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『NHK俳句』『プレバト』でおなじみ夏井いつき先生の「俳句生活 よ句もわる句も」

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。
『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

今月の兼題はこちら

5月の審査結果発表

兼題「蛍」

初夏の夜、明減しつつ飛び交う。美しく神秘的。※傍題でも可

初回「薫風」の1,319句につづき、第二回「蛍」にも1,300句の投稿をいただきました。
さあ、6月の兼題は「向日葵」です。
まだ投稿されていない人は、ぜひチャレンジしてみてください(編集部より)。

「天」と「地」の入賞者には、夏井いつき先生イラストつきのクリアファイルをお送りいたします。

入選作品

※「兼題が入っていない」「短歌である」等、
 以上に該当する投稿句につきましては入選外となります。

天
街灯のぽつと湾曲して蛍

渡邉一輝

夏井いつき先生より

「街灯」が闇の中に暗く「ぽつ」と灯っています。その灯りは真っ暗な道に沿って「湾曲して」います。ぼんやりとした灯りが、道のありかを示していると言い換えてもよいでしょう。「街灯のぽつと湾曲して」とのみ描写しているにもかかわらず、作者が見た光景は、読者の脳内にそのままの映像として再生されます。
 なんといっても巧いのは季語の出現の仕方。最後に「蛍」がぽつんと現れると、この湾曲した道が川のカタチに添ったものであることに気づきます。川音も聞こえてきます。湿った夜の匂いもしてきます。「湾曲」して並ぶ「街灯」の鈍い灯りと、我が身の近くに光る「蛍」。生き物としての「蛍」も川音も腥く立ち上がってきます。

地
虫籠に動かぬ蛍の匂ひ満つ

あまぐり

「虫籠に動かぬ蛍」を詠んだ句は山のようにありますが、その「虫籠」に死んだ「蛍の匂ひ」が満ちているという詩的嗅覚。昨夜の乱舞する蛍の光景を思いつつ、「虫籠」に残る黒い虫を捨てる朝です。

蛍火の音なき音に湿る闇

樫の木

「蛍」=「闇」はありがちですが、「蛍火の音なき音」がリアルな感知。「音なき音」は明滅しつつジワジワと「闇」を湿らせます。「音なき音」によって「湿る闇」という着地が見事な一句です。

ほうたるのぽろぽろ降れば夜が好き

香野さとみ

本当は夜が嫌いなのです。一人が淋しいから、一人が怖いから、理由は色々あるけど、「ほうたる」が「ぽろぽろ降れば」嫌いな「夜」もほんの少し「好き」になれる。「ぽろぽろ」が切なくて好き。

集金袋に入れて蛍を持ち帰る

小市

「集金」業務に明けくれた一日。とっぷりと暮れた帰り道で「蛍」に出会います。子どもたちが喜ぶに違いないと捕まえてみたものの、入れるものといえば、空っぽの「集金袋」。静かなほほえみの一句。

足首のざわざわ暗し蛍の夜

富山の露玉

「夜」だから足下が暗いのは当たり前。が、この句は「足首」が暗いというのです。何だか不穏な気持ちになります。「ざわざわ暗し」という措辞に心がざわつきます。そんな「蛍の夜」なのです。