夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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9月の蜻蛉

「蜻蛉」

7月の審査結果発表

兼題「夕立」

 お待たせしました!7月の兼題「夕立」の結果発表です。今月も夏井先生からのアドバイスは必見です。夕立は、夏の午後から夕方にかけて突然降る激しい雨。夕立が見せる劇的な変化には驚きや新たな発見がありますね。9月の兼題「蜻蛉」もぜひご応募ください。(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
ワイパーは淋しきまぶた大夕立

古賀

夏井いつき先生より

 季語「夕立」に取り合わせるモノとして「ワイパー」はいかにもありがちな素材ですが、中七「淋しきまぶた」という詩語によってこんなふうに結球している事実に感嘆いたしました。
 言われてみると、ワイパーが規則的に動くさまは、まるで私たちの瞼の動き。強い夕立によって、フロントガラスの水の膜を完全に拭いきれないでギクシャク動く様子もありありと想像されます。
「淋しき」は「まぶた」に接続しますが、一句の眼目となる一語として、「ワイパー」にも「大夕立」にも、ハンドルを握っているであろう作者自身の心理にも及んでくるような味わいがあります。
「夕立」×「ワイパー」という一種の類想を共感の土台として新鮮な詩を発生させる、お手本のような作品です。

地
コインランドリーみるみる孤島めく夕立

渋谷晶

 硝子張りの「コインランドリー」で、洗濯・乾燥が終わるのを待っているのです。「みるみる」という時間経過、「孤島めく」という比喩が、「夕立」という季語との出会いを、映像として見事に切り取りました。

夕立や砂丘はこんな日も砂丘

あみま

 砂色の「砂丘」に「夕立」が押し寄せます。「夕立や」という詠嘆から「砂丘」を浮かび上がらせる効果もさることながら、「こんな日も砂丘」という把握に詩的真実があります。「は」「も」の助詞の効果も狙いどおりです。

三度目の試技を待つ間の夕立かな

うめやえのきだけ

「三度目の試技」は、走り高跳びか、棒高跳か。陸上競技場の「夕立」です。「~を待つ間」によって読者は、この時間を共有し、眼前の「夕立」を鮮やかに追体験します。「かな」の詠嘆を我がものとして受けとめるのです。

乗車駅夕立下車駅大夕立

満月

 ちょっとした機知の句ですが、漢字を並べた表記も含めて作者の意図が見事に成功しました。「乗車駅」からの車窓、そして「下車駅」のホームの様子等、書いてない部分を読者は想像し、大いに共感するに違いありません。

夕立見てゐる野球部と文芸部

木染湧水

 いきなりの「夕立」です。「野球部」にとっては迷惑な練習中断ですが、「文芸部」にとっては詩的感興を引き起こす季語でもあるのです。「見てゐる」心情や視線、かわされる会話の違い等も想像できて楽しい作品です。

