夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
7月の審査結果発表
兼題「夕立」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
ワイパーは淋しきまぶた大夕立
古賀
-
夏井いつき先生より
季語「夕立」に取り合わせるモノとして「ワイパー」はいかにもありがちな素材ですが、中七「淋しきまぶた」という詩語によってこんなふうに結球している事実に感嘆いたしました。
言われてみると、ワイパーが規則的に動くさまは、まるで私たちの瞼の動き。強い夕立によって、フロントガラスの水の膜を完全に拭いきれないでギクシャク動く様子もありありと想像されます。
「淋しき」は「まぶた」に接続しますが、一句の眼目となる一語として、「ワイパー」にも「大夕立」にも、ハンドルを握っているであろう作者自身の心理にも及んでくるような味わいがあります。
「夕立」×「ワイパー」という一種の類想を共感の土台として新鮮な詩を発生させる、お手本のような作品です。
コインランドリーみるみる孤島めく夕立
渋谷晶
硝子張りの「コインランドリー」で、洗濯・乾燥が終わるのを待っているのです。「みるみる」という時間経過、「孤島めく」という比喩が、「夕立」という季語との出会いを、映像として見事に切り取りました。
夕立や砂丘はこんな日も砂丘
あみま
砂色の「砂丘」に「夕立」が押し寄せます。「夕立や」という詠嘆から「砂丘」を浮かび上がらせる効果もさることながら、「こんな日も砂丘」という把握に詩的真実があります。「は」「も」の助詞の効果も狙いどおりです。
三度目の試技を待つ間の夕立かな
うめやえのきだけ
「三度目の試技」は、走り高跳びか、棒高跳か。陸上競技場の「夕立」です。「~を待つ間」によって読者は、この時間を共有し、眼前の「夕立」を鮮やかに追体験します。「かな」の詠嘆を我がものとして受けとめるのです。
乗車駅夕立下車駅大夕立
満月
ちょっとした機知の句ですが、漢字を並べた表記も含めて作者の意図が見事に成功しました。「乗車駅」からの車窓、そして「下車駅」のホームの様子等、書いてない部分を読者は想像し、大いに共感するに違いありません。
夕立見てゐる野球部と文芸部
木染湧水
いきなりの「夕立」です。「野球部」にとっては迷惑な練習中断ですが、「文芸部」にとっては詩的感興を引き起こす季語でもあるのです。「見てゐる」心情や視線、かわされる会話の違い等も想像できて楽しい作品です。
夕立や袈裟の坊主と待つ都バス足立智美
夕立を対角線に帰宅せり藍創千悠子
土留めする重機斜めに夕立過ぐあたなごっち
十頭の牛かたまるや大夕立池之端モルト
川魚を買ひて夕立にあひにけり石塚碧葉
夕立のそれて銀座の時計塔石塚彩楓
夕立のおはりうすむらさきに魚影兎森へる
切るやうな夕立ここで溺れたのうた歌妙
新宿を叩きのめして夕立過ぐ大岩摩利
スプリントレース驟雨は鬣ぞ 岡一夏
空はまだ気づいていない夕立かな城内幸江
夕立と言うよりこれは世の終わり木村信哉
夕立や軒借り申す法隆寺清水容子
夕立のモータープールの底にゐるジン・ケンジ
十号車まだ夕立のなかにをり夏野夏湖
夕立の境目にある鬼の家広島じょーかーず
夕立が止めようとしてくる家出陽花天
船上にあら汁滾る夕立来るRUSTY=HISOKA
夕立や友のまちより音立ててアーモンドよーせい
夕立や君の踝ざらつきぬEarlyBird
夕立や屋台屋台に手際あり相生三楽
夕立や待てるはバスか箱舟か青井えのこ
夕立の来そうで来ない日曜日青井季節
夕立よぼくは後悔していない青居舞
夕立や甲斐へ信濃へ足速に蒼空蒼子
夕立くる夢とおんなじ色をして青田奈央
夕立や明かりつけずにそば啜る青砥展典
夕立や不法投棄の冷蔵庫青星ふみる
夕立の一粒目今地を叩く赤鰯
夕立の宿りに揺るる竿の先赤尾てるぐ
わたくしをゆふだちさけてくれてゐる赤尾双葉
夕立やどの雨粒も張り切りて赤富士マニア
夕立去り古書の甘き香立ちにけり赤目作
斜度45大江戸に夕立来る阿川凛
夕立夕立あと三分だったのに愛柑いつき組note俳句部
夕立の槍ヶ岳ほら夕立晴明惟久里
控へ目な胎動と聴く夕立かな空地ヶ有
夕立や伝言板に見慣れた字秋月あさひ
夕立にうなずきあっている双子浅井郁
夕立や別れるはずの今日だった浅井翠
夕立止んでも理解できぬ演説朝雲列
夕立に走る漢のをんな傘あさぬま雅王
ビルマ塔まで夕立をかきわけてあさのとびら
夕立や道着の子ども走らせり朝日雫
柔らかな水の香まとい来し夕立亜紗舞那
夕立や仮病の窓の向こう側芦幸
夕立に流れの変はる野球かなあじさい卓
夕立やヒエログリフを音読す葦屋蛙城
夕立や天地引き寄す雨の束飛鳥井薫
息子来て夕立も来て薬味かな明日ぱらこ
夕立や顔上げてゆく走者たち愛宕平九郎
夕立やとぼとぼとぼと山頭火あたしは斜楽
夕立が洗う現場のチョーク跡アツシ
レーダーは嘘つきずっと夕立が付き纏うat花結い
なつかしくにほふ夕立さとのめし我孫子もふもふ
夕立や吾れのほか来ぬモップ掛け阿部八富利
時差ぼけを叱られるごと大夕立あまぐり
夕立や駆け込み許さるる駅舎甘茶トーシロー
うんそうだ新鮮な雨夕立は雨森茂喜
夕立の来るか頭の中を蛇綾竹あんどれ
逆立ちのままに夕立を見ておりぬ綾竹ろびん
夕立や祝儀袋へ旧紙幣あらい
夕立うるさくてココナッツ割れない蟻馬次朗
葬儀屋は香のにほひや夕立中有村自懐
大夕立黒き高炉を丸洗ひ有本としを
「夕立のあとの匂いが好き」「そうかも」在在空空
夕立浴び遊具の錆の腥しアンサトウ
夕立から手紙をかばう配達員飯田淳子
夕立やポストに入れた回覧板飯塚煮込
来るぞ来るぞ龍神のやうな夕立飯沼深生
夕立来るらしアイツ学校辞めたらし飯村祐知子
夕立の止んで他人に戻りけり家守らびすけ
遠くより夕立来たり選挙行く池田悦子
大夕立たちまち消ゆる島ひとつ池田桐人
夕立や猫と分け合ふなら甘しイサク
大夕立イスラエル大使館前石垣エリザ
夕立や太腿だけを濡らす傘石川穴空
夕立をビーチサンダルで踏んでいく石田眞希子
夕立が壁の外から耳元へ石原しょう
窓口に冷たくされて大夕立石原由女
駄菓子屋は夕立去るを待つところ泉晶子
夕立を見てゐる十二階の猫和泉攷
夕立や渡り廊下に母見つけ和泉園実
夕立に洗はれし音路地のピアノ泉諒
軒下に見知らぬ男大夕立磯野昭仁
かつたるく均すドル箱夕立晴石上あまね
窓を打つ夕立ギプス固まりぬ板柿せっか
富士やこの夕立に街匂いけりいたまき芯
足元に千の王冠大夕立一井かおり
夕立や傘さす駆けだす騒ぎだす市川りす
夕立のみづの匂いの改札口一久恵
夕立や「孤」のつく言葉を堪能す一秋子
ウォーミングアップ終わった夕立来た一慎
夕立に射抜かれて半旗濡れ一杯狸
鉄棒は血の味のして夕立かな伊藤亜美子
塊のゆふだち異類婚姻譚伊藤映雪
沖の船降り消すごとき夕立かな伊藤順女
夕立の匂ひ野良猫姿消す伊藤なお
水平に夕立を切りぬ新幹線伊藤柚良
枝先の明日に触るる夕立かないとへん製作所
夕立の雪駄も下駄も仏罰や伊ナイトあさか
手を繋ぎ夕立の残る明るさへ井中ひよこ号
黄帽の下校夕立へ手刀居並小
夕立来る織機の音の通学路井上れんげ・いつき組広ブロ俳句部
夕立に笑ひ転げる象の尻井納蒼求
夕立の喰らふやティラノサウルスのやうな母猪子石ニンニン
夕立来竜は吐息を吐きながらいまい沙緻子
夕立や全力全開の見事いまいみどり
夕立やまさかまさかの万馬券今乃武椪
夕立の痛みトタン屋根が赤い伊予吟会宵嵐
日常をちょっと引き締め夕立去る伊代ちゃんの娘2
夕立がごっそり時を巻き戻すいわさちかこ
夕立や源氏の君の相関図岩清水彩香
夕立や久々実家に電話入れ上野眞理
行列は歪に膨れ夕立雲上原淳子
足繁く真直に綾に夕立来る上原まり
夕立や揉めるアボカドの選び方うただねこ
夕立明け白帽の阪神園芸宇田の月兎
シースルーエレベーターゆだちの源へすんと行く内田ゆの
短調の夕立響くマンホール空木眠兎
夕立や龍鱗(りょうりん)隠す水柱靫草子
夕立や七時間目は補習授業卯の花京
