夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
6月の審査結果発表
兼題「水母」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
窄みきるまへに水母のひらきだす
眩む凡
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夏井いつき先生より
私は愛媛県の南方の村に生まれ育ったものですから、「水母」はとても身近な生き物でした。激しく泳ぐわけでもなく、餌に食いついてくれるわけでもないのに、なぜだかずっと見ていても見飽きない生き物です。
掲出句を目にしたとたん、「水母」のあのゆったりとした動きが、脳内にありありと再生されてきました。「窄む(すぼむ)」と「ひらく」、二つの相反する動きが同時に行われる。まさに、これが「水母」の特徴であり、面白さでもあります。
表現の上での小さな工夫も徹底しています。「窄みきる」と「ひらきだす」、二つの複合動詞が「水母」の動きの変化を絶妙に描写しており、更に中七「まへに」という短い時間経過の押さえが、一句の意図を支えています。見事な一物仕立ての逸品です。
内もみづ外もみづ境目が水母
ギル
九十パーセント以上が「みづ」だといわれる「水母」の「内」は当に水分。その「外」は、海水という名の「みづ」。となれば、「境目」のみが「水母」の実体であるのだと、この不思議な生き物を詩的に定義したユニークな一句です。
溺死者のあぶく海月の横を過ぐ
葉村直
ゆっくりと漂う「海月」の横を通り過ぎる「あぶく」。今際の際の「溺死者」が吐いたものか、体内から発せられるガスの類いでしょうか。「あぶく」の存在が、こうも生々しいリアリティを描き出していることに驚嘆します。
無医村はしづか水母のしづみゆく
干天の慈雨
「無医村」ですから人口も少なく、当然のことながら「しづか」に違いありません。後半の季語「水母」によって海辺の村の光景が立ち上がり、「~のしづみゆく」によって、静かな夏の海面と濃い潮の匂いがありありと再生されます。
たましひの傷は明るし海月咲く
常幸龍BCAD
「たましひ」のように透きとおる「海月」に「傷」らしきものを見つけたのでしょうか。誰かの「たましひの傷」はきっと明るいものに違いないという追悼かもれしません。「海月咲く」という措辞が「明るし」の一語と美しく響きあいます。
海月殖ゆわたつみの傷膿むやうに
RUSTY=HISOKA
「海月」という生き物は、気が付くといつとはなしに殖えています。「わたつみ」とは海を意味し、海の神をも指す言葉。「わたつみの傷」が膿んでいるかのように、殖えていく「海月」。病んだ海の臭いもしてくるような詩的な作品です。
光うらがへせば水母うらがへる可笑式
ひかりてふ永久機関めく水母沖庭乃剛也
軍艦が水母の群れを裂いていった樫の木
転生の受付混んでいてくらげ岡一夏
たくさんのどこか欠けたる水母かな霜川このみ
片恋や水母を海へ蹴り返す白猫のあくび
くらげ吐く水は反芻せし迷ひ鈴白菜実
方舟に乗せるはつがひ水母咲く常磐はぜ
手のひらの水母壊れてばかりいる猫ふぐ
未だなほ神に塗り残され水母帝菜
吾の下を群れて流るる水母かな岡井稀音
かなしみの残像として水母咲く七瀬ゆきこ
かなしみはぜんぶくらげにあげました有野安津
ひらいてとぢて水母このよをはかなむな冬島直
ひらいたりとじたり水母うたったりみづちみわ
たましひを千の水母に囚はれてat花結い
たましひのゆらぎ水母のふぶんりつ我孫子もふもふ
たましひの行く先決めかねて水母彩汀
たましひの裏返りたる水母かな文室七星
肉といふたましひの匣海月泳ぐ伊藤映雪
ほら水母浮くたましひの遊ぶとき大岩摩利
水母浮くたましひは一グラムほど岡山小鞠
海底のたましひ運ぶ水母かな千葉右白
魂をしばし水母に盗まるる石塚彩楓
魂の数だけ水母現るる梅朶こいぬ
淋しさに海は水母をぽつと吐く三月兎
淋しくて蕊の伸びゆく水母かな主藤充子
水母啼く淋しいと啼くこゑ眩し百瀬はな
くらげくらげ淋しさにすりへる心にゃん
みづのなかにくらげが二匹ゐて「淋し」爪太郎
さびしさを具象化したる水母かな大津美
さびしくて水母しづみつつ増ゆる北村崇雄
透きとほるほどにさびしき水母かなえりべり
生きるってさみしいよね。群の水母平手打チメガネ(志村肇)
黄泉の国水母となりて逢ひにゆくおかえさき
散骨の母は水母となりにけり長嶋無有子
六億のなごり水母となりし伯父三群梛乃
終戦を待たず水母となりし叔父倉岡富士子
ともかづき水母となりてぐぽんぐぽん白よだか
ガリレオを父に持ちたる水母かな高木音弥
此の星の水母ガリレオを弔へる高橋手元
砂浜におそらく水母だつたものあみま
べつとりと浜に水母であつたもののんぬもんぬめぐ
水母着く日付変更線を越えアーモンド兄い
煩悩を裏返へしては水母かなEarlyBird
水になりそこねし形を水母かな相生三楽
水の重さ水母の重さ子の重さ愛燦燦
海になりたき水母ほど澄みてをり青井えのこ
くらげくらげ百から七を順に引く青居舞
針もろとも水母飲んでより毒舌蒼空蒼子
日は疲れ海おだやかに水母抱くあおのめ
集魚灯海月の息の重さかな赤鰯
邪神祀る聖堂めける水母かな赤尾てるぐ
逆らわぬ水母なるみづのぶぶんあが野みなも
水母てふ喜天烈な音階と知る赤目作
はらわたに月を浮かべしくらげかな愛柑いつき組note俳句部
雲数へ帰る水母と話した日明惟久里
御統の主守るかに水母殖ゆ空地ヶ有
散骨や父は水母に見送られあくび指南
水母の企み私には分かる浅井翠
どれだけの水母忠敬見ただらうあさのとびら
打算てふ毒ひとに有り水母群る浅乃み雪
海中は夜より暗し水母浮く葦屋蛙城
海の色透かして水母そこにをる飛鳥井薫
水母来た笛に旗振るライフセーバ明日に翔ぶ会
実は青空飛べるらし水くらげ明日ぱらこ
地球まだ若き星なり海月すむ藍創千悠子
くらげくらげ詩を吸つて詩を吐き出して足立智美
海神の浮沈子なるや蛸水母あたなごっち
寒海の町離れたき水母かな阿部八富利
透明な水母100もいれば無敵雨李
ゆつたりと慌ててゐたる水母かな綾竹あんどれ
スカイツリー映る水面の水海月綾竹ろびん
水母ふわり地球最後の日はパスタあらい
泳ぐ水母透けて子の顔歪みゆくあらいゆう
銀河鉄道追ひ水母の無心在在空空
水母水母みづ抱き寄せて手放してアンサトウ
呟きのやうな水母の推進力飯沼深生
帰れない水母の傘に掴まれて家守らびすけ
欠航の船溜り浮く水母かな猪狩鳳保
国境のくらげくぽくぽうきしづか池之端モルト
かといって触れたりもせぬ水母かなイサク
大地震のデマ裏返る水母石岡女依
裏返るたびに水母は影を知る石原由女
喘息の夜や肺をたゆたふ水母泉晶子
砂浜に海だしきつて水母かな和泉攷
大海月祈りて傾ぐ厳島和泉園実
水母浮くこの世に痛み透かしつつ泉諒
東京の夜を灯として海月いずみ令香
最終便水母の寝床へと汽船磯野昭仁
錆止めの乾く暇を水母泛く石上あまね
水母とは鋭利な水のかたまりのいたまき芯
群青の海を水母は編み続け市川りす
天使の梯子や海月の随に沈む一久恵
生くる意味知らぬ水母よ光りをり伊藤恵美
静寂の夜海の夢見る水母かな伊東海芋
傘ゆらし群れ舞ふ水母の恍惚伊藤順女
余生つて何さ海月ゆれどほす伊藤柚良
憂鬱な浮きかたをする水母かな糸川ラッコ
鳩尾を棲家にしてる水母居りいとへん製作所
あがいても風に流れる水母かな伊那寛太
水面はひかりの棲家水母群る稲畑とりこ
宇宙膨張中水母傘満開居並小
水母骨なし憧れでなく恋でなく井上鈴野
水母ふわふわ息子のフェリー見送って井上れんげ・いつき組広ブロ俳句部
とくんとくんと水母は海の脈打てり井納蒼求
桟橋にこんど水母の結ぶまで井口良範
駅の少女像くらげをみてゐるのだらう猪子石ニンニン
水母遊泳もみくちやの夜明けぬ井原昇
あちこちに水母あの世はこんなとこいまい沙緻子
水母しなやかにしなやかに水の反動妹のりこ
透きとほる嘘も水母も流されて伊予吟会宵嵐
海月美し浮世の外を浮遊して岩木順
水母ひとつ水の空から降ってきたいわさちかこ
水母ふわふわあたしゆらゆらたそがれぬ岩清水彩香
みだれ髪ほどに濡れゐる水母かな上野徹心
水母浮く進水式の艫舳先上原淳子
月汲めば海月やそれと波の間に上原まり
逆さまの水母は泣いてゐる水母うからうから
水母つついて高床式めいた小店うさの
