沖昌之(おきまさゆき)
1978年、兵庫県生まれ。
家電の営業マン、アパレル販売員を経て、2015年に猫写真家として独立。 現在、『AERA』、『猫びより』で連載中。写真集に『ぶさにゃん』(新潮社)、『必死すぎるネコ』(辰巳出版)。3冊目の写真集『残念すぎるネコ』(大和書房)、俳人・倉阪鬼一郎氏とのコラボ作『俳句ねこ』(集英社)が大好評発売中。
暗い穴を覗き込む姿、我を忘れて獲物を追う姿、ケンカする姿……ネコたちの必死な姿を捉えた写真集『必死すぎるネコ』をはじめ、見過ごしがちだけど愛らしい姿を捉えた写真でネコ好きの心をときめかせている沖昌之さん。
でも意外なことに、長らくカメラは嫌いだったそうです。
「前職はアパレル会社だったんですけど、そこの業務で写真を撮らざるを得ない状況になってしまって。センスがないって怒られてばっかりでしたけど、そのうち写真が面白くなってきました」
そんなとき、街で偶然出会った一匹のネコが沖さんの人生を変えることになります。「ちょっとぶちゃいくで、自由で、かわいくて。すぐ虜になって写真を撮りはじめたんです」
それが2013年暮れのこと。2015年4月に会社を辞めて「猫写真家」として生きる覚悟を決めると、その覚悟が伝わったかのようにSNSで発信した写真が編集者の目にとまり、12月に写真集『ぶさにゃん』を刊行。2017年に刊行した『必死すぎるネコ』はさらに大きな話題となりました。
おもしろくも愛らしいのネコたちの姿を捉えた沖さんの写真で印象的なのは、ネコと人との信頼関係がにじみ出ていること。どうすれば沖さんのような写真が撮れるのでしょうか?
「って簡単に言うけど大変ですよ(笑)。基本はまずネコに理解してもらうこと。ぼくだって最初は逃げられまくりです。時間をかけて何度も通えばネコが気を許してくれるようになります。 仲良くなっても撮りたがってはダメ。ネコって意識されることに敏感だから、まずはじっくり観察したり一緒に遊んだりします。撮影しているより、撫でたりじゃれたりしてる時間のほうが長いと思います。
あとは地域の人々にも理解してもらうということですかね。昼間から道端に寝転がってカメラを構えるなんて不審者以外の何ものでもない(笑)。ネコが住む地域の人たちとコミュニケーションをとって、そこに馴染めるようにしています。ネコも『この人と打ち解けてるなら大丈夫』と思ってくれるみたいです」
今回は審査員の立場の沖さんですが、写真コンテストには期待感が大きいそうです。 「たくさんのネコたちの写真をたくさんの人々に見てもらえるって、とても嬉しいことじゃないですか! 傑作選じゃないけれど、いつかカタログハウスさんとコンテストの写真展をやりたいですね。もっと言えば、コンテストをきっかけに猫写真家としてデビューする人が出てきたら最高です。たぶん、すっごいジェラシー抱くと思いますけど(笑)」