夕立の天ぷら海老の尾に切れ目海野青
銃爪を引けば戦争夕立来梅朶こいぬ
夕立や抗がん剤は真っ赤っか梅田三五
夕立や瓦礫の街を眺めをり浦城亮祐
夕立激しイカ焼き匂ふア-ケ-ド麗し
夕立や厚本ののど白きままHN
夕立晴ちょっと湿気った歌舞伎揚げ江川月丸
夕立やNOをYESと書き直す江口朔太郎
潔きほどの夕立迫りたり蝦夷やなぎ
雲呑を包んでいれば夕立過ぐ絵十
夕立さえくれば引きとめられるのにえりべり
地の匂ひ剥き出し夕立やってくるANGEL
夕立や向かふの空は晴れてゐし円美々
大夕立徒然に読む候補作近江菫花
ずる休み夕立の窓を友の声おおい芙南
アスファルト打つ夕立やスルメ噛む大久保加州
川遊び帰りはいつも夕立と大阪駿馬
夕立や隣の町に力尽く大澤眞
夕立の来るらし風の匂ひ濃し大塚恵美子
夕立やお迎へに来し人は亡し大津美
煙幕となりて海より夕立来るおおにしまこと
夕立晴あんぱんよりもクリームパン大野美波
夕立やスワンボートの無彩色 大矢香津
夕立や勝手に開くヨガマット大和田美信
大夕立いきものの声消しにけり岡井稀音
読点のごとき一滴より夕立可笑式
夕立やラジオに雑音入りだす岡田いっかん
あの雲の端からここは夕立かな岡田ひろ子
道折れて夕立の中に消えにけり岡田雅喜
夕立のこゑは早口言葉めく男鹿中熊兎
ゆふだちのはじまり鳩のはぜせりは岡根今日HEY
夕立やひいばあちゃんの鬼話岡村恵子
夕立や倉敷川の舟さびしオカメインコ
夕立や稜線は鴇浅葱色岡山小鞠
ハイハットの乱打ゆだちのホコ天小川さゆみ
海の色塗り替へ夕立迫り来る小川天鵲
伝言板前解散夕立晴小川野雪兎
夕立晴さみどりに立つコンポスト小川都雪
夕立や雲の欠片のたけだけしオキザリス
水肥えて夕立の川生まれをり沖庭乃剛也
夕立や慈雨と成るだけ降りて失せ沖乃しろくも
四阿に孔雀とわれと夕立かな沖らくだ@QLD句会
「再発」の声夕立にかき消され奥寺窈子
夕立に歪むポスター投票日小倉あんこ
夕立や無言の刻を分かち合い小倉麻友子
大夕立三キロ先の摩天楼おこそとの
主なき犬小屋叩く夕立かな尾田みのる子
夕立去るスパイクはグランドを割くおだむべ
夕立やグローブ九個干す部室越智空子
五線譜をはみ出し叫ぶ夕立かなおぼろ月
夕立や信仰のことまた訊かれ海音寺ジョー
病歴に一行足して夕立来る海峯企鵝
夕立を背負ひトゥクトゥクハイトーン風花美絵
夕立や主を忘れた舟の櫂風早杏
ヒロシマを読経のごとき大夕立樫の木
立ち読みで終える新刊夕立晴加田紗智
夕立や殺生石の割れ目にも帷子砂舟
忘れ貝探し夕立の袂かな 捷子
息できぬほどの重さや夕立浴ぶかつたろー。
書きかけの楽譜丸めて夕立受くひだまりえりか
夕立や地球の自転短縮す桂子涼子
夕立の最後の一粒風優し加藤麗未
絵手紙を庇ひ夕立の歩道橋かときち
夕立の教室に素振りの呼吸叶田屋
夕立を一直線に離陸せりかねつき走流
このベッドからは夕立が見えない金朋かいと
夕立や初めて母の髪染めて花星壱和
無理矢理の観覧車しかも大夕立神島六男
夕立や喧嘩相手と傘一つ神長誉夫
贋作の仕上げの瞳夕立来る神谷たくみ
夕立や絶叫のよなサヨウナラ紙谷杳子
熱海行き列車夕立追い越して亀子てん
夕立が呑み込んで行く大東京亀田かつおぶし
支度して夕立佳境となるなか亀山酔田
夕立の光に燃ゆる仁王像かもね
突然の幕引きの如く夕立くる加裕子
油絵のみづ銀まみれ夕立窓刈屋まさを
夕立を泣き黒子ある人と軒川越羽流
夕立や通勤の群れたゆみなし川代つ傘
墨染の有為の奥山夕立過ぐ翡翠工房
大夕立湖中鳥居は血赤色川村湖雪
斉読の揃わぬ子らや夕立来る河村静葩
夕立を予言したので付き合おう干天の慈雨
夕立や盤上に夥しき死喜祝音
夕立や川面のみづを穿つみづ岸来夢
夕立やボブ・ディラン聴く帰り道北大路京介
居残りのテストの補習大夕立喜多丘一路
西向けば青空真上は夕立ギックリ輪投げ
御神木へ触れし左手夕立晴きなこもち
家出決行優しき鳩羽色の夕立木ぼこやしき
再検査告げられし日の夕立かな木村かわせみ
夕立を駆けゆく胸に写真集木村となえーる
半休や妻と夕立晴のせんべろQ&A
夕立に忘れられたる猫車Qさん
夕立の上がり世間の動き出す九ゼットン
ゆくりなく夕立がくれた空き時間Qちゃん・広ブロ俳句部神奈川支部
森進一の唄の後なる夕立きゅうもんde木の芽
夕立のあがる気配のなき本屋京野秋水
ずぶ濡れの荻窪ゆふだちの教会杏乃みずな
三角の岩の天辺夕立かなこうだ知沙
夕立やラジオの音に跳ねる水清鱒
電柱のまた高くなる夕立晴霧賀内蔵
夕立や錆匂い立つトタン小屋霧澄渡
本堂を洗い切つたる大夕立菫久
夕立の向こうが吾の目的地くぅ
夕立や今日の嫌いを丸呑みす句々奈
夕立あと皆の背筋が伸びてゐるくさ
チケット当落メール窓は夕立草野紫陽花
ジパングと記す古地図や夕立雲久信田史夫
三浪の夕立付箋はアルカリ性草臥れ男
夕立の音にメロディーつけてみる國本秀山
なんだか嘘っぽい夕立後の都市熊谷温古
夕立に鰐があくびを中断す倉岡富士子
花札の発火しさうな夕立かな眩む凡
夕立の管理人へ多し苦情ぐりぐら京子
改葬の深き口開く夕立かな久留里61
入眼の日寿ぐように大夕立くんちんさま
夕立の底や遠くの星に虹 恵勇
夕立を防災無線くぐもれり月下檸檬
絵日記の縁反り返る夕立あと健央介
なけなしの空の夕立や輸液落つ謙久
夕立や水の呼吸の荒々しケント
鎧戸越しに猛る夕立におぼれさう剣橋こじ
磨崖仏の御身を洗ふ夕立かな小泉久美子
夕立の切れ目は神の土踏まず恋瀬川三緒
新宿の夕立は吐瀉物の匂ひ剛海
夕立やキャンパスは柱多きとこ公木正
矢を射れば夕立招くこととなり紅紫あやめ
夕立の追ひかけてくる地動説幸田梓弓
大夕立一人手つなぎ一人抱き古烏さや
白雨来て木下一人の警備員こきん
夕立に謝してしばしの休息や越乃杏
夕立を逃る摂州抜けてよりコダマヒデキ
言わでもの口持つを恥ず夕立来る古知野朝子
五分後の夕立となるにほひかな小手拭エコ
電気臭部屋に立ち込め夕立あり虎堂吟雅
夕立のあとの箱根の野風呂かな後藤周平
誰のせいでもない夕立が今日を洗う寿とかいち
夕立や漆の梁に妣の遺影子猫のミル
八段のピラミッド落つ夕立雲このみ杏仁
ロトくじの列に並びし夕立かな小林昇
初孫の匂い際立つ夕立前小林のりこ
初孫のエコーの影や夕立あと小林久女
電車今夕立の中に突入す小林理真
朝刊の黒い見出しや夕立雲独楽
土の香の夕立セピア色の銀座駒茄子
夕立や矢倉囲いと美濃囲い碁練者
日本てふ亜細亜の尻尾大夕立GONZA
缶蹴りの鬼立ち尽くす白雨かな今藤明
廃校に錆びた鉄棒大夕立さいたま水夢
夕立来る象舎に献花あふれをり彩汀
夕立や星新一をもう一話齋藤桃杏
夕立の止めば町ごと動き出す宰夏海
夕立に大混雑の実習林さおきち
夕立や黙を貫く杭打機酒井春棋
夕立や軒借る猫と友となりさかい癒香
夕立の機影砲手の腕締まる榊昭広
夕立や合掌なせる交差点坂口いちお
皇子が悲母血絶ゆもゆだち墓碑囲み坂島魁文
夕立やジグザグで抜くミッドフィルダー坂野ひでこ
夕立に合わせラフマニノフの鐘坂まきか
デパートを一巡りして夕立止む坂本千代子
夕立の境界線を超えて快坂本雪桃
廃屋を烟らせ夕立人里へ櫻井こむぎ
夕立の奥をみてゐる神馬の眼桜鯛みわ
境目を際立ちけむる夕立かな桜月夜
夕立の二軒隣は降らざりてさくら悠日
夕立や五百羅漢の膨れ面雑魚寝
夕立や忙しなき手話読み難しさち今宵
まっすぐに落ちる夕立にある苦痛佐藤茂之
夕立の明けて都市計画道路さとう昌石
チャップリンみたいに夕立を歩くさとうナッツ
大夕立義元を突く鬼神の手佐藤浩章
「ひまわり」は立ち見夕立のリバイバル佐藤ゆま
伝令の旗垂直の夕立かな錆田水遊
甘味屋に漢二人の夕立かなさぶり
夕立雲棟上げ終へて一呼吸彷徨ういろは
夕立や日本列島熱ありて佐柳里咲
垂直とは立ち尽くすこと大夕立さるぼぼ17
夕立の爆音膝下の罹災沢井如伽
あを濃き日比谷ゆふだちの甘くにほふ沢拓庵◎いつき組カーリング部
憑き物が落ちたみたいや夕立あと澤田紫
夕立や十二回目の仲直り三角山子
夕立晴ガラスの積木めくビル群三月兎