波際の水母や後産のやうにうた歌妙
水母の夜アラン・ドロンは犯人かうただねこ
水母さえ穿つ息さえ詰まる雨うつぎゆこ
満月にならむと水母漂へり卯之町空
沈下橋渡り水母を踏み潰す海口竿富
水母浮く陸には意味が溢れてて海沢ひかり
小さき嘘重ねてひとり見る水母梅里和代
人間よここには海月しかいない梅田三五
打ち捨てし夢の在処を知る海月うめやえのきだけ
泣いたあと水母と一緒に揺れてみる江川月丸
満ち潮に羽ばたいてゐる水母かな蝦夷やなぎ
ヒーリング音出していそうに水母たち江戸きり子
浦およぐ水母いまわの心拍数榎美紗
かさすぼめやわらかく飛ぶ水母たち榎本奈
老眼に点眼三種水母浮く近江菫花
墓場まで持ってゆく恋くらげ透くおおい芙南
来世も水母と決めて月仰ぐ大久保加州
おっぱいが張ってくる頃水海月太田怒忘
水中眼鏡の隙にぬるりと入る水母おおにしまこと
心音のたびに水母の透きとほる大和田美信
浮遊する水母は誰も刻持たず岡田瑛琳
くらげくらげ薔にこそぐらるるあそび男鹿中熊兎
マフィアでも刺したかずたずたの水母岡根今日HEY
水母出て無為な休みとなりにけり岡村恵子
胎児めく海月の核の光り出す小川さゆみ
さびれゆく漁港群るるは水母のみ小川天鵲
妹は水母の泡となりにけり小川野雪兎
浮遊して水母に水を漕ぐ力小川都雪
触れないで水母は眠つてゐるのですオキザリス
水母透くかせぎなきじかんは悪か沖庭ノ華風
たらい舟漕ぐ櫓に水母うらがへりおこそとの
好きだったもの捨てて観る水母かなおだむべ
骨っぽく波にさからう水母かな小仲翠太
水底へ夕日さそふは海月かなおひい
掟なき水母の触手ハ短調おぼろ月
江の島ゲート閉鎖海月は星抱かんオレンジペコ
胎内に忘れ来しもの水水母おんちゃん。
あつけないハッピーエンドはぶくらげ海音寺ジョー
浜で死す水母に水をかけており海堂一花
体温を貰ひて水母離れゆく海峯企鵝
波音の傍の無力な水母かな火炎幸彦
漂泊の果てに砂塗れの水母案山子<いつき組広ブロ俳句部
オイ水母吾の病名は老化なりかきくけ子
水母より三割乾くわたしかな柿本苧麻
いのちとは光のやうな水母かな影夢者
星の海水母は肉をあたえられ風早杏
話し聞いてくれ呑気そうな水母鹿嶌純子
小さき嘘海に溶かせば水母喰ふ梶原菫
反抗期水母の紋の伸び縮み風薫子
あ、海の演出か青く透く水母片岡一月
水母浮く湾に沈船追悼碑加田紗智
暗闇を食んでひかりになる水母蝸牛
透きてなほ臓物の見ゆ水水母帷子砂舟
夜の海てまねきめく十の水母花鳥風猫
吾を呼ぶ声や水母がとけるまでひだまりえりか
祈りたる海に浮かぶは水母のみ桂子涼子
会社なら辞めてみましたおや水母かときち
適当に頷く返事水母浮く金子泰山
脳みそを冷まそう水母見に行こうかねつき走流
水母浮く忘るることを嘆かない花星壱和
水母てふ光る輪郭だけのもの釜眞手打ち蕎麦
水母みる吾の輪郭も溶けだしぬ紙谷杳子
水母の腑何か喰ふたな灯が歪む神長誉夫
失恋や水母は岩に干からびる神谷たくみ
水母くらげ月の光を食べに浮く亀田かつおぶし
水母上下私は私良き日かな亀山酔田
くらげ漂流す小さな酔い回るかもめ
みづくらげ星の目ん玉かもしれぬ河上摩子
孕みをる海の吐息として水母川越羽流
難聴の耳よ水母の棲む耳よ翡翠工房
海月ゆるり君の指先は冷たい河村静葩
海折は涙の柩かもしれず喜祝音
囁ける海の句点として水母岸来夢
嘘ついて海が水母を増やしけり北大路京介
月の夜の輪郭顕なる水母喜多丘一路
「わ」「わ」「わ」水母の独歩「わ」「わ」「わ」北野きのこ
くらげふはふは現実逃避したい夜北村環
水母には水母の廻す地球かな木寺仙游
海月ふかふか今日は一粒万倍日きなこもち
月の殻食べて水母は覚醒す城内幸江
水母ふんわり生きる理由はないけれど木下桃白
水母ぽふん青はどこからくるのでせう木ぼこやしき
浜辺には水母サザエさんのエンディング君塚美蕉
舷側に水母の透けて空碧し木村修芳
波打ち際夢の残滓として水母木村弩凡
故郷は水母の生きる水の星鳩礼
みづの星だつた痕跡水母増ゆ杏乃みずな
突堤の暗さに倦む水母かな霧賀内蔵
夜の海つぶやきとなる水母かな霧澄渡
水母浮く母の子宮の匂ひさせ菫久
水母浮く海ひたひたと膨張す句々奈
のうなしと言われ水母と浮いているくさ
水母とふ波に揉まるる痼かなくずもち鹿之助
ひるがえる海月本音のなき家出草臥れ男
新月の水母陸へあがらんとするくちなしの香
虚を喰いて透き通りたる水母かなくつのした子
水母透く前向きにとはやっかいな熊谷温古
国古るとは心古る事水母浮く久留里61
見くびるな水母きみほど柔じゃない愚老
桟橋に泪のような水母おり黒瀬三保緑
透けて透けて水母は何も見ていない恵勇
正直に生きる手本として水母月下檸檬
マタニティマークのやうに水母咲くげばげば
深海の王の吐息か水海月健央介
みづとなりみづ鎮めむと海月の死謙久
吾のなみだ吸うて水母の永らへる剣橋こじ
誰彼も水母の揺れと同期する小泉久美子
太陽を食むヒト海を食む水母剛海
失えど音を生み出す水母かな紅紫あやめ
母さんが帰つて来ない夜の水母幸田梓弓
水母浮く波が手鏡持つやうにこうだ知沙
心臓を射る恋あるか水母に問う郷りん
麻酔醒めつつ水母の傘の膨らみぬごーくん
樹海のいきづかひ水母のびちぢみ郡山の白圭
みづといふひかりにくるふくらげかな古賀
水掴み水手離して水母去る古烏さや
桟橋に潜水艦ゐる水母ゐる木染湧水
水母ぽあぽあ憂うつを丸めこみ小手拭エコ(こてぬぐい)
死して猶青き刺客の水母をり虎堂吟雅
月色を模して海月の淡き白粉山
持ちきれぬ闇を沈めて水母なり子猫のミル
満汐やくらげの還る月の道このみ杏仁
終便の過ぎ行く舟や水海月小林昇
ハンドベル鳴らし水母は沈みゆく小林澄精
砂浜に水母積み上げ日の暮れぬ小林のりこ
水母にはやわき心と棘があるこむぎ
小波に水母に屈曲する天使GONZA
水母浮く岸壁の藻屑匂ひだすさいたま水夢
限りなく膨らむ宇宙海月寄す齋藤桃杏
海月たゆたゆ小さき毒をほつぽつてさおきち
水海月うにやんうにやんとのたまひぬ酒井春棋
灯台のひかり絡まる水母かなさかえ八八六
漂うよ水母の快楽酔うよ只坂島魁文
夜来れば剥がれし空を喰う水母坂野ひでこ
ドジャースのキャップに水母すくう兄坂まきか
太陽の孤独を知つてゐる海月桜鯛みわ
水母に喰われてくかあなたの記憶笹桐陽介
水母ならこの難局も切り抜けさうさざれいし
海月漂ふ寅さんはバナナ売る佐藤恒治
夕潮へ水母集まる音すなりさち今宵
水母には震度五強と伝えたり佐藤茂之
やけに高いラーメン啜る水母浮く佐藤志祐
あおぞらや海月はかみさまのあくび佐藤レアレア
海月舞ふくらげのやうな文体で錆田水遊
煩悩の数は一桁水母どちさぶり
水くらげ海暗ければ昏くなる彷徨ういろは
生と死は同じ白なり水母浮くさむしん
小さき日の遠ざかりゆく水母かな紗藍愛
持て余す触手もだもだ赤海月佐柳里咲
キタユウレイクラゲここも爆心地なのかさるぼぼ17
落つる月に波を任されてをり水母沢拓庵◎いつき組カーリング部
悩みなどないふりをして見る海月澤田紫
知らぬ間の水母の包囲遊漁船塩風しーたん
白亜紀の顔で誘つてゐる水母塩の司厨長
海月いま月に向かつてゐる途中柿司十六
憂鬱の脛を這いけり水母の喪四條たんし
凪の夜の海星と海月ひそひそとじつみのかた
大水母天を指したる羅針盤信濃のあっくん
まやかしの処理水口に海月群る篠崎彰
原発や乖離ふるさと水母群篠雪
水母浮くハローワークへ行く決意芝歩愛美
水母あをしタージ・マハルの窓のやう渋谷晶
親鸞を知らず水母は生きてをりしぼりはf22
海月ばふんばふん月へ帰るとこ島田あんず
こころ無き水母にこころ囚われてしまのなまえ
母知らぬ水母は月を乞いにけり清水縞午
嘘かどうか水母に尋ねてごらん清水祥月
セイレンの聲に集ひし水海月清水ぽっぽ@木ノ芽
空腹や水母刺す刺す無人島下丼月光
水のほかその身に持たぬ水母かな下村修
長き裾揺らし息吐く水母かなじゃすみん
水母並べし海岸線の遠ざかる沙那夏
覗き込む我に重なる水母かな洒落神戸
青色灯ともる夜バスや水母浮く朱胡江
暁の溢るる水母砂の上柊二@冨美夛
永遠に溶けぬ絵の具のよう水母秋芳
大空の鼓動のように凪ぐ水母種種番外
くらげくらげ小さきラッパを吹き鳴らすシュリ
昇進の道諦めて水母好き庄司芳彦
沈船のあたりでボッと水母泣くSEAN
暁の水母は酔ひてみづになり白石美月
岩壁に水母集める入港船白井百合子
部下と見る水母や指に指と指白沢ポピー
