辛淑玉の韓流エンタメ沼

<毎月第1・3火曜更新>「韓流ドラマ」にはまったく興味がなかった辛淑玉さんが、ある日突然ハマった「韓流沼」。隔週でおすすめドラマ1本とその見どころをディープにミーハーに解説します。韓国の芸能・歴史情報、小ネタも満載!!

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よくおごってくれる綺麗なお姉さん
・ボーイフレンド

『綺麗なお姉さん』と『ボーイフレンド』

 "年の差"純愛ラブストーリーを満喫したいと思うなら、ソン・イェジンの『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』(以下『綺麗なお姉さん』)と、ソン・ヘギョの『ボーフレンド』(いずれも2018年)の二つがお勧めだ。

『綺麗なお姉さん』の主人公ジナ(ソン・イェジン)は、会社ではセクハラパワハラが横行する空間で耐え、気が付くと恋人(親公認)にも浮気されているという、ため息の出る日々の中、米国から帰国した親友の弟ジュニ(チョン・ヘイン)と、どんどん親しくなっていった。

 しかし、家柄や肩書を重んじるジナの母親にとって、両親のいないジュニ姉弟は、同情こそすれ結婚相手としては許せない存在だった。ジュニはジナの弟の親友でもあり、長い間家族のような付き合いをしてきた間柄なのに、いざ結婚となると「家」の利害がむき出しの差別となって現れたのだ。

 再度米国で働くことを選んだジュニは、一緒に行って静かに二人で暮らそうと誘うが、ジナは地元にとどまった。数年後、親も納得する新しい恋人ができたジナ。そこに、ジナの弟の結婚式に参加するためジュニが一時帰国し、二人は式場で再会する。この後の二人が何を選択するかは、ぜひドラマで見ていただきたい。

イラスト/西村オコ

 年下男子との純愛もそうだが、この作品の見どころは、婚約者の浮気や職場でのセクハラパワハラという逆境の中、揺れ動きながらも裁判に立ち向かい、そして勝訴したにもかかわらず職場では降格という仕打ちを受ける、女性の社会的地位の低さを描いたところだろう。それでも自分を信じて、家族からも職場からも逃げなかったジナの姿には、見終わって勇気が湧いてくる。

 ソン・イェジンは『愛の不時着』で日本でも人気が沸騰したが、主役でありながら相手役の役者としての「良さ」を自然に引き立たせることのできる稀有な役者の一人だ。

 恋人役のチョン・ヘインの、甘く切なく、いかにも年下男子という可愛らしさも必見。前年に出演した『刑務所のルールブック』では元陸軍大尉で部下を殺害した(とされる)受刑者を演じたのだが、このときのゾッとする凄みのある演技とのギャップには魅了される。

 さて、ソン・ヘギョとパク・ボゴム『ボーイフレンド』は、まさに現代のおとぎ話。見る人を虜にする美しいソン・ヘギョと、最も注目される若手の一人で、ミルクボーイとも呼ばれる、甘ったるく、すねると可愛いいパク・ボゴムである。ヒットしないわけがない。

 物語は、最初キューバで偶然知り合った二人が、次にはホテルの代表(スヒョン:ソン・ヘギョ)と新入社員(ジニョク:パク・ボゴム)として、入社式の日に再会する。大統領候補者の娘として生まれ、財閥の息子との政略結婚を強いられ、愛ある関係を諦めていた女性と、果物屋の長男で、アルバイトで何年もかけて貯めたお金で卒業旅行をした青年。そんな二人が惹かれあい、「友達以上恋人未満」の関係へと進み、そして、さまざまな嫌がらせや困難を解決していく。が、愛を深める二人にとっての最大の障害は、意外にもジニョクの母だった。スヒョンとは別れて欲しいと言う母に、「この広い世界で自分が愛する女性はただ二人、僕のお母さんと彼女だ」と言い切る息子。

 『綺麗なお姉さん』での、親を捨てられない娘ジナと同じように、母を捨てられない、決して捨てない息子ジニョクの姿は、韓国社会に多く見られる伝統的な親子関係なのだろう。 よく、日本人男性と結婚した韓国人女性が「(日本人男性は)情がない」と口にするのは、日韓では家族の間の関わりかたやプライベート空間への介入の度合いに差があるからだ。 この傾向は、儒教だけでは説明がつかない。

 おそらく、長い植民地支配に朝鮮戦争、軍事独裁政権下での生活といったように、いつ難民になるかもしれない不安定な国家体制の下では、家族こそが命をつなぐ最後のセーフティネットだったからではないだろうか。ともすればマザコンのように思えるジニョクの言葉も、個を許さない「家族」の結束の結果だと想像すると、その息苦しいほどの切なさも理解できるだろう。

『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』予告編

『ボーイフレンド』予告編

視聴情報

よくおごってくれる綺麗なお姉さん

全国のレンタルビデオ店でレンタル中のほか、以下の動画配信サービスで視聴できます。
Amazonプライムビデオ/Netflix/dTV/Hulu/U-NEXT/ABEMA/Paravi


ボーイフレンド

発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
©STUDIO DRAGON CORPORATION

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※情報は2021年10月時点のものです。

辛淑玉

しん・すご●博報堂特別宣伝班を経て1985年、企業内研修の会社を起業。職能別研修を請け負う。著書『怒りの方法(岩波新書)』『差別と日本人(角川ワンテーマ)』など多数。いまは、日・韓・在日の100年史の執筆準備中。
隠れARMY(※)。k-popでは、クロスオーバーグループ「フォレステラ」に夢中。マンガ大好き。※k-popグループBTSファンの総称

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