だらしなく居れる夕立のハイエース珊瑚霧
夕立や今日の私を脱ぎ捨てる塩沢桂子
手放した棚田が沈みゆく夕立塩の司厨長
夕立のいたずら君のシルエットしかの光爺
西の夕だち東のそれに勝りけり柿司十六
夕立や祖父の実名知る霊前四條たんし
夕立や分煙されずジャズ喫茶芝歩愛美
立ち漕ぎぞ夕立に頭突き食らわせてしぼりはf22
夕立の球場残されたボールシマエナガ深雪
鬼も吾も哭き尽くしたる夕立晴島田あんず
包まれて夕立あとのバスタオルしまのなまえ
牛の群れ夕立の熱にどやどや来清水縞午
夕立雲潜り抜けるや鳥の群れ清水ぽっぽあっと木の芽
夕立や滑る懸垂二十回下丼月光
夕立来る先に空気のにほひ立つ下村修
夕立へジャムをことこと唄わせてじゃすみん
影踏の影を連れ去る夕立かな沙那夏
夕立や湖の形にひとしきり砂楽梨
弧を描くロングスローや夕立晴洒落神戸
夕立雲ウグイス嬢は名を連呼 朱胡江
再開のコール高らか夕立晴秋芳
蛇籠出す四・五丁西は龍夕立種種番外
水の実の目見開きて大夕立シュリ
夕立くる土撃ちてくる蹴上げくるじゅんこ
夕立のとんがって土煙にほふじょいふるとしちゃん
夕立を孕みて海のさかだちぬ常幸龍BCAD
夕立来手持無沙汰の家族葬庄司芳彦
ゆだちあけすつとんきやうなかほをして正念亭若知古
一点見つつ一心となるゆだち白沢ポピー
読点を置けば夕立ふるふるる不知飛鳥
夕立や庚申像の彫り鋭利白猫のあくび
夕立の影や余命の迫る母白よだか
夕立あと打楽器の子のソロ冴える神宮寺るい
夕立のさなか余震に怯えをり新濃健
夕立や只中に出たき衝動深幽
夕立や去ってあっけらかんの空すがのあき
夕立にならんで堕天使の素足すがりとおる
夕立雲俄かに湖上塞ぎたり杉尾芭蕉
夕立の暗いくらいで丁度いいスギモトトオル
自主練のラスト夕立駆け抜けて鈴木季良恵
夕立やコールド間近の五回裏涼希美月
大夕立星の自転の止まりけり鈴木由紀子
いじめた子無言夕立窓を打つ鈴白菜実
夕立来て鳥獣戯画の兎逃ぐ清白真冬
夕立やバケツに沈むねずみ捕り鈴野蒼爽
かくれんぼの鬼を残して夕立かな砂山恵子
夕立は仔犬の重さだとおもふすりいぴい
夕立来る外飛び出して生きている晴好雨独
夕立や沸き立つ海の迫り来て青児
夕立雲右半分を覆いけり清仁
スクラムを組み直す手に夕立も青峰桔梗丘
答案の作者の気持ち夕立来ぬ瀬央ありさ
水軍の島を飲み込む大夕立sekiいつき組広ブロ俳句部
夕立あと川は金糸を編むごとく拙珂知
夕立欲し雨雲すらも産めぬ吾は摂田屋酵道
夕立熱く星の薄皮こそぎゆくせり坊
夕立刺す清流の底鼓動あり千・いつき組広ブロ俳句部
繋ぐ手にめがけ来るすごい夕立全美
夕立来て喫茶「オレンヂ」満席に走人
夕立に打たれる牛の目は細き惣兵衛
炒め物の音の消えゆく夕立かなそうま純香
夕立の水の壁落ち世界裂く素偶
どどどどと底抜け夕立着地せり外鴨南菊
夕立あと最後の雫落つを観るそぼろ
ゲルニカの叫び夕立の飛沫染井亀野
「博」の字に点をつけ忘れて、夕立そよかぜシュレディンガー
夕立や君の右肩吾の左肩空豆魚
夕立にことごとくひれ伏して黙たいらんど風人
夕立後たったひとりの野辺送り高木音弥
夕立を持ち込む満員電車かな高瀬小唄
うを屋とうふ屋夕立の品定め鷹取碧村
夕立の黒鍵とほき小指かな高橋手元
夕立や要らぬ物買ふ雨宿り高橋マママリン
夕立に今日の英語を叫び駆く鷹見沢幸
夕立を走る離婚を決意するたかみたかみ・いつき組広ブロ俳句部
夕立の音に追われて抜かれたり高山佳風
フォルテなり夕立の始まりはファ音滝上珠加
夕立や皮剥ぐやうに脱ぐセーラー滝川橋
一日の汗の匂ひの夕立かな卓鐘
スープ浚ふ夕立の底のラーメン屋武井保一
夕立や恩ある人の訃報受く竹内不撚
客船の灯の濡れそぼつ夕立あとたけぐち遊子
夕立に濡るるほかなく濡れにけりタケザワサトシ
最近の夕立派手な兵器めく武田豹悟
神木の気根夕立をむさぼりぬ竹田むべ
沸点といふ夕立といふ科学たけろー
夕立の止んで匂いが変わる街多胡蘆秋
夕立のあとの空だけ空つぽかたすく
夕立や小言ならぶる腹の虫祐紀杏里
夕立ひと粒胎動甚だし多数野麻仁男
早足の稜線夕立に負けるただの山登家
暗転は夕立だけのせいじゃなく立田渓
泣くなと言われてもこの夕立では立田鯊夢いつき組広ブロ俳句部
夕立や猫背に守るマリトッツォ立石神流
夕立や否みの理由見つけたり伊達紫檀
夕立の端から端へ走り抜け蓼科嘉
夕立はまづ野球部のあたりから立部笑子
濃厚に気の匂い立つ夕立前田中勲
夕立や排水溝の溺れをり田中紺青
夕立や銀紙はがし苦きチョコ田中みどり
夕立や大地の拍手浴びるやう谷しゅんのすけ
広重のゆだち入り込む石部駅谷町百合乃
ぞろぞろと街動き出す夕立晴田上南郷
フランスは遠し夕立の御堂筋玉家屋
夕立に止まれの文字の罅割るる玉木たまね
夕立に折り傘抜かず立ち向かう玉響海月
錆臭き橋をのこして去る夕立田村利平
夕立の過ぎて抜歯の痕うずく鱈瑞々
夕立の村貫くや吉野川丹波らる
夕立や千秋楽の楽屋口チームニシキゴイ太刀盗人
待機断念そば処より夕立へ千夏乃ありあり
松の湯の名入り番傘夕立中竹庵
夕立の匂い到着はまだ先智同美月
夕立や空のにほひをぶちまけて千鳥城.広ブロ俳句部カナダ支部
夕立や萎む小さき街にゐる千葉右白
武蔵野を穿つ夕立の柱かなちやあき
夕立が洗うや鳩の轢死体彫刻刀
夕立や揺るる煙草の火と火と火ちょうさん
夕立をヘルプマークの緋を揺らし千代之人
先斗町夕立に騒ぐ下駄の音つえりん
夕立や話しかけずに雨宿り塚本隆二
夕立の匂いのすると夫の言う月の莵
夕立やパーカッションの音響くツキミサキ
夕立や総理大臣辞意固め月見輔
鳥群のほどけて夕立はじめかなつくばよはく
ゆふだちの鳥獣うれしさうな傘つくも果音
夕立は猫の額の香りする辻瑛炎
雲湧きて峰より届く大夕立辻栄春
「優しそう」で片付けられて夕立降るつちや郷里
夕立が立ちはだかつて寂を吠ゆ津々うらら
夕立をうれしがるのは河馬くらい綱川羽音
夕立の俺ら死んでるみたいなもんツナ好
夕立弾(はじ)く渾身のドラムソロ椿泰文
夕立を受けをる湖のやはらかき坪田恭壱
麻酔せし腕白くある夕立かな爪太郎
大夕立空も難問かかえてた鶴富士
理科室の人体模型夕立来哲庵
原初の香立つや夕立地をたたく輝由里
しづかな鳩慌てる鳩ゆふだち来天雅
海峡を抜ければ内地大夕立天童光宏
白いセリカ待つ江の島は夕立天陽ゆう
夕立やひたすら磨く風呂の床トウ甘藻
東京てふ墓標洗ってゐる夕立冬野志奈
鰐になり麒麟になるや夕立雲遠峰熊野
夕立のあいだ少女は生きられるとき
夕立を突つ切る白き翼かな常磐はぜ
夕立に畑の土の孕みをりDr.でぶ
夕立や散歩出た父戻らないどくだみ茶
傘の骨折るや夕立は耳の横どこにでもいる田中
丸呑みの越後平野を大夕立どすこい早川
友の訃報饐えた雨戸を打つ夕立杼けいこ
ペデデッキだぱだぱ下る大夕立 となりの天然水
日の差して厨明るき夕立あと戸根由紀
夕立や手分けして拭く百均本戸部紅屑
夕立や流刑の皇子の小さき墓苫野とまや
夕立や大道芸の綱残し冨川ニコ
マーラーの交響曲や夕立晴富野香衣
淋しさをこの夕立に差出して友@雪割豆
夕立や座して父待つ四国犬とよ
夕立や継続試合のアナウンス鳥田政宗
夕立が降り止むまでの痴話喧嘩豚々舎休庵
夕立やキャラバンシューズの草まみれ内藤清瑤
皮財布の臭ひ濃くせる白雨かな内藤羊皐
夕立のとなり駅まで来ていると内藤由子
ティファニーのショーウィンドー夕立あと中尾鎖骨
対岸の夕立ここにひとしずくなかかよ
父祖の地の匂ひ押し寄す夕立あと中里凜
夕立の洗ふ骸の白さかな中島紺
夕立や野良着の父に風呂沸かす中島はるな
夕立の来さうな気配妻の髪長嶋無有子
夕立に気合いを貰う野菜かな中嶋緑庵
夕立や凹みの深き指輪痕永田千春
夕立や応援団は動かざる中藤雅子
夕立に手を休めたる轆轤かな中十七波
うなじ見せ真珠つけてと夕立かな中西千尋
河馬大き口開け兆す夕立かな中原柊ニ
夕立を待つ街路樹の荒れた肌中村こゆき
バーの灯の少し濃くなる夕立あと中村想吉
里山の拍手青き夕立かな中山由
母看取り夕立で顔を洗うなたのすけ
夕立の痛みに玻璃は濁りけり夏風かをる
