コータリさんの要介護5な日常

<毎月第2・4火曜更新>2011年、突然のくも膜下出血により要介護5となった神足裕司さん(コータリさん)と、妻の明子さんが交互に綴る「要介護5」の日常。介護する側、される側、双方の視点から介護生活を語ります。

連載第12回「車椅子生活10年で思うこと」

あらゆるものを試して介護保険での「車椅子のレンタル」を選択している。

神足裕司(夫・介護される側)

憧れの電動車椅子WHILL(ウィル)

 車椅子に乗るようになってはや10年すぎた。

ボクが今一番欲しい車椅子は「遊べる車椅子」だ。そして「かっこいい車椅子」でなければならない。それが第一条件。
 前に(※連載第3回「車椅子の理想と現実」)そう書いたと思うが、今も一番欲しいのはそんな車椅子だ。
 どこに行くのも、遊ぶ時だって一緒な「身体の分身」なわけだから、濡れても、悪路でもずんずん進める車椅子が欲しいと思っている。
 そんな車椅子をオーダーで作りたいと、本心はそう思っている。

 でも、それに踏み切れない数々の事情。事情というか、現実の狭間で、揺れ動く。

 上記の条件と反比例しているかもしれない、と思うけれど、これまた譲れない条件として「お尻が痛くならないこと」同じように「乗っていて楽なこと」それに尽きる。

 これまでに乗った車椅子も数知れず。その中でも電動車椅子のWHILL(ウィル)は初号機の取材に行ってから憧れの存在で「もしかしたら乗れるんじゃないか」と何回も新しい機種が出るたびにお願いして乗らせてもらっている。

 ボクみたいに視野狭窄(しやきょうさく)の後遺症があって、まっすぐ走れない問題があったりする、自走できないユーザー向きでないので、憧れていても我が家にやってくることはない。
 でもね、羽田空港の搭乗口にあるWHILLを見ていると、入り口まで連れていってくれて、そこで降りるとWHILLが勝手に元の場所に帰っていく。
 近いうちにきっと自動運転の乗り物となって我が家にやってくると思うので、「その時はボクにも乗れる」そう思ってそう遠くない近い将来を楽しみにしている。

 今は結局介護保険で2台の車椅子を借りている。それだって何十台試しただろう。
 拘縮(こうしゅく)しかかった左足は放っておけばフットレストから落ちてしまうので足を縛りつけるような紐のような補助具を使ったり。
 クッションだってどれだけ使ってみたか。こちらはオーダーメイドもしてみた。ずるずる前に落ちてきてしまうのを防止するように設計してみたり。厚みを変えてみたり。
 フットレストにリクライニングシステムがあるようなものにしたり。

電動アシストユニット
ペルモビール株式会社「スマートドライブ」を取り付けた車椅子
(写真・本人提供)

  ありとあらゆるものを試してきた。

 乗っているものより、実際はもうちょっと体の状態が悪い方用の車椅子の方がしっくりくるのかもしれないとは思う。けれど、そういう車椅子はもっと頑丈で重いし、大きくて、狭い我が家の中では不便極まりない。
 今使っているのは、お互いの(機能の同志)妥協点の車椅子だ。

軽さを重視したタイプの車椅子にのる神足さん
(写真・本人提供)

「自分の車椅子」を作るということ

 車椅子乗りの友人たちは、ほとんどの人が「自分の車椅子」に乗っている。
「なんで作らないの?」そう聞かれたこともあった。

 そう、本当は一番は「自分の車椅子」を作りたいと思っている。それが本心だ。

 けれど、その車椅子乗りの知人のほとんどが「自分で車椅子を動かすことのできる人」ってことも事実。
 介助してもらってオーダーメイド車椅子に乗っている人は、逆にもっともっとボクなんかより重症で、体にピタッと合わせて作るタイプ。
 ケアマネさんにも「神足さんみたいな方はレンタルしていた方がいいと思う」そう言われてなんとなくそうしてきた。

 いや、真剣に調べてこなかったのかも知れない。作りたいと思ってメーカーにも行った。本当に作りたいのだから。

「かっこいいなあ」と思う車椅子は皆ブレーキがついていなかったり(介助の人が使うブレーキ)、足置きがボクの足には合わなかったり。そういう細かいオーダーもできて「かっこいい車椅子」を作りたい。