人
  • 夕立や袈裟の坊主と待つ都バス足立智美

  • 夕立を対角線に帰宅せり藍創千悠子

  • 土留めする重機斜めに夕立過ぐあたなごっち

  • 十頭の牛かたまるや大夕立池之端モルト

  • 川魚を買ひて夕立にあひにけり石塚碧葉

  • 夕立のそれて銀座の時計塔石塚彩楓

  • 夕立のおはりうすむらさきに魚影兎森へる

  • 切るやうな夕立ここで溺れたのうた歌妙

  • 新宿を叩きのめして夕立過ぐ大岩摩利

  • スプリントレース驟雨は鬣ぞ  岡一夏

  • 空はまだ気づいていない夕立かな城内幸江

  • 夕立と言うよりこれは世の終わり木村信哉

  • 夕立や軒借り申す法隆寺清水容子

  • 夕立のモータープールの底にゐるジン・ケンジ

  • 十号車まだ夕立のなかにをり夏野夏湖

  • 夕立の境目にある鬼の家広島じょーかーず

  • 夕立が止めようとしてくる家出陽花天

  • 船上にあら汁滾る夕立来るRUSTY=HISOKA

  • 夕立や友のまちより音立ててアーモンドよーせい

  • 夕立や君の踝ざらつきぬEarlyBird

  • 夕立や屋台屋台に手際あり相生三楽

  • 夕立や待てるはバスか箱舟か青井えのこ

  • 夕立の来そうで来ない日曜日青井季節

  • 夕立よぼくは後悔していない青居舞

  • 夕立や甲斐へ信濃へ足速に蒼空蒼子

  • 夕立くる夢とおんなじ色をして青田奈央

  • 夕立や明かりつけずにそば啜る青砥展典

  • 夕立や不法投棄の冷蔵庫青星ふみる

  • 夕立の一粒目今地を叩く赤鰯

  • 夕立の宿りに揺るる竿の先赤尾てるぐ

  • わたくしをゆふだちさけてくれてゐる赤尾双葉

  • 夕立やどの雨粒も張り切りて赤富士マニア

  • 夕立去り古書の甘き香立ちにけり赤目作

  • 斜度45大江戸に夕立来る阿川凛

  • 夕立夕立あと三分だったのに愛柑いつき組note俳句部

  • 夕立の槍ヶ岳ほら夕立晴明惟久里

  • 控へ目な胎動と聴く夕立かな空地ヶ有

  • 夕立や伝言板に見慣れた字秋月あさひ

  • 夕立にうなずきあっている双子浅井郁

  • 夕立や別れるはずの今日だった浅井翠

  • 夕立止んでも理解できぬ演説朝雲列

  • 夕立に走る漢のをんな傘あさぬま雅王

  • ビルマ塔まで夕立をかきわけてあさのとびら

  • 夕立や道着の子ども走らせり朝日雫

  • 柔らかな水の香まとい来し夕立亜紗舞那

  • 夕立や仮病の窓の向こう側芦幸

  • 夕立に流れの変はる野球かなあじさい卓

  • 夕立やヒエログリフを音読す葦屋蛙城

  • 夕立や天地引き寄す雨の束飛鳥井薫

  • 息子来て夕立も来て薬味かな明日ぱらこ

  • 夕立や顔上げてゆく走者たち愛宕平九郎

  • 夕立やとぼとぼとぼと山頭火あたしは斜楽

  • 夕立が洗う現場のチョーク跡アツシ

  • レーダーは嘘つきずっと夕立が付き纏うat花結い

  • なつかしくにほふ夕立さとのめし我孫子もふもふ

  • 夕立や吾れのほか来ぬモップ掛け阿部八富利

  • 時差ぼけを叱られるごと大夕立あまぐり

  • 夕立や駆け込み許さるる駅舎甘茶トーシロー

  • うんそうだ新鮮な雨夕立は雨森茂喜

  • 夕立の来るか頭の中を蛇綾竹あんどれ

  • 逆立ちのままに夕立を見ておりぬ綾竹ろびん

  • 夕立や祝儀袋へ旧紙幣あらい

  • 夕立うるさくてココナッツ割れない蟻馬次朗

  • 葬儀屋は香のにほひや夕立中有村自懐

  • 大夕立黒き高炉を丸洗ひ有本としを

  • 「夕立のあとの匂いが好き」「そうかも」在在空空

  • 夕立浴び遊具の錆の腥しアンサトウ

  • 夕立から手紙をかばう配達員飯田淳子

  • 夕立やポストに入れた回覧板飯塚煮込

  • 来るぞ来るぞ龍神のやうな夕立飯沼深生

  • 夕立来るらしアイツ学校辞めたらし飯村祐知子

  • 夕立の止んで他人に戻りけり家守らびすけ

  • 遠くより夕立来たり選挙行く池田悦子

  • 大夕立たちまち消ゆる島ひとつ池田桐人

  • 夕立や猫と分け合ふなら甘しイサク

  • 大夕立イスラエル大使館前石垣エリザ

  • 夕立や太腿だけを濡らす傘石川穴空

  • 夕立をビーチサンダルで踏んでいく石田眞希子

  • 夕立が壁の外から耳元へ石原しょう

  • 窓口に冷たくされて大夕立石原由女

  • 駄菓子屋は夕立去るを待つところ泉晶子

  • 夕立を見てゐる十二階の猫和泉攷

  • 夕立や渡り廊下に母見つけ和泉園実

  • 夕立に洗はれし音路地のピアノ泉諒

  • 軒下に見知らぬ男大夕立磯野昭仁

  • かつたるく均すドル箱夕立晴石上あまね

  • 窓を打つ夕立ギプス固まりぬ板柿せっか

  • 富士やこの夕立に街匂いけりいたまき芯

  • 足元に千の王冠大夕立一井かおり

  • 夕立や傘さす駆けだす騒ぎだす市川りす

  • 夕立のみづの匂いの改札口一久恵

  • 夕立や「孤」のつく言葉を堪能す一秋子

  • ウォーミングアップ終わった夕立来た一慎

  • 夕立に射抜かれて半旗濡れ一杯狸

  • 鉄棒は血の味のして夕立かな伊藤亜美子

  • 塊のゆふだち異類婚姻譚伊藤映雪

  • 沖の船降り消すごとき夕立かな伊藤順女

  • 夕立の匂ひ野良猫姿消す伊藤なお

  • 水平に夕立を切りぬ新幹線伊藤柚良

  • 枝先の明日に触るる夕立かないとへん製作所

  • 夕立の雪駄も下駄も仏罰や伊ナイトあさか