夕立駈く国生みに異を唱ふやう七瀬ゆきこ
夕立や幼馴染が訪ね来る7パパいつき組広ブロ俳句部
夕立を抜く特急の中に居て名計宗幸
外は夕立父の戦争画に対すなびい
幼子の声の明るき夕立かな奈良素数
トンネルの端に夕立の明るさよ西川由野
夕立の街詠み捨てる過客かな西田月旦
夕立や喪服二着の試着室西野和香
夕立のあしを車窓のくぐりぬけ二城ひかる
夕立や雲はふくるることに倦みにゃん
夕立や埃の匂ふ傘を借る仁和田永
ずぶ濡れとなれば清しく大夕立沼宮内かほる
ゆふだちのゆふはさびしき二人称沼野大統領
夕立にそのビニル傘私のです猫塚れおん
夕立に心ゆくまで打たれけり猫ふぐ
鮮やかなタトゥーの蝶や夕立晴れ猫またぎ早弓
夕立やハノン旋律の同調根々雅水
夕立は木陰の戻るところまで野口雅也
球児らとスコアボードと夕立と野地垂木
頭痛きりきり夕立まで二時間のなめ
夕立の前の暗きに音の消ゆ野の菫
夕立やバス追い抜いてバス停へのりこうし
夕立やティッシュ配りの人に飴のんきち
夕立の緞帳のなか倦怠期のんぬもんぬめぐ
夕立の数秒前の胸騒ぎ白咒と蒸しエビ
白雨過ぐ胸に生まれたての大志蓮井理久
夕立をバベルの如き弊社かな長谷川水素
夕立や一色加ふ五色沼畑中幸利
夕立やひとりぼっちになる練習八田昌代
きな臭き街ごと消しぬ大夕立はなぶさあきら
夕立の部室8×4の匂い花豆
夕立来る空真つ黒な腹を見せ花見鳥
夕立や庇に僧と吾とシスター花和音
マネキンは無口夕立のウインドウはまのはの
夕立や置いてきぼりのすべり台はままこみかん
大皿は生者のものぞ夕立くる葉村直
まづぽつと夕立やざざと街を駆け原水仙
歌舞伎座に牡丹灯籠はね夕立巴里乃嬬
夕立や古木戸に背比べの跡晴田そわか
夕立やそろばん塾の靴脱ぎ場春野ぷりん
一丁目の夕立三丁目あと二分春海のたり
夕立の匂ひ新たに町工場はれまふよう
夕立や空より薄墨の草書HNKAGA
天窓を叩く夕立のハ短調ピアニシモ
夕立や手に謹製の菓子折り東田一鮎
夕立の中に居る妙に閑かだ菱田芋天
手のなかで死にゆくものや夕立にヒッチ俳句
プレゼンを熱き言葉で締め夕立ひでやん
夕立のうちにパン生地ふくれ過ぎ日向こるり
夕立と遊ぶ他人の子と笑ふ比々き
夕立や母ちゃんまだ怒ってるのヒマラヤで平謝り
濡れ髪の獰猛な香夕立過ぐ平岡梅
夕立の帰路を自転車およぎきる平手打チメガネ(志村肇)
夕立に届かぬ採用通知かな平野芍薬
夕立や供えを下げて上げる香平野純平
夕立や鉛筆にほふ美術室平本魚水
夕立や川と競ひて帰らうぞ平山仄海
ビル消えて梅田辺りは夕立らし昼寝
脳みそを持つてゐさうな夕立雲広木登一
夕立あと河童ひと息酒を酌む浩子赤城おろし
夕立に塗りつぶさるる耳の奥広瀬康
夕立やなぞへを刻す水のおと廣田惣太郎
夕立や僕にはお迎へは来ない弘友於泥
夕立の檻や白鬼見張りおる広野光
夕立や残夢は都に鮮がず風慈音
夕立が砂煙あげ追いすがる深蒸し茶
あっけなく振られた駅舎大夕立ふくじん
夕立やただいまもだあれもいない福田みやき
夕立やチョークの顔も泣きだして藤井かすみそう
山向こう夕立あるかに土匂ふ藤丘ひな子
夕立や鉄路の消失点けぶるふじこ
夕立や夕餉はタイカレー一品藤咲大地
ひざまづく試合夕立のど真ん中藤里玲咲
夕立や鯨の死骸打ち上がる藤永桂月
夕立や軒宿りして書肆の匂ひ藤本仁士
シャコ貝をさばく船長大夕立舟端たま
夕立にやをら八百屋の二割引ふにふにヤンマー
夕立や少年痩せて猫拾ふ冬島直
夕立に吾の輪郭の浮かびたる冬野とも
家で聴く夕立は好き本を閉づ古織沃
キヨスクのジャンプあかるくして夕立古瀬まさあき
夕立来るビニールシートの蚤の市古道具
夕立や歯を食ひ縛る鬼瓦文室七星
夕立やジンベエザメの泳ぐ街碧西里
夕立や吐くる母乳の香は和しペトロア
夕立の音に身の内解れゆく房総とらママ
窓際の猫の目光る夕立かな北斗星
夕立やニセもモドキもそれつぽく星屑今日子
通行人Bも駆け出す夕立かなほしぞらアルデバラン
夕立の匂いと呼んで分かり合う星田羽沖
駅前の選挙演説大夕立星月彩也華
また変な男にひっかかる夕立星乃ぽっち
ミーティング苦し夕立おもしろしほしの有紀
夕立やカウンセリング室の罵声ほしのり
夕立は島のキャンプのご馳走だ堀隼人
空分かち夕立の壁の直立す堀邦翔
夕立来て平凡な日のクレッシェンドマーチー
問い正すようにコンクリ打つ夕立舞矢愛
夕立やコンクリートのやはらかき槇原九月
饒舌な夕立よ無口な背中よまこと七夕
夕立に食べるとってもおそい昼正岡田治
夕立の境界すぎて降りるバス増山銀桜
土塊のにほひ懐かしゆふだち来町田勢
夕立やアマビエは明るく吠えて松井くろ
驟雨過ぎジャンヌ・エビュテルヌの眼差し松尾老甫
皇宮の現れたるや夕立あと松田寛生
夕立の証明写真機に黒猫松田迷泉
黒板の大きな分度器大夕立松本こっこ
作業員ぎうぎう夕立のバス停毬雨水佳
男体の夕立と思ふ濡れていかむまるごとハテナ
アパートの外階段や夕立晴まるにの子
夕立の砂の匂ひやとほき星丸山美樹
夕立の海や罵声の残る耳三浦海栗
夕立や雲の色吸ふ力石帝菜
夕立のここに真つ直ぐやつて来る蜜柑好
主役断り夕立の端にいる岬ぷるうと
去勢後の犬と夕立を見てゐたり水須ぽっぽ
美しき竹刀や夕立の少女三隅涙
螺子のなき四肢へ夕立錆臭しみづちみわ
焼きそばの紙皿たたく夕立かなみつれしづく
夕立や今日も母とケンカ別れみなづき光緒
夕立に和傘開くや油の香みなみはな
夕立晴看板猫の鈴チチリ源早苗
夕立の図書館ななめ前の彼みやかわけい子
深呼吸・チャイム・夕立・ドラムソロ宮下ぼしゅん
夕立風砂場の吾子を掬ひあげみらんだぶぅ
夕立や私は悪い子じゃないよ麦乃小夏
差し水に泡消え失せて夕立かな麦野光・いつき組広ブロ俳句部
夕立があつたらし我が家がきれい椋本望生
バンコクの夕立太し窓を落つ霧想衿
夕立にまみれし懐メロのノイズむねあかどり
鯛料る鱗とび散る夕立かな紫小寿々
高原のあお濁らしむ白雨かな茗乃壱
夕立くる香に包まるる子規の庭茂木りん
劣勢のトライ夕立のノーサイド藻玖珠
夕立を泳いで母の香を感ず本村なつみ
本開く読む書くめくるあら夕立桃園ユキチ
夕立晴田に横たふる鯉の腹森佳三
夕立に絆されもする悋気かな森重聲
新宿に廃墟のにほひ大夕立森ともよ
映画なら恋生まれそう夕立風森中ことり
スコールやシャウトしている頭蓋骨杜まお実
夕立の重さ約束の軽さ森萌有
たおやかに象の鼻来る夕立晴もりやま博士
この一番仕切りの警蹕に夕立もろ智行
地団駄の吾子や夕立だだだだだ山羊座の千賀子
夕立のゆくへ霊柩車しらしら弥栄弐庫
夕立や錆びて動かぬ花鋏矢澤瞳杏
夕立あと突如つながりだす打線野州てんまり
緋の裾を端折り夕立の人となる安田伝助
ソフトバンク対ロッテ戦へ夕立八幡風花
ポケットの小銭四枚夕立の駅山内彩月
夕立やたてがみ繁吹く放牧馬山口笑骨
夕立に両手広げる河童かな山崎力
夕立の音を聞いてる保健室やまさきゆみ
夕立の饒舌入り日の沈黙山里うしを
夕立や忘れちまったパスワードやまだ童子
夕立や先たべてての走り書き山姥和
夕立や今言いかけてやめたこと有野安津
夕立に濡れて黒髪日の匂ひ宥光
夕立や立ち塞がりし家の段雪子
離島めく学校の灯よ大夕立柚木みゆき
夕立やアスファルト臭踏んづけて柚子こしょう
夕立や空港行きのバスワイパー宙美
夕立に混じる獣の呼吸音羊似妃
夕立の音を背中で聞くオフィス横井あらか
夕立を浴びたからだで星あびる横浜順風
図書館の本ふところに夕立なか横山雑煮
舌の根にのど飴あまく夕立晴れ吉田春代
夕立やもう一頁読んでいく吉成小骨
夕立も恋もゆきずり狸坂柳絮
夕立来る海の向こうに雨柱凛
道化師の仮面をとれば夕立来るルージュ
夕立を佐藤義清単騎駆る 連雀
夕立やシフトレバーのR消えろまねす子
夕立や猫を取り込む家もありわかなけん
夕立や雨織り成せる白き闇海神瑠珂
夕立やブービー人気の馬券買ふ渡部克三度
夕立や「大はしあたけ」に黒き雨 渡辺香野
はじめてのゆふだちうけるベビーカー渡邉久晃
あさっての方から来た来た夕立渡邉わかな
まだ熱き骨拾ひ合ふ夕立かな亘航希