 車椅子の条件を色々と挙げたけれど、「かっこいい」が譲れないため、なかなか踏ん切りがつかない。
 介助用オーダーメイド車椅子のかっこいいの、なかなか見つからないのだ。自分が思い描く車椅子が未だ見つからず、迷走している。

モルテンの車椅子「Wheeliy(ウィーリィ)」に乗る神足さん
(写真・本人提供)

ヤマハ発動機の電動車椅子
「JWアクティブ PLUS+ Pタイプ」に乗る神足さん
(写真・本人提供)

電動アシスト車椅子は便利な車椅子なはずなのに、我が家には難しい。

神足明子(妻・介護する側)

介護する側視点で選ぶ車椅子とは

 この連載でも以前にも車椅子について書いた事がある。(※連載第3回「車椅子の理想と現実」
 裕司にとって定期的に巡ってくる気になる課題であるらしい。
 結局「裕司は今満足いく車椅子に乗っていないってことなんだなあ」と、介護する側としては反省する。

 裕司が乗りたい車椅子は、文章にすると「乗っていて楽であること、かっこいいこと」これは通常の最低条件。さらにいえば「遊ぶ時も一緒に動ける全天候型であったりアクティブな車椅子、できればオーダーで作ってみたいこと」が次にくる。

展示会で色々な車椅子を試しているところ
(写真・本人提供)

 

そんなことはあり得ないのだけど、介護する側の気持ちだけを考えて選ぶとすれば「軽いこと、小回りが効くこと、電動などの力のアシストがあったら」そう思う。大体、軽いことと電動アシストは真逆な話なのでどちらかを選ぶことになる。

 我が家の場合、取材などで長時間、広範囲車椅子で移動することも多いのでアシストがついていた方が(私が)楽なんじゃないかと色々試す。
 けれど結局、段差が登りずらかったり重い。重いので車への積み下ろしが大変で長続きしない。

 坂道などは、絶対アシストがあった方が楽で、年々歳とともに非力になっていく私にとって、本当にありがたい。だけど、我が家が使えるアシスト付き車椅子は、たいてい歩道から横断歩道に移るときにあるちょっと大きい段差や、手動ならなんとかしてしまう悪路だったりに弱い印象がある。

 急な坂道なんかにはアシストがあると本当ありがたいのだけれど、介護する側のちょっとした使いずらさが結局優ってしまって使用を断念してしまう。
 便利な車椅子なはずなのに、難しい。

 そして、そのアシスト車椅子を使えない原因の一つである「重い」を解消するため軽い車椅子を選ぶ。

電動アシスト付き車椅子に乗っているところ
(写真・本人提供)

個々にピッタリくる車椅子はなかなかない

 軽い車椅子を選ぶ最低条件としては「軽い、車輪は大きいこと、フットレストが取り外しができること」。車輪が大きいと段差の乗り越えや、悪路には強いから。あと、フットレストが外せるっていうのは割と我が家にとって重要。

 例えば四人がけの正方形の真ん中に支柱が一本のテーブルとかに車椅子で座るとしたら?出版社の打ち合わせのテーブルに車椅子で着くとしたら真っ直ぐに車椅子で着席することはできない。
 足をフットレストから下ろす(それでもフットレストの奥行が邪魔をして支柱にぶつかってしまい、テーブルの下にまっすぐ入れない事が多々あります)、またはフットレストを外すなどの作業が必要になるから。

 それを条件に今外で乗るための車椅子は選んでいるけれど、どうやら素材がツルツルで長時間座るのには不向きらしい。
 滑り止めや、クッションや小物で修正することになる。あっちを使っても、こっちを使っても、その人にピッタリくるものはなかなかないってことなのかもしれない。また今週も車椅子の見直しに新しいものを持って業者さんがきてくれる。

 体の不自由さは、100人いれば100通り。全てがピッタリくる車椅子なんてないのかもしれない。そうなるとオリジナルを作るのがいいのかしら?結局そこに行き着いてしまう。

 体も具合も刻々と変わっていくことも事実ですが、今の状態の体に合わせて作るべきなのかなあ?と考える。

神足裕司

こうたり・ゆうじ●1957年広島県生まれ。大学時代からライター活動を始め、グルメレポート漫画『恨ミシュラン』(西原理恵子さんとの共著)がベストセラーに。クモ膜下出血から復帰後の著書に、『コータリン&サイバラの介護の絵本(文藝春秋)』など。

神足明子

こうたり・あきこ●1959年東京都生まれ。編集者として勤務していた出版社で神足さんと出会い、85年に結婚。1男1女をもうける。

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