  • 手を繋ぎ夕立の残る明るさへ井中ひよこ号

  • 黄帽の下校夕立へ手刀居並小

  • 夕立来る織機の音の通学路井上れんげ・いつき組広ブロ俳句部

  • 夕立に笑ひ転げる象の尻井納蒼求

  • 夕立の喰らふやティラノサウルスのやうな母猪子石ニンニン

  • 夕立来竜は吐息を吐きながらいまい沙緻子

  • 夕立や全力全開の見事いまいみどり

  • 夕立やまさかまさかの万馬券今乃武椪

  • 夕立の痛みトタン屋根が赤い伊予吟会宵嵐

  • 日常をちょっと引き締め夕立去る伊代ちゃんの娘2

  • 夕立がごっそり時を巻き戻すいわさちかこ

  • 夕立や源氏の君の相関図岩清水彩香

  • 夕立や久々実家に電話入れ上野眞理

  • 行列は歪に膨れ夕立雲上原淳子

  • 足繁く真直に綾に夕立来る上原まり

  • 夕立や揉めるアボカドの選び方うただねこ

  • 夕立明け白帽の阪神園芸宇田の月兎

  • シースルーエレベーターゆだちの源へすんと行く内田ゆの

  • 短調の夕立響くマンホール空木眠兎

  • 夕立や龍鱗(りょうりん)隠す水柱靫草子

  • 夕立や七時間目は補習授業卯の花京

  • 夕立の天ぷら海老の尾に切れ目海野青

  • 銃爪を引けば戦争夕立来梅朶こいぬ

  • 夕立や抗がん剤は真っ赤っか梅田三五

  • 夕立や瓦礫の街を眺めをり浦城亮祐

  • 夕立激しイカ焼き匂ふア-ケ-ド麗し

  • 夕立や厚本ののど白きままHN

  • 夕立晴ちょっと湿気った歌舞伎揚げ江川月丸

  • 夕立やNOをYESと書き直す江口朔太郎

  • 潔きほどの夕立迫りたり蝦夷やなぎ

  • 雲呑を包んでいれば夕立過ぐ絵十

  • 夕立さえくれば引きとめられるのにえりべり

  • 地の匂ひ剥き出し夕立やってくるANGEL

  • 夕立や向かふの空は晴れてゐし円美々

  • 大夕立徒然に読む候補作近江菫花

  • ずる休み夕立の窓を友の声おおい芙南

  • アスファルト打つ夕立やスルメ噛む大久保加州

  • 川遊び帰りはいつも夕立と大阪駿馬

  • 夕立や隣の町に力尽く大澤眞

  • 夕立の来るらし風の匂ひ濃し大塚恵美子

  • 夕立やお迎へに来し人は亡し大津美

  • 煙幕となりて海より夕立来るおおにしまこと

  • 夕立晴あんぱんよりもクリームパン大野美波

  • 夕立やスワンボートの無彩色  大矢香津

  • 夕立や勝手に開くヨガマット大和田美信

  • 大夕立いきものの声消しにけり岡井稀音

  • 読点のごとき一滴より夕立可笑式

  • 夕立やラジオに雑音入りだす岡田いっかん

  • あの雲の端からここは夕立かな岡田ひろ子

  • 道折れて夕立の中に消えにけり岡田雅喜

  • 夕立のこゑは早口言葉めく男鹿中熊兎

  • ゆふだちのはじまり鳩のはぜせりは岡根今日HEY

  • 夕立やひいばあちゃんの鬼話岡村恵子

  • 夕立や倉敷川の舟さびしオカメインコ

  • 夕立や稜線は鴇浅葱色岡山小鞠

  • ハイハットの乱打ゆだちのホコ天小川さゆみ

  • 海の色塗り替へ夕立迫り来る小川天鵲

  • 伝言板前解散夕立晴小川野雪兎

  • 夕立晴さみどりに立つコンポスト小川都雪

  • 夕立や雲の欠片のたけだけしオキザリス

  • 水肥えて夕立の川生まれをり沖庭乃剛也

  • 夕立や慈雨と成るだけ降りて失せ沖乃しろくも

  • 四阿に孔雀とわれと夕立かな沖らくだ@QLD句会

  • 「再発」の声夕立にかき消され奥寺窈子

  • 夕立に歪むポスター投票日小倉あんこ

  • 夕立や無言の刻を分かち合い小倉麻友子

  • 大夕立三キロ先の摩天楼おこそとの

  • 主なき犬小屋叩く夕立かな尾田みのる子

  • 夕立去るスパイクはグランドを割くおだむべ

  • 夕立やグローブ九個干す部室越智空子

  • 五線譜をはみ出し叫ぶ夕立かなおぼろ月

  • 夕立や信仰のことまた訊かれ海音寺ジョー

  • 病歴に一行足して夕立来る海峯企鵝

  • 夕立を背負ひトゥクトゥクハイトーン風花美絵

  • 夕立や主を忘れた舟の櫂風早杏

  • ヒロシマを読経のごとき大夕立樫の木

  • 立ち読みで終える新刊夕立晴加田紗智

  • 夕立や殺生石の割れ目にも帷子砂舟

  • 忘れ貝探し夕立の袂かな 捷子

  • 息できぬほどの重さや夕立浴ぶかつたろー。

  • 書きかけの楽譜丸めて夕立受くひだまりえりか

  • 夕立や地球の自転短縮す桂子涼子

  • 夕立の最後の一粒風優し加藤麗未

  • 絵手紙を庇ひ夕立の歩道橋かときち

  • 夕立の教室に素振りの呼吸叶田屋

  • 夕立を一直線に離陸せりかねつき走流

  • このベッドからは夕立が見えない金朋かいと

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  • 夕立や通勤の群れたゆみなし川代つ傘

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  • 大夕立湖中鳥居は血赤色川村湖雪

  • 斉読の揃わぬ子らや夕立来る河村静葩

  • 夕立を予言したので付き合おう干天の慈雨

  • 夕立や盤上に夥しき死喜祝音

  • 夕立や川面のみづを穿つみづ岸来夢

  • 夕立やボブ・ディラン聴く帰り道北大路京介

  • 居残りのテストの補習大夕立喜多丘一路

  • 西向けば青空真上は夕立ギックリ輪投げ