玻璃走る夕立の蔭のおびただし笑笑うさぎ
タクシーの出払つてゐる夕立かな釜眞手打ち蕎麦
瞬間のひかり夕立の作る泡夏椿咲く
面談の机を合はす夕立かな黒子
夕立にけぶるかがり火総がらみ あ。うん
夕立に物の怪生まれ世に紛れあおのめ
夕立に追い抜かれたる六十路坂郁松松ちゃん
夕立や遠くの街へ一人旅伊藤容子
夕立後黒松光り空を吸うえのき絵巻
夕立が貴方になれば良いのにね久保田毒虫
夕立の逃げども寄する雨カーテン後藤真昼
夕立や気風がいいぞ愉快なる小町屋波彦
生温い闇ヒタヒタと夕立かな咲まこ
夕立晴ひときわ高く飛行機雲瀬野広純
運命のように突然夕立はSOSHUN早春
夕立や地球もお尻洗いたい大
出て来ぬや隠れしふたり夕立に天王谷一
大夕立地球まるごと水の中なかむら凧人
夕立の真っ只中を帰宅の子平井由里子
夕立でも横断歩道は白を踏む伏見レッサーレッサー
煮魚の小骨つまみで白雨かな瑪麗
夕立や涙も笑みも境なし宮城海月
競技場雲迫り来る夕立かな逢花菜子
夕立や葉に輝きのジルコニアあいあい亭みけ子
夕立や同士の絆雨宿り相沢薫
さよならを言えず散りぢり大夕立愛燦燦
瞬時にて大泣きするは夕立や会田美嗣
四谷にて何処へ流るる夕立あと藍野絣
夕立来るリードで遊ぶ君愛し青井心平
掌に小さき雫ゆだち来る青雨青緒海
古書店のガラス戸がらり夕立晴青空まる
夕立や霞ヶ浦周航歌碑あかねペン銀
暗黒のトンネル出口に待つ夕立acari
遅れちゃう憎き夕立ハイヒールあかり
夕立に子を呼ぶ母の気迫かな赤尾実果
夕立や駅に娘と傘三張り秋星子
夕立を振り乱れ弾くワイパー昭廣凡字
夕立や鎮守の森へ走り込み空き家ままごと
土の香の迫り来るなり大夕立秋山らいさく
図書館の本は読みかけゆだちかな芥茶古美
夕立来残りのシーツ取り込めずあくび指南
救急車切り裂いてゆく夕立かな浅乃み雪
ダイニング夕立眺める心地よさ朝陽
夕立や天井にバケツ吊ってありあさみあさり
夕立や断捨離終へてひと休み浅紫泉
夕立に街も心も洗わるる明日葉
夕立や恐竜雲が暴れ去る明日に翔ぶ会
夕立や広重の線刺さりくる厚姫
夕立やかはくほどなし潦渥美こぶこ
夕立来罵る彼の声消ゆるあねもねワンヲ
夕立で砂場のトンネルがダムにあまどかに
夕立を避けて大英博物館雨戸ゆらら
夕立の匂いは先にあいさつす天鳥そら
夕立雲ゲリラに雨の香りなき雨乙女
夕立の改札手には傘二本雨霧彦(木ノ芽)
夕立や難儀やったわ杖と傘雨降りお月さん
夕立や手紙の宛名滲む文字雨李
夕立や吾にかしげる最相傘綾小路へこ
夕立や落ち込む肩へエール水あらいゆう
古都夕立外国の人濡れしままあらかわすすむ
夕立や流れるままに傘がない 荒木響
夕立やスマホの画面打つ礫あらま彦
もやもやに猛烈夕立明日は晴れ蛙里
大都会右往左往の大夕立有川句楽
きのこ雲の如き雲立ち夕立来淡湖千優
翠巒のはるか眼下の白雨かな安春
来ぬ人を待ちて三日や夕立去る杏っ子
夕立や少年剣士は裾からげ井若宙
夕立やはしゃぐ息子と逃げる父猪狩鳳保
「好きです」が夕立の幕に遮られ粋庵仁空
夕立のにおいにつられ赤提灯池田華族
夕立後自転車飛ばしコンビニへ伊澤遥佳
夕立や悴せし畑をぽこぽこと為参
夕立や書店めぐりの一休み石田ひつじ雲
夕立に鬼ほくそ笑むかくれんぼ石の上にもケロリン
喧騒の街を静める大夕立石原花野
夕餉には少し手間かけ夕立あと石村香代子
夕立や軒に駆け込み青空か泉恵風
夕立に駆け込む社殿龍柱いずみ令香
夕立の予感経過に耐えひとりいちご一会
夕立の向こうはきつと晴れ日和いつかある日
夕立を吸って大地の匂い立つ五つ星
アスファルト匂ひて気づく夕立かな糸冬因果
ご自由にとタオル貸す店大夕立伊藤恵美
夕立や会計済まし呑み直す伊藤薫
子らはしゃぐデリーの街の大夕立伊藤節子
夕立や雨宿り歌詞口ずさむ伊藤ゆかり
夕立や走り濡れ行く胸騒ぎ伊藤れいこ
恋情のごとく猛々しく夕立糸川ラッコ
夕立を集め琵琶湖の深さかなイナホセドリ
夕立のコンビニ軒の短かなる井口良範
立ち尽くす大東京の大夕立井原昇
夕立去り新たな歴史紡ぐ街岩木順
夕立や昔の男思ひ出す岩佐りこ
夕立や着物の裾を絞るなり岩瀬きわ
SMSやめて夕立の端っこにうえともこ
BSの山場断ち切る夕立かな上野徹心
夕立や黒のペディキュア塗り終へてうからうから
部活帰りの夕立を二人占めうさの
夕立にバスの客らの唸りかな宇野翔月
傘ないし塾遅れるし大夕立卯之町空
夕立の匂い地からと立ち上がり海口竿富
パンダ舎の行列微動夕立かな梅里和代
夕立やコンビ二入り雑誌見る越中之助
夕立や尖がったまま主夫稼業越冬こあら@QLD句会
夕立へ託す失意をシュレッダー江戸きり子
夕立よ野良終えるまであと少しえのき筆丸
ぱふぱふと膨らむ土は夕立の香榎本奈
新調した靴夕立で二の足榎本雅
やけっぱちの心鎮める夕立かな遠藤千草
夕立の静まり祖母の下駄の音遠藤玲奈
釣り人も竿仕舞ひだす夕立ぞ大久保一水
夕立や水彩の街小走りに大越総
地中から毒はき出すや大夕立大越マーガレット
夕立に水遣り任せひと寝入り大澤道史
夕立や傘差す君の背にかかり大嶋宏治
夕立に慌て取り込む軒の服大島英子
ブレーキかけ坂道とばす夕立かな大竹八重子
あ夕立うどん飛び出た手品ショー太田怒忘
夕立や巡り巡って母の詩大富孝子
夕立や走れば誰も靄の中大原妃
夕立やよさこい節も小休止大原雪
夕立や離婚届けに判を押すおかえさき
夕立の入日眩しき騒ぐ街 岡崎佐紅
夕立や粒が大地で跳ねる跳ねる岡崎未知
駐車してワイパー止める夕立かな岡田瑛琳
夕立や街並み隠す消しゴムか岡田恵美子
夕立や苔いろ変わり閑かなり岡本
夕立の気の済むまでに地をたたく小川紅子
夕立去り色濃き草の匂ひ立つ小川しめじ
夕立や瑞西の湖畔レストラン沖庭ノ華風
朝敷いたゴザはびしょ濡れ夕立よお品まり
終活のトラックに刺さる夕立よ小田孝子
月一の洗車終わらせ夕立かな小田毬藻
夕立や煽られめくるミステリーおつき澳吉
夕立やノイズキャンセル濡れぬ耳御成山
夕立後微かに聞こえる母の息おにやんましゅう
夕かげり八坂の塔の驟雨かなおひい
夕立の後に命の香り立つ海堂一花
一人ずつバスに飛び込む夕立なり甲斐ももみ
猫カフェへ犬派駆け込む夕立かな火炎幸彦
夕立やペティキュアの赤拭いてやる案山子<いつき組広ブロ俳句部
夕立やふたりの傘に距離ひとつ影夢者
夕立や昨日の我を叱るよな梶浦和子
夕立や叩きつける音清々し鹿嶌純子
夕立や夕餉の支度始めよかかじまとしこ
夕立や行灯守る子らの声雅翠
夕立や号砲聞きて走り出すカズミンスキー
夕立を刻むワイパーはプレスト風薫子
夕立に追われ飛び込む松坂屋風之川
夕立に駆り立てられて本屋入る風の母
夕立の気配に水撒く手を止めぬ片岡明
夕立やブレーキランプの帯を過ぐ片岡一月
夕立やメッキはげゆく街宣車花鳥風猫
夕立晴空に天使の泣き笑い勝瀬啓衛門
四分五散万博会場夕立中桂佐ん吉
夕立に煙るビル街灰の街加藤水玉
夕立は戸棚の中でやり過ごし金澤孝子
夕立や窓越しに見る街明り金子陽
大夕立親子喧嘩は小休止金子泰山
天気急変夕立雲迫る街亀岡恵夢
夕立や玻璃窓打つ雨礫亀くみ
夕立の願ひを込めて予報聴く亀田ミノル
夕立とも言えぬ豪雨に叩かれる亀山逸子
夕立にカバン踊らせ塾帰り鴨の里
夕立や少し手ごころ加えたかかもめ
夕立に傘差し掛ける想い人カラハ
約束を破る夕立の所為にして河上摩子
トタン屋根ドラムビートの夕立なり川崎ルル
夕立や坪庭産みし小宇宙川辺世界遺産の居候
君の声夕立けぶり遠くなるカワムラ一重
夕立の空見上げるや5対6岸壁の龍崎爺
夕立で哀しさ削除再起動がんも三世
夕立やモザイク画面最終回Key
ゆふだちやをのこごはなきののしる季川詩音
地下鉄に吸ひ込まれゆく大夕立菊池克己
夕立や流したいのはそれじゃないきざお
いらだちを黙す一献夕立かな如月ゆう
夕立に飛び込みし店の「はいタオル」季紫子
迫り来る夕立映るバックミラー酒暮
夕立やまろき地球の匂ひ立つ季切少楽・いつき組広ブロ俳句部
雨柱焦がれる夕立まだ遠く北川茜月
夕立やえいと漕ぎ出す合羽の子北乃大地
夕立や夫の小言を叩き付け北の星