深海に只水母ふる水母ふる不知飛鳥
水母に食まれみな透明になりにけりジン・ケンジ
裏返る水母や兵士飢渇せり新濃健
樹海めく水母一万匹の眠りすがのあき
出征のくらげの骨にあふ夜かなすがりとおる
喪いし骨を探しに来る水母杉岡ライカ
水母まどろむ梵音海潮音杉本果ら
どこまでも水になりたき水母かな涼風亜湖
くらげ九十九突堤のしみ一つ鈴木由紀子
浮雲を追って幾千水海月清白真冬
くらげ浮く母なる月のひかりへと鈴野蒼爽
言の葉の通過装置や吾と水母瀬央ありさ
ひかり得て水母たくらむ久遠の無音摂田屋酵道
水上バス水母ほぐしつ湾をゆくせり坊
感情の不要な水温水母凪ぐソウアラタ
あかときに海月も月も溶けゆかむ草夕感じ
ひたすらに繰り返さるる水母の乱そぼろ
極道の眼のゆるやかに追う水母そまり
臓を捨て水母に厭なことはないそよかぜシュレディンガー
水を生むみづ水母とはみづの種空豆魚
水母まで公転している日曜日高瀬小唄
恋すてふ水母にダイブする夜明け高辺知子
水母らの会議疲れ気味の地球高橋寅次
裏返る水母のちよつと反抗期鷹見沢幸
みづくらげ咲ふがごとく解けけりたかみたかみ・いつき組広ブロ俳句部
睡眠時無呼吸の夜や水母浮く高山佳風
月の夜は海が膨らむ海月かな滝川橋
桟橋や水母集うをひとまたぎたきるか
砂浜に消ゆる水母の月日かな武井超凡
ひりつきを皆が水母の所為にする竹内不撚
月の裏水母笑って飛んでくる武田豹悟
かなしびを抱き水母のみるく色竹田むべ
みづだつた水母とくらげだつた水多数野麻仁男
沖に浮かぶ町並み置き去りの水母ただの山登家
教室へ行かない水母見ていたい立田鯊夢
散歩する水母掟の弛む街田中勲
朝食とるテラス増殖する海月谷斜六
徹夜明け遠き水母の中にゐる谷しゅんのすけ
月さわぐ水母に起こる胸騒ぎ谷町百合乃
印鑑をぬらりくらりと水母ぷにょ田上南郷
片頭痛水母のやたら浮いてきて田畑整
水母てふ拍動血潮めく海流玉家屋
打ちあがる輪廻なかばの水母かな玉木たまね
くらげくらげ愛は透明なのかしら玉野文
胎内に点る海月の蒼き芯玉響雷子
裏返る水母はたまに星を恋ふ田村利平
潮あらば潮に流るる水母かな丹波らる
水面とぷとぷ水母がぶがぶ防波堤千夏乃ありあり
海原へ遺灰撒けよと水母浮く竹庵
透きとほる水母つらぬく光かな智幸子
海底にふられぬ番地くらげ降る千歳みち乃
雪が食べたいそんな夜の水母千葉信子
月島や寄するは水母また海月ちやあき
漂着の水母会いたくない男彫刻刀
水母浮く記憶の奥の錆びし鍵ちょうさん
水母の傘閉じ海溝型地震千代之人
吾は老いに水母は濤に攫はるる月黒
水母にも残る私の面影よ月夜案山子
骨密度B判定水母群れているつくばよはく
渡御灯す海月は巫女になりにけりつくも果音
海宙に幽霊船なる水母かな辻栄春
国籍を持たぬ水母の透きとほる津々うらら
天球儀の余白に海月放つとこ綱川羽音
水母くらげ東京のみぞおちだらうツナ好
群れてなほ孤独を生くる水母かな坪田恭壱
水母の傘のもだえる海は不純鶴富士
鳴り響く地震速報水母浮く哲庵
散骨を終へて水母の沸き出づる天雅
水俣の記憶水母の濁りけり電柱
水母ぴくん月の波動と共鳴す天陽ゆう
母だから水母のやみへ流されるトウ甘藻
彷徨へるみづの結晶として水母冬野志奈
越前の水母おどろと漂へり遠峰熊野
優しげに触れれば火傷する水母とかき星
くらげくらげ水に全てを任せをりとき
メビウスの海に漂ふ水母の子ときめき人
絡まぬか水母おつとり裏返る戸口のふっこ
空に星海に水母の無音かなどすこい早川
水母ふぁゆんふぁゆん火の弾おちてきたとなりの天然水
つうと伸ぶ海月光を産み落とす苫野とまや
月光に見初められ幽霊水母富野香衣
ぽこぽこと海の鼻歌めく水母富山の露玉
金網の形に水母腑分けされ豚々舎休庵
水母は固い水がやわらかいのだとんぶりっこ
透明を形に化して水母かな頓堀頓
砲弾と成れぬ水母の翳りけり内藤羊皐
列島の海のぬるさよくらげくらげ中岡秀次
船べりの少女に水母寄せ来たり中尾鎖骨
青年の腰の細さよ水母浮く中里凜
憂き世とは夢になるもの水母くらげ中島紺
御神火や水母に刺されし身の火照り中十七波
月の紫と海の藍色海月浮く中原柊ニ
水母漂つてゐるただ酔つてゐる中村想吉
イザナギの鉾の滴や水水母中山由
大くらげ月のひかりを蓄電す夏草はむ
死に方を知らぬ水母の半透明夏椿咲く
あたらしい恋にも飽きて水母見る夏野夏湖
万の水母たゆたふ南洋昏(くら)し夏雨ちや
水海月宇宙の塵は燃え尽きる名計宗幸
顔のない水母かそけく遊びけりなびい
水母に雌雄我には想い人をらず奈良素数
水母ゆくプランクトンの雨の中西尾至雲
山に雲海に水母の漂へり西尾照常
月満ちて欠けて水母の拍動は西川由野
水母浮く無職のやうな自由業西田月旦
星雲の狭間で拍動す水母西村小市
見たことないけど地球は丸い水母回る二重格子
頑張りがすべて裏目の日の水母二城ひかる
静寂より水母は涙滴へ還る仁和田永
裏返る水母世界を翻し庭野環石
破れたる水母のなかの透きこぼれ布川ユウリ
水母浮く浮かぶただよふ忘れらる沼野大統領
人魂も混じり月呼ぶ水母かな猫またぎ早弓
タンバリンロールのきしみ水母閉づ野井みこ
夜の海落ちた満月めく水母野地垂木
水母ひゅいひゅい水面の光は銀のなめ
水母分けフェリー着岸ゆっくりとののクラブ
水母の子透明の抵抗をする野の小花
水母眠る月の旋律聴きながら野ばら
流されず良き方向へ水母たち野原一草
干からびた水母はぷかり雲となる野山恵生
沈船に触れし水母ら呻き聴く波止浜てる
溜息を吐いて水母は前進す橋本有太津
仄蒼く星は病み水母は躍る蓮井理久
原発の入江に水母のたゆたへり羽住博之
ゆらゆらと水母と恋は浮遊する蓮見玲
芥浮くなかを水母の穢れざる長谷川水素
重力の最低基準水海月葉月庵郁斗
明け透けに水母同士はぶつからず八田昌代
瞬かぬ吾子ひかりに溶くる水母花はな
みづのこゑやさしくくづれ水母うむはなぶさあきら
水母透く何者かにはなりなさい英ルナ
母性というまぼろし水母の親子花豆
水母とふ豊かな母よ教え乞ふ花水木
金色の月に呼ばれて咲く海月花見鳥
夕間暮れ水母のほかにつれはなし花和音
生命の起源は水母かもしれぬ原島ちび助
先輩のちやらんぽらんや水母浮く原水仙
みづ煌めく小さき水母の波動拳原田くろなつ
排他的経済水域水母浮遊原田民久
太陽に黒点この星に海月巴里乃嬬
霊界の生殖作用なる水母晴田そわか
吐く息はカナリア色の水母かなはるの風花
酔い止めは青いカプセル水母浮く春野ぷりん
まだ水に為れぬ水母や浜の朝はれまふよう
だるさうな海を犇く水母かな万里の森
この刹那水母は生まれ星は死にピアニシモ
溟海の心臓として赤水母柊琴乃
水母の傘の中の海なる水母かな東沖和季
水母溶け損ねしづかなる散骨東田一鮎
観念の水母ぐでんと横たわり東の山
水母らも繋がれぬ手のあるだらう東原桜空
海月みていま銀漢の端にたつ匹田小春花
水母舞う呼びあげる戦没者名菱田芋天
なまぐさき脱皮のにほひ紅水母ヒッチ俳句
溶けてゆく水母の中に溶けてゆく一石劣
海に降る雨消え損なひの水母日向こるり
アトランティスを統べる水母を捕獲せりヒマラヤで平謝り
みずからを握って放つ水母かな日吉とみ菜
傘ひらく水母に弾む吾が鼓動平井由里子
くぐもった吾子の心音水母浮く平野芍薬
紺碧に揺れる水母や銀河系平松一
海きうときしむ海月のちぢむとき平本魚水
月光を飲み干してゐる水母かな平山仄海
水母水母なくても平気脳なんて昼寝
千万の水母の抱く孤独あり広島あーやあーや
無毒ですみたいに透けてゐる水母広島じょーかーず
空は火を未だに降らします水母広瀬康
照りかへす水母とけゆく子らのこゑ廣田惣太郎
散骨の岬水母の影沖へ広野光
水母群星雲のごと眠るごと広ブロ俳句部三日余子
水母浮くバリウム検査異常なしフージー
水母戯る奇しき身ひとつ辛うして風慈音
汚染水処理水だろが水母なり深蒸し茶
海洋の純化の残滓なる水母ふくじん
水母眠る心は全身に在りて福間薄緑
表情無き子感情の無き水母藤井かすみそう
綿津見の月に真似たり海月逝く藤咲大地
不条理で出来て水母は水を吐く藤白真語
海神の静かな怒り水母咲く藤永桂月
主語のない会話している水母かな藤本だいふく
心臓を探す水母の拍動よふみづきちゃこ
水母ふわふわきれいなものだけみていたい古織沃
小さき水母に生命の端は見えようか古川しあん
うち捨てて水母と呼べるほどの水古瀬まさあき
泳がない水母転職する決意碧西里