  • 御神木へ触れし左手夕立晴きなこもち

  • 家出決行優しき鳩羽色の夕立木ぼこやしき

  • 再検査告げられし日の夕立かな木村かわせみ

  • 夕立を駆けゆく胸に写真集木村となえーる

  • 半休や妻と夕立晴のせんべろQ&A

  • 夕立に忘れられたる猫車Qさん

  • 夕立の上がり世間の動き出す九ゼットン

  • ゆくりなく夕立がくれた空き時間Qちゃん・広ブロ俳句部神奈川支部

  • 森進一の唄の後なる夕立きゅうもんde木の芽

  • 夕立のあがる気配のなき本屋京野秋水

  • ずぶ濡れの荻窪ゆふだちの教会杏乃みずな

  • 三角の岩の天辺夕立かなこうだ知沙

  • 夕立やラジオの音に跳ねる水清鱒

  • 電柱のまた高くなる夕立晴霧賀内蔵

  • 夕立や錆匂い立つトタン小屋霧澄渡

  • 本堂を洗い切つたる大夕立菫久

  • 夕立の向こうが吾の目的地くぅ

  • 夕立や今日の嫌いを丸呑みす句々奈

  • 夕立あと皆の背筋が伸びてゐるくさ

  • チケット当落メール窓は夕立草野紫陽花

  • ジパングと記す古地図や夕立雲久信田史夫

  • 三浪の夕立付箋はアルカリ性草臥れ男

  • 夕立の音にメロディーつけてみる國本秀山

  • なんだか嘘っぽい夕立後の都市熊谷温古

  • 夕立に鰐があくびを中断す倉岡富士子

  • 花札の発火しさうな夕立かな眩む凡

  • 夕立の管理人へ多し苦情ぐりぐら京子

  • 改葬の深き口開く夕立かな久留里61

  • 入眼の日寿ぐように大夕立くんちんさま

  • 夕立の底や遠くの星に虹  恵勇

  • 夕立を防災無線くぐもれり月下檸檬

  • 絵日記の縁反り返る夕立あと健央介

  • なけなしの空の夕立や輸液落つ謙久

  • 夕立や水の呼吸の荒々しケント

  • 鎧戸越しに猛る夕立におぼれさう剣橋こじ

  • 磨崖仏の御身を洗ふ夕立かな小泉久美子

  • 夕立の切れ目は神の土踏まず恋瀬川三緒

  • 新宿の夕立は吐瀉物の匂ひ剛海

  • 夕立やキャンパスは柱多きとこ公木正

  • 矢を射れば夕立招くこととなり紅紫あやめ

  • 夕立の追ひかけてくる地動説幸田梓弓

  • 大夕立一人手つなぎ一人抱き古烏さや

  • 白雨来て木下一人の警備員こきん

  • 夕立に謝してしばしの休息や越乃杏

  • 夕立を逃る摂州抜けてよりコダマヒデキ

  • 言わでもの口持つを恥ず夕立来る古知野朝子

  • 五分後の夕立となるにほひかな小手拭エコ

  • 電気臭部屋に立ち込め夕立あり虎堂吟雅

  • 夕立のあとの箱根の野風呂かな後藤周平

  • 誰のせいでもない夕立が今日を洗う寿とかいち

  • 夕立や漆の梁に妣の遺影子猫のミル

  • 八段のピラミッド落つ夕立雲このみ杏仁

  • ロトくじの列に並びし夕立かな小林昇

  • 初孫の匂い際立つ夕立前小林のりこ

  • 初孫のエコーの影や夕立あと小林久女

  • 電車今夕立の中に突入す小林理真

  • 朝刊の黒い見出しや夕立雲独楽

  • 土の香の夕立セピア色の銀座駒茄子

  • 夕立や矢倉囲いと美濃囲い碁練者

  • 日本てふ亜細亜の尻尾大夕立GONZA

  • 缶蹴りの鬼立ち尽くす白雨かな今藤明

  • 廃校に錆びた鉄棒大夕立さいたま水夢

  • 夕立来る象舎に献花あふれをり彩汀

  • 夕立や星新一をもう一話齋藤桃杏

  • 夕立の止めば町ごと動き出す宰夏海

  • 夕立に大混雑の実習林さおきち

  • 夕立や黙を貫く杭打機酒井春棋

  • 夕立や軒借る猫と友となりさかい癒香

  • 夕立の機影砲手の腕締まる榊昭広

  • 夕立や合掌なせる交差点坂口いちお

  • 皇子が悲母血絶ゆもゆだち墓碑囲み坂島魁文

  • 夕立やジグザグで抜くミッドフィルダー坂野ひでこ

  • 夕立に合わせラフマニノフの鐘坂まきか

  • デパートを一巡りして夕立止む坂本千代子

  • 夕立の境界線を超えて快坂本雪桃

  • 廃屋を烟らせ夕立人里へ櫻井こむぎ

  • 夕立の奥をみてゐる神馬の眼桜鯛みわ

  • 境目を際立ちけむる夕立かな桜月夜

  • 夕立の二軒隣は降らざりてさくら悠日

  • 夕立や五百羅漢の膨れ面雑魚寝

  • 夕立や忙しなき手話読み難しさち今宵

  • まっすぐに落ちる夕立にある苦痛佐藤茂之

  • 夕立の明けて都市計画道路さとう昌石

  • チャップリンみたいに夕立を歩くさとうナッツ

  • 大夕立義元を突く鬼神の手佐藤浩章

  • 「ひまわり」は立ち見夕立のリバイバル佐藤ゆま

  • 伝令の旗垂直の夕立かな錆田水遊

  • 甘味屋に漢二人の夕立かなさぶり

  • 夕立雲棟上げ終へて一呼吸彷徨ういろは

  • 夕立や日本列島熱ありて佐柳里咲

  • 垂直とは立ち尽くすこと大夕立さるぼぼ17

  • 夕立の爆音膝下の罹災沢井如伽

  • あを濃き日比谷ゆふだちの甘くにほふ沢拓庵◎いつき組カーリング部

  • 憑き物が落ちたみたいや夕立あと澤田紫

  • 夕立や十二回目の仲直り三角山子

  • 夕立晴ガラスの積木めくビル群三月兎

  • だらしなく居れる夕立のハイエース珊瑚霧

  • 夕立や今日の私を脱ぎ捨てる塩沢桂子

  • 手放した棚田が沈みゆく夕立塩の司厨長

  • 夕立のいたずら君のシルエットしかの光爺

  • 西の夕だち東のそれに勝りけり柿司十六

  • 夕立や祖父の実名知る霊前四條たんし

