨よみ、ちとせ
窓の外春雨煙るおやつ時楽笑
深呼吸吸って春雨捕まえる楽花生
宴果てし春雨の街老夫婦ららら句らら
春雨や見送る人の遠ざかるらりっく
春雨じゃ益荒男ゆるりスクランブルらん丸
はるさめや這ひ子の尻の大き揺れ理佳おさらぎ
また来るよ春雨の朝待ってるね龍崎秀治
春雨の小鳥のワルツ羽の音龍泉灯
春雨や高野の木々の微炭酸流流
胸元に吾の涙を春の雨良俗倭人
春雨に喃語の交じるオルゴールルーミイ
デイケアの花柄杖に春の雨礼子
友の愚痴包みてかすむ春の雨麗詩
春雨や旅立ちゆく背に涙黎明
春雨が告げる恋の答え出すレオ
吾のゐぬチャットよ窓の春雨よ蓮花麻耶
春雨やころころと咲きたい蕾煉獄佐保子
春雨や空から破線の落つるかな連雀
春雨や濡れて終えない立ち話蓮風
偏屈に年とらせてよ春の雨朗子
春雨や花束抱へ終列車ろまねす子
春雨や静かに濡るる汀かな若林雛げし
いちにちの癒しに春の雨を聴くわきのっぽ
春雨に突如身震い野良犬は海神瑠珂
色硝子のカフェ労いの春雨やわたなべいびぃ
春雨や漕ぐ脚重く空明かし和の光子
春の雨電車に傘のひとり旅童地蔵
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
●俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう※同一アドレスからの投句は、同一人物と見なしております。
●俳句の正しい表記とは?
- 嬉しいな 優しい春の 雨だからギザギザ仮面
- 春雨が サイクリングの じゃまをする柳崇月
「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
●兼題とは
- 学生の通学帰宅傘もなし浅井清治
- カブトムシやっぱり虫の王様だ運子漏蔵
- 雨打たれ散るを耐えぬく桜かなくちさん
- つばくらめ山里の川低く飛ぶそはらの太郎
- 五月雨よ次の駅まで歩こうか中嶋京子
- 春霙サッカー場の汗の湯気松浦宣子
- こもり酒むつのこみつめはるを待つらむじい
- 富士山が花粉と黄砂で薄化粧おくだ
本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「春雨」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。
●前回の兼題
- 今日もまた新たな戦前落つばき坐花酔月
- 片肺の吹くハモニカや散り椿新花水木
- 対向の救急車垣根に椿山川真誠
- 椿から遊びはじまるお城跡山辺道児
- 裏木戸に光満ちたる椿かな渡邉花
投句〆切に間に合わなかったのか。「椿」は前回の兼題でした。
●入力ミス・文字化け
- ?々と降る春雨に里匂い影夢者
入力ミス、誤字脱字はよくあります。送信ボタンを押す前の、最後の確認を習慣にしましょう。文字化けは不可抗力に近いけど、文字化けしそうな字を予測できるかも。
●季重なり
- 春雨に濡れる青葉と新しい靴青橘花
- 春の雨葬式終えてまだ寒し青空舞華
- 強い春雨千鳥ヶ淵花筏揺れ聰子
- 春雨や洗われし庭の白梅の香佐藤ひみつ
- 春雨や花びら渡り流れ去り大康
- 春雨じゃ濡れて行こふ村芝居よぶこどり
- 水つぼみ桜きらきら春の雨予邦
- 春雨や濡れた小径に蛙の声渡邊謙太
一句に複数の季語が入るのが「季重なり」。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「春雨」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●ちょっと微妙?
- 予備校へ入学手続き春の雨深谷英丸
- 春雨や窓から眺る桜色ぼくのはね
- 春の雨温かい日の花粉症りなりな
予備校とはいえ「入学」だよなあ。「桜色」とはいえ、窓から眺めているのは桜なのかなあ……。気候ではなく雨が「温かい」という意味なのかなあ?
●春雨が比喩に
- 春雨がしみゆくような父の愛桐野灯子
こちらは、「父の愛」の比喩として、「春雨がしみゆく」というフレーズが使われていますね。季語を比喩に使うと、季語の鮮度が落ちるのです。
●これはむしろ若葉の句
- 春雨のごとき水浴び若葉勃つ豐田雄二郎
「春雨のごとき」となっていますので、むしろ「若葉」の句と考えるべきでしょう。
●読みに迷った句
- 春雨の円柱あまた外あはひ帝釈鴫
「外あはひ」の解釈迷いました。もしや「淡ひ」の誤記?
- 春雨やうさぎ街の死角に立つ鈴木パンダ
「うさぎ街」なのか?「うさぎ(が)街の」と読ませたいのか?
- 降り止まず春雨すするダイニング椿姫
降りやまない春雨と、食べる方の春雨をかけた!?
- 狛兔春雨に濡れ夫婦傘三木崇弘
上五、なんと読むのだろう。もしや「こまうさぎ」?
お待たせしました! 3月の兼題「春雨」の結果発表でございます。今月も夏井先生からの「今月のアドバイス」は必見です。そしてたくさんのご応募ありがとうございました。風景が鮮明に思い浮かんでくるもの。自然や街の音が聴こえてくるもの。春の匂いが漂ってくるもの。みなさんの俳句に対する熱い想いを感じることができました。5月の兼題「栗の花」もふるってご応募ください。(編集部より)