夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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7月の兼題

「夕立」

5月の審査結果発表

兼題「涼し」

 お待たせしました!5月の兼題「涼し」の結果発表です。今月も夏井先生からのアドバイスは必見です。「涼し」とはどのような情景を表しているのか、実際に初夏の風や木陰を歩いてみると、心地よい爽やかさが五感に広がり、まさにこの季語の魅力を肌で感じることができました。風の音や葉の揺れを観察してみると、新たな気づきがあるかもしれませんね。7月の兼題「夕立」もふるってご応募ください。(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
鰭涼し水をみづへと孵しつゝ

古賀

夏井いつき先生より

「涼し」は三音の季語ですから、「朝涼し」「夕涼し」などの時間情報、「町涼し」「島涼し」などの場所情報を添えるバリエーションが可能ですが、掲出句「鰭涼し」のクローズアップは実に効果的です。この五音だけで、魚の動きが見えてくる鮮やかな上五です。
 とはいえ、一句の眼目は中七下五の表現。「水は」魚が生きるために必要な、当たり前に存在しているものですが、鰭が翻ることによって、(「みづ」と表記された)まるで別物のような動きを見せる。光の瘤のような小さな水流のさまを「みづへと孵し」と捉えたこと自体が詩です。「孵しつゝ」という切れの無い下五は、鰭の動きの丁寧な描写ともなっています。季語「涼し」と「水」はありがちな取り合わせですが、描写の精度によって、このような詩的リアリティを獲得できる。お手本のような作品です。

地
貝塚に貝踏む音の涼しさよ

彩汀

「貝塚」は、食べた貝の捨て場ではなく、全ての生き物の墓地=神聖な場であったという説もあるようです。踏んでしまった「貝」の砕ける音に「涼しさ」を感知する俳人の耳。助詞の使い方一つ一つに心遣いが読み取れる一句です。

二軒目へ外湯手形の鈴涼し

沢拓庵◎いつき組カーリング部

 何の「二軒目」か? との答えは中七「外湯手形」にありますね。上五「へ」という助詞の効果、更に「外湯手形」というモノから「鈴」へのクローズアップなど、丁寧に構成されています。下五「鈴涼し」の韻の響きも真に涼やかです。

いさかひを立ちて厨のみづすずし

滝川橋

「いさかひ」の場から、思わず立ち上がったのです。「厨」の一語から、諍いの相手は家族の誰かではないかと想像できます。意味もなく洗った手。その「みづ」の涼しさに心がクールダウンしていく。こんな「すずし」もあるのですね。

ラジオ体操涼しく伸びる百の腕

花南天あん

 朝の「ラジオ体操」です。「涼しく」という措辞は、季語としての皮膚感であり、揃って「伸びる百の腕」を眺める実感でもあります。下五「百」という数詞が映像としても効果的。当然ながら、ラジオ体操の曲も涼しく聞こえてきます。

をちこちにマージャン牌を掻きて涼

槇原九月

「をちこちに」という措辞から、中国の光景を思いました。あちらこちらの木陰で麻雀に興じる人々。「マージャン牌」をまぜるあの煩げな音を「涼」と感じ取った点に、作者独自の真実味があります。「涼」と止めたことも良き判断です。

人
  • ハッカ油の涼しき怒り青き空ギル

  • 寡婦といふ身を涼しともさびしともにゃん

  • 三十人の客をもてなす皿涼しゆすらご

  • 涼しさや若狭の山に良き仏清水縞午

  • 骨として拾ふ生家の釘涼し藤里玲咲

  • 花束の波長涼しき海の色陽光樹

  • びんぼふといふ涼しさの畳かなRUSTY=HISOKA

  • 涼しさや薬師如来のゆびの先彷徨ういろは

  • 微笑みに弥勒菩薩の指涼し塩風しーたん

  • 南無観世音菩薩様涼しけれGONZA

  • 口唇に漏る涼しさよ観音像葦屋蛙城

  • 御仏の伏し目涼しく吾を包む蛙里

  • 龍の眼の涼し虹梁うねりたるろまねす子

  • 捌く手へ涼しき眼実習生明日ぱらこ

  • 波音や競りに魚の眼も涼し伊ナイトあさか

  • アロワナの眼涼しき個展かなげばげば

  • 剥製の鳥のガラスの眼や涼しきみづちみわ

  • セロ弾きの瞳の奥の涼しさよあすなろの邦

  • 源氏読む高校生の眉涼し雨霧彦(木ノ芽)