樹々の香のむんと立ちたる夕立晴北村環
夕立や立ち去る君の傘の赤木下桃白
鉾町を洗ひ流せし大夕立木下風民
夕立を降らすC言語のコード 黍団子丸
夕立に売り出しの旗立ちん坊きべし
夕立めネットのアニメ画が乱れ君塚美蕉
夕立あと鉢植え一つ起き上げて木村カズ
土の香も無しタワマンの夕立かな木村修芳
草田男の句碑もしとどに夕立かな木村弩凡
夕立やせせらぎ溢れ貸す手縁木村波平
懐に犬を押し込み大夕立木元紫瑛
夕立や犬も食わない涙あと鳩礼
来てくれる?夕立理由に迎え待つ喜楽胤
夕立に深呼吸して営業マン近未来
夕立やリセット癖は治らないくすみ輝く
夕立やグラビア写真びっちょびちょくずもち鹿之助
夕立や置き去りの吾と自転車とくつのした子
夕立が空襲の如ドドドドド愚禿忍
夕立の気配に急ぐ家路かな國吉敦子
日もさして夕立あとの葉に雫窪田和子
乾びたる土や対岸は夕立栗田すずさん
夕立に軒下借りて待つ身かな栗田芳文
夕立来既読にならぬ母のLINE空流峰山
夕立や屋根はティンパニ打つごとし愚老
夕立や小言のボリューム上げる母黒瀬三保緑
薄暗く匂い立ち込みほら夕立黒猫さとみ
夕立の止まぬふりして君とゐる黒山万牛
大人傘持ちてゆだちの駅へ急く桑田栞
本めくり過ぎる夕立耳澄まし慶唯
夕立や月の名所の空騒ぎ家古谷硯翠
魚屋のエプロン高し夕立風げばげば
ふたり待つ夕立終わる恋終わる紫雲英
大夕立避けて行く手も大夕立ケンG
夕立やカラカラ氷無言カフェ河国老保忠
永遠に感じる五分夕立かな柑たちばな
夕立や納屋に取り込む干し野菜宏楽
待ちわびた夕立されど土喘ぐ郷りん
夕立を半紙に書けば雨止んだ黒望
夕立の上がりて匂い街つつむココヨシ
夕立後便乗に乗る風無沙汰胡秋興
夕立に洗われた街くっきりと湖水鈴
夕立やボール探しの草野球小杉泰文
夕立や頬づえついて待ちぼうけ小園夢子
護岸穿つ夕立アポロはいずこへ五島潮
駆け抜ける人もモザイク大夕立後藤三梅
轟音の夕立静寂を生む後藤葉羽
夕立や走り出す足止まる足来冬邦子
夕立止み犬の散歩のサボれずに古都鈴
図書館に静けさ戻り夕立晴粉山
乾ききる心に沁みるゆだちかな小林澄精
夕立にヒロインのごと立ちすくみ小林弥生
自転車の遠出逃げ帰る夕立駒形さかつ
夕立は去りぬ叢中かまびすし小南子
夕立が土黒く染め匂い立つこむぎ
夕立が下山を急ぐ吾を叩く小山晃
夕立を窓越し見てる家の猫コロンのママ
夕立や駆込み寺の軒借りし埼玉の巫女
夕立や時を数えし路傍の花さいとう歌月
夕立やじゃらじゃらじゃらのキーホルダーさ乙女龍チヨ
コンクリの大地欲するまま夕立さかえ八八六
夕立と泥はね裾と雨宿り肴枝豆
夕立だ直ぐ来る走れ田んぼ道相良まさと
夕立に小走り陰干しの喪服咲世咲
夕立の置き土産かな橋光る桜華姫
夕立や愚図る赤子の声攫ふ佐々木佳芳
夕立の初デートはモカの香りに笹桐陽介
夕立にさらわれし二十歳のわたし笹靖子
夕立のあとかたもなく星の夜さざれいし
映画みて出れば通りは夕立あと砂月みれい
夕立でタイムセールの惣菜屋薩摩じったくい
夕立やシャツびしょ濡れの走り抜け佐藤公
夕立や傘を帰りの杖として佐藤恒治
夕立やドラマのやうな振られかた佐藤志祐
熱戦の余韻消し去る夕立かな佐藤俊
子雀も雨宿りする夕立かな佐藤佳子
夕立や並ぶ靴皆雫垂れ里こごみ
懐メロのラジオかき消す驟雨かなさむしん
ペダル漕ぐ巻き髪解け夕立や沙羅双樹サリー
夕立過ぎ捜す変化や吾の中に百日紅
夕立や九回裏の逆転打さんなんぼう
惜敗の涙夕立のせいにして四王司
夕立の止んで大地の匂いかな塩風しーたん
夕立や渦巻くほどに中の川じきばのミヨシ
夕立やほつれ破けた雲の底じつみのかた
判決はまだか夕立地裁前篠雪
夕立や気まずさほぐれる帰り道島掛きりの
匂い立つ夕立のあと森の中島じい子
軒下にスマホゲームの子や夕立島田ユミ子
夕立やくるぶし隠す水飛沫霜月詩扇
夕立に邪気洗われて明日三十路霜月シナ
招布吹く夕立の間手水舎へ柊二@冨美夛
夕立を浴びさんざめく子どもらよ柊瞳子
夕立や大地を冷やす風起きる正見
夕立や忘我を覚ます観劇のあと白井佐登志
半分に割るビスケット止む夕立白石鈴音
夕立や出発ロビーひとひとひと白石美月
夕立の追っ掛けて来る帰り道白井百合子
速度上げバイクの逃げる夕立雲四郎高綱
夕立の止むを待つ人待たぬ人しわしわ
がなる歌も下り坂と白雨に消え西瓜頭
夕立来る家まで5kmだ大腿筋末広野暢一
夕立や後れ毛ゆれる舞妓はん杉浦あきけん
夕立のペトリコールや今は昔杉本果ら
夕立やけふは水遣り休む畑杉森大介
夕立の狭間を縫いて飛び初むる涼風亜湖
夕立を駆け抜けてゆくケッタマシーン 自転車のことらしい…鈴木縦横女
夕立にタオルで迎える人はなく鈴木秋紫
風情なき今日この頃の夕立かなすずきじゅん
かなしかりけり夕立の傘の重く主藤充子
芝の庭夕立去りて輝けり数哩
伊予節のからくり時計夕立雲須磨ひろみ
夕立や猫の喧嘩に水をさし静江
言い訳は夕立の音にかき消されせいしゅう
十八歳娘の機嫌夕立や星夢光風
夕立の清し買い物小走りにそしじみえこ
猫の駆る近道狭し夕立かなそまり
夕立にしなる傘と及び腰邨虚空
夕立のランドセル待つ祖母とタオル駄詩
夕立の茎したる水伴いつ大康
夕立よ流れ去れよと捨てし恋大ちはる
屋根打つや礫の夕立頭痛消す平たか子
傘の下夕立のみの無音世界高上ちやこ
見舞夫を引きとめてゐる夕立かな高尾一叶
夕立避けコンビニ甘味決めあぐむ高田博子
夕立やポタジェのリーフタップダンス高辺知子
生ぬるい風が呼んだか夕立を高橋紀代子
独り居や夕立の音鳴り止まず高橋こう
夕立のまだなすがまま野球場高橋寅次
夕立や瀬戸の島々瞬で消え高旗三紀子
内見の土の匂える夕立かな高原としなり
夕立に来るはずもない母を待つ田上コウ
夕立の名残りの雫楠木立高見正樹
傘好きの棚や夕立のシェア書店たきるか
校庭に幕降りるごと夕立かな太之方もり子
白雨白雨あの言葉のリフレインただ地蔵
バイク便夕立追ひつ追ひ越して糺ノ森柊
一つ軒目礼交はす夕立かな多田知代子
夕立抜けこの道の先君の街ただひとり
夕立がつくる静穏土のにおい立花かおる
夕立も良きかな街は白烟りたていし隆松
夕立を好きだったころ貴方をも谷相
うらがへるこゑ夕立のどこからか谷斜六
夕立やシャワー気分ではしゃぐ子ら田畑せーたん
パレードの青き衣装や夕立晴田畑整
夕立や二度フリーズのWeb会議玉響雷子
夕立や軒下さげるおまじないちくりん
夕立あと箒片手の小半時智幸子
帰宅部傍観夕立のサッカー部千歳みち乃
子は行きぬ夕立過ぎて夫婦茶碗茅野ともぞう
夕立止むまでと言い訳君とカフェ千夜美笑夢
夕立や人それぞれの匂ひかな月城龍二
夕立だ想像の画に安堵感月ノイス
夕立がはじまる一滴トタン屋根月見里ふく
窯町の夕立に宿る軒の下辻美佐夫
夕立や軒下に交はす誰彼ぞ辻本四季鳥
夕立や閃光に首すくめおり津幡GEE
土と葉の匂い濃くなるゆだちかなつぶ金
夕立や客遠巻きの自動ドアツユマメ・広ブロ俳句部
夕立を雲見て予測ずぶぬれに手嶋錦流
地下鉄に濡髪増えて知る夕立テツコ
さまざまの顔見合わせて夕立かな哲山(山田哲也)
夕立や会いたき人の居ればこそ徹光よし季
もう少し君と居らるる夕立かな土井あくび
夕立の過ぎし街路樹傘さして東森あけば
真ん丸のオート三輪夕立晴ときめき人
夕立の道の向こうは道濡れず徳庵
玉石の焼けし匂ひと夕立来戸口のふっこ
夕立や仏頂面の逆上がりとくねん
夕立に地球の怒り感じをり富永武司
立ち漕ぎの野球部の子等夕立雲戸村友美
夕立のばっしゃばっしゃと五十分登盛満
夕立や就活スーツこれっきり富山の露玉
節水の懸念も消える大夕立豊岡重翁
夕立よ鎮まれ布団運ぶからとんぶりっこ
夕立を連れて駆けるや配達人頓堀頓
夕立やたった二文字言えもせず中中
沖見れば伊豆大島は夕立らし中岡秀次
夕立と疲れた車競い合い中澤孝雄
知らぬ子と相合傘となる夕立中島走吟
夕立や黒髪しぼるひがし茶屋中島葉月
夕立ののちの青空ペダルかな中原美香子
大夕立軒先借りる人と鹿仲間英与
夕立やハザードマップの隙をつき仲操
それでもいいと夕立の中塾へ中村明日香