  • 夕立や分煙されずジャズ喫茶芝歩愛美

  • 立ち漕ぎぞ夕立に頭突き食らわせてしぼりはf22

  • 夕立の球場残されたボールシマエナガ深雪

  • 鬼も吾も哭き尽くしたる夕立晴島田あんず

  • 包まれて夕立あとのバスタオルしまのなまえ

  • 牛の群れ夕立の熱にどやどや来清水縞午

  • 夕立雲潜り抜けるや鳥の群れ清水ぽっぽあっと木の芽

  • 夕立や滑る懸垂二十回下丼月光

  • 夕立来る先に空気のにほひ立つ下村修

  • 夕立へジャムをことこと唄わせてじゃすみん

  • 影踏の影を連れ去る夕立かな沙那夏

  • 夕立や湖の形にひとしきり砂楽梨

  • 弧を描くロングスローや夕立晴洒落神戸

  • 夕立雲ウグイス嬢は名を連呼  朱胡江

  • 再開のコール高らか夕立晴秋芳

  • 蛇籠出す四・五丁西は龍夕立種種番外

  • 水の実の目見開きて大夕立シュリ

  • 夕立くる土撃ちてくる蹴上げくるじゅんこ

  • 夕立のとんがって土煙にほふじょいふるとしちゃん

  • 夕立を孕みて海のさかだちぬ常幸龍BCAD

  • 夕立来手持無沙汰の家族葬庄司芳彦

  • ゆだちあけすつとんきやうなかほをして正念亭若知古

  • 一点見つつ一心となるゆだち白沢ポピー

  • 読点を置けば夕立ふるふるる不知飛鳥

  • 夕立や庚申像の彫り鋭利白猫のあくび

  • 夕立の影や余命の迫る母白よだか

  • 夕立あと打楽器の子のソロ冴える神宮寺るい

  • 夕立のさなか余震に怯えをり新濃健

  • 夕立や只中に出たき衝動深幽

  • 夕立や去ってあっけらかんの空すがのあき

  • 夕立にならんで堕天使の素足すがりとおる

  • 夕立雲俄かに湖上塞ぎたり杉尾芭蕉

  • 夕立の暗いくらいで丁度いいスギモトトオル

  • 自主練のラスト夕立駆け抜けて鈴木季良恵

  • 夕立やコールド間近の五回裏涼希美月

  • 大夕立星の自転の止まりけり鈴木由紀子

  • いじめた子無言夕立窓を打つ鈴白菜実

  • 夕立来て鳥獣戯画の兎逃ぐ清白真冬

  • 夕立やバケツに沈むねずみ捕り鈴野蒼爽

  • かくれんぼの鬼を残して夕立かな砂山恵子

  • 夕立は仔犬の重さだとおもふすりいぴい

  • 夕立来る外飛び出して生きている晴好雨独

  • 夕立や沸き立つ海の迫り来て青児

  • 夕立雲右半分を覆いけり清仁

  • スクラムを組み直す手に夕立も青峰桔梗丘

  • 答案の作者の気持ち夕立来ぬ瀬央ありさ

  • 水軍の島を飲み込む大夕立sekiいつき組広ブロ俳句部

  • 夕立あと川は金糸を編むごとく拙珂知

  • 夕立欲し雨雲すらも産めぬ吾は摂田屋酵道

  • 夕立熱く星の薄皮こそぎゆくせり坊

  • 夕立刺す清流の底鼓動あり千・いつき組広ブロ俳句部

  • 繋ぐ手にめがけ来るすごい夕立全美

  • 夕立来て喫茶「オレンヂ」満席に走人

  • 夕立に打たれる牛の目は細き惣兵衛

  • 炒め物の音の消えゆく夕立かなそうま純香

  • 夕立の水の壁落ち世界裂く素偶

  • どどどどと底抜け夕立着地せり外鴨南菊

  • 夕立あと最後の雫落つを観るそぼろ

  • ゲルニカの叫び夕立の飛沫染井亀野

  • 「博」の字に点をつけ忘れて、夕立そよかぜシュレディンガー

  • 夕立や君の右肩吾の左肩空豆魚

  • 夕立にことごとくひれ伏して黙たいらんど風人

  • 夕立後たったひとりの野辺送り高木音弥

  • 夕立を持ち込む満員電車かな高瀬小唄

  • うを屋とうふ屋夕立の品定め鷹取碧村

  • 夕立の黒鍵とほき小指かな高橋手元

  • 夕立や要らぬ物買ふ雨宿り高橋マママリン

  • 夕立に今日の英語を叫び駆く鷹見沢幸

  • 夕立を走る離婚を決意するたかみたかみ・いつき組広ブロ俳句部

  • 夕立の音に追われて抜かれたり高山佳風

  • フォルテなり夕立の始まりはファ音滝上珠加

  • 夕立や皮剥ぐやうに脱ぐセーラー滝川橋

  • 一日の汗の匂ひの夕立かな卓鐘

  • スープ浚ふ夕立の底のラーメン屋武井保一

  • 夕立や恩ある人の訃報受く竹内不撚

  • 客船の灯の濡れそぼつ夕立あとたけぐち遊子

  • 夕立に濡るるほかなく濡れにけりタケザワサトシ

  • 最近の夕立派手な兵器めく武田豹悟

  • 神木の気根夕立をむさぼりぬ竹田むべ

  • 沸点といふ夕立といふ科学たけろー

  • 夕立の止んで匂いが変わる街多胡蘆秋

  • 夕立のあとの空だけ空つぽかたすく

  • 夕立や小言ならぶる腹の虫祐紀杏里

  • 夕立ひと粒胎動甚だし多数野麻仁男

  • 早足の稜線夕立に負けるただの山登家

  • 暗転は夕立だけのせいじゃなく立田渓

  • 泣くなと言われてもこの夕立では立田鯊夢いつき組広ブロ俳句部

  • 夕立や猫背に守るマリトッツォ立石神流

  • 夕立や否みの理由見つけたり伊達紫檀

  • 夕立の端から端へ走り抜け蓼科嘉

  • 夕立はまづ野球部のあたりから立部笑子

  • 濃厚に気の匂い立つ夕立前田中勲

  • 夕立や排水溝の溺れをり田中紺青

  • 夕立や銀紙はがし苦きチョコ田中みどり

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佳作
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  • コンクリの大地欲するまま夕立さかえ八八六