  • 棟上げや若き大工の眉すずしおおい芙南

  • 望洋の波は岸まで足涼しアーモンドよーせい

  • 涼しさや肩甲骨に畳の目藍野絣

  • 大社朝涼千二百五十年逢花菜子

  • 涼しさや葉音カノンの風入れる逢來応來

  • 本堂の涼しや響む阿弥陀経青井季節

  • 渓谷を深黄の鳥のこゑ涼し青居舞

  • 片足の失くて涼しき土偶かな蒼空蒼子

  • 夕涼し聖母の前の拝み銭青野すみれ

  • ビー玉に透かす逆さの街涼しあおのめ

  • 立石寺涼しき巌に歩を止めり赤尾てるぐ

  • 拝殿の梁の檜の香の涼し赤富士マニア

  • たたら場の村下(むらげ)の笑みやなほ涼し赤目作

  • 無重力状態涼しきまなうら秋桜みりや

  • 涼しさやゴシック体の水平線空地ヶ有

  • 涼しげなる二軒向こうの歌を待つ昭廣凡字

  • 比叡山涼し湖面を遠目にし秋山らいさく

  • 精算機涼しき声で「お大事に」あさぬま雅王

  • 涼しさや軋まず抜けるいろは坂あさのとびら

  • 十二部屋涼しくベッドメイクせり浅乃み雪

  • 書き込みで埋まりし楽譜音涼し朝日雫

  • 母校より涼しきサ行活用形芦幸

  • 寺涼し何処にゐても仏の眼あじさい卓

  • 木洩れ陽や切り初む吾子の髪涼し飛鳥井薫

  • 泥に熱残して夜の田の涼し藍創千悠子

  • 夕涼や選手と同じユニフォームあたしは斜楽

  • やることをやり終へ涼し茉莉花茶足立智美

  • 龍の爪一指手水に濡れ涼しあたなごっち

  • トレモロの指先かろし宵涼し我孫婆

  • 墓のこと話して涼し猫を抱く阿部八富利

  • 葉書に風車描くインクの青涼しあまぐり

  • 被爆瓦沈む川面の風涼し雨戸ゆらら

  • イヤホンを外せば自習室涼しあみま

  • 涼しさや一歩踏み出すかずら橋雨李

  • バレリーナこむら涼しく弧を描く綾竹あんどれ

  • 先輩の「ふ」の字が好きで風涼し綾竹ろびん

  • 吊橋涼し湯の香連れくる筋の風あらかわすすむ

  • 噴水の数式涼し海を背に在在空空

  • 転職は凶の占ひ路地涼し安春

  • 解体の終えて更地の涼しけれ杏っ子

  • 涼しさよつんと衣紋の抜き加減井若宙

  • 涼しさや尾灯遠のく四車線飯塚煮込

  • 山門の涼借り凛と歩き出す飯沼深生

  • 森の香の涼しき書架や収まりぬ飯村祐知子

  • 朝涼やアイロン消しゆく皺の波池田桐人

  • 馬乳酒に涼しき風を織り込みぬ池之端モルト

  • 畳とは涼しきものぞ尻を置くイサク

  • あの角を曲がると涼し裏道へ伊澤遥佳

  • やうやく涼し夜半の畳に身をほどく石垣エリザ

  • 発表を終えて机の涼しけれ石川穴空

  • 白神山のどこに入りても涼気かな石塚碧葉

  • 天袋空けて涼しき母の家石塚彩楓

  • 御見送り空のベッドの涼しさよ石の上にもケロリン

  • 乙女らの横顔涼し英単語石原しょう

  • 風涼し町一望の墓洗う石原花野

  • 転生を思へば涼し鳶の空石村香代子

  • 夕涼の船やをんなの桔梗色いずみ令香

  • 舞ふ巫女のあぎと涼しく尖りけり石上あまね

  • 夕暮れの空のノイズが涼しくていたまき芯

  • 寝返りを介助涼しき窓の月市川りす

  • 開店の三越お辞儀の列涼し無花果邪無

  • 手のひらの翡翠涼気を放出す一秋子

  • 採精を終へて涼しき牛の貌伊藤映雪

  • 涼しさや母の実家の太柱伊藤順女

  • トロッコや山肌覆ふ蔦涼し伊藤柚良

  • 北斎の飛沫涼しく美術館伊藤小熊猫

  • 「我が祖国」のハープ水音めき涼し井中ひよこ号

  • 青年の音色涼しきカンパネラ井上れんげ・いつき組広ブロ俳句部

  • 涼しさや薄水色の子犬の目井納蒼求

  • 斎王の袴緋にして夜涼かな猪子石ニンニン

  • 涼しいと書くさんずいの涼しさよいまい沙緻子

  • 涼しさや庭を残して引越しす井松慈悦

  • 投げ釣りの涼しく伸びる糸なりき妹のりこ

  • 底辺に高さを掛けて屋根涼し伊予吟会宵嵐

  • 薄墨の行書の名入れ涼しけれ岩清水彩香

  • キッチンの鱗と思う涼しとはうえともこ

  • 会釈するうなじ涼しや延暦寺上野眞理

  • 雀来て涼しき雲の航る朝上原淳子

  • 茶屋涼しお薄いよいよ甘やかに鵜飼ままり

  • デメニギス捌けば過去の涼しさよ兎森へる

  • 引越やこんなに広々と涼しうた歌妙

  • プリーツの折り目も涼し女学生宇田の月兎

  • 落書きを残し夜涼の無人島空木花風

  • 一辺の大地涼しき地鎮祭空木眠兎

  • 夫も子も送り出したる土間涼しうつぎゆこ

  • 雪岱(せったい)の細き柳の線涼し靫草子

  • 涼しさやパンダのいないパンダ館宇野翔月

  • 海原を模して涼しき寺の苑海口竿富

  • 寝たきりの母のモニタや音涼し海沢ひかり

  • 仏間はいつも涼しい父の匂ひ海野青

  • 風涼し遺骨と歩く父の郷梅里和代

  • パレードや山車の引き手の声涼しうめやえのきだけ

  • 涼風や「おおきに」飛び交う寺の市麗し

  • 揺れる影涼し朽ちゆくトーチカよ江川月丸

  • 涼しさや球児の礼の深々と蝦夷やなぎ

  • 風涼し骨伝導で聴くバッハ越冬こあら@QLD句会

  • 凉しかろ架空の島を造るなら絵十

  • ふっと涼しハリーコールの夜勤明け榎美紗

  • 本堂は涼しご本尊に会う榎本奈

  • モネの絵に涼しき風のありにけりえりべり

  • 銀鼠の装束涼し立行司ANGEL

  • 晩鐘のラの音涼しき園城寺近江菫花

  • 涼しさやカッターの刃をひとつ折る大岩摩利

  • おあさじに椅子の二つや涼しけれ大久保加州

  • 風涼し失せしものみな失せしまま大越総

  • 涼しさに追ひ越されけり雨後の道大嶋宏治

  • 天井の節を数えて涼しさよ大竹八重子

  • 涼しさやしばらく何もない畑大和田美信

  • さざ波の色の違ひて夕涼しおかえさき

  • 涼しさや富士に登らば富士見えず可笑式

  • ちさき貝涼しき海を耳元へ岡田恵美子

  • 子の呉れし土産涼しき彩なせり岡田雅喜

  • 涼しきのつどひて生るや奥の宮男鹿中熊兎

  • 川音に起きて涼しきあしたかなオカメインコ

  • 沖望む龍馬の像や涼気過ぐ岡山小鞠

  • 雨後の空ギリシャ国旗の涼しけれ小川さゆみ

  • 弧を描く釣り竿強し波涼し小川しめじ

  • すれ違ふ下山の娘等の歌涼し小川天鵲

