夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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11月の兼題

「冬晴」

9月の審査結果発表

兼題「蜻蛉」

 お待たせしました!9月の兼題「蜻蛉」の結果発表です。今月も夏井先生のアドバイスは必見です。空中を自在に舞い、ぴたりと静止する蜻蛉の姿は、いつ見ても心惹かれます。久しぶりに捕獲へ挑むもまったく歯が立たず、その俊敏さには到底敵わないと痛感しました。11月の兼題「冬晴」もふるってご応募ください。(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
蜻蛉で蓋されたみたいな空だな

菱田芋天

夏井いつき先生より

 こんな視点で「蜻蛉」という生き物を見たことがなかったので、一読ハッとしました。飛ぶ生き物は多いですが、「蓋されたみたい」と感じるような群れで飛ぶものは、そんなに多くありません。例えば、夕暮れに集まってくる椋鳥の群れは、蓋ができるほどの数ではありますが、あの忙しない動きは「蓋」の感じではありません。また、農作物に被害を及ぼしたりもする蝗の群れは、「蓋」というよりはもっと禍々しいイメージ。掲出句から感じ取れる静けさのようなもの、それはまさに「蜻蛉」ならではのものです。音もなく群れ飛ぶ「蜻蛉」から、ゆっくりと背後の秋の「空」へ、作者の思いは移っていきます。口語の静かな呟きが、読者の心に染みとおっていきます。

地
家だつた木と土と紙とんぼ来る

綾竹あんどれ

 木と土と紙で出来ている日本の家屋。老朽化して取り壊したのでしょうか、被災した残骸でしょうか。「家だつた」という事実のみを語り、「とんぼ」という季語にその思いを託すのが、まさに俳句という文芸のありようです。

海抜はさびしき目盛とんぼとぶ

伊藤映雪

「海抜」という単語から反射的に津波のことを思ってしまうのは、十四年前のあの地震の記憶ゆえでしょう。「さびしき目盛り」という詩語が楔のように刺さります。「とんぼ」は亡くなった方々の魂のように空を埋め尽くしています。

部品みな外れさうなる蜻蛉かな

大岩摩利

「蜻蛉」の大きな目を眺めていると、ポロリと取れてしまうのではないかと思うことがあります。言われてみると、目だけでなく、頭のくびれも体の縞々も「部品」が全部外れそうにも見えてくる。「蜻蛉」のリアルな一物仕立てです。

付き合ふと決めろ色めき飛ぶ秋津

坂島魁文

 回文で俳句を作り続けている作者。無理矢理感が残るものが多い中で、これは作品としても成立しました。「決めろ」という命令形に友情があり、「色めき」の一語が前半と後半を繋ぐ、佳き効果を発揮しています。

三叉路に献花の絶えぬ蜻蛉かな

巴里乃嬬

 その三叉路は痛ましい交通事故現場なのでしょう。「献花の絶えぬ」という事実を書くだけで、花を抱いてそこを訪れる人たちの情景や心情がありありと伝わります。蜻蛉は魂を呼ぶともいわれる生き物。「かな」の詠嘆がしみじみと伝わります。