揺蕩ひて水母幽明分かちけり房総とらママ
揺蕩う水母青く媚びず離れず暮戯
言の葉のはざまを溢れたる海月黒子
水母散る心臓なんてないくせに星屑今日子
水母浮く湾滞納されし造成地星月彩也華
予定表金曜水母土瞑想星乃ぽっち
水母よりヒーリングめく調べかなほしの有紀
砂浜の海月の虹は黄泉のいろ細川鮪目
拍動や海が水母に成る朝ポップアップ
水母グンニャリ効かない薬みたい舞矢愛
何もかも晒して哀し水水母前田冬水
みかづきとなるひもありしくらげかな槇原九月
水母のゆらめきより詩刻みけり牧茉侖
最期には光にほどけ水母消ゆまこと七夕
確かむるすべなき水母の沈黙町田勢
透明な海月のこころさへ不明町田思誠
ハモニカのファの音の色の水母かな松田迷泉
僕の鬱水母日和の欠伸かなまっちゃこ良々
ねえ水母その毒貸して月曜に松知
水母の輪郭には光の段差松本厚史
水母群る衛星軌道に宇宙ゴミ松本こっこ
水海月原発の海困らせる真理庵
水母わらわら別れの船に纏はりてまるごとハテナ
網の外へ捨てる水母や息を吐く丸山隆子
干満を右往左往の海月かな三浦海栗
ため息も浮力に変わる水母かな三河三可
海月ゆらゆら未来を潮に委ね三茶F
失恋のあてなし海月よわき毒岬ぷるうと
ごめんなさい水母と別れられません水須ぽっぽ
彼探す水母が先に吾を囲む水間澱凡
形代のような海月を眺めをり三隅涙
迷宮か解放区かな海月浮く三高姫
水母の子たる水に手を沈めゆく巳智みちる
水母てふひかりの濾過器ほぷむほぷむ満生あをね
重さうに軽さうにゐる水母かなみつれしづく
きのふの苛立ち水母見てゐる午後源早苗
出世魚めく「ラ」の音多き水母かな嶺乃森夜亜舎
みづへ還る水母地へ眠る海月宮井そら
大海に惑う水母は明日を待ち見屋桜花
己が身の美しきを知らで水母死すみやかわけい子
退職の日も運河に居る水母三宅雅子
からまりてほどけからまる水母かな宮坂暢介
警笛の終はり寂しき海月かな宮下ぼしゅん
「〇のない人生」のやう水母群る椋本望生
水母かなストリングスの響きをる無弦奏
あしたには水母は水母の母となる向田敏
水母みな水母の刻を生きてをり睦月くらげ
戦国の荒き水軍水母行くむねあかどり
平日の水母は浮きて来ず仕舞ひ紫小寿々
夫逝きて浮き沈みゐる水海月暝想華
くらげぼわんぼわん海は不眠症茗乃壱
越前海月旅ふやふやと暮れる目黒青邑
水母とぷとぷ半透明のカルマ本村なつみ
ぜいたくに水母は海を使いたり桃園ユキチ
あなたとのあはひに水母ゐて遠し森海まのわ
水母吾のうしろのものを迎へ来ぬもりさわ
はかなさのかたちまとつてみずくらげ森中ことり
水母欲る渋谷スクランブルの空森葉豆
みづといふ宇宙を自転する水母森日美香
しゅんしゅんと水母マイスリー1錠杜まお実
くらげとふみづのうつはのあやふやな森萌有
打ち上げられたる海月の目に涙諸岡萌黄
真面目ってほめてないよね水母閉ず山羊座の千賀子
わたつみやヒトのはじまりぽい水母弥栄弐庫
おぼろげに水母透かして見る未来安田伝助
我執なく海に寄り添う水母かな八手薫
壇ノ浦乳母の衣めく水母八幡風花
浮遊てふ自由水母は身を任せ山内彩月
空と海交わる所水母住む山川たゆ
悪口も丸に無色に水母かな山口絢子
水母とり暮れ遅き帆を靡かせて山口雀昭
実のなきさまに水母の実やどり山口愛
ふるふると月の匂ひの水母かなやまさきゆみ
悠久という言葉好き水母浮く山下義人
水母海月余生気ままに生きてやれ山育ち
さよならの残骸のごとき水母かな大和杜
カップルの後ろは水母五万匹山野花子
恐竜や化石の横に水母あり山本てまり
たふたふの波だのぷのぷの水母だ山姥和
臨月や水母いよいよ蒼く澄み柚木みゆき
水母点滅すいまだ返信来ず柚子こしょう
星雲を産むかに水母収縮す陽光樹
遠鳴りは水母の呼吸うしほの香羊似妃
水母美しコンビナートの灯に映えて横山雑煮
くらげくらげミサイル飛ばす気配して横山ひろこ
水母刺す腕の痛みに夕陽落つよしぎわへい
水母浮遊明日予定は何もなし吉田蝸牛
【緊急ニュース】平和大使に水母吉野川
水海月海より透けて見せにけり余田酒梨
水母くらげ網ずりずりと曳きにけり楽和音
脳の無き水母に戦無かりけりらん丸
水難の現場ゆらゆら寄る水母理佳おさらぎ
紛争絶へず水母浮いたり沈んだりりこばば
爪を噛む女水母は裏返へる柳絮
手に掬う水母は海の重さかな料善
桟橋の水母見ているフリータールージュ
水を抱き水を手放す水母かな流瑠
操舵手の金星丘や水母湧くろまねす子
水母クラゲ目覚めぬ夫の硬き節若林くくな
殴るほど歪みに歪む水母かな海神瑠珂
底からの水母や誰も縺れずにわたなべいびぃ
くらげくらげ人魚の泡に巻き戻る渡辺香野
海月から人間界を覗きけり亘航希
溶けて消える死水母の儚きこと和脩志
水母透け不老のこころ授かりぬ笑笑うさぎ
終活はケセラセラ水母好きかも如月ゆう
母の忌のキャラメルひき網の水母清鱒
仏説の一つと思ふ水母かな独楽
今日の案件クラゲ辞めたくなって来た桜月夜
くらげにもまだなりきれてないなにか里山子
触手伸ぶ月と交信する水母花南天あん
星々と交信したる水母かなひでやん
満潮や水母犇めく防潮門樋口滑瓢
くちゅくちゅと水母の笑う日曜日ほうちゃん
剥きだしの鼓動のかたち水母生く靫草子
ふわふわと水母の目はこれ口はここ津幡GEE
ふわふわと心なごます水母かな柳平眞佐子
ふわふわと海の霊なる水母かな桜華姫
ふわふわと寝巻で泳ぐ水母なり立花かおる
夢ん中水母ふわふわ浮きてをり石原花野
水水母刺して刺されてふわふわと大原妃
明日想ふことなき水母ふわふわと丸山美樹
ふうわりと受験前夜の水母かな黒山万牛
ふわりふわ水母の命波まかせ沼宮内かほる
ふわりふわ水母夢見て沖の海松原善枝
水海月ふはりふはりと宇宙旅いつかある日
毒針を隠してふわり水母かな卒寿のヤコ
毒持てど水母ふわりや平和主義渡辺陽子
水母らはぬらぬらふわり波光りほたる純子
音のない円舞曲ふわりと舞う水母今乃武椪
御題目ふわり水母と唱えをりまやみこ恭
熱視線ふわりと透かし水母笑む栗田芳文
ふわと浮く水母俄かに傘すぼめ晴好雨独
水母ふわマリンワールド孫もふわ岡本
水母ってふわっと来るよすぐ逃げて美山つぐみ
青の音あふるる中を水母ふわっ岡崎未知
ふらふらり水母は海の漂流者小林久女
ふらふらと漂う水母光かな藤本仁士
ふらふらと海図も読めぬ水母かなQさん
ゆらゆらと前に進むよ水母だよコロンのママ
洗脳は止めてゆらゆら水母かな伊藤れいこ
水母見つめゆらゆらゆれる脳みそよ高橋光加
国境水母ゆらゆら海静かねがみともみ
透明の水母ゆらゆら瀬戸の海ひめりんご
透き通る水母ゆらゆら人癒す北川茜月
ため息や水母とともにゆらゆらと宮城海月
ジェンダーも超えてゆらゆら水母かな湖水鈴
全力でゆらりゆらりの水母かな満月
水母ゆらり吾の葛藤の見透かしてもろ智行
ゆらり水母意志なき棘の醸す毒舟端たま
ぷかぷかと水母の浮かぶ夜の海岩佐りこ
ゆらふわり水母がちくり足の指鈴木季良恵
ひらひらとゆらりふはふは水母かな大越マーガレット
子供服ひらひらひらと水母かな泉恵風
何思うひらひらひらり水母舞うharu.k
水母ぷかぷか顔しかめたる哲学者荻原玲香
ぷつかぷか漂ふ水母裏表清水容子
水母ぷかぷかと幻想世界へと百瀬つきか
優しげな水母ぷかぷか針隠し山田翔子
プーケット水母プカプカ浜あがれえみくれ
宇宙からの使いか水母ぷかぷかり高嶺遠
ぶよぶよと水母になりし魚の愚痴森上はな
ふよふよと何食わぬ顔で刺す水母北乃大地
フヨフヨと水母たゆたう竿の先喜楽胤
水母はね海のフーテン寅次郎凛
フーテンの寅さんだった水海月杉尾芭蕉
内臓を見せて水母の昼餉かな中島走吟
内臓をすっかり見せて水母かな中嶋緑庵
部屋に満つ眠れぬ夜の水母かなひすい風香
寝付かれず湧き出す水母部屋に満つ宙美
後れゐて乾びもていく水母かな青井季節
宇宙人よりは知られている水母あさぬま雅王
上京して水母の嘘っぽい硬さ芦幸
檀ノ浦月かと見上ぐ水母かなあたしは斜楽
秘め事のひとつ水母に託したり赤富士マニア
水母よ透きとおる秘め事を教えて伊代ちゃんの娘2
青白きニート生活海月かな空木眠兎
苦しみを超えて水増す海月かな大富孝子
円帽に囲まれ水母裏返る櫻井こむぎ
手のひらの色を決め込む水母かな砂楽梨
「水母」と書きて「じゆうきまま」と読めりじゅんこ
あやとりの秘技を極めし水母かな立田渓
凶暴な水母たぬき寝入りの犬ふくろう悠々
海風の手土産火点し水母かな美津うつわ