  • 涼夜かな寛解の睫毛生え初むる小川野雪兎

  • 父も母も逝きて袖吹く風涼し奥寺窈子

  • 涼しさやLINE最後に置く句点おこそとの

  • ガード下ひとり屋台の夜涼かな小田毬藻

  • 右に富士左に筑波橋涼しおだむべ

  • 石切りや涼しき水を裂きすすむおぼろ月

  • 涼しさやキリンの首のよく伸びて香依蒼

  • 合掌を交はし合ふ僧廊涼し火炎幸彦

  • 涼しさに古きテープの音歪む影夢者

  • そげんもんたい船人言葉や浜涼し風早杏

  • 新札に滑りて指の涼しさよ樫の木

  • 正鵠へ弦をはなるる矢の涼し華胥醒子

  • 音読の一編涼し俊太郎加田紗智

  • ゆよーんを追へば涼しき薄明蝸牛

  • 朝涼や生まれたばかりの空気食む花鳥風猫

  • フルートの高音きれい風涼しかつたろー。

  • 日暮るれば火星の風も涼しかろ桂子涼子

  • 迦楼羅食う煩悩のなき身の涼し桂葉子

  • 宿無くも風は涼しき旅の涯加藤水玉

  • 浮き球を吊つて涼しき舟屋かなかときち

  • 連泊客集う廊下の涼しきにかねつき走流

  • すれ違ふ人の涼しき会釈かな花星壱和

  • 涼しさや北緯四十五度の空釜眞手打ち蕎麦

  • 人よりも涼し配膳ロボの声神島六男

  • 焼き入れの湯気を纏いて刃の涼し神長誉夫

  • 日本丸総帆展帆涼しかり神谷たくみ

  • 涼しさや地下壕秘する憩いの森紙谷杳子

  • 涼しさや瑠璃の器に何を盛る亀岡恵夢

  • 芭蕉布は音まで涼し雨止みぬ亀子てん

  • マネキンの閉じぬまなこの涼しさよ亀田かつおぶし

  • 脱け殻が一つ落ちてる涼しさよ亀山酔田

  • 老犬は平たく眠る今日涼し加裕子

  • 午前四時涼し夜勤にバンテリンカレー亭章之輔

  • 涼しさや虹の形の土踏まず川越羽流

  • ほほえみて乳歯一本分すずし川代つ傘

  • 天球儀の影の涼しき書斎かな翡翠工房

  • 風涼し教科書に描く君の顔河村静葩

  • ライブはね見上ぐ夜空の気や涼しきカワムラ一重

  • 「雀刺し」炸裂したり風涼し干天の慈雨

  • 藍色の螺旋涼しき試し書き喜祝音

  • 城涼し外つ国人が下駄の音如月ゆう

  • 軽装の周知も涼し社内報岸本元世

  • 涼しさやビシソワーズに散る小葱岸来夢

  • 図書館の椅子に涼しき孤独かな北大路京介

  • 涼しさや空の家畜車洗ひ終へ北野きのこ

  • ひとり夜は涼しミルクを温める北乃大地

  • 白孔雀涼しき羽を広げをり北村環

  • 蛍光ペンすうっと引き終へて涼しきなこもち

  • 月涼し肺を綺麗にしませうか城内幸江

  • 髪結いて涼しきうなじ並ぶ寄席木下風民

  • 笊盛のうどんの「う」が涼しさう木ぼこやしき

  • 写経せる文字のかすれの涼しけれ木村カズ

  • ダヴィンチに命預けて涼しさよ木村信哉

  • 面外し「黙想」「直れ」「礼」涼し木村となえーる

  • 痩せて映る床屋の鏡涼しけれ木村弩凡

  • 夕涼の祠硬貨と鬼ころしQ&A

  • 涼しさよビー玉のいるビンの中鳩礼

  • 鏡文字に拾ふ活字の涼しさよ杏乃みずな

  • 親許の下駄はいずれも涼しく薄し清島久門

  • 涼しさやラツセンのある骨董屋霧賀内蔵

  • 灼熱の鞴の羽口涼しき刃くさ

  • 蓮根の葉の波涼しチャリの旅久信田史夫

  • 涼しさよ刃文冴へたる日本刀鯨之

  • 漱石が頬杖ついて世を涼しむ楠田草堂

  • 鉄琴の失敗続きなお涼しくすみ輝く

  • 涼しさや鷺の冠羽のなびきたるくちなしの香

  • 三角の星座をなぞる夜涼かなくつのした子

  • 朝涼や白蛇の住む城下町國吉敦子

  • 灼岩の水の形せる涼しさよ曇ゆら

  • 風涼しハヤカワ文庫に枕して蔵豊政

  • 工場涼し造花千枚型抜かれ眩む凡

  • イーゼルの脚三本の涼気かな栗田すずさん

  • 「低頭」と柾目に墨の色涼し久留里61

  • 涼しさや水切り石のはねる音愚老

  • 純喫茶開けたるドアの音涼し黒猫さとみ

  • 車いす坂押し上げて風涼し桑田栞

  • かな文字の払いの所作や涼しけれくんちんさま

  • 羽根ひとつ涼しき湖を漂へり恵勇

  • 寝台や車掌の丸き声涼し月下檸檬

  • 百歳の母のうなじの涼しけれ健央介

  • 麻酔医の涼しきアルト無影灯謙久

  • 居合てふ涼しき風の狂気かなケント

  • 首のいぼ爪にとれたる涼しさよ剣橋こじ

  • 涼しきは厠の地窓築百年恋瀬川三緒

  • ワイパーの届かぬ粒に陰涼し公木正

  • バンジーの吹き上げ涼し揺れる橋河国老保忠

  • 空振りの半回転は涼しかろ紅紫あやめ

  • ガラスペン青いインクの染み涼し柑たちばな

  • 涼しさや和紙に透けたるくすりゆび幸田梓弓

  • 風鐸の青銅色の涼しさよこうだ知沙

  • 寺町の鐘一斉の涼しさよ宏楽

  • 文字凉し女房奉書のつづく線ごーくん

  • 所在なき木椅子を処分して涼しこきん

  • 千枚の棚田涼しく明けにけり木染湧水

  • 金婚の山荘アルビレオ涼し五島潮

  • 年輪の上涼しげに食器置く小林澄精

  • 風涼し改札抜けて友の来る小林のりこ

  • 惜敗の泪拭はぬ風涼し小南子

  • サイクリング涼しペットボトル重し今藤明

  • PayPayの音の軽くて涼しそうコンフィ

  • 稜線は涼しき雲のすべり台さおきち

  • 涼しさやカーブの長き滑り台さ乙女龍チヨ

  • しりとりをリスで始める涼夜かな酒井春棋

  • 跳ねて止む墨の香りの風涼し坂口いちお

  • 担ぎ手の地下足袋の紺涼しけれ坂野ひでこ

  • 点滴をとる静脈の青涼し坂まきか

  • 涼しさや鋲だけのある掲示板坂本雪桃

  • おもたせの和菓子ふるりと透け涼し咲世咲

  • 白檀のけむり涼しき一行詩桜鯛みわ

  • 風涼し星の舟揺れ波静か桜華姫

  • 朝食のクロワッサンの層涼しさくら悠日

  • 夕涼や土曜に撤去する遊具迫久鯨

  • 夕涼し途切れのリコーダー

    雑魚寝
  • 涼しさや和歌の草書の墨の跡佐藤恒治

  • 涼しさや強打者のなき草野球佐藤茂之

  • 人の無き東京涼し夜の明くる佐藤志祐

  • 呼び出しの涼しき声に拍手沸く佐藤俊

  • パーを出す指の付け根の涼しさよさとう昌石

  • この星の回る音して涼しきかなさとうナッツ

  • 漕がれゐてスワンボートの面涼しさとうゆうき