  • 夕立と泥はね裾と雨宿り肴枝豆

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  • 夕立の初デートはモカの香りに笹桐陽介

  • 夕立にさらわれし二十歳のわたし笹靖子

  • 夕立のあとかたもなく星の夜さざれいし

  • 映画みて出れば通りは夕立あと砂月みれい

  • 夕立でタイムセールの惣菜屋薩摩じったくい

  • 夕立やシャツびしょ濡れの走り抜け佐藤公

  • 夕立や傘を帰りの杖として佐藤恒治

  • 夕立やドラマのやうな振られかた佐藤志祐

  • 熱戦の余韻消し去る夕立かな佐藤俊

  • 子雀も雨宿りする夕立かな佐藤佳子

  • 夕立や並ぶ靴皆雫垂れ里こごみ

  • 懐メロのラジオかき消す驟雨かなさむしん

  • ペダル漕ぐ巻き髪解け夕立や沙羅双樹サリー

  • 夕立過ぎ捜す変化や吾の中に百日紅

  • 夕立や九回裏の逆転打さんなんぼう

  • 惜敗の涙夕立のせいにして四王司

  • 夕立の止んで大地の匂いかな塩風しーたん

  • 夕立や渦巻くほどに中の川じきばのミヨシ

  • 夕立やほつれ破けた雲の底じつみのかた

  • 判決はまだか夕立地裁前篠雪

  • 夕立や気まずさほぐれる帰り道島掛きりの

  • 匂い立つ夕立のあと森の中島じい子

  • 軒下にスマホゲームの子や夕立島田ユミ子

  • 夕立やくるぶし隠す水飛沫霜月詩扇

  • 夕立に邪気洗われて明日三十路霜月シナ

  • 招布吹く夕立の間手水舎へ柊二@冨美夛

  • 夕立を浴びさんざめく子どもらよ柊瞳子

  • 夕立や大地を冷やす風起きる正見

  • 夕立や忘我を覚ます観劇のあと白井佐登志

  • 半分に割るビスケット止む夕立白石鈴音

  • 夕立や出発ロビーひとひとひと白石美月

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  • がなる歌も下り坂と白雨に消え西瓜頭

  • 夕立来る家まで5kmだ大腿筋末広野暢一

  • 夕立や後れ毛ゆれる舞妓はん杉浦あきけん

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  • 夕立の狭間を縫いて飛び初むる涼風亜湖

  • 夕立を駆け抜けてゆくケッタマシーン 自転車のことらしい…鈴木縦横女

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  • 風情なき今日この頃の夕立かなすずきじゅん

  • かなしかりけり夕立の傘の重く主藤充子

  • 芝の庭夕立去りて輝けり数哩

  • 伊予節のからくり時計夕立雲須磨ひろみ

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  • 猫の駆る近道狭し夕立かなそまり

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  • 夕立きて東屋昔に碧き恋琵琶京子

  • 少女から駆ける夕立無鉄砲フージー

  • 尼寺にゆだち降りしき邪気払うFUFU

  • 窓開けて夕立のあとの風を嗅ぐ福井桔梗

  • 軒下のもだも縁の夕立かな福川敏機

  • 遅刻魔を待つ間に一句夕立来福前彩芽

  • 病室の外は夕立飯は五時ふくのふく

  • 夕立よ今はヒロイン気取らせて河豚蛇燕花子

  • 豆腐齧る水遣りの〆に夕立福間薄緑

  • 夕立や君の過去など興味ないふくろう悠々

  • 夕立や東京弁の一年坊武幻琵離吾

  • 夕立の匂いがすると亡き祖父が藤沢・マグネット

  • 母猫の声くぐもりて夕立来る藤原涼

  • 夕立や傘のふたりの背を追ひて藤村かやこ

  • 夕立や一会の人と軒の下藤本だいふく

  • 夕立に恐竜鳴くやジャングリア藤原訓子

  • 君乗せぬまま夕立の教習所風友

  • 明るさの戻り夕立ドラマ完古川しあん

  • 夕立や遠き山並み隠しをり古川しげ子

  • 夕立が運びし別れ跡もなく古澤久良

  • カフェすすりまだ止まぬかと待つ夕立古谷芳明

  • 夕立いざシャンプー持って庭へ出ろべびぽん

  • 夕立にホースは花壇虹を待つ鳳凰美蓮

  • 夕立や手間どる傘のもどかしく芳醇

  • 夕立や片袖ずつがびしょ濡れに峰晶

  • 夕立を嗅ぎ分ける猫か細くてほうちゃん

  • 夕立や熱い神輿に叩きつけ暮戯

  • 犬の耳ぴくと動きて夕立来る細葉海蘭

  • はよ帰れ用無き人を帰す夕立北海道県民

  • 夕立や抱く子にかざす茶封筒歩帆

  • 夕立よ悪を洗い流しちまえ堀卓

  • 袋に玩具詰め終えると夕立本気のめんそ

  • 深山路に夕立の気配風騒ぐ本間美知子

  • 夕立に泣く児走る児空見る児凡狸子

  • 僻村の空ことも無し夕立あと前田冬水

  • 夕立や大樹の中に鳥と人牧場の朝

  • ぐちやぐちやに心乱れし夕立かな槇まこと

  • 夕立過ぎパンダのみやげ買う上野牧茉侖

  • 夕立や肘付き眺め蕎麦湯冷めまこと(羽生)