くらげくらげ全て見せても心見えず美月舞桜
人いない海で水母にまさぐられ六浦筆の介
我は水母溟き世界を照らすもの藻玖珠
勝ち負けを超えた世界が水母かな森ともよ
月光下水母に語る恋話あいあい亭みけ子
不老長寿くらげになりたくはなし相沢薫
海面や空は鈍より水母の眼会田美嗣
水母乗せ悲しみまでも波の綾藍野絣
育ちゆく日本海流水母かな逢花菜子
流れ来た水母綺麗ってそうだけど逢來応來
終日を水母ただよふ海展けあ・うん
くらむぼんともしくらげのゆらぐゆらぐ青空まる
波音を水母聞き做すジムノペディ青田奈央
空映す水面に浮かぶ雲、水母青砥展典
恋の海くらげ追う深海の淵青松紫雲英
定年の職人気質水母見ゆ青山智士
骨っぽい君よ暫し見よ水母を赤い花弘
敵でなく味方でもなく海月水母赤尾双葉
空の青水の青溶く水母かなあかねペン銀
水母の娘水玉模様の水母の娘acari
水母がいる「あっ」と同時に激痛あかり
青春を浮遊し続けてて海月赤尾実果
昼の月白き海月の漂いぬ秋月あさひ
生きぬいて今は水面の水母かな昭廣凡字
十字架を頭にのせた水母かな芥茶古美
水母浮くフルサトノホシイマイチド朝雲列
風止みて漁港にみつる水母かな朝日雫
ひざ上刺す脳なき水母は無罪あさみあさり
手のひらで微笑みかえす水母の子浅紫泉
水母浮くどこが口やら眼やらあじさい卓
砂浜の水母を照らす陽射しあり明日葉
黙の身のまま手のひらの水母かな阿修羅
水水母透け感コーデでランデヴーあすなろの邦
水母浮く行く先までも透き通り愛宕平九郎
毒あれど華麗な水母足捌きアツシ
オレンジに光る水母への返事はあまどかに
焦っても海月はのんびりのんびり天鳥そら
静謐の矩形の宇宙赤水母雨乙女
気安く言うな水母になろうなんて雨森茂喜
思い出にたゆたいており毒水母雨降お月さん
水母見る君を掠むる淡き影綾小路へこ
何が降る水母の傘の咲きにけりあらかわすすむ
刺されども水母揺蕩ふ核の傘荒木響
激痛を癒しを思ひ見る水母荒木ゆうな
日和見の波にまかせて青水母蛙里
終の駅打ち上げられた水母かな有川句楽
突堤に水母乾きて薄つぺら有村自懐
汽水域に立ち往生の水母たち有本としを
海月浮くまつたり過ごす吾の余生淡湖千優
裏返る水母しどろに漂へり安春
難解の水母を学ぶ八十路かな杏っ子
焦がれてもひとつになれぬ水母かな井若宙
水速にやや抗って群れ水母飯田淳子
ぎやらくしいから落つこちた水母かな飯塚煮込
僕を背に海月といつも帰る君五十嵐真人
裏をみせ表も腹もみせ水母郁松松ちゃん
ぷゆぷゆのほっぺと並ぶくらげかな池田悦子
スポイトで水母のポリプを吸う仕事池田華族
アメリカとイランの間水母かな伊澤遥佳
恋をした輝く波を見た水母伊澤ゆき抄
水母なり人波のなか浮かびきて石井久次
もう消えてしまいたいと君みずくらげ石垣エリザ
夜勤あけ海月も月も幻めき石塚碧葉
灯光に逃げ場をなくす水母かな石堂多元
お洒落着をかなぐり棄てた水母かな石の上にもケロリン
波音と軽音楽に水母揺れ石村香代子
くらげくらげ育ての親と生みの親板柿せっか
残像となりてなお追う水母かな一井かおり
重力の無きごと水母たゆたえり市川卯月
海月の児未来に向かって懸命に伊智子
薄絹を纏う水母に潜む毒いちご一会
なるようになれと水母の自然体一五珈琲
ストレスが溜まった水母目を閉じる無花果邪無
無防備に見せて手ごわき水母かな一秋子
逆立ちに主迎えし水母かな一慎
親ガチャてふ言葉の酷し水海月伊藤亜美子
みず水母大量寄港横浜に伊藤薫
億年の記憶をまとひ水母ゆく伊藤節子
水母刺す痛み抱えやバスの中伊藤ゆかり
及び腰水母をじっと虫眼鏡伊ナイトあさか
海は母陸は父親水母捕るイナホセドリ
この星の嘆き知らずや水母舞ういまいみどり
筋肉は無ささうでいて水母すいすい井松慈悦
霊界とこの世を行き来水母かな岩瀬きわ
くらげくらげ食らうも放るもおなじ穴うえともこ
古の壇ノ浦にも水母あり上野眞理
水中の夜光雲なり水くらげ宇田の月兎
ビニール袋だった。水母じゃなくて宇野翔月
水のいろ水のかたちに水水母海野青
影法師男と女水母かな浦城亮祐
心臓なき水母漂う十億年麗し
水母透きひとみの奥にまなこかなHN
くらげくらげ平和ってのはどんなだい江口朔太郎
飛び込みて水母に出会い後退り越中之助
面接に遅れ水母に生まれたの越冬こあら@QLD句会
取り乱す水母の気持ちいかばかり絵十
憂い無し水母はいつもケセラセラえのき絵巻
手繰るあみ大漁くらげ肩おとすえのき筆丸
今どこに水母行き先波まかせ榎本雅
「てーげーに」水母の呟き聞こえたりANGEL
餌をやる感謝知らずの水母にも遠藤玲奈
類想とあつさり切らる海月かな円美々
朝の浜水母の生の儚くて大久保一水
舞わず舞い思わず思う水母かな大越総
フラッシュに急ぎポーズの水海月大澤眞
右左上下気儘な水母かな大澤道史
彷徨ひて水母浮かぶや日の暮るる大嶋宏治
水母寄る半透明の浮遊毒太田けいこ
水母いて透ける向こうの透明感大竹八重子
漂よひて光の衣水母をり太田一駄歩
掬われて陸に溶けゆく水母かな大塚恵美子
黙ってる自分が嫌い海月かな大野美波
鶴岡の長旅癒す水母かな大原雪
引き潮へいのち引き逝く水母かな大矢香津
飲みて吐くしなびぬうちの水母かな岡崎佐紅
漂えば水母とともに夜の空岡田いっかん
来し方を忘れ漂う水母かな岡田恵美子
水面揺れ水母も揺れて成れの果て岡田きなこ
砂浜のひかる水母を波によせおがたみか
無念さの透けているよな水母かなオカメインコ
イルカにもはりつく水母へらすなり丘るみこ
水母跡腕の熱きを鎮めけり小川紅子
漂へど染まることなき水母かな小川しめじ
海の色いち年ゆられ水母なる沖乃しろくも
川を浮く水母は海に帰りたい沖らくだ@QLD句会
あてどなく漂うわれと子と水母奥寺窈子
水母舞う夜空に飛び交う弾の炎小田孝子
いにしへに月から移住水海月小田毬藻
海月海月海に海月の満つ今宵越智空子
地図見れど迷ひ漂ふ水母かなおつき澳吉
重力は要らぬ愛す人なき水母御成山
懐かしき江ノ島の水母の光十八番屋さつき
人癒す水母の悩み尋ねたり甲斐ももみ
波まとふ水母の腕の色じかけ華胥醒子
ドレス着てワルツ楽しむ水母かなカズミンスキー
水母ただ脈動し続く小宇宙風遊び為参
ジェットフォイル水母いずこや回る波風かおる
ひょうひょうと傘開げ閉じ水母かな風の母
砂の上水母を避けて歩みたり片岡明
昼夜と只うつろひて水母かな勝瀬啓衛門
マシンめく海月クラウドめく水母桂佐ん吉
赤水母不老不死との引き換えに桂葉子
透明な殺意を抱く水母をり加藤水玉
潮騒や寄せ波高く水母舞う金子陽
握り潰す根性試しや水くらげ神島六男
花びらのエフィラとなりて水母かな亀岡恵夢
引き潮に残る水母や岩の陰亀くみ
水に生き水に戻れり大水母亀子てん
お遊戯をしているやうな水母かな亀田ミノル
死ぬことも忘れ波間のべにくらげ亀山逸子
海原を見渡す吾に水母寄る鴨の里
ああ水母おみあしの腫れはみづいろ加山シンゴ
波の間に海月の透けて運ばれる加裕子
靡かせてバージンヘアの水母かな刈屋まさを
日にさらせ星をかたどる水母かな川口あおい
横浜の夜の港の水母かな川崎ルル
水母連れ帰らんとすかきかん坊川代つ傘
断捨離を超えて水母の日々泳ぐ川辺世界遺産の居候
拔髄の麻酔と水母同期さる川村湖雪
水母鳴くポキと骨鳴る空耳かカワムラ一重
ワッチ立つ水平線の水母かな岸壁の龍崎爺
飛びたいな鳥に恋した水母かながんも三世
死滅回遊魚戯る水母かなkey
美しきものには毒がある水母季川詩音
激痛の走る水母の触手かな菊池克己
眼精疲労のごとく水母漂う季紫子
乱高下の為替ディーラー観る水母酒暮
犯人の逃げた先にも浮く水母季切少楽・いつき組広ブロ俳句部
悩まずに動き続ける水母なり北の星
素潜りし水母がガン見電撃痛北美三風
正座して蹌踉めける親水母かな貴田雄介
星空を眺むる水母立ち泳ぎきべし
稲佐浜打ち捨てられし水母あり木村かわせみ
決別は胸に水母のよせる朝木村信哉
砂浜に海月の夢は泡となり木村となえーる
悔いはなく先は案じず水母浮く木元紫瑛
砂浜にどろり水母の日の無残京野秋水
水母で人工心臓つくれまいかなと清島久門
水母ただ小一時間も眺めけり近未来
水母浮く昨夜の夢を思い出すくぅ
潮に負け潮に流され水母かな鯨之
光る水母生命科学の道標楠田草堂
宇宙かと思へば顔と青水母愚禿忍
夜半の街帰りそびれて水母をり國本秀山
傘広げ上へ下へと水母かな國吉敦子
透けて見え水母の先の向こう側窪田和子