  • 銀の句集ひらけば銀の夜涼かな佐藤レアレア

  • 空つぽの左手薬指涼しサトサナ

  • 涼し涼しすっからかんの涼しさよ里山子

  • 涼しさや畳に茶筅おく休符錆田水遊

  • 神楽舞巫女振る鈴の音涼しさぶり

  • 難解なかお涼風のときてゆくさむしん

  • 補助輪のない自転車やベル涼し佐柳里咲

  • 達磨落しの涼しき首の残りけりさるぼぼ17

  • 海原を統べる金星朝涼し澤田紫

  • 砂時計を落ちゆく砂のあを涼し三月兎

  • 蚤の市スノードームのラメ涼し珊瑚霧

  • 休み田は見まい病窓涼しき日塩の司厨長

  • 涼しさはしゆろしゆろと鳴る万華鏡柿司十六

  • 読了や脳の涼しき皺のばす四條たんし

  • 朝涼や読まれずまわる回覧板じつみのかた

  • 廃村に落ちた隕石音涼し芝歩愛美

  • ルーヴルに翼の女神ゐて涼し渋谷晶

  • 帰宅して時計を外す涼しさよしぼりはf22

  • 庭の石ただ在るだけの今涼し島じい子

  • 涼しさやニコライ堂の翠屋根清水ぽっぽ

  • 天守閣涼しすずしと長居せり清水容子

  • 涼しさやピアスは慶良間の海の青霜月シナ

  • 松陰の坐りし石の涼しけれ下村修

  • 魚の眼の周りの甘き夜涼かなじゃすみん

  • 湯帰りは凉し一条戻り橋沙那夏

  • 断捨離を終へ一時の涼しさよ洒落神戸

  • 夕陽とかいう奴に泣かされ涼し種種番外

  • 家々に涼しき八歩水路橋シュリ

  • 涼しさやたばこをやめて十二年順之介@QLD句会

  • 手の鍼の斜めに揺れて夕涼しじょいふるとしちゃん

  • 涼しさにゆるく解かれ雲薄し常幸龍BCAD

  • すずしさや雨にショパンなどを流す正念亭若知古

  • 風力は千円分の涼しさよSEAN

  • ピッチャーへ山なりボール風涼し白石美月

  • 女てふ字に組む妻の脚涼し白沢ハジメ旧白沢ポピー

  • 理科室の化石涼しき二万年不知飛鳥

  • 火葬後に触れし柩の涼しさや四郎高綱

  • 涼しさや鴨居にこわき刀傷白猫のあくび

  • 拭き上げて空の涼しき青、転写白よだか

  • ジントニックの苦み涼しき神戸の夜ジン・ケンジ

  • 五箇山に涼しく紙を漉く暮し新濃健

  • 瘡蓋の痕の皓さや朝涼し杉岡ライカ

  • 辞表出し涼しき廊下闊歩せり涼希美月

  • ただ風の涼し加州のすべり台鈴木由紀子

  • 鼓動のごと富士の風穴涼しかり清白真冬

  • 物干しの襁褓は白し風涼し鈴野蒼爽

  • 涼しさや地下出口から僧ふたり主藤充子

  • 比叡山涼し比良山なほ涼し須磨ひろみ

  • 1kの新居や古希の空涼し静江

  • 少欲を旨とし暮らし涼しかり晴好雨独

  • 筆箱涼し消しゴムはソーダの香青峰桔梗丘

  • キャンプ品30キロや涼しげに星夢光風

  • デ・ラランデ邸の涼しきシャンデリア瀬央ありさ

  • 寂しいね涼しく酒をあおる喉瀬紀

  • 百の母大往生の顔涼しsekiいつき組広ブロ俳句部

  • 宇迦跳ねて枡は真四角夜涼し摂田屋酵道

  • 有線よりジャズの涼しく顔剃り屋せり坊

  • 炎から涼の生るるとんぼ玉千・いつき組広ブロ俳句部

  • 風涼し嘘を肴に夜の酒場そうま純香

  • 涼しさや金と王将うら真白草夕感じ

  • 浮世絵の摺り残したる白涼し外鴨南菊

  • 竹刀持つ構え涼しや白道着染井亀野

  • 白煙涼しやコンクラーベの臨界点蒼果草

  • 料金所抜けて涼しき田舎道たーとるQ

  • 涼しさや高層ビルに映る空

  • このひとの嘘をつかない涼しさよたいらんど風人

  • 語り部のかたり涼しき七五調高尾一叶

  • 谺する舳乗りの歌や月涼し高木音弥

  • 酔ひさめの印度の香や風涼し高瀬小唄

  • 鴎外を読む横顔の陰涼し高嶺遠

  • 羊羹に鋭利に光る涼しさよ高橋寅次

  • ナビに無き道行く旅や風涼し高橋ひろみこ

  • 朝涼の百句の視写を終えにけり高山佳風

  • 書写「月光」涼しき硯洗いをり滝上珠加

  • 涼しさや正方形の八畳間武井超凡

  • いりあひの涼しき鐘や湖しづかたけぐち遊子

  • ルーキーの四肢の涼しくゴロを捕るタケザワサトシ

  • 夕涼や癌病棟の恋談義武田豹悟

  • 旧姓で呼ばれ涼しき島の朝竹田むべ

  • 涼し涼し失敗なんてただの齟齬たけろー

  • 涼しくも美しき嗚咽や空家より多事

  • 古漬の樽まぜる手に塩涼したすく

  • 餌台の傾ぎて涼し廃校舎多数野麻仁男

  • 月涼し君待つ脚は根のやうにただ地蔵

  • 涼しきは夕べ床几の祖父の膝多田知代子

  • そばに居て涼しい人を選びなさい多々良海月

  • 指先の桂馬涼しき山崩し立田鯊夢

  • 両親の遺影はいつも涼しそう立石神流

  • 行列の大吊り橋や風涼し伊達紫檀

  • のぼり旗の尾びれのやうに風涼し田中牡牛

  • 舌の上「涼し」と言へば抜ける風谷斜六

  • 反物を広ぐる藍の縞涼し谷しゅんのすけ

  • 涼しきやひらがな多き妣の文谷町百合乃

  • 嘴を放るる水の輪の涼し田上南郷

  • 破風の間の小窓に城下町涼し田畑整

  • 夕涼や短時間雇用不採用田端由香

  • アドレスを交わさぬ別れ宵涼し玉家屋

  • 涼しさに夢は出口をひらきけり玉木たまね

  • 新生児室の窓拭く朝涼し玉野文

  • 涼しさや寒天ぬらす蜜の艶玉響雷子

  • コイン消し去るマジシャンの指涼し田村利平

  • 崩落の砂場トンネル涼しけれ丹波らる

  • 涼しさや子らそれぞれの林もて千夏乃ありあり

  • 仰向けの二の腕触れる畳涼し智同美月

  • 写経紙へ涼しき文字を並べをり千歳みち乃

  • 涼しきは前例統計捨てる時チャーリー・吉田

  • 祖母おらぬ病床夕涼の凹み彫刻刀

  • 涼しさや白きアメ車ののっぺらぼう千代之人

  • 古唐津の釉の流れの涼しさよつえりん

  • 闘病のなんと凉しき友の顔月の莵

  • 竹箒ざっざと巫女の背涼し月見里ふく

  • 梱包を解けば故郷の風涼し辻瑛炎

  • 皆と出る収骨部屋の外涼しつちや郷里

  • 涼しさや月のめまひの下にゐて津々うらら

  • 涼しさや紙要らざれば折鶴へツナ好

  • 涼しさや卓を流るるよな木目坪田恭壱

  • 涼しさや英語混じれる子の寝言爪太郎

  • 晩涼やマージャンメンバーは二軍鶴富士

  • 女涼し隠れ遊びの帯を解く哲山(山田哲也)