  • 駅までの百米の夕立かな町田思誠

  • 夕立を横に眺める膝枕松井酔呆

  • 夕立やとっさに逃げる軒下に松井英雄

  • わだかまり洗い流せる白雨かな松浦姫りんご

  • 夕立で眩しく光る愛車かな松岡才二

  • 夕立やハッピーアワーで雨宿り松岡さつき

  • 夕立を見遣る湖澪つくし松尾祇敲

  • 夕立や駆け抜けるごと母逝きぬ松坂コウ

  • 父の忌の読経かき消す夕立かな松平武史

  • 軒下に野良と並べる夕立かなまっちゃこ

  • 夕立に願かけてみる車窓から松知

  • 夕立や両手を塞ぐエコバッグ松野蘭

  • 夕立や大口あけてあふぎみる松本厚史

  • 夕立やたちまち無人の町静か松本牧子

  • 夕立や胸のすくさま駅で待つまやみこ恭

  • 夕立やナンジャモンジャに雨雫真理庵

  • 夕立や母の車で下校するまりい木ノ芽

  • 夕立は世の禍福のやう六十路にてまりおR

  • 夕立じゃあない線状降水帯万里子

  • 夕立や熱きシャワーに濡れた髪丸山隆子

  • ビル街をざんと覆ひて大夕立美衣珠

  • 閉じ込めた想い降り消せ銀夕立みおなかさほ

  • 夕立にも金管止まぬ音楽会三日月なな子

  • 夕立来て触れぬ優しさ知らぬ人三上栞

  • 夕立や今日のノルマの三千字三河三可

  • 夕立の噂ばかりで過ぎにけり三木崇弘

  • G1の牧煙らせて大夕立三茶F

  • 夕立の止むまで聞きし身の上を三崎扁舟

  • 夕立のみるみる浸みるアスファルトMR.KIKYO

  • 失恋を予期したやうな夕立かな水巻リカ

  • そぼ濡るるも楽しみのうち夕立来ぬ三高姫

  • 夕立に降車ボタンを押せぬバス三田忠彦

  • アラフィフのバイト面接夕立来巳智みちる

  • 夕立や八百屋の椅子借り雨宿り美津うつわ

  • お出ましの道となる明日夕立晴満生あをね

  • 夕立に打たれ打たれて心晴れ光月野うさぎ

  • 紛争禍隣町から来る夕立美月舞桜

  • 三叉路に別れて夕立を駆ける満る

  • 夕立や猫の遺影のことり落つ水上ルイボス茶

  • 夕立や瞼の裏の我が生家皆川知洋

  • 夕立や君と出逢った雨宿り湊かずゆき

  • 夕立に学生服の匂いけり嶺乃森夜亜舎

  • 夕立中医師の叱責子の涙みはやななか

  • 夕立の図書館を出る傘はなし美村羽奏

  • 夕立や「好き」も「嫌い」も隔てなく三群梛乃

  • 白杖の人も等しく夕立中宮井そら

  • 迫り来る夕立黒き雨柱見屋桜花

  • 人波を退け夕立へ踏み入りぬ宮坂暢介

  • ゴッホ展出づれば上野夕立中みやざき白水

  • 補聴器はいらぬ夕立は聞こえとるみやま千樹

  • 夕立や波板叩く音楽し美山つぐみ

  • 夕立や咲きそびれた花を打つ宮村寿摩子

  • 傘へととんやがて連打の夕立かな無弦奏

  • 夕立や忘れてた人を思い出す向田敏

  • 口論の後を取り持つ夕立かなムシ・ミカミ

  • 幻のやうな夕立みづたまり睦月くらげ

  • 夕立の去りて遠くの樹々光る村上の百合女

  • 夕立やもう少しだけ待ってみる村先ときの介

  • 夕立が背中押してるランニング村田真

  • 夕立や置いてけぼりの泣き走り暝想華

  • かんかんかんカートレインに夕立が冥亭

  • よその子に軒先貸すや大夕立恵のママ

  • 夕立や憤怒の神が身を打ちぬ目黒青邑

  • 救急車のサイレン白雨切りさきてメディックス千里

  • 夕立とて揺らぎなきさま応援団望月ゆう

  • 夕立に負けじとドラム叩きけりmomo

  • 一見を拒む軒下踏む夕立もも

  • かっこよく濡れてみたくて夕立や百瀬はな

  • 濡れ髪の雫ひやりと夕立あと森海まのわ

  • 遮断機の点滅煽るよな夕立森上はな

  • 夕立や水墨画なる三毛の猫森きやつか

  • 夕立や宇治へ急いでゐるみたくもりさわ

  • 乳飲み子の寝息を包む夕立かな森茂子

  • 夕立や妻のピアノも気配無く森嶋ししく

  • 病室の窓ひろびろと夕立あと守田散歩

  • 傷ついて全速力で夕立を森太郎

  • 夕立や不機嫌な吾子菓子で釣る森野恵

  • 夕立や乗り換え駅に人の波森葉豆

  • 夕立にスカートの折ほどけゆく森日美香

  • 自転車の背にしがみつく吾子夕立森茉那

  • 夕立晴生色戻る潦森毬子

  • 夕立の柱1本2本3本諸岡萌黄

  • 夕立や改札前の人だかり八木実

  • 子ら遊ぶ夕立あとの水たまり矢車星風

  • マイカーの突入するや夕立に矢澤かなえ

  • 夕立と主急がすレジの列安元進太郎

  • 夕立が会えない理由になった君痩女

  • 夕立やあっけらかんと水いずこ柳とうふ

  • 夕立にござ仕舞ひたる貴船川野風庵

  • 洗い立て夕立の後参拝す山内文野

  • 片時の雲や夕立をつくねんと山河穂香

  • 期日前投票済ませ夕立かな山川腎茶

  • 帰途急ぐ我が家の辺り夕立か山川たゆ

  • 夕立のすんでにぎはふ病舎窓山口雀昭

  • 夕立のあとの匂いを嗅ぎに出る山口愛

  • 夕立や傘を我へと君走る山崎のら

  • 夕立がかき消す窓辺の長電話山下智

  • 夕立や爺と孫との駆け比べ山下義人

  • 夕立や猫抱きしめて丸くなり山育ち

  • 猿知恵の泡と消え去る夕立かな山田季聴

  • 巴里は夕立魔法の言葉ボンソワレ山田啓子

  • 大夕立ビル一斉に丸洗い山田好々子

  • 夕立を切り裂き駅へあと十秒山田翔子

  • 夕立や向こうの空は明るくて山田はつみ

  • 夕立を見上げるあの娘試合前大和杜

  • 本当はありがとうなの夕立君山野花子

  • 草光る夕立晴の原爆地山葉元気

  • 夕立や繰上げ受給決めた吾は山本八角

  • 君拗ねて泣いて笑って夕立来て山本美保

  • 夕立や水溜り踏むスニーカー山本葉舟

  • 夕立に仕事を置きて酒手にし山森風雅

  • 夕立やお下がりの折り畳み傘ユキト

  • 夕立や客のまだ来ぬ焼鳥屋雪鶏

  • 夕立やひとり勝手に旅立ってゆすらご

  • 夕立のあとに門扉の軋みたり柚木啓

  • 夕立にかき消されるやひといきれ夢一成

  • 夕立やまた腰下ろし開く本陽光樹

  • 夕立や雨音響くトタン屋根横田信一

  • ダダダダダ射抜く夕立アスファルト横浜J子