人
  • 飛び交ひて蜻蛉百匹ふれ合はず樫の木

  • 飛び交つてゐて蜻蛉のふれあはず眩む凡

  • とんぼとんぼ暗渠の終はるところより田邊辺

  • 午後休を四十九日の蜻蛉かな阿部八富利

  • とんぼうや母校の門の低かりし井納蒼求

  • 水に潤む石蜻蛉に乾く空妹のりこ

  • その杭に戻るほかなき蜻蛉かな岡一夏

  • せせらぎのひかり小石へ蜻蛉へと岡田瑛琳

  • とんぼうの真っ直ぐ飛んで怖い貌亀山酔田

  • 爆音の重機噴火めく蜻蛉きざお

  • とんぼうは記憶の結節点を飛ぶギル

  • もつれ合ふ蜻蛉汀に折れし櫂白猫のあくび

  • とんぼうの翅や夕陽の微電流拙珂

  • 蜻蛉飛ぶ知らぬ会社の求人票鳥田政宗

  • とんぼうの貌ぎらつかせ噛むわ噛むわ長谷川水素

  • 捕われて蜻蛉の翅の漏電すふるてい

  • 海に出て海の蜻蛉の小さしよまるごとハテナ

  • 隕石にみづの種あり銀やんま三浦海栗

  • 暇さうな洗濯ばさみ塩蜻蛉やまもと葉美

  • とんぼうや廊下の沈むこことそこゆすらご

  • 軍人のとがつた墓石鬼やんま横山雑煮

  • とんぼうに大手門ひらかれてをり天風月日

  • 吹抜けの窓へ蜻蛉が痛そうにいたまき芯

  • 鬼やんま馬のたてがみかすめけりあ。うん

  • 皇居より広き大屋根夕とんぼ青居舞

  • 宙を彫(え)る蜻蛉気ままなはやさかな青田奈央

  • とんぼとぶ黄泉比良坂ひょいと越えあおのめ

  • 鬼のゐる寺へ集ひし蜻蛉かな青星ふみる

  • 従兄弟七人鬼やんまの通り過ぐ赤尾てるぐ

  • とんぼうがウザいアノ子もアノ人も赤尾双葉

  • 群れなして古墳に停まる蜻蛉かな赤富士マニア

  • 蜻蛉や空の重さを計りをり赤目作

  • 畝傍山よりとんぼうの来て帰る愛柑いつき組note俳句部

  • とんぼ追ふとんぼを追つて天主堂空地ヶ有

  • スーパーに大きな蜻蛉迷い込む芥茶古美

  • 茜さす旅の鞄の蜻蛉かな明智明秀

  • 蜻蛉よ煽るでないぞこの恋を浅井翠

  • 水鏡の己突きたる蜻蛉かな朝雲列

  • 五時の鐘蜻蛉の帰る場所いづこ淺野紫桜

  • 法要の窓から出でぬ蜻蛉かな青野みやび

  • 鬼やんま我も車庫入れ苦手なりあさのとびら

  • 暮れ残る蜻蛉や翅の欠けしまま浅乃み雪

  • 蜻蛉が重機にとまる昼休み麻場育子

  • 蜻蛉や飛翔捕食の咀嚼音朝日雫

  • とんぼうや姉やも嫁ぎ子三人あじさい卓

  • とんばうやまがつたことはだいきらひ葦屋蛙城

  • 注連張れる黄泉平坂ぎんやんま阿修羅

  • 風も良し蜻蛉の野にて天指しぬ飛鳥井薫

  • とんぼうは単純なわたしをとおる明日ぱらこ

  • 非常な日常蜻蛉の目に無常麻生恵澄

  • パトカーのサイドミラーの蜻蛉かな藍創千悠子

  • 誰が転生指に蜻蛉の来て止まるあたしは斜楽

  • つながつたままのとんぼのゆくゆふべ足立智美

  • 倒立のとんぼ尾端は陽を指してあたなごっち

  • リハ室のトッカータ窓辺の蜻蛉at花結い

  • とんぼうや膝つ小僧の血の滲む渥美こぶこ

  • とんぼうの翅のモザイクあみだくじ我孫子もふもふ

  • 当て逃げの蜻蛉一閃見せにけり阿部斑猫

  • あの田だけ蜻蛉百匹風止みぬあまぐり

  • 応援の飛び交うなかの蜻蛉かな天鳥そら

  • 遮断機をするり蜻蛉のすり抜けて雨霧彦(木ノ芽)