  • 紫に暮れゆくアッシジ歌涼し輝由里

  • 水葬を終へて黒衣の涼しさよ天雅

  • 涼しさや喜寿は黙って酌むデッキ天童光宏

  • 足裏の記憶たとへば夕涼の浜天陽ゆう

  • うたたねの板戸の涼し黒光り

  • 帯揚げのひかり涼しくならすゆびトウ甘藻

  • 帛紗捌く正座の祖母の涼しさよ冬野志奈

  • 宵涼し風に考妣の声聞こゆ遠峰熊野

  • 涼しさや川の水みな新しきとかき星

  • 涼しさやお得意の放ったらかし時小町

  • 木刀の風切り音や耳涼しときめき人

  • 鏡越しの会話涼しき散髪屋常磐はぜ

  • 朝涼や無線飛び交う荷卸し場Dr.でぶ

  • 渋滞のブレーキランプ消ゆ涼しどくだみ茶

  • 碌山の庭を涼風脚を揉む戸口のふっこ

  • 涼しさや月影に沈む竹に音とくねん

  • それぞれの五百羅漢の顔涼しどこにでもいる田中

  • 涼しさや展望デッキの空に星どすこい早川

  • 画集なき書架に涼しき隙間かなとなりの天然水

  • 実験棟涼し深夜の施錠音戸部紅屑

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  • せはしき世も半分片目猫涼しがんも三世

  • 涼しさやタガイタイ行きのジプニー季川詩音

  • 天守閣の廻縁かな風涼し菊池克己

  • バーベキューの火より逃げたり土間涼し季紫子

  • 黄昏のジントニックの泡涼し酒暮

  • 沐浴を終えて左の腕涼し季切少楽@いつき組広ブロ俳句部

  • 坪庭の枯山水の涼しさよ喜多丘一路

  • 涼しさに羽織るパーカー萌黄色北川茜月

  • さあ着付抜いた衣紋の涼しさよ北の星

  • 北帰行涼しさ求め背に枕北美三風

  • ケチャップの減つて涼しきディスペンパック北村崇雄

  • 五百円乞食に渡す涼しさよ貴田雄介

  • 鹿の目の吾を見つめる涼しさよ木寺仙游

  • 朝練のユーフォニウムの音涼し木下桃白

  • うぶ毛剃り涼しき顔を撫でてみるきべし

  • 昼下がり野良猫眠る場所涼し君塚美蕉

  • コンサートの余韻帰路は月涼し木村かわせみ

  • 柳川の舟旅涼し橋の陰木村修芳

  • 鈴懸や枝を払いて葉の涼し木村波平

  • あがり口脱いで涼しき足の裏Qちゃん・広ブロ俳句部神奈川支部

  • ペンギンに狭い涼しさ分けてもらう紀友梨

  • 心経や涼しくらまの闇稽古京野秋水

  • 涼しさやサンドイッチのお弁当清鱒

  • 涼しげな君の瞳にキュン死する喜楽胤

  • 富士晴れて水底涼し忍野村霧澄渡

  • 涼しさやネクタイ締める人もなし近未来

  • 一枝を落とし挿花の涼しさよくぅ

  • 東寺香涼し払暁の唐門句々奈

  • 解けたりて涼しき知恵の輪となりぬくずもち鹿之助

  • 柾剪りてさや吹き抜ける風涼し愚禿忍

  • 参道を下つて涼し大社國本秀山

  • ひと休み散歩途中の陰涼し窪田和子

  • 散骨もありや眩しき海涼し熊谷温古

  • 満員電車降りて涼しきベンチかな倉岡富士子

  • 朝涼や夫と行くトレイルコースぐりぐら京子

  • 飾り毛の涼しきチワワ唸りだす空流峰山

  • 涼しさや湯上りの浜照らす影家古谷硯翠

  • 背のヴィオラ置くや独りのカフェ涼し欅谷風来

  • とめはらい紙に吸わるる塾涼し紫雲英

  • 湯屋帰り桶抱く細き肩涼しケンG

  • 犬までも逃れて涼し人の影鍵盤タロウ

  • 完敗の後や涼しき感想戦剛海

  • 君の歌聴きし夜の頬風涼し郷りん

  • 山寺に独り水琴窟涼し古烏さや

  • 涼しきや蔓ぐんぐんとホップのカーテンココヨシ

  • 大屋根に抱かれ涼し吾子眠る越乃杏

  • 繋ぐ手をほぐし恋人影涼し胡秋興

  • 風涼しバス停までのアンダンテ湖水鈴

  • 雨あがり薄陽涼しき草むしり小杉泰文

  • 晩涼や老ゆれば想ひ出は欠片古知野朝子

  • 涼しさやカーペンターズ聴くテラスこてぬぐい

  • 石鹸の香を纏ふ女(ひと)来て涼し虎堂吟雅

  • 刑務所の塀に落ちる灯涼しかり後藤周平

  • 拝殿に笙の音涼し宮参り後藤三梅

  • 会釈する少女の弾む髪涼し後藤葉羽

  • 人鳥の足跡涼し水族館来冬邦子

  • ひんやりと涼し水族館の青古都鈴

  • 首タオル青や涼しや八百度粉山

  • 県境またいで涼し浜の風子猫のミル

  • 地下街を抜けて浅草鐘涼し小林昇

  • 膝にのる犬の鼻先涼しかり小林久女

  • 冷感のマットに横たわり涼し小林弥生

  • しやりしやりの着物涼しや電車待つ小林理真

  • 棘のある言の葉スルーして涼しこひつじ@QLD句会

  • 水音涼し精米の水車小屋駒形さかつ

  • 高原の駅涼しさの静けさよ独楽(こま爺)