夕立や我が胸の澱流し去る中村あつこ
夕立や今日に限って吹き出物中村雪之丞
夕立や水の恵みを身に沁みて流れ星
夕立の止むを待たずにはしゃぎ行く七五三五三
夕立に息飲む息をするものよ梨山碧
夕立を村営バスは粛々と夏草はむ
夕立やコーヒー冷めても降り止まぬ夏目りる
懐かしき雨の匂ひや大夕立ななかまど
白雨や心のシーン切り替わり奈保
波郷読本買って帰るや夕立来る生天目テツ子
ラス1のレンタル傘で夕立へ南無芽
雲怪しばらら屋根打つ夕立や奈良華咲
夕立やラッシュアワーの人いきれ南全星びぼ
喧嘩してカフェ出て飛び込む夕立へにいやのる
夕立が上がり天使が舞い降りるにえ茉莉花
夕立を追っかけダッシュアンツーカ西尾至雲
電線に身動かぬ鳥夕立中西尾照常
肌という肌打つ夕立へ走る二重格子
夕立に苛立つ新米監督二十八
夕立来ぬ人気バーガー喰む車内入道まりこ
夕立を走りて夕立の子になりぬ庭野環石
夕立のやつが曲げつる単語帳布川ユウリ
夕立やせがむ七羽の声のまれねがみともみ
激しさに支柱傾く大夕立猫辻みいにゃん
一刻ほど夕立に待てと茜富士農鳥岳夫
夕立や追っかけられて飲み込まれ野瀬博興
夕立や相々傘の手あったかいののクラブ
言いかけの台詞カットの大夕立野の小花
夕立の境踏み越えゆだち浴ぶ野原蛍草
眼前を真白に変えて夕立来白雨
夕立がやってくるぞとホイッスル白山一花
夕立や天地に力送り込む白山おこ女
軒下の鉢も浴びたし夕立かな橋爪利志美
夕立やロマンス無しの雨宿り橋野こくう
夕立が病窓叩き奮い立つ波止浜てる
夕立を溜めはじめたる峰の道橋本有太津
夕立に煙る山並み八ヶ岳馬笑
天平のいらかを叩き夕立去る羽住博之
夕立や待合小屋のコミュニティー蓮見玲
夕立や走り出す人歩く鳥畠野案山子
夕立や新旧混ざる紙幣なり葉多豊
夕立やICUの電子音葉月庵郁斗
降灰の街洗いたる大夕立初野文子
女工哀史峠に白雨身の打たる花岡淑子
夕立の雨粒眺めひとり猫花笠きく
包丁のリズムずれゆく夕立かな花南天あん
夕立や身体でおほふ宅配人花はな
ゆだち後の暴力的な花気満ちて花彼岸
夕立きてロールアップの白き脛(すね)英凡水
木漏れ日ののち夕立を浴びにけり英ルナ
白雨のなかに成りたき吾のあり花水木
夕立や楽しむほどの音でよい羽馬愚朗
リハビリの焦り静まれと夕立はむこ
満水御礼夕立あとずさり林典子
夕立や赤提灯へ進む足原島ちび助
繋ぐ手と手の隙間にも夕立は原田くろなつ
夕立止みさよならの声響きをり原田民久
夕立止んで水溜りへジャンプ原善枝
夕立や吾子はちいかわ抱き寄せて春あおい
夕立さり花重たげに風を待つharu.k
参道のゆだち匂ひて下駄濡れてharu_sumomo
夕立に戸惑う車で道行かぬはるのうらら
夕立やスマホに知らぬ姉のをりはるの風花
夕立や君の袖引く軒の下はるるん1号
夕立の過ぎてビル街みずみずし柊琴乃
夕立や草の匂ひに憶ふひと東沖和季
夕立や白球磨きミーティング東原桜空
夕立や過呼吸気味の土湿り東山たかこ
其方此方のいのち顕る夕立あと匹田小春花
追ひつくや叡山電車打つ夕立樋口滑瓢
オーディオのツマミを右に夕立よ火車キッチンカー
斐伊川を跳ねる夕立は水龍ピコリス
夕立に胸のもやもや解き放つひすい風香
夕立や土管にこもる土いきれ一石劣
夕立来るビニルハウスの西の角日吉とみ菜
ゆだち去り立ちのぼる湯気アスファルト平井千恵子
夕立や負けて水吹く排水溝平松一
夕立や焼け木杭に火が付かず比良山
夕立の音も聞こえず九階病棟廣重
夕立を滝行として般若湯広島あーやあーや
夕立や甘味処のセーラー服広ブロ俳句部三日余子
夕立きて東屋昔に碧き恋琵琶京子
少女から駆ける夕立無鉄砲フージー
尼寺にゆだち降りしき邪気払うFUFU
窓開けて夕立のあとの風を嗅ぐ福井桔梗
軒下のもだも縁の夕立かな福川敏機
遅刻魔を待つ間に一句夕立来福前彩芽
病室の外は夕立飯は五時ふくのふく
夕立よ今はヒロイン気取らせて河豚蛇燕花子
豆腐齧る水遣りの〆に夕立福間薄緑
夕立や君の過去など興味ないふくろう悠々
夕立や東京弁の一年坊武幻琵離吾
夕立の匂いがすると亡き祖父が藤沢・マグネット
母猫の声くぐもりて夕立来る藤原涼
夕立や傘のふたりの背を追ひて藤村かやこ
夕立や一会の人と軒の下藤本だいふく
夕立に恐竜鳴くやジャングリア藤原訓子
君乗せぬまま夕立の教習所風友
明るさの戻り夕立ドラマ完古川しあん
夕立や遠き山並み隠しをり古川しげ子
夕立が運びし別れ跡もなく古澤久良
カフェすすりまだ止まぬかと待つ夕立古谷芳明
夕立いざシャンプー持って庭へ出ろべびぽん
夕立にホースは花壇虹を待つ鳳凰美蓮
夕立や手間どる傘のもどかしく芳醇
夕立や片袖ずつがびしょ濡れに峰晶
夕立を嗅ぎ分ける猫か細くてほうちゃん
夕立や熱い神輿に叩きつけ暮戯
犬の耳ぴくと動きて夕立来る細葉海蘭
はよ帰れ用無き人を帰す夕立北海道県民
夕立や抱く子にかざす茶封筒歩帆
夕立よ悪を洗い流しちまえ堀卓
袋に玩具詰め終えると夕立本気のめんそ
深山路に夕立の気配風騒ぐ本間美知子
夕立に泣く児走る児空見る児凡狸子
僻村の空ことも無し夕立あと前田冬水
夕立や大樹の中に鳥と人牧場の朝
ぐちやぐちやに心乱れし夕立かな槇まこと
夕立過ぎパンダのみやげ買う上野牧茉侖
夕立や肘付き眺め蕎麦湯冷めまこと(羽生)
駅までの百米の夕立かな町田思誠
夕立を横に眺める膝枕松井酔呆
夕立やとっさに逃げる軒下に松井英雄
わだかまり洗い流せる白雨かな松浦姫りんご
夕立で眩しく光る愛車かな松岡才二
夕立やハッピーアワーで雨宿り松岡さつき
夕立を見遣る湖澪つくし松尾祇敲
夕立や駆け抜けるごと母逝きぬ松坂コウ
父の忌の読経かき消す夕立かな松平武史
軒下に野良と並べる夕立かなまっちゃこ
夕立に願かけてみる車窓から松知
夕立や両手を塞ぐエコバッグ松野蘭
夕立や大口あけてあふぎみる松本厚史
夕立やたちまち無人の町静か松本牧子
夕立や胸のすくさま駅で待つまやみこ恭
夕立やナンジャモンジャに雨雫真理庵
夕立や母の車で下校するまりい木ノ芽
夕立は世の禍福のやう六十路にてまりおR
夕立じゃあない線状降水帯万里子
夕立や熱きシャワーに濡れた髪丸山隆子
ビル街をざんと覆ひて大夕立美衣珠
閉じ込めた想い降り消せ銀夕立みおなかさほ
夕立にも金管止まぬ音楽会三日月なな子
夕立来て触れぬ優しさ知らぬ人三上栞
夕立や今日のノルマの三千字三河三可
夕立の噂ばかりで過ぎにけり三木崇弘
G1の牧煙らせて大夕立三茶F
夕立の止むまで聞きし身の上を三崎扁舟
夕立のみるみる浸みるアスファルトMR.KIKYO
失恋を予期したやうな夕立かな水巻リカ
そぼ濡るるも楽しみのうち夕立来ぬ三高姫
夕立に降車ボタンを押せぬバス三田忠彦
アラフィフのバイト面接夕立来巳智みちる
夕立や八百屋の椅子借り雨宿り美津うつわ
お出ましの道となる明日夕立晴満生あをね
夕立に打たれ打たれて心晴れ光月野うさぎ
紛争禍隣町から来る夕立美月舞桜
三叉路に別れて夕立を駆ける満る
夕立や猫の遺影のことり落つ水上ルイボス茶
夕立や瞼の裏の我が生家皆川知洋
夕立や君と出逢った雨宿り湊かずゆき
夕立に学生服の匂いけり嶺乃森夜亜舎
夕立中医師の叱責子の涙みはやななか
夕立の図書館を出る傘はなし美村羽奏
夕立や「好き」も「嫌い」も隔てなく三群梛乃
白杖の人も等しく夕立中宮井そら
迫り来る夕立黒き雨柱見屋桜花
人波を退け夕立へ踏み入りぬ宮坂暢介
ゴッホ展出づれば上野夕立中みやざき白水
補聴器はいらぬ夕立は聞こえとるみやま千樹
夕立や波板叩く音楽し美山つぐみ
夕立や咲きそびれた花を打つ宮村寿摩子
傘へととんやがて連打の夕立かな無弦奏
夕立や忘れてた人を思い出す向田敏
口論の後を取り持つ夕立かなムシ・ミカミ
幻のやうな夕立みづたまり睦月くらげ
夕立の去りて遠くの樹々光る村上の百合女
夕立やもう少しだけ待ってみる村先ときの介
夕立が背中押してるランニング村田真
夕立や置いてけぼりの泣き走り暝想華
かんかんかんカートレインに夕立が冥亭
よその子に軒先貸すや大夕立恵のママ
夕立や憤怒の神が身を打ちぬ目黒青邑