  • 夕立や荷物まみれの非常口横山ひろこ

  • 夕立に暫し軒下野良仕事横山道男

  • 夕立や隣の溝に大河ありよしぎわへい

  • 夕立や佳境に入るミステリー吉田蝸牛

  • 鯉登らんとす大夕立の壁余田酒梨

  • 夕立も青春の色甲子園吉藤愛里子

  • 夕立や境目のあり傘畳むYoshimin空

  • 畑にはお湿りだけの夕立かな米山カローリング

  • 夕立に追いかけられて追い抜かれよみちとせ

  • 夕立の潔きかな雲消ゆる楽和音

  • 夕立やこの雨粒が愛ならば楽花生

  • 禊ぐかのつゆ身動かぬ白雨のをんならん丸

  • 風物を一纏めにして夕立かなリーガル海苔助

  • 夕立の公園にただ童像料善

  • 夕立や騒ぐ姉弟傘ひとつ麗詩

  • 夕立のひとときのまに身を休め麗仙

  • 夕立やくつした二足と帰りけり蓮蛙尺子

  • 夕立に追ひ付かれたり陸上部若林くくな

  • 夕立や革のバッグはシャツの下わたなべいびぃ

  • 夕立や銀火花咲くアスファルトわたなべじゅんいち

  • 今に来るあやしき影の夕立かな渡邉花

  • 匂ふ気配家に入るなり夕立来る渡辺陽子

  • おまえやましろくけぶりて夕立来和脩志

  • 夕立の上がりてのぞく小さき歯わをんはな

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

◆俳号のお願い二つ

  • ①似たような俳号を使う人が増えています。
     俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。

  • ②同一人物による複数俳号を使った投句は、堅くご遠慮下さい。
    「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。


●兼題とは

  • 田舎なし墓参りなしの転勤族桐生のたんぼ

 本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「夕立」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。



  • バケツ雨流れた後に虹の橋 you人

「夕立」をイメージして書いたに違いないとは思いますが、バケツ雨で夕立とするのは、無理があります。これは、むしろ「虹」の句ですね。



●季重なり

  • 夕立やひとときの涼あたえけりせいだるま

  • 夕立ちて蝉の声だけ息をのむでこもん

  • 朝に夕立雲が切れ蝉がなく 香芝源

  • 夕立ちや軒下のアリ2倍速坂本月歩

  • 夕立を待ちくたびれて泣くカエル月夜案山子

  • 夕立過ぎ祭囃子に露店の燈てつねこ

  • 夕立のあがりて高し虫の声  田中忠明

  • 夕立を言い訳にして午睡かな石堂多門

 一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「夕立」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。


●季重なり? 比喩?

  • 夕立に座す蛙翁や祖父の通夜YOKOCHAN

「蛙翁」は、蛙の擬人化でしょうか。「夕立」は夏、「蛙」は春の季語なので、季節的にも無理があります。


●表記

  • 夕立ちや後ろ姿の子の濡れて石井久次

  • 夕立ちや一瞬鼻に鉄臭ささかたちえこ

  • 夕立ちや満点テスト握る駅素敵な晃くん

  • 夕立ちやジュンク堂まで一走り西村小市

  • 夕立ちや時宜を得たれど風情なしみかりん65号

  • 夕立ちや景色は白内障めきてリコピン

  • 夕立ちの情け容赦なき仕打ちあすなろの邦

  • 夕立ちですめば都と二季の国ケビンコス

  • 夕立ち去り空ひろびろと牛の声福ネコ

  • 西の浜黒く迫りて夕立ち来る逢來応來

  • 夕立ち止み雨粒空へ戻りゆく霜川このみ

  • 心地よし水車音消す夕立ちかな風かおる

  • 一面に折り鶴おどる大夕立ちくちなしの香

  • 波は際夕立ちてみな白く消ゆ芥川春骨

「立つ」という動詞は、「立つ」「立ち」等の送り仮名がつきますが、名詞としての「夕立」は送り仮名は不要です。



  • 夕立晴れ異国の土地が現れるアシツノカラ

  • 夕立晴れ遠き二上山濡れそぼつ荒木ゆうな

  • 夕立晴れ明日咲くのはあれとそれ理佳おさらぎ

  • 夕立晴れ洗濯物の滴悲し月光一乙

「夕立晴れ」という表記は、「夕立(が)晴れ」の意かもしれませんが、これも「夕立晴」と書くことをオススメします。


●仮名遣い

  • 夕立や砂場にささってゐるシャベル 加賀くちこ

「ゐる」は歴史的仮名遣いですから、「ささって」の部分も歴史的仮名遣いで「ささつて」と書かなくてはいけません。一句の仮名遣いは、歴史的仮名遣いor現代仮名遣い、どちらかに統一する必要があるのです。



  • 夕立の川を超へ来て我を超へ  則本久江

 口語「超える」は、文語で「超ゆ」。これは、ヤ行の動詞ですので、「超へ」とハ行にはなりません。「超え」ですね。


●切字の重なり

  • 夕立や一息つける暑さかな柳平眞佐子

  • 夕立やその雲だけの遊びかなtabei白芙蓉

 一句に「や」「かな」と切れ字が重なると、感動の焦点がブレるため、嫌われます。どちらかを外して、整えてみましょう。


●説明とは

  • 温暖化かつて夕立いま豪雨青橘花

  • 夕立と豪雨に令和の怖さ知る樺久美

  • 夕立や災害過る強い雨高橋基

  • 夕立や今はゲリラと名乗りけりてん子

  • 夕立や今や風情もありはせぬ雅蔵

 これらの句は、「夕立」というものを説明したものになっています。俳句は、説明ではなく描写であることを考えてみましょう。


●今月の選外

 季語を説明してしまった句を始めとして、「夕立がいきなり降る」「夕立で雨宿りする」等、類想そのものの句は選外としました。また、文法的に問題があるもの、句意が読み取りにくいもの、造語の意味が汲み取りにくいもの等もありました。選外となった理由を考えて見ることも、俳筋力アップのための有効なトレーニング。是非、復習してみて下さい。

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