  • 仙巌園両棒餅と茶の涼し駒茄子

  • 教会の鐘の音涼し坂の町こむぎ

  • 隣家から三味線涼し雨後の夜小山晃

  • 白壁や陰に涼しさ留め置き小山秀行

  • 万博の大屋根リング涼しいよコロンのママ

  • 樹下涼しベンチの下に黒き猫さいたま水夢

  • ごぼごぼと溢る涼しさポンプ井戸埼玉の巫女

  • 涼しさや木立を抜けるギターかなさいとう歌月

  • 買い物の荷物両手に部屋涼し齋藤鉄模写

  • ナンプラーレシピ画像の涼しさよ齊藤凪音

  • スマホ繰る指先涼し我が時間齋藤桃杏

  • 採蜜の怒り鎮めて風涼し在仏変人

  • 紅白の巫女涼しげなお神酒持てさかえ八八六

  • 外ご飯涼しき風の通り過ぎ肴枝豆

  • 車椅子いたわる夫婦に涼風を坂本千代子

  • 涼しさや砂糖きび持ち遊ぶ場所相良まさと

  • 万来の子供歌舞伎や見得涼し櫻井こむぎ

  • 寝たきりの義父お浄土へ参る朝涼し櫻井弘子

  • 看板に落つる雨音夕涼し桜月夜

  • 抱きたる赤子寝かせば涼しけれ佐々木佳芳

  • 渾身の空振り!負けて風涼し笹桐陽介

  • 雨あがり落ちる雫の音涼し砂月みれい

  • 涼しさやゴザに寝そべり何もせず薩摩じったくい

  • 堂内に響く読経風涼し佐藤公

  • 涼しさやスレンダーなるスカイツリー佐藤浩章

  • 二羽よりも一羽が涼し雀ゐて佐藤ゆま

  • 古民家の宿黒松の梁涼し佐藤佳子

  • 白足袋と流水紋の君涼し里こごみ

  • 頂上やザックを下ろす背の涼し紗藍愛

  • 発表会どうにか弾きて指涼し百日紅

  • 振り払ひ脱ぐ仕事着や家涼し沢井如伽

  • 岩に割れ掃き跡涼し枯山水沢山葵

  • 煮炊き無き厨は涼し夫の留守三角山子

  • 松園の目元涼しき美人の画塩沢桂子

  • 風涼し水面きらめく渡月橋しかの光爺

  • オールアップ花魁衣装解き涼し篠崎彰

  • 百穴の涼しき色や光苔篠雪

  • 猫遊ぶちりりん鈴の音は涼し島掛きりの

  • 不機嫌な地球もけさは息涼し島田あんず

  • がっつりスーツの黒スニーカー涼し島田ユミ子

  • ひとり身となりて涼しきえぶりでえ霜川このみ

  • 朝涼し花苗の葉の白き筋霜月詩扇

  • マラソンの急坂涼し通り雨下丼月光

  • ビショップの斜めに走る盤涼し砂楽梨

  • 趣味じまいして友達じまいして涼夜朱胡江

  • 路地裏の目に見えぬもの涼しけれ柊二@冨美夛

  • 朝涼し巡航船は須崎過ぐ秋雪

  • すれ違う少女の眉の涼しさよ柊瞳子

  • 鈴音を運ぶランナー朝涼し秋芳

  • 朝空に投網の楕円川涼しじゅんこ

  • ちりちりと涼しき音色軒にあり正見

  • きざはしの中程涼し厄参り白井百合子

  • 雨上がり白便箋の文字涼し白梟

  • 屋久杉を見上げ苔むす森涼ししわしわ

  • 議論して缶珈琲と涼風や森牧亭遊好

  • 涼しさに釣り竿振るや錦帯橋西瓜頭

  • 自噴井溢る水は清く涼し末広野暢一

  • 耳たぶに触れる吾子涼しき添い寝すがのあき

  • 「北一輝」玻璃玉の眼に涼しかり大東亜すがりとおる

  • 土俵入り「無二」の門出や風涼し杉浦あきけん

  • 鍬横に欅の影の涼しさよ杉尾芭蕉

  • 夕餉はカレー教へたる風涼し杉本果ら

  • 電気代節約畑の風涼し杉森大介

  • 「ただいま」とフローリングの涼しさよ鈴木季良恵

  • 涼しさや競技かるたの序歌の声鈴木秋紫

  • なつかしの安曇野行けば風涼しすずきじゅん

  • 建前のなき友垣の部屋涼し鈴白菜実

  • あこがれた街歩く坂息涼し素敵な晃くん

  • 気負いなく作る俳句や宵涼し砂山恵子

  • 涼しさや藍に染まった暖簾ゆれ数哩

  • 風の道八十島抜けて宵涼し青児

  • モロッコのタイルや足の裏涼し清仁

  • 涼しさや風雨のあとの窓の外せいだるま

  • 横綱や被災地の星風涼し瀬野広純

  • 風涼し途切れ途切れの読み聞かせ惣兵衛

  • 目覚め涼し万力と若返りの身そしじみえこ

  • 涼しげな文字の葉書や夕の風曽根朋朗

  • 非通知の電話のベルの涼しさよそぼろ

  • ボルゾイの毛並涼しき交差点空豆魚

  • 着物からスカートを縫う祖母涼し駄詩

  • 尾つぽ立て幾度と回すシロ涼し大康

  • 薄暗き阿修羅の目元ただ涼し大ちはる

  • 散髪しうなじ涼しや老モデル平たか子

  • 押され乗る電車に涼し戸袋よ高岡春雪

  • 545旋律流るる森涼し高辺知子

  • 高原の涼しさの中寂しくも高橋紀代子

  • バンジョの讃美歌響く空凉し高橋こう

  • コンビニに立ち寄る涼しげな僧侶高橋基

  • 水切りを競ふ男の子等風涼し高橋マママリン

  • 良性なり検査の帰路の風涼し高旗三紀子

  • 月架ける宿の涼しさ茶を啜る高原としなり

  • 傷癒えて綿靴下の涼しさよ田上コウ

  • 涼しげに参道のぼる和服かな鷹見沢幸

  • 音涼し桟橋沖に跳ねる魚高見正樹

  • 涼しさに部類のあるか蔵の内竹内不撚

  • 風涼し甘き匂いよ故郷よ多胡蘆秋

  • 制服のあいさつ涼し朝の道太之方もり子

  • 涼しさや寝そべる大師合掌す祐紀杏里

  • 眼下の湯けむり一服の風涼しただの山登家

  • 笹と風水の流れやいと涼し立花かおる

  • イントロは屋根の雨音涼夜なりだっく

  • 谷涼し風にマイナスイオン満つたていし隆松

  • 三十年添ったふたりの眉涼し田中勲

  • 如雨露持つ母は涼しき人となり田中紺青

  • 快速のホームを過ぐる音涼し田中みどり

  • 朝涼の休日しばし微睡みて田畑せーたん

  • 彼方より糸の音聞こえいと涼し玉響海月

  • 朝涼し採れたて野菜の土の香よ鱈瑞々

  • 常連の角打ち涼し夜勤明けチームニシキゴイ太刀盗人

  • 白砂敷く臥龍松の影涼し竹庵

  • 注文の句集の届く涼しき日智幸子

  • カーテンと同じ模様の影涼し千鳥城.いつき組広ブロ俳句部カナダ支部

  • みどりごの前歯二本の涼しさよ千葉右白

  • 鉛筆の削り屑の香いと涼しちやあき

  • 涼しさや音なき川に染む茜ちょうさん

  • 砂時計真白き砂の目に涼し千和にの

  • 林中歩き疲れし風涼し司蓮風

  • 釣り浮きの沈むは夢か涼しかり塚本隆二

  • 黄昏の琵琶湖や青黒く涼し槻島雫

  • 嫌なこと消し飛んでゆく涼しさよ月城龍二

  • 麺すすり心身涼し部屋和む月ノイス

  • 風呂上がりのベランダ晩涼の風ツキミサキ

  • 涼しさと隣り合わせの別れ待つ月夜案山子

  • 炭酸の涼しき舌となりにけりつくばよはく

  • 炭酸水弾ける泡や耳涼し茅野ともぞう

  • 涼しいはパーの手の風見せる風つくも果音

  • 寒色のふるふる揺れて涼しけれつついぐれちゃん

  • 小鼓待つシテの刹那の無や涼し筒井乱紛(水牛庵乱紛あらため)