救急車のサイレン白雨切りさきてメディックス千里
夕立とて揺らぎなきさま応援団望月ゆう
夕立に負けじとドラム叩きけりmomo
一見を拒む軒下踏む夕立もも
かっこよく濡れてみたくて夕立や百瀬はな
濡れ髪の雫ひやりと夕立あと森海まのわ
遮断機の点滅煽るよな夕立森上はな
夕立や水墨画なる三毛の猫森きやつか
夕立や宇治へ急いでゐるみたくもりさわ
乳飲み子の寝息を包む夕立かな森茂子
夕立や妻のピアノも気配無く森嶋ししく
病室の窓ひろびろと夕立あと守田散歩
傷ついて全速力で夕立を森太郎
夕立や不機嫌な吾子菓子で釣る森野恵
夕立や乗り換え駅に人の波森葉豆
夕立にスカートの折ほどけゆく森日美香
自転車の背にしがみつく吾子夕立森茉那
夕立晴生色戻る潦森毬子
夕立の柱1本2本3本諸岡萌黄
夕立や改札前の人だかり八木実
子ら遊ぶ夕立あとの水たまり矢車星風
マイカーの突入するや夕立に矢澤かなえ
夕立と主急がすレジの列安元進太郎
夕立が会えない理由になった君痩女
夕立やあっけらかんと水いずこ柳とうふ
夕立にござ仕舞ひたる貴船川野風庵
洗い立て夕立の後参拝す山内文野
片時の雲や夕立をつくねんと山河穂香
期日前投票済ませ夕立かな山川腎茶
帰途急ぐ我が家の辺り夕立か山川たゆ
夕立のすんでにぎはふ病舎窓山口雀昭
夕立のあとの匂いを嗅ぎに出る山口愛
夕立や傘を我へと君走る山崎のら
夕立がかき消す窓辺の長電話山下智
夕立や爺と孫との駆け比べ山下義人
夕立や猫抱きしめて丸くなり山育ち
猿知恵の泡と消え去る夕立かな山田季聴
巴里は夕立魔法の言葉ボンソワレ山田啓子
大夕立ビル一斉に丸洗い山田好々子
夕立を切り裂き駅へあと十秒山田翔子
夕立や向こうの空は明るくて山田はつみ
夕立を見上げるあの娘試合前大和杜
本当はありがとうなの夕立君山野花子
草光る夕立晴の原爆地山葉元気
夕立や繰上げ受給決めた吾は山本八角
君拗ねて泣いて笑って夕立来て山本美保
夕立や水溜り踏むスニーカー山本葉舟
夕立に仕事を置きて酒手にし山森風雅
夕立やお下がりの折り畳み傘ユキト
夕立や客のまだ来ぬ焼鳥屋雪鶏
夕立やひとり勝手に旅立ってゆすらご
夕立のあとに門扉の軋みたり柚木啓
夕立にかき消されるやひといきれ夢一成
夕立やまた腰下ろし開く本陽光樹
夕立や雨音響くトタン屋根横田信一
ダダダダダ射抜く夕立アスファルト横浜J子
夕立や荷物まみれの非常口横山ひろこ
夕立に暫し軒下野良仕事横山道男
夕立や隣の溝に大河ありよしぎわへい
夕立や佳境に入るミステリー吉田蝸牛
鯉登らんとす大夕立の壁余田酒梨
夕立も青春の色甲子園吉藤愛里子
夕立や境目のあり傘畳むYoshimin空
畑にはお湿りだけの夕立かな米山カローリング
夕立に追いかけられて追い抜かれよみちとせ
夕立の潔きかな雲消ゆる楽和音
夕立やこの雨粒が愛ならば楽花生
禊ぐかのつゆ身動かぬ白雨のをんならん丸
風物を一纏めにして夕立かなリーガル海苔助
夕立の公園にただ童像料善
夕立や騒ぐ姉弟傘ひとつ麗詩
夕立のひとときのまに身を休め麗仙
夕立やくつした二足と帰りけり蓮蛙尺子
夕立に追ひ付かれたり陸上部若林くくな
夕立や革のバッグはシャツの下わたなべいびぃ
夕立や銀火花咲くアスファルトわたなべじゅんいち
今に来るあやしき影の夕立かな渡邉花
匂ふ気配家に入るなり夕立来る渡辺陽子
おまえやましろくけぶりて夕立来和脩志
夕立の上がりてのぞく小さき歯わをんはな
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
◆俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物による複数俳号を使った投句は、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。
●兼題とは
田舎なし墓参りなしの転勤族桐生のたんぼ
本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「夕立」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。
バケツ雨流れた後に虹の橋 you人
「夕立」をイメージして書いたに違いないとは思いますが、バケツ雨で夕立とするのは、無理があります。これは、むしろ「虹」の句ですね。
●季重なり
夕立やひとときの涼あたえけりせいだるま
夕立ちて蝉の声だけ息をのむでこもん
朝に夕立雲が切れ蝉がなく 香芝源
夕立ちや軒下のアリ2倍速坂本月歩
夕立を待ちくたびれて泣くカエル月夜案山子
夕立過ぎ祭囃子に露店の燈てつねこ
夕立のあがりて高し虫の声 田中忠明
夕立を言い訳にして午睡かな石堂多門
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「夕立」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●季重なり? 比喩?
夕立に座す蛙翁や祖父の通夜YOKOCHAN
「蛙翁」は、蛙の擬人化でしょうか。「夕立」は夏、「蛙」は春の季語なので、季節的にも無理があります。
●表記
夕立ちや後ろ姿の子の濡れて石井久次
夕立ちや一瞬鼻に鉄臭ささかたちえこ
夕立ちや満点テスト握る駅素敵な晃くん
夕立ちやジュンク堂まで一走り西村小市
夕立ちや時宜を得たれど風情なしみかりん65号
夕立ちや景色は白内障めきてリコピン
夕立ちの情け容赦なき仕打ちあすなろの邦
夕立ちですめば都と二季の国ケビンコス
夕立ち去り空ひろびろと牛の声福ネコ
西の浜黒く迫りて夕立ち来る逢來応來
夕立ち止み雨粒空へ戻りゆく霜川このみ
心地よし水車音消す夕立ちかな風かおる
一面に折り鶴おどる大夕立ちくちなしの香
波は際夕立ちてみな白く消ゆ芥川春骨
「立つ」という動詞は、「立つ」「立ち」等の送り仮名がつきますが、名詞としての「夕立」は送り仮名は不要です。
夕立晴れ異国の土地が現れるアシツノカラ
夕立晴れ遠き二上山濡れそぼつ荒木ゆうな
夕立晴れ明日咲くのはあれとそれ理佳おさらぎ
夕立晴れ洗濯物の滴悲し月光一乙
「夕立晴れ」という表記は、「夕立(が)晴れ」の意かもしれませんが、これも「夕立晴」と書くことをオススメします。
●仮名遣い
夕立や砂場にささってゐるシャベル 加賀くちこ
「ゐる」は歴史的仮名遣いですから、「ささって」の部分も歴史的仮名遣いで「ささつて」と書かなくてはいけません。一句の仮名遣いは、歴史的仮名遣いor現代仮名遣い、どちらかに統一する必要があるのです。
夕立の川を超へ来て我を超へ 則本久江
口語「超える」は、文語で「超ゆ」。これは、ヤ行の動詞ですので、「超へ」とハ行にはなりません。「超え」ですね。
●切字の重なり
夕立や一息つける暑さかな柳平眞佐子
夕立やその雲だけの遊びかなtabei白芙蓉
一句に「や」「かな」と切れ字が重なると、感動の焦点がブレるため、嫌われます。どちらかを外して、整えてみましょう。
●説明とは
温暖化かつて夕立いま豪雨青橘花
夕立と豪雨に令和の怖さ知る樺久美
夕立や災害過る強い雨高橋基
夕立や今はゲリラと名乗りけりてん子
夕立や今や風情もありはせぬ雅蔵
これらの句は、「夕立」というものを説明したものになっています。俳句は、説明ではなく描写であることを考えてみましょう。
●今月の選外
季語を説明してしまった句を始めとして、「夕立がいきなり降る」「夕立で雨宿りする」等、類想そのものの句は選外としました。また、文法的に問題があるもの、句意が読み取りにくいもの、造語の意味が汲み取りにくいもの等もありました。選外となった理由を考えて見ることも、俳筋力アップのための有効なトレーニング。是非、復習してみて下さい。
お待たせしました!7月の兼題「夕立」の結果発表です。今月も夏井先生からのアドバイスは必見です。夕立は、夏の午後から夕方にかけて突然降る激しい雨。夕立が見せる劇的な変化には驚きや新たな発見がありますね。9月の兼題「蜻蛉」もぜひご応募ください。(編集部より)