死んだ水母や砂浜にへばりつきぐりぐら京子
若返りの呪文群れなす紅水母栗田すずさん
水母でも怒るだろうさそうだろう空流峰山
水母刺す脚見せびらかす夕飯前黒田良@しろい
水母浮く波間のジュエリー我も浮き黒猫さとみ
青白き水母はゆたにたゆたにと桑田栞
水母光りて太古の宇宙より来くんちんさま
水母立つ海の広さよ宙返り家古谷硯翠
水母もがぶがぶマイクロプラの海ケビンコス
潮流へさからう水母星探し紫雲英
群れなすも水母は寡黙億年もケンG
大海に溶ける今際の水母かなケント
生きにくい世に嘘つかぬ水母かな恋瀬川三緒
水母死に海の縁まで溶け込めり公木正
波濤岸打ち寄す水母日和待ち河国老保忠
昼の月たった一人の水母かな柑たちばな
身を任すことも生き方水母浮く宏楽
五年目の心の透明水母浮くこきん
透き通る水母に隠すぶきがありココヨシ
水母にも強き思いはあるのやら越乃杏
波に揺る長短の髭母子水母胡秋興
腹見せて水母互いに波越ゆる小杉泰文
上下なき海に漂ふ水母かな小園夢子
厄介を忌避し水母と心拍合わす古知野朝子
夜の海にたゆたうは水母か恋か五島潮
この海の水母になって空見たい後藤周平
今日ひと日水母に合はす呼吸かな後藤三梅
群青の夜に水母淡く輝く後藤葉羽
抱きしめて魚蕩かす水母かな来冬邦子
からっぽのボトルころころ水母かな古都鈴
波任せだらりと伸びた水母の手小箱守
陽光の示した歪み水母かな小林共捺哉読
舟溜まり草間彌生の水母をり小林脱太郎
ああ水母脳みそ無くて羨まし小林弥生
正義など二転三転水母かな小町波彦
ハネムーン海月が付けたハワイ痕駒茄子
便秘の腹重し水母にはなれぬ小南子
見せかけは純真無垢な水母かな小山晃
番神堂余光水母に吸はれけり小山秀行
赤や青光に踊る水母かな碁練者
ヒリヒリと痒みを残すこの水母齋藤鉄模写
群れるのが嫌な水母もきっといる齊藤凪音
引き潮に忘れ去られし海月かなさかい癒香
大宇宙へ想い馳せたり水海月坂口いちお
大橋の影に浮き出る海月かな肴枝豆
群れ揺れる水母に逢いし吾子の眼よ坂本千代子
水母うきしずみてういて解脱せず坂本雪桃
ストレスを水母なんぞに癒されて咲世咲
水母咲く懐深き大海原咲まこ
船待つや海月への転生も善し雑魚寝
怯ゆるは人ばかりなり波水母佐々木佳芳
ひと失せて水母ささめく笑いもす笹靖子
水母にも悩みあるかと眺めおり薩摩じったくい
釣れぬ午後水母水面に訪ひぬ佐藤公
水母の群れ宇宙からの侵入者佐藤俊
水母漂う波を巻き網集魚灯さとう昌石
無抵抗主義を海月と語り合ふさとうナッツ
インドアプレーンのやうに水母浮いてをり佐藤浩章
貴婦人のワルツ見紛う水母かな佐藤佳子
たゆたえど沈まぬ水母吾もまた里こごみ
忍び寄る水母に刺され日本海百日紅
屈伸のラヂヲ体操せるくらげ沢井如伽
由比ヶ浜に鰹の烏帽子なる水母澤野敏樹
来世は水母がいいな仮病の日沢山葵
慈悲深き小樽の水母刺しもせず三角山子
ぼーっと生きているかのごと水母かな山間思温
黒潮や水母の戻るところなし珊瑚霧
蒼い水鏡に映る水母かなさんなんぼう
流さるる水母は潮に吾は人に四王司
眼裏に打ち上げられし水母かな塩沢桂子
あっち行けバタ足彼女に水母寄るしかの光爺
梅津寺どこいってしもたあの水母じきばのミヨシ
ヨーイどん潜水艦に水母勝つシマエナガ深雪
たゆたゆと漂う意思はある水母島掛きりの
思考まで水母の脚に引きづられ島じい子
「集合体恐怖」都心の川をくらげ島田ユミ子
大黒に集う族車や水海月清水だんなさん
其々のテンポ戯れ合う水母の子霜月シナ
絡む海草足を刺す刺す水母じょいふるとしちゃん
もう一度生きて人を刺す水母小公園噴水
ゆくゆくは水に帰したき水水母正念亭若知古
寄る辺なく水母どこから旅の果て白井佐登志
旅の果て泡沫を縫う水母かな神宮寺るい
水水母河口に迷い石つぶて白いねこ
柔軟に櫂を躱して赤水母四郎高綱
水母や一人飯もそろそろ飽きた西瓜頭
鳴くほどに尾ひれはつかぬ水母の子水都かほりこ
転生すよくもわるくもくらげなり末広野暢一
亡き叔母の安房小湊や水母浮く杉浦あきけん
賑わいの海夕暮れて水母群るすずきじゅん
大海原水母一匹空を抱く鈴木実生
吾と水母明日も何処のフリーター涼希美月
毒消して透け肌に魅る水母かな素敵な晃くん
言葉とは海かもしれぬ水母浮き砂山恵子
人は去り波間漂う海月かな数哩
海月哭く残骸沈む海の底須磨ひろみ
刺しますと言わず舞寄る水水母すみ太郎
独り居の自由の不自由水母かな静江
二丁艪漕ぐ艫に浮かびし海月かな青児
かくしごとうそつくこともなき水母せいしゅう
べにくらげ不老不死とは良きものか清仁
退院後しきりに祖父は水母の前青峰桔梗丘
柔らかにもたれるキスや水母なり星夢光風
すなめりをぬらり躱すや水くらげsekiいつき組広ブロ俳句部
水母には許してもらえそうな嘘千・いつき組広ブロ俳句部
御仏や海の曼陀羅水母群る惣兵衛
ミサイルの筋や水母の中を伸ぶ外鴨南菊
通帳の数字すがた消す水母よ曽根朋朗
クラゲみたいな生き方の海月なりたーとるQ
実体化波打ち際の海月かな大
潮池の飛行機映し水母飛ぶ大康
天晴や初めて水母喰ひし人大ちはる
釣り針に薄紙のごとし水母かな平たか子
深海に異形のくらげ謎あまたたいらんど風人
わたつみの息吹くらげの浮き沈み高尾一叶
平飼ひの如き水母の自由さよ高岡春雪
岩肌にしがみつく水母波揺らぎ高橋紀代子
帰りたい海へ砂まみれの水母高橋こう
イヤリング外し水母に見せている高橋ひろみこ
魅せられて夢幻の境地水母透く高橋マママリン
幼き日未知との遭遇汀の水母高旗三紀子
湾に入る千の水母の軽げかな高原としなり
湧いて出る無数の水母に目眩して田上コウ
港町水母に埋まる用水路高見正樹
浮く夢を見しは水母か我なるや滝上珠加
海中の放浪者なる水母かな滝澤和恵
「小浜水産高の宇宙食プロジェクト」宙旅の夢叶へたる大水母たけぐち遊子
あくまでもゆつたりとして大水母タケザワサトシ
ストローを噛むや海月の泳ぎ方たけろー
命まで透かして水母浮き沈み多胡蘆秋
水母満つ落ちてくんなと呟きつ多事
海の鼓動のごと水母拍動す太之方もり子
触るなと父大声の浜水母たすく
水母浮く透けゆく海の竜宮よ祐紀杏里
早退す迷ひ水母の川遡上糺ノ森柊
「水母注意」やっと休暇の取れたパパ多田知代子
逆さまに夢見る鯨水海月だっく
吾より水母見つめる君の眼の清か立石神流
水母死すこうでありたし溶け消ゆるたていし隆松
進化などしなくても良い水母かな田中紺青
岩陰に仲間外れの水母かな田中忠明
夕暮の岩にぺしやんと貼る水母田中みどり
我が心本音はいずこ水母見る谷相
マンボウのなんぼの餌食水母かな田畑せーたん
水母行く奴の話は矛盾する田端由香
波打てば水母も銅鑼も揺れ響く玉響海月
水母の浮遊頭痛和らぐリズム鱈瑞々
共食いはもっての外の水母かなチームニシキゴイ太刀盗人
埒外の自由を生きる水母かなちくりん
その触手吾を深みへと水母くらげ千鳥城.広ブロ俳句部カナダ支部
抗う私漂う水母は何思ふ茅野ともぞう
ブラごみと漂う水母本牧の海チャーリー・吉田
大くらげ脚の腱切れ入院す千夜美笑夢
ファファと何を探すや水母達司蓮風
真下からビル群望む水母かな塚本隆二
水母浮く讃美歌歌ふ教会に月城龍二
水母出る祖母の言葉でやめた海月ノイス
残された水母覗き込む子ら潮溜まり月の莵
もう撫でることができない水母かなツキミサキ
作業船たっぷり水母の定置網月見里ふく
ひねもすはお前のことか浮き水母辻瑛炎
身を反りて妖しく舞ふは水母かな辻美佐夫
水母見て英語の授業始まれり辻本四季鳥
世の中を渡る手ほどきせし水母つちのこ
水母たゆたふ存在と無の間隙をつちや郷里
小さき足波打ちぎわの水母かなつついぐれちゃん
エデンから黙示録まで紅水母筒井らんぷん
透き通る水母憂きことひとつみつつぶ金
水母つて可愛いいねつと幼子が手嶋錦流
火星にも水母漂う海あるや哲山
水母にも漂ふ覚悟ありぬべし徹光よし季
正午告ぐコンビナートに吾と水母てつねこ
水圧に負けぬ水母の強かさてん子
水母生くみんな青春謳歌して天童光宏
我を刺し水母は波に同化せり天王谷一
人間はないものねだり水母浮く土井あくび
肩の無き水母は海にただ浮かぶ苳
波音に歌う水母の水曜日Dr.でぶ
蛸ともに地球外からの水母かなとくねん
船囲む巨大水母の不透明どこにでもいる田中
雨の浜水母のかさに無き持ち手戸部紅屑
水母浮く彼の日のきのこ雲みたい冨川ニコ
水面にて本音を隠す水母かな富永武司
布団かぶって寝る日水母がいっぱい戸村友美