  • 古語辞典を紐解く指へ涼しさよ綱川羽音

  • アルプスのカウベル涼し星青し椿泰文

  • 接戦を称えるコート風涼し津幡GEE

  • 涼しさや日暮れに紅を引き直すつぶ金

  • 川底の石ころ丸く涼しけれツユマメ・広ブロ俳句部

  • 座禅組む警策の音耳涼し哲庵

  • 朝涼し農家銘々小さき市徹光よし季

  • 風涼し終電を待つ二番線電柱

  • 涼しさや濡れし雀のひと震ひ天王谷一

  • 渓谷の吊り橋揺らす風涼し土井あくび

  • すれ違いの挨拶涼し流れ橋東森あけば

  • おとうとを連れて涼しき夜さんぽとき

  • 涼しさやライブ終わりの通り雨徳庵

  • ライブ跳ねそぞろ歩きへ風涼し杼けいこ

  • ボサノバの軽きリズムの涼しさよ十津川ポロ

  • 風涼し半紙の文鎮ガラス製戸根由紀

  • 花びらのチュチュを涼しき風煽る富野香衣

  • タンデムの君の背涼し霧ヶ峰登盛満

  • 涼しさやさわと木漏れ日応へたり友@雪割豆

  • ルーキーのヒーローインタビュー涼し鳥田政宗

  • 川面の仕掛の跳ねて涼しかり頓堀頓

  • 風涼し猫の耳毛の揺らぎかな内藤清瑶

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  • 草野球涼し休憩木陰水中澤孝雄

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  • 少年の笑顔涼しや戦の果ななかまど

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  • 宵涼し趾行の猫は静静と名計宗幸

  • 牛乳瓶ふれあふ朝の音涼しなびい

  • 娘と二人歯医者帰りや涼しかり生天目テツ子

  • 涼風や大屋根に立つ卒寿母奈良華咲

  • 360度涼しき百済観音よ奈良素数

  • 降り立ちて風涼しきやタコマ富士奈良部風遊

  • 縁側は涼し裏山よりの風ナンカラ牛眠

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  • 旧友とカフェのランチは涼しくてにいやのる

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  • 這い出でよ朝に涼しき土不踏西田月旦

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  • 生ゴミをギュッと縛って朝涼し二十八

  • 朝な朝な墨の香涼し経写すねがみともみ

  • 誕生日主役不在の寿司涼し猫辻みいにゃん

  • 気をつけをして涼し電柱の影猫ふぐ

  • かもめニ羽飛鳥の樫の樹下涼し根々雅水

  • 朝勤行鼻に涼しき線香かな農鳥岳夫

  • 奥入瀬を歩みて涼し十和田湖よ野瀬博興

  • 朝涼し窓一面の深碧よのなめ

  • ハッカ水スプレー涼しペダル漕ぐ野々かおり

  • 里帰り水琴窟の音涼しののクラブ

  • 新聞の友のエツセイ朝涼し則本久江

  • 幾層の雲のフィルター風涼し白雨

  • 古民家の大黒柱午下涼し白山一花

  • 夢路の画目元涼しや鏡見る白山おこ女

  • 夕涼悪言三昧の口苦し橋爪利志美

  • 硝子器や見た目涼しのおもてなし橋野こくう

  • 脳涼し退官の先ひかり見ゆ波止浜てる

  • その人の名の無き墓よ涙涼し橋本有太津

  • 会心のバーディー決まり風涼し馬笑

  • 湯上りの涼風うれし旅の宿蓮見玲

  • 鮮やかなジュース涼しく祖母の味畠野案山子

  • お腹見せ熟睡の猫風涼し初野文子

  • もてなしの抹茶涼しげ玻璃茶碗花岡淑子

  • 手を振りて踊る子らの涼しき目花笠きく

  • 涼しさの先の花がら一つ摘む花はな

  • 宵涼しカロートの隙吹き上がる花彼岸

  • オルガンの調べベールの透け涼しはなぶさあきら

  • ふるさとの南部の鈴や涼はこぶ英凡水

  • 涼しさや足を留めたる和紙の里羽馬愚朗

  • 涼しきは乾拭きしたる畳などはむこ

  • 知らぬ間に大人になったね眉涼し林典子

  • 涼しさや青のペディキュア桐の下駄原田一歩

  • 墨跡涼し父の色紙の懐かしき原善枝

  • 連弾を終えし十指の指涼し春あおい

  • 尾根をいく緑の葉音風涼しharu.k

  • 不動尊の柄杓龍の口涼しharu_sumomo

  • 内職のミシンの母の背よ涼し晴田そわか

  • 涼し追い藍染めの袖枕にし春のうらら

  • 涼しさや岩のひそりと動いたりはるの風花

  • 涼しさや一輪挿しの銀の色ピアニシモ

  • 発表会無事舞い安堵風涼しひーちゃんw

  • 木漏れ日の死角涼しや秋田犬東沖和季

  • 竹林の車夫の足音風涼し東の山

  • 鳥達もさざなみに揺れ池涼し東山たかこ

  • 涼しさやシュミーズの足放りだし樋口滑瓢

  • 熱戦を終えて両者に風涼し樋口ひろみ

  • 涼しさや青き畳を過ぐる風ひすい風香

  • 古池や水面の揺るがざる涼しひでやん

  • 雲仙の風涼し地獄巡りてひめりんご

  • 見下ろせば観音さまの街涼し日吉とみ菜

  • 風にそよぐ楓のさみどり目に涼し平井千恵子

  • 巻髪のうなじの涼し高瀬川平井由里子

  • 涼しさや戴帽式の貝ボタン平野芍薬

  • 涼しさにふと目を閉じる列車席平松一

  • 新宿や遠く望みて風涼し平山仄海

  • 靴の下すずしき街を見はるかす微呂

  • 涼しさや木漏れ日遠く永平寺広ブロ俳句部三日余子

  • 禅寺に響く僧侶の涼しげな声FUFU

  • 放課後の校内巡視風涼し福川敏機

  • 宿坊の夜の法話の凉しかりふくじん

  • 古民家の雨垂れ穿つ石涼し福ネコ

  • 縁の下三毛の背中の土涼しふくのふく

  • 限定のラーメンの列微雨涼し福間薄緑

  • 収穫完了夕暮れの風涼し福弓

  • 夜涼や昨日も餃子買ってきたふくろう悠々

  • 板の間で大の字涼し築百年藤沢・マグネット

  • 水拭きで涼しき廊下落ちる猫ふじたさとえ

  • サロマ湖の星になりたし夜涼かな藤永桂月

  • 駅降りてミストシャワーの涼しさよ藤原涼

  • 北欧帰りのパスポートは涼し伏見レッサーレッサー

  • 涼しさやベンチにひとり始発駅藤本だいふく

  • 風の道ほのかに涼し衣の香藤本仁士

  • 涼しさや頬にくっきり畳の目藤原訓子

  • 涼しさや夕暮れ響く琴の音よフタバ凛

  • 丑一つスマホ震わす波涼し船橋こまこ

  • 跨線橋くぐる列車に涼気みつ風友

  • 星数え想いを馳せる夜涼し冬の木で考える海

  • 凪の朝しまうカメラに風涼し古澤久良

  • 五平餅食べた妻籠は風涼し古道具

  • 廃線を蹠みて涼しや一里半ペトロア

  • 米の値も涼しさも減る朝の風ぺぬしの

  • きゅうりの葉シャワーに揺れて皆涼し鳳凰美蓮

  • エアコンの無き故郷の月涼し峰晶

  • 頬に網代模様寝起きの昼涼し房総とらママ

  • 豆腐屋のラッパの涼し坂の街ほうちゃん

  • 涼しさや湯の香ほんのり後れ髪北斗星

  • 慟哭のキューポラ涼し父の頬ほこ

  • ピクルスを噛む音涼しオフの朝ほしの有紀

  • チャーハンを終えて涼しき調理ロボほしのり

  • 幼き日洞窟のほね白くて涼しほたる純子

  • 吊り橋を吹き抜け渡る風涼し堀隼人

  • 今はまだ朝夕涼し腰伸ばす本間美知子

  • 風涼し両手広げて通せんぼ舞矢愛

  • 断崖のしぶき浴びしや夕涼感槇まこと

  • 涼しさやサワサラザワと葉の音かな雅蔵

  • 断捨離の隙間涼しき書籍棚増山銀桜

  • 透明の汚れを磨く息涼し松井くろ

  • 夕涼し老妻の背の肉薄く松井酔呆

  • 風渡るエンジェルロードの涼しさよ松浦姫りんご

  • すれ違ふマラソンびとや風涼し松岡徘徊狂人

  • 如雨露の弧ふわりひらいて夕涼し松坂コウ

  • 涼しさや枕カバーを水色に松野蘭

  • 遠くよりコーラス涼し尾瀬の歌松本厚史

  • 夫ときて涼しや今日の浜の道松本牧子

  • 左手の白餡涼し考査前真中成麻

  • タオルゆれ母の香もゆれ風涼しまやみこ恭

  • 涼しさや桐下駄の鼻緒新し瑪麗

  • 巻手紙墨の香涼し友の顔真理庵

  • 小牧野の石の並びや雲涼しまりい木ノ芽

  • 安らぎや愛しき嘘風涼し丸山美樹

  • 朝涼や練習つんだ鳥の声みかりん65号

  • 涼しさや花の香運ぶ風の道三茶F

  • 初めてのキックボードの涼しさよMR.KIKYO

  • 涼しさや道尋ぬれば京ことば三田ただひこ

  • 涼しさやお掘りに揺れる松本城みちむらまりな

  • 笙の音に舞楽明治の森涼し美津うつわ

  • 墨の香のかすかに残る文涼しみづたま

  • 涼し気にユキザサ揺れる森木立ミナガワトモヒロ

  • 友と行く軍艦島の風涼し湊かずゆき

  • 涼しさやベースジャンパー風に乗るみなみはな

  • 搭乗待つ間のフォルマッジョ涼しけれ源早苗

  • 涼しさや樹々のざわめき通り風見屋桜花

  • 目を閉じて顔から味わう涼しさよ宮城海月

  • 長話涼しき顔で待つ犬や美山つぐみ

  • 夕寝の頬をゆくひと風の涼し宮村寿摩子

  • 鈍行を降りて涼しき顔になり宮本モンヌ

  • ポストまで歩く道のり朝涼しミラベル

  • 海向かう坂を車輪の音涼し麦野光・いつき組広ブロ俳句部