  • カシカシと猫に食まれる蜻蛉かな雨降りお月さん

  • 雨上がり蜻蛉の空となる薄暮雨李

  • とんぼうの群れやPK失敗す綾竹ろびん

  • 蜻蛉や君の街へと続く空綾小路へこ

  • 謹慎の俺を笑ってくれ蜻蛉あらい

  • スマホ閉ぢとんばうに囲まれてゐる有村自懐

  • とんばうや恋しゆうてみづ泳ぐごと在在空空

  • とんばうのひよんひよん風を弄ぶアンサトウ

  • 納骨や蜻蛉の群れに頭垂れ杏っ子

  • 鬱々や蜻蛉の国に迷い込み井若宙

  • つくよみの宿るひかりや蝶蜻蛉飯村祐知子

  • 池は凪蜻蛉の波紋を除けば家守らびすけ

  • 鬼やんま単線鉄路のすれ違ひ猪狩鳳保

  • ヤンキーのしゃがむ空き地や鬼やんま郁松松ちゃん

  • 蜻蛉が影に追ひつく杭の先池田桐人

  • 蜻蛉が見てゐるスパイかもしれぬ池之端モルト

  • 鬼やんま子にたくましき示指と母指イサク

  • 蜻蛉の震へ第二次性徴期石井一草

  • 蜻蛉や籠に光を探しをり石井久次

  • 蜻蛉や子を抱きあやす地鎮祭石塚彩楓

  • 輝いた銀翅重し蜻蛉落つ石原しょう

  • とんぼうも善人もいて伽藍かな石原花野

  • 蜻蛉やサーモカメラの枠に影石原由女

  • 蜻蛉つり絵手紙くれる友も爺石本美津

  • 野に歌う民謡蜻蛉群れにけり泉晶子

  • ひとしきり暴れしあとの蜻蛉かな和泉攷

  • 蜻蛉や風をつかんでまだ迷う泉諒

  • 兄弟子の私小説閉ず墨とんぼいずみ令香

  • とんぼうや子守唄めく萩ことば石上あまね

  • 横糸を滑らせ蜻蛉空を染め市川りす

  • 御嶽より風とんぼうを吹き払う伊藤亜美子

  • 蜻蛉や町の小さな船溜り伊藤順女

  • 本物かい君の帽子のとんぼうは伊藤なお

  • 兵器ではなくて蜻蛉ですこれは糸川ラッコ

  • 豆本のやうに蜻蛉をつまみをり井中ひよこ号

  • 目の際を一直線に裂く蜻蛉井上鈴野

  • とんぼうや人の背中の遠ざかる井上れんげ・いつき組広ブロ俳句部

  • 田舎道背中の風は銀やんま井口良範

  • とんぼうやデモ行進は銀座へと猪子石ニンニン

  • とんぼあつまるひるさがりの小児科井原昇

  • 冷たきは蜻蛉の足のとまる指いまい沙緻子

  • 蜻蛉よ水に生まれて空に生きる伊代ちゃんの娘2

  • そっと寄るそっと退くとんぼかないわさちかこ

  • 夕暮の風の節目を翔ぶ蜻蛉岩清水彩香

  • 鬼やんま気づけばここで二十年上野眞理

  • 古井戸の水は豊かに蜻蛉来る上原淳子

  • 蜻蛉取りやんまは高く日に交じり上原まり

  • 蜻蛉消ゆ誰か出口を教えてくださいうからうから

  • とんぼうや寝るまえいつも少しこわいうすい木蓮

  • ひん曲げて結ぶ蜻蛉のやはらかさうた歌妙

  • 蜻蛉や幼虫だった頃の僕空木眠兎

  • 原色の日々過去となる蜻蛉かなうつぎゆこ

  • 蜻蛉らの尻を下げたる翳りかな靫草子

  • 道草に家風送る蜻蛉かな卯の花京

  • とんぼうや缶蹴り鬼は坊主の子卯之町空

  • 蜻蛉や死すまで羽を開きをり海沢ひかり

  • 蜻蛉翔ぶ影絵の街は茜色梅朶こいぬ

  • 子らの指す蜻蛉のほうを見ておりぬ詠頃

  • 蜻蛉蹴散らして東京ど真ん中江口朔太郎

  • 磔刑(たっけい)の蜻蛉聖業たる介護蝦夷野ごうがしゃ