海月には見えているのかこの朝日登盛満
本音言はずのらりくらりと水海月友@雪割豆
砂浜に赤き水母の乾きゆくとよ
水母浮く吾が人生を映すごと豊岡重翁
犯人は水母救急救急車鳥田政宗
砂の池満潮までの海月かな内藤清瑶
曇天を忘れるほどの水母かななかかよ
紅水母不老不死てふ孤独かな中川枕流
浅瀬波足入れ水母チクリ叫中澤孝雄
核いらん水母にレントゲン不要永田千春
存在が宇宙を妊む水母かな中藤雅子
水水母流れ着く浜辺の朝日中原美香子
乳色の水母数多や船着場仲間英与
行き違ふ水母なにげなき挨拶仲操
初めての傘くらげの舞する吾子中村明日香
余生とはかくあるべきと水母かな中村あつこ
海月見る孫のまぶたも踊りおり中村こゆき
ふにょふにょと脚もつれ込む水母かななかむら凧人
夜の海水母流れに身をまかせ流れ星
たおやかに水母傘さす10億年七五三五三
開き閉じ水母は海の宇宙人那須のお漬物
母の字は母港に母艦何故水母なたのすけ
何度目の人生なんどめの水母夏風かをる
ケ・セラ・セラ明日は明日と水母浮く夏目りる
たましひを透かされている水母かなななかまど
水水母失せし人魚のブラパット7パパ、いつき組広ブロ俳句部
水母揺れ海の静けさ君思う728のみー
明け透けな水母に秘密ありなしや南全星びぼ
砂浜で哀れ干からび水母かなにえ茉莉花
うっ痛い水母がスイスイ恐怖症仁保朝環
監視員水母来るぞと笛を吹き入道まりこ
明日の夜水母は帰る火星まで猫塚れおん
移り気な我を見透かす水母かな猫辻みぃにゃん
水母くらげ光とみづで出来ている根々雅水
恋愛が苦手な水母流れるままに農鳥岳夫
海月に夜半の信号機めくしじま野口雅也
夜に咲く海のランタン海月哉野瀬博興
両眼を寄せて見る児と水母かな野の菫
釣果なく水母矢鱈と湧き出でる野原蛍草
水面へ伸びる水母の腕透けてのりこうし
存在の薄き淡しと水母かな則本久江
海沿いのボードウォーク水母浮く白雨
托鉢の鈴とシンクロ水母かな白山一花
引き揚げし水母溢るる港泣く白山おこ女
水母って水中の観覧車だね白咒と蒸しエビ
水海月施設の母の諦念よ橋爪利志美
浮き沈み遊び呆けの水母かな橋野こくう
午前二時目から取り出す水母かな畠野案山子
ぷるるんと匙を借りたやみずくらげ畑中幸利
水玉の模様の如く水母群れ初野文子
拍動の海月に心ほどかれむ花岡淑子
浮遊する海のオーロラ水母たち花笠きく
淋しくて水母は海の底の底花咲春
絡まりて達観の水母夫と見て花彼岸
水母てふ柔らかきもの光るもの英凡水
奔放な動きに魅入る水母かな羽馬愚朗
水母には影がないんだホントだよはむこ
羊水の夢の記憶は水母かな林典子
水母よ水母おまえの中に何がある原善枝
火星で水母を見たとか見ないとか針子の猫
ひきこもり水母の呼吸きいてゐる春あおい
水母沈む待つ親もなし傘動くはるのうらら
人の世の流れや泳げない海月春海のたり
天下布武夢幻となる水母HNKAGA
19才横浜デート初水母ひーちゃんw
遊ぶ子ら水母に遭遇逃げ惑う東山たかこ
海の水形にすれば水母かなピコリス
初めての水母にぎょっとしディスタンス久月翠
飛ぶ鳥のごとく死にゆく水母かな比々き
とろとろと闇柔らかく水母密向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
濁り水澄き水へと水母旅ひまわりと蒼い月
ヒリヒリ泣く子水母に刺さるる背も腹も平井千恵子
打ち寄する水母投げ合ふ悪童ら比良山
回遊の水母揺蕩ふひかりけり浩子赤城おろし
水母たゆたう忘れられた骨のごと廣重
水母とは漂ふことを使命とす弘友於泥
ガラス溶け水母が砂に消えし昼琵琶京子
大水母夜の静寂に舞いを見せFUFU
水母刺すふっくら白き吾子の足風民
海水に透くも確かに水母かな福井桔梗
やさぐれの水母波間の世過ぎかな福川敏機
ボトルメール筆記体遊ばす水母福田みやき
温暖化や水母打ち上げ波帰る福ネコ
切り出した別れ話と浮く水母河豚蛇燕花子
混沌の世界で呼吸水母かな藤丘ひな子
青き夜をジムノペディに酔ふ海月ふじこ
暗き世の影の明るき水母かな藤里玲咲
夜の海海底基地より水母発つ藤原涼
試合前日震えるボクサーと水母伏見レッサーレッサー
斯く在りたし腹に一物無き水母藤原訓子
さぶいぼや水母かすめるふくらはぎ船見舟克
解かれて波にやすかる水母かなふにふにヤンマー
冤罪といふ君の目に水海月風友
初沖縄唖然と見る水母かな冬の木で考える海
火星には帰りたいけど海月かな古道具
打ち寄せられ砂色になる水母かな古谷芳明
あの水母不老不死かも肘を見る鳳凰美蓮
捨てられて掴みどころのなき水母芳醇
六道や水母見つめて無の境地北斗星
頭蓋に水母を飼ひぬ母老いぬほしぞらアルデバラン
脈拍の速度で水母開き閉づ細葉海蘭
人間も海月も水がなきゃ涸れる堀卓
水母見れば次第に身体揺れてくる堀隼人
二の腕に水母遊びし痕のあり堀邦翔
なすがまま気ままに生きて水母かな本間美知子
水母ただ浮かび暮らして十億年凡狸子
水の星水いっぱいの水母かな牧場の朝
浮遊して一生過ぐるミズ水母槇まこと
国境も気にせず浮かぶ水母かな雅蔵
ほぐれゆく水母曖昧にちぎれる松井くろ
街遥か海月と浮かび波任せ松井酔呆
宛も無く飄々と行く水母かな松井英雄
休日や一人終日水母松浦姫りんご
浮き沈む水母見てをり三歳は松岡さつき
逝く時は粋な水母に誘われ松岡徘徊狂人
ぽぽぽんと己を殖やす水母かな松岡玲子
輾転と微睡む夢の赤水母松尾祇敲
越前の水母遊弋日本海松尾老甫
海月浮く素直な心透過せり松坂コウ
船べりを叩けば水母数多く松平武史
初恋の痛みを知らぬ水母かな松田寛生
水底を誰より嫌う海月かな松野蘭
船着き場水母の隙間に魚影待つ松本牧子
我見よと開いて迫る大水母瑪麗
ころころと水母かきわけ目指す岸毬雨水佳
目の回る水母の動き真似したるまりい木ノ芽
水母いま惑星探査へと船出まるにの子
海月覗き込むちょうちんパンツの子美衣珠
海上へ羽ばたくやうに行く水母三日月なな子
追ひもせず孤独のワルツ舞ふ水母三上栞
世の憂い嗤うて水母海ん中みかん成人
空を飛ぶ夢を見てゐる水母かな三崎扁舟
生きてるか湾処の水母数多かなMR.KIKYO
水母殿気ままに刺して生きてみよ水巻リカ
腹割つて話せぬやうな水母かな三田忠彦
透きとほる水母よ腹に一物もなし光月野うさぎ
特養に移住求める水母かなミナガワトモヒロ
平泳ぎ腕に激痛水母かな湊かずゆき
水母やくらげ夫にある隠しごとみなみはな
強きものにまかれるままの水母かな美村羽奏
舞ひてなほ宮出されし水母かなみやざき白水
煮詰まって水母眺める夕波止場みやま千樹
波まかせ水母気ままか否不自由宮村寿摩子
しほかぜの波止に干乾ぶ水母かなみらんだぶぅ
いいんだよ吾は吾のままで水母言ふ麦乃小夏
まじまじと砂に集めし水母見て睦長月
幻想を揺蕩う水母針隠し村上の百合女
無職これからどうしよか水母かな村先ときの介
荒れ狂う波しがみつく水母かな冥亭
水母にも星の数ほど悩みあり恵のママ
これからも水母は何も望まない望月ゆう
毒持ちて海月の怒り静かなりmomo
雨降りは語り合いたき水母かな森きやつか
生きてゐて色なき水母羨まし森重聲
観光船水母の群れる岸に着き森下薫
水母かな今日はこちらへ明日は明日森嶋ししく
魂のように水母と無重力森太郎
花嫁のヴェールのごとく舞う水母森野恵
走り入る足に水母が刺さりけり森茉那
現し世の寝息奪ひて生く海月森毬子
くらげくらげ愛と毒とは紙一重もりやま博士
水母浮く裏も表も隠さずに矢澤かなえ
ぶつぶつと水母に何か語りかけ矢澤瞳杏
不整脈しばし忘れて水母かな野州てんまり
水母にも進路相談の日が来た安元進太郎
天日干し水母を踏んだ足の裏痩女
温き水水母掻き分けその先へ山内文野
水母刺せり竜の紋紋走る脚山口笑骨
小くらげや青海原に染まらずに山崎力
いくあてやすることあるのくらげさん山崎のら
水母ゆうらりスピーチバルーン揺れて消え山里うしを
群青のさざなみ向けて水母飛ぶ山下智
手術前せわしい水母肌透明山田一予
食われ逝く水母花めき果て飾る山田季聴
水母美しふくざつかいきなるすがた山田啓子
新世界水母の群れの透き通る山田好々子
不惑越え宿し命浮く水母やまだ童子
今生の浮世刹那の水母かな山本八角
吊り革ぎちぎち水母ぱふぱふぱふやまもと葉美
きらめいて水母の残る浜辺かな山本葉舟
水母透明になる水色の恋宥光
照明に浮かぶ水母や夜の闇雪子
ハウスボールの穴や水母の口と胃とユキト