  • 涼しさやスマホを切つた深夜二時向田敏

  • 雨柱コッチ来い来い涼しさよむじか

  • 灯り消え墨の香涼し座敷床霧想衿

  • 吸う息の涼しスンドゥブすすり終え六浦筆の介

  • 虎猫のモデルウォークや鈴涼し睦月くらげ

  • からと晴れ木陰涼しや止まり鳥睦長月

  • 水切りの波紋涼しや沈下橋むねあかどり

  • 吾にも来よあの木々揺らし風涼し村上の百合女

  • 抹茶ラテカランと音の涼しさよ恵のママ

  • 暁の妻の寝息の涼しさよ森きやつか

  • 柿田川湧く水盛ん涼しかり森下薫

  • 忙しき妻が涼しと仏かな森嶋ししく

  • 眠れぬと涼しさ求め板張りへ森野恵

  • 涼しさやらくだライドの先に海杜まお実

  • 終活を始めし母の涼しさよ諸岡萌黄

  • 朝涼し九十八の母いかに矢澤かなえ

  • 耳涼し矢切の渡し一人待つ矢澤瞳杏

  • 涼しけれくしゃみの余韻フラダンス安元進太郎

  • 輪を離れ喧噪遠き涼しさよ痩女

  • 涼しきや善き日の終わり黄昏の八手薫

  • 旅日和息子住む地へ風涼し山内文野

  • 熟練の手入れし庭や風涼し山岡寅次郎

  • オークスのゴール前の涼しさや山尾政弘

  • 床の間に勝海舟の書の涼し山川腎茶

  • ガイドから溢るるシングリッシュ涼し山川たゆ

  • 厨にも涼しさ送る窓の風山口雀昭

  • ゴロゴロと涼風探す大広間山口笑骨

  • 涼しやなひとときのことなればこそ山口愛

  • 誕生を踊りつかれて涼しかり山崎力

  • 涼やこの窓から見える貨物船山里うしを

  • 曲り角涼しき音色弾くは母山下智

  • まゆ涼し添い寝の吾子や背伸びせむ山下義人

  • 子達騒ぐ声も涼しや古き家山育ち

  • 就業前あくび隠し服涼し山田一予

  • 豆腐売るラッパの誘う白き涼山田季聴

  • 「そう云えば」から始むる口癖涼し山田啓子

  • 草木にも涼しく風の吹く日暮れ山田翔子

  • 涼しさや夜窓に微か川の音やまだ童子

  • 本堂に目の慣れ金の指涼し山本八角

  • 夕涼や頬に優しき皺の人やまもと葉美

  • やれ涼し波風そよぐ燧灘山本葉舟

  • 板チョコをつき出したるや目の涼し柚子こしょう

  • 涼風を求め葉陰の混合いぬ柚木啓

  • ネクタイを外し涼しき夕餉かな宙美

  • 京菓子の看板涼し下駄弾む夢一成

  • 公民館吹き抜けていく風涼し横田信一

  • 風涼しチンチン電車窓開けて横山道男

  • 涼しさや川面に映る青き空吉川卓宏

  • 豆腐屋の喇叭の音や巷涼し吉田蝸牛

  • 母とカフェ今日は感謝の涼しさを善し人

  • 街涼し星眠るまで友と酒吉藤愛里子

  • 理髪師の姉に刈られしうなじ涼しYoshimin空

  • 涼しさや廊下に灯る手術中米山カローリング

  • 兄からの着信ルルル背の涼しよみちとせ

  • 渇かない涙の跡よ愛涼しリーガル海苔助

  • 白樺や湖面をなでる風涼しリコピン

  • 大雨の水音涼し暗渠かな料善

  • うずしおのしぶき涼しや瀬戸の海

  • 古川の江戸の風情の路地涼しルージュ

  • 流れ往く白花涼し老い難し瑠璃ホコリ

  • 涼しさや座敷ぶち抜き風入れる玲峰

  • 照り返し強き漁船やふと涼し海神瑠珂

  • 涼しさや水の奏でるシンフォニー渡邉花

  • ライブはね木々に夜風の涼しさよ渡辺陽子

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

●兼題とは

  • ぴかぴかのネクタイまっすぐおはようさん山野花子

  • あおここみこきぉむきもり篠田紀子

  • 汗だくで激辛カレー後のすがしさ

 本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「涼し」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。


●季重なり

  • 夏の日の風鈴の音やいと涼し

  • 夏涼し古木遮る遊歩道笹木好里

  • 風涼し落ち葉追いかけ掃き掃除阿支子

  • 風涼し記念樹青々と茂る秋月あさひ

  • 涼し日や水替え金魚縁取られあらいゆう

  • 山頂風爽やかに肌涼し大江戸小紋

  • 蚊取線香葦簀の月涼し小野ぼけろうじん

  • 翡翠や一輝の青に川面涼し栗田芳文

  • 黄砂PM2.5無く涼しケビンコス

  • 行列の大雪渓足下涼し佐藤蜻蛉

  • 白シャツの君の目涼し野外フェス谷相

  • 涼しかろラムネサンダル滝の裏電気石

  • 晩涼や冷そうめんの喉ごしは恵美笑

  • 涼しかり母の手縫いのアッパーパー山本武子

  • 炎天下盧舎那仏像目涼し吉成小骨

 一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「涼し」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。



  • 御開帳待つ白蛇の池涼し新花水木

「御開帳」「蛇」もそれぞれ季語です。



  • 白き天井暑さ涼しのない病室マロン

 これは、むしろ「暑し」の句かと。



  • シャリの上光纏いし涼し白えび美月舞桜

 握り寿司ですね。むりやり季語「涼し」を入れた感が。「寿司」も季語なので、そちらの方向で推敲することをおススメします。


●季語「涼し」の使いかた

「星涼し」

  • 保護猫のいないケージや星涼し梅田三五

  • 橋くぐる真昼の川面に星涼し小仲翠太

  • グランドを平らかにして星涼し叶田屋

  • ススワタリの引っ越し忙し星涼し原田くろなつ

  • 三叉路や風にまかせて星涼し雪子

  • 星涼し占い本の真新し向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部

  • 星涼し隣に君の居ない夜三木崇弘

 ページ数の少ない季寄せなどでは、「星涼し」を「涼し」の傍題としているものもあるのかもしれませんが、基本的には「夏の星」の傍題になります。



「涼しかな」

  • 風呂上がりさっと吹く風涼しかな泉恵風

  • 林道のわきに川ある涼しかな伊藤ゆかり

  • 山の中深い道行く涼しかな大舘さと

  • 鳥肌の立つも立たぬも涼しかなkey

  • 役所にて手続きを待つ涼しかな村先ときの介

 切字「かな」は、名詞あるいは活用語の連体形にしか接続しません。「涼し」は形容詞の終止形なので、接続できないのです。



「涼しけり」

  • 子に捧ぐ「Tears In Heaven」涼しけり河孝

  • 旅立ちし我が子の部屋涼しけりさかい癒香

  • 光受け校庭サッカー涼しけりじきばのミヨシ

  • 寺静か声無き祭り涼しけり辻本四季鳥

  • 鳥の影砂浜を行く涼しけりはままこみかん

  • 見渡せば土手の緑も涼しけり松井英雄

  • 涼しけり揺れるリフトで山頂へ河豚蛇燕花子

 切字「けり」は、用言の連用形にしか接続できません。形容詞「涼し」が「けり」に接続する場合は、「涼しかりけり」となります。



「涼し〇〇(名詞)」

  • 涼し風父の駄洒落でひゅるり吹きヌートリアみゆう

  • 涼し風水分石の水面かな古谷芳明

  • 涼し朝コンビニ集合山ガールシマエナガ深雪

  • 涼し夜のめくる歳時記音かすか流れ星

  • 涼し夜や明日は敵になる男かしくらゆう

  • 八十八寿過ぎ涼し間の庭仕事四王司

  • 水笛の涼し音色や抜小路(ぬけこうぢ)夏雨ちや

  • 朝練のフルート聞こゆ涼し風浅井翠

  • やって来た贈り物開け涼し風天鳥そら

  • 朝市やテントを通る涼し風碁練者

  • 逃げた鳥空のゲージを涼し風雪鶏

  • 生ハムに貝割れ巻いて涼し皿伊藤れいこ

  • 長廊下ボーンにゾクッと涼し顔森茉那

  • さざ波は湖の心音涼し夜宥光

  • 鎌倉の紫手水涼し音草野紫陽花

  • 洗はれた母屋の土間の涼しこと宮井そら

  • 六本木朝の祝詞の涼しこと七五三七三

  • 涼し今朝歩け歩けと一万歩大原妃

「涼し」が名詞に接続する場合は、連体形「涼しき」となります。



  • 海原に国境もなき涼し雲黒田良@しろい

 この句の悩ましいのは、「涼し」で切れていると考えることも可能なこと。とはいえ、作者の意図としては「涼しき雲」と表現したかったのではないかと、推測します。



  • 木洩れ陽の道に交入る涼しの和弘波

「木洩れ陽の道に交入る」ものが何なんのか? 少々解読しにくい句です。そこは分からないままなのですが、下五は「涼しき和」とするのが自然ではないかと、これまた推測します。



  • 窓際で涼し風の音らっきょ漬けひまわりと蒼い月

「涼し」で意味が切れるのでしょうか。だとすれば、(「窓際で」ではなく)「窓際は涼し」として、「風の音/らっきょ漬け」二つのものを重ねれば、リズムを作ったとも受けとめられます。
が、「涼し」が「風」に掛かるとすれば、「涼しき」と連体形にする必要があります。この場合も「窓際で」の「で」という助詞の散文臭さは気になりますね。

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「夕立」

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