  • 蜻蛉のみな鋭角にすれ違ひ蝦夷やなぎ

  • 蜻蛉かな思考のかたち手の平に越冬こあら@QLD句会

  • 蜻蛉や感傷的なタクト振る絵十

  • みどりごととんぼをのせて乳母車えりべり

  • 蜻蛉飛ぶ夕暮れ早くなりにけりANGEL

  • 青空を翅越しに見る蜻蛉かな円美々

  • とんぼうと国立天文台野辺山延命寺

  • お披露目の仔象のまつげ初蜻蛉おおい芙南

  • 三度目の防災無線あきつ飛ぶ大江きみ

  • ホームにて蜻蛉と我れ風を見る大越総

  • お迎えの自転車停めて蜻蛉見る大嶋宏治

  • 右肩を追い越し蜻蛉の高度増し太田けいこ

  • 蜻蛉や雲の形の散り散りに大塚恵美子

  • 蜻蛉とぶ日暮れへ向かう風を抜き大津美

  • 蜻蛉舞う精霊棚に備蓄米大谷維鶴

  • 翅持たば抗ふ蜻蛉の猛きかな大矢香津

  • 百年の終りに蜻蛉ぶらさがる大和田美信

  • 鬼やんま夫を童へかえしけり岡井稀音

  • 空兵の竝べて蜻蛉に代わるらし岡崎佐紅

  • 夕とんぼ過去から飛んで来たやうな可笑式

  • 塩むすびほおばる空に蜻蛉群れ岡田いっかん

  • 遥かなる水の匂ひの蜻蛉かな岡田雅喜

  • 風に病む蜻蛉の風に逆らへど岡根今日HEY

  • 青空に蜻蛉も止まる交差点岡眞弓

  • 雲水の衣を過る蜻蛉かな岡山小鞠

  • 有松の風に蜻蛉染まりけり小川野雪兎

  • 残照の食餌無心の蜻蛉かな沖乃しろくも

  • 風と樹の吐息に蜻蛉の翅震え奥寺窈子

  • 蜻蛉取る説法印の指をして小倉あんこ

  • 修験者の法螺貝遠し鬼やんまおこそとの

  • 水切りの石の後追ふ蜻蛉かな小田毬藻

  • とんぼうや子は雲梯に逆しまにおだむべ

  • 手の中に蜻蛉の生のじんじんと越智空子

  • 蜻蛉や召し集ひたる地鎮祭おつき澳吉

  • 子らが追う戦後の空のぎんやんまおにやんましゅう

  • 風かるく前へ前へと鬼やんまおひい

  • 銀やんま2ヘクタールの休耕田海音寺ジョー

  • 哲学の道とんぼうの止まる石海峯企鵝

  • 鉛筆で救出空へ放つ蜻蛉甲斐ももみ

  • 関東平野とんぼの数の広さかな香依蒼

  • 恵林寺の遺偈をよぎる鬼やんま火炎幸彦

  • とんぼうや立ちこぎの子は雲蹴って風早杏

  • 花嫁は気高し蜻蛉の透くる翅梶原菫

  • また一人とんぼ目で追う通夜知らせ風かおる

  • 今日も戦死者千人蜻蛉よ飛べ帷子砂舟

  • 戦なき国を貫く蜻蛉かな加塚東隆

  • 自由なる蜻蛉に戻る五時の鐘かつたろー。

  • 影絵なる蜻蛉の翅のやわらかさひだまりえりか

  • 見えぬ物避けて蜻蛉戻り来る桂佐ん吉

  • 追いかけた蜻蛉が噛んだくすりゆび桂葉子

  • 蜻蛉や墨くろぐろと忌中札加藤栗庵

  • 沈下橋浅く沈みてあきつ来るかときち

  • 追い抜いたとんぼうにまた追い抜かれかねつき走流

  • 天空の丘を秋津や國となす釜眞手打ち蕎麦

  • 蜻蛉消え蜻蛉現れ蜻蛉消ゆ神谷たくみ

  • 我をみな追い越してゆく蜻蛉かな紙谷杳子

  • 蜻蛉や今日の空気は重そうだ亀子てん

  • 忍び足とんぼの死角は右後ろかもね

  • 一葉を揺らす蜻蛉の重さかな鴨の里

  • 屋外の舞台マイクに蜻蛉かなかもめ

  • きらきらと蜻蛉交差す夕野原加裕子

  • ビル風を知つたばかりの蜻蛉かな絡丸いと

  • 酒と酢の運河の風や銀やんま刈屋まさを

  • 蜻蛉ゆく再開発の基準線川内佳代

  • 蜻蛉や墓地の造花の色褪せて河上摩子

  • 指先にぱりりととんばうの翅は川越羽流

  • 古世代の海色残し青蜻蛉川崎ルル

  • 蜻蛉や鉱石ラジオよりノイズ翡翠工房

  • 蜻蛉やあの秀才の顔に似て河孝

  • 蜻蛉や窓の余白に影ひとつ川端妙松

  • 葬列の旗蜻蛉の群れ分けて河村静葩

  • 蜻蛉捕る指に命のくねる腹カワムラ一重

  • 蜻蛉の目時空のゆがみ映しをり川村昌子

  • とんぼうや詩集にめくるめく無音喜祝音

  • とんぼうや小五の姉は不登校季川詩音

  • 指先に蜻蛉のたましひの重さ岸来夢

  • 駅からは蜻蛉三匹徒歩五分季切少楽・広ブロ俳句部

  • 蜻蛉や少年の手に空の青北大路京介

  • 蜻蛉の出入自在に秘密基地喜多丘一路

  • てっぺんの蜻蛉飛び立つ気配なく北川茜月

  • 石段の長く蜻蛉に追ひ越され木谷智子

  • とんぼうのへの字しづかに草の端北村環

  • 猿沢の池に蜻蛉の噂する貴田雄介

  • 一斉に蜻蛉の町となりにけり城内幸江

  • 軽すぎた蜻蛉の羽よげんまんよ木下桃白

  • 窓を蜻蛉大部屋にストレッチャー木ぼこやしき

  • 蜻蛉や風を掴みてとどまれり木村カズ

  • 神殿の奥に消えゆく蜻蛉かな木村かわせみ

  • とんぼ飛ぶ知覧の空は静かなり木村修芳

  • 暮方の蜻蛉を追って黄泉の国木村信哉

  • 水平の正解もとめゆく蜻蛉木村となえーる

  • 父と似し蜻蛉居たり空閑地木元紫瑛

  • とんぼうやソールの擦れた安全靴Q&A

  • 生き生きと自転車よけて蜻蛉過ぐQちゃん・広ブロ俳句部神奈川支部

  • 蜻蛉翔ぶ跪座となりたる法話かな京野秋水

  • とんぼうに風の耳ある秋津島杏乃みずな

  • 満塁や蜻蛉の中をボール追ふ煌星アニカ@TFP句会

  • 塹壕の上を休戦日の蜻蛉霧賀内蔵

  • パドックの馬上に蜻蛉止まりたる霧澄渡

  • 頂は一坪ほどやあきつ舞ふ菫久

  • 履歴書を買ひて蜻蛉を数へをりくぅ

  • 鬼やんま怒りの的の定らず句々奈

  • 風ごとに擬宝珠の蜻蛉いれ替はるくさ

  • アルプス席団旗に止まる鬼やんま鯨之

  • 留まらぬ蜻蛉の多き高架下くすみ輝く

  • 鬼やんまレクサスぬいてとんでったくちなしの香

  • 関東を対角線に鬼やんま熊谷温古

  • とんぼうの群れてここより神の山クラウド坂の上

  • とんばうが明るい人が好きと言ふ倉岡富士子

  • テストうらがへしとんばうのふうらり栗田すずさん

  • 繋ぎとんぼの波紋ちょんちょんちょーん空流峰山

  • 日へ真すぐ尻を差したる蜻蛉かな久留里61

  • 乾麺の帯はそらいろ蜻蛉澄むげばげば

  • 沼尻の姿ただしき蜻蛉の死謙久

  • すべからく語らぬ父よ鬼やんまケンG

  • とんぼうや旅のかばんの傷の痕ケント

  • 蜻蛉や北条五代の海凪げる剣橋こじ

  • 地下街は水の匂ひや蜻蛉とぶ小泉久美子

  • 蜻蛉放す下りケーブル乗車口恋瀬川三緒

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  • 多摩川の蜻蛉素振りの奥の富士駒茄子

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  • 群れとんぼパレットに足す茜色さいたま水夢

  • 滑り込む電車を躱す蜻蛉かな齋藤桃杏

  • レンズ向けぎうと蜻蛉に睨まるるさおきち

  • 蜻蛉や引く自転車になきサドルさ乙女龍チヨ

  • 蜻蛉の止まり木となる止まれかな酒井春棋

  • 蜻蛉飛ばない赫い夕暮れが来る榊昭広

  • 蜻蛉と吾子の眼待ち伏せの水路肴枝豆

  • 夕蜻蛉ギプスの中を匙で掻く坂野ひでこ

  • 蜻蛉や受けると決めたTOEIC坂まきか

  • 蜻蛉ゆく母のお焦げの握り飯櫻井こむぎ

  • 群蜻蛉新居引き渡し日の空櫻井弘子

  • とんぼうと恩師の墓を囲み合ふ桜鯛みわ

  • デイサービス蜻蛉の飛んで来ない朝さくら悠日

  • 青とんぼ海から拒絶されて湖迫久鯨

  • 蜻蛉らの統ぶる古墳の型崩れ雑魚寝

  • 嘴に躰捻じ曲げる大蜻蛉笹桐陽介

  • 蜻蛉を追へぬ母なり声遠し佐藤恒治

  • さみしい病癒えり蜻蛉に包まるるさち今宵

  • 蜻蛉の空へ空き缶蹴り上げて佐藤志祐

  • 譲り合ふやんまと電動車いすさとう昌石

  • 尾を森へ垂れて祈りの鬼やんま佐藤ゆま

  • 祖母逝きぬ蜻蛉の聲を集め終へ佐藤レアレア

  • 大空に蜻蛉の自由吾の自由里こごみ

  • 次々ととんぼ遊具のさらす骨錆田水遊

  • とんぼうの機嫌良きかな首傾ぐさぶり

  • また無職とんぼはすぐに向きを変へ彷徨ういろは

  • 輪郭を太く震はせ鬼やんま沢拓庵◎いつき組カーリング部

  • 翔べぬ吾の前へ後ろへ蜻蛉かな沢山葵

  • 蜻蛉や坂のパン屋は休業中三角山子

  • 機械科の試作混じつてそな蜻蛉三月兎

  • 鬼ごっこ蜻蛉を追って神隠し珊瑚霧

  • 逆立ちの蜻蛉抗う日の光塩風しーたん

  • 東大に並木蜻蛉に十の節柿司十六

  • 矢のごとく三遊間を鬼やんまじつみのかた

  • 蜻蛉や外野のゐない草野球信濃のあっくん

  • 十年経ち父似の蜻蛉来る現場篠雪

  • 蜻蛉ほら闇をかくした空がきれい渋谷晶

  • とんぼうは我をどんどん巻き戻すしぼりはf22

  • それぞれがそれぞれ孤独とんぼ飛ぶ島掛きりの

  • はればれと蜻蛉ゆきかう川ゆたか島田あんず

  • 蜻蛉のしつぽは空でありさうな清水縞午

  • 雨上がりあきつの翅に玻璃の糸清水ぽっぽあっと木の芽

  • とんぼうやきのふの空を離れざる下村修

  • 十センチ蜻蛉に譲る物干し場秋芳

  • 蜻蛉群る奇才の思考回路かなシュリ

  • 湿原の軋む木道群とんぼじゅんこ

  • 人魂は透き通るらし鬼やんま順之介@QLD句会

  • 蜻蛉来るくんと青空捨てて来る常幸龍BCAD

  • 夕とんぼ明日からとても逃げきれぬ正念亭若知古

  • 少年の翳り宿して蜻蛉の翅白井佐登志

  • 車椅子蜻蛉の中に置いてきた白石美月

  • 縦列駐車ビシッと決まり銀やんま白沢ポピー

  • 蜻蛉や五尾留まりたる施無畏印不知飛鳥

  • 上段の切っ先に蜻蛉しずかなり四郎高綱

  • 蜻蛉交む列島またぐ雲の端ジン・ケンジ

  • バトンに蜻蛉分校の四時間目新濃健

  • 薄紙に果てたる蜻蛉包みをり新森大大

  • 息止めてそばだてて鬼やんま来たすがのあき

  • 旅半ば蜻蛉は低く山高く杉岡ライカ

  • 目の上の世界に蜻蛉有り余る杉尾芭蕉

  • 徹夜明け窓に蜻蛉や校了す涼希美月

  • 夕さればとんぼのはねの瞬けり鈴木由紀子

  • まぐはひの長き蜻蛉や池濁る鈴白菜実

  • とんぼうの飛ぶと青空広がりて砂山恵子

  • 鬼蜻蜒校舎の裏は古墳塚須磨ひろみ

  • 蜻蛉のすべてつがひの草野かな世子

  • 矢道の草引き吾と蜻蛉の孤独青峰桔梗丘

  • 掛け持ちの制服干せり初蜻蛉瀬央ありさ

  • あの頃の恋のスピードおにやんま瀬紀

  • 蜻蛉やたった二便の時刻表sekiいつき組広ブロ俳句部

  • 秋津美しパノラマの眼は真赭色摂田屋酵道

  • 調布飛行場の進路クリア蜻蛉とぶせり坊

  • とんぼうや喧嘩相手と平行線千・いつき組広ブロ俳句部

  • 蜻蛉や消失点で消失す走人

  • 少年の昭和百年とんぼ追ふそうま純香

  • とんぼうの目に一閃や山の蒼そまり

  • 簪の赫や蜻蛉は夜を刮ぐそよかぜシュレディンガー

  • とんぼうは探す大人のなくしもの空豆魚

  • 蜻蛉飛ぶ株価チャートのやうに飛ぶぞんぬ

  • 蜻蛉来た自由になった父の空駄詩

  • 塩辛蜻蛉ブルーカラーで何が悪いたーとるQ

  • 蜻蛉起つしなる躰の縞模様大ちはる

  • とんぼうのみづのしづかを確かむる大地緑

  • 告ぐる事あるかに蜻蛉まつはりぬたいらんど風人

  • 橋渡る一家族につき一蜻蛉高瀬小唄

  • おほぞらに蜻蛉つけゆく細き創鷹取碧村

  • ICU蜻蛉と目が合う小窓は晴れ高辺知子

  • 棟上げを終へて蜻蛉の登り飛ぶ高橋手元

  • とんぼうや軌道修正してばかり高橋寅次

  • 蜻蛉乗る夫の指先夫の息高橋マママリン

  • 甲州に入りて蜻蛉の微炭酸高原としなり

  • とんばうや漫画のやうに会ひに来て鷹見沢幸

  • 天を指し吾子は蜻蛉の中にありたかみたかみ・いつき組広ブロ俳句部

  • とんばうや戻つてこない観覧車高山佳風

  • つけつ放しの野球中継鬼やんま滝川橋

  • 蜻蛉飛ぶ洗いたてなる空の下滝澤和恵

  • 港区のとんぼ港区の子が追って多喰身・デラックス

  • とんぼうや藍染晒す山の水武井保一

  • とんぼうや尻打つ水の浅きこと竹内不撚

  • とんぼうの無限の空でありにけりタケザワサトシ

  • はないちもんめひとりあまつた子にとんぼ竹田むべ

  • とんばうの飛び交ふ競馬場久したけろー

  • 蒼と青青と碧とを蜻蛉かな多事

  • 水たたき羽色抜けゆく蜻蛉かなたすく

  • 蜻蛉の空に子午線なかりけり多数野麻仁男

  • とんばうや泥のにほひと足袋の型ただ地蔵

  • 蜻蛉の行くてはつひに大海原糺ノ森柊

  • もの思ひて傾ぐや蒼き蜻蛉の目多田知代子

  • 蜻蛉舞う漱石を手に縁側へただの山登家

  • 四万十の蜻蛉の国のあかね空立田渓

  • 有給消化蜻蛉の群の中に居て立田鯊夢

  • 鬼やんま竜の赤子の重さかな立石神流

  • 着水の蜻蛉の尾より波紋かな伊達紫檀

  • 道化師の戯ける鼻へ蜻蛉かな田中みどり

  • 実直に頭胸腹蜻蛉かな谷相

  • そと叩く紙のピアノや夕蜻蛉谷斜六

  • 蜻蛉の退きしかたちへ風の入る谷しゅんのすけ

  • 湖色と空色ちがうとんぼかな谷町百合