水底や生きろ生きろと云ふ水母雪鶏
水母揺るるる浮桟橋揺るるゆすらご
昇天の速度はきっと海水母柚木啓
清純なままであれかし水母かな陽花天
干乾びた水母を踏みてさようなら横井あらか
水晶にかえて水母で未来みる横浜順風
水清し水母の腹はお見通し横山道男
内閉の体液満たし水母かなよしざね弓
水母に夢あらば月へ跳ねし夢吉谷地由子
気まぐれの水母のゆくえ波まかせ吉田春代
よそはよそうちらはうちら水海月吉成小骨
子水母や力いっぱい未知の沖吉藤愛里子
心まで透けて見えそな水母かなYoshimin空
どこ見ても秘密は無しの水母かな米山カローリング
「これなぁに」両手にすくうくらげかなよみちとせ
海の月宇宙(そら)の海にも水母いるラジオの子
失恋の水母は数多浜に散る楽花生
大いなる祈りの如し水母かなリーガル海苔助
船の櫓に当てる水母に日の光麗詩
水母漂ふレム睡眠の青光り黎明
スクラムを組んで詰まりし水水母連雀
ノーベル賞齎す水母刺す水母わかなけん
邪魔者か愛でられる者か水母は若宮直美
泡沫に触覚のばす水母かな渡部克三度
手のひらにだらつと重く水海月渡邉花
いたずらを隠す術なき水母かな渡邉わかな
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
◆俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物による複数俳号を使った投句は、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。
●季重なり
赤い肌水母投げ合う水練者木村波平
聖五月水母の泳ぎ癒し系後藤昼間
6月の誕生月の海月かな生天目テツ子
夏海月りんりんりと人を呼ぶyou人
江の島や水母数える子にも汗大家港一
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「水母」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
つくづくし夫の言動水母ごと西野和香
「つくづくと」と言いたい? のかもしれませんが、「つくづくし」は「土筆」の傍題。季重なりになってしまいます。更に、「水母ごと」は比喩なので、季語としての鮮度が落ちてしまうのです。
●季語の表記
我は我透かし関せずクラゲ浮く梶浦和子
クラゲ見に海洋学者と出かけたりアシツノカラ
薄珠のあまたを撒いてクラゲ逝く邨虚空
クラゲラクゲゲラク発光してをりただ地蔵
柔肌にミミズ腫れあり毒クラゲ空き家ままごと
目が合ってクラゲ囁く「辛抱だ」かもね
砂浜で日干しのクラゲ打つ手なし藤沢・マグネット
動物や植物の季語の場合、特別な意図がない限りは、漢字や平仮名にするのが一般的です。片仮名で書くのは、生き物図鑑や植物図鑑の表記みたいだと嫌う向きがあるのです。(カタカナ書きのみの表記しかない場合は例外です。)
●水族館(にいると思われる)、水槽の水母たち
水槽の水母をなぞる妊婦かな石川穴空
水槽の水母プワプワ星の数お品まり
水槽の水母につられゆうらゆら小林理真
水槽の水母交響曲五番椿泰文
水槽の水母は孤独浮き沈み中島葉月
水槽の水母悩まずひらひらとにいやのる
水槽の水母吾の腹になき子宮haru_sumomo
水槽の水母は海に手をのばすふくのふく
水槽の水母哭くやう怒るやうペトロア
水槽の水母や一人宇宙の旅矢車星風
水槽のふわふわ移動水母かな相良まさと
水槽の漂う水母フリーター山尾政弘
水槽の水母にチョキをだしてやる横浜J子
水槽を沈みきれない水母かな平岡梅
時止まる水母水槽ゆらゆらり高上ちやこ
水母とくん小さき水槽の銀河あねもねワンヲ
インスタでクラゲの水槽彼女とか早見宵
父送り水母見る母大水槽駄詩
渋谷交差点めく水母水槽増山銀桜
水母館神の芸術目の当たり正見
水族館水母みつめる子の笑顔せいだるま
人混みを泳ぐ水母や水族館鈴木里羅久
擬態化す水母イルミの水族館はるるん1号
加茂水族館員七色光水母日記瀬野広純
えのすいでバレエ舞台の水母たち (えのすい:江の島水族館愛称)亜紗舞那
円柱の玻璃オートクチュールの水母渥美こぶこ
パノラマ槽の水母の触手ハワイアン雨霧彦(木ノ芽)
水母的映像多しパビリオン大阪駿馬
水母たちガラス越しなら癒やされる金澤孝子
水母浮くオフィス雑多な電子音叶田屋
暗き部屋水母眺むや結果待ち染井亀野
能舞の余韻バーの水母の黙杼けいこ
リウマチの指で後追う水母窓平野純平
水族館の「水母」も確かにクラゲですが、これらの句の中には、「水槽の」と限定する必然性のないものも多かったですね。
季語として「水母」を捉えるとすれば、やはり自然の中に生きるクラゲを詠みたいと思うのです。
とはいえ、水族館や研究室などの水槽のクラゲだと思えるものでも、そこに詩があり、無季の句として鑑賞できるものは選に入れております。
●自宅で飼っている? 心象風景?
白内障手術の果や水母飼ふ満る
天然ボケの母の笑顔や水母飼うかつたろー。
父の匂ひの残る書斎や水母生く小倉あんこ
自宅の水槽で飼っている? と読みましたが、ひょっとすると心象風景かもしれません。比喩の可能性もあるかも? 色々と悩ましい三句です。
細き川山奥深し水母かな大舘さと
日本にも淡水クラゲが生息しているようですが、季語「水母」の本意としては、海に生息するものを考えるのが妥当ではないかと考えます。
なお、この句は、「細き川」で切れ、「~深し」の終止形で切れる、三段切れになっています。ここは改善したいですね。
●実際の水母ではない?
水母推し次はぬいぐるみのガチャ青橘花
動画水母一緒にゆるり深呼吸智同美月
ぬいぐるみや動画の「水母」は、季語としての鮮度が落ちます。
●食べ物のクラゲ
入院の覚悟の酒や水母あて飯沼比呂倫
塩漬けの水母は納言の口の中粋庵仁空
懐かしき魚屋の棚先水母盛りカラハ
お猪口手に小皿に盛った水母かな松岡才二
子はゲーム父は水母と肉を焼くぺぬしの
中華料理にでてくるクラゲを、季語「水母」と捉えるのは、いささか無理があるのではないかと。
口いつぱい襲ふ水母のゼラチン質伊藤なお
食べているのか? 水中で水母に遭遇したのか?! 読みを確定し難く。
●「水母」を詠もうとした句?
水面透け隠すものなし我が身かな柊瞳子
兼題「水母」とあれば、季語として詠み込む必要があります。「水母」という言葉が入っていないので、ルールからは逸脱します。
●水母が比喩に
水母めくフリルスカート足軽く河孝
ふわゆらりあの彼その彼水母のごとわをんはな
意地悪は水母のように避けきるのくすみ輝く
見はるかす空に水母か熱気球Qちゃん・広ブロ俳句部神奈川支部
季語を比喩に使うと、季語としての鮮度が落ちる。これは覚えておきましょう。その場合は、比喩を逆転させることで解決に近づけます。例えば、「水母のようなフリルスカート」「水母のような彼」ではなく、「フリルスカートのような水母」「彼のような水母」という具合です。
●これも比喩?
ほろ酔いで海月が揺れる家路かな赤恥山子
ぽよよーんと雨の街路樹にて水母戸根由紀
この二句も比喩として「海月」「水母」が使われていると思われますが、その比喩の対象が一体何なのか? 句意が読み取りがたいのが問題点です。
●水母のような自分
定年を迎えた我が身水母かな鍵盤タロウ
抗わず力まず水母となる私櫻井弘子
人波に漂う我は水母かや横田信一
「水母のような私」「水母のような我」という発想の句もかなりありました。これらも、季語「水母」が比喩になっていますね。
●人間達を水母に喩えている?
新宿の雑踏水母となってゆく鈴木秋紫
駅出口湧きたつ水母今朝も雨ふじたさとえ
コンビニの中を漂う水母かな神酒猫
「新宿」「駅出口」「コンビニ」ですから、そこを行き過ぎていく人々を「水母」と比喩しているのでしょう。
これらも、比喩を逆転させることで、季語の鮮度の問題はクリアできます。ただ、これらの発想が「水母」という季語の現場でどれだけのリアリティを発揮できるのか。そこには、更に髙いハードルがあります。
お待たせしました!6月の兼題「水母」の結果発表です。今月も夏井先生からのアドバイスは必見です。「水母」は、海を漂う透明で神秘的な存在。水母がふわりと潮に揺れる幻想的な姿には心を奪われます。8月の兼題「朝顔」もぜひご応募ください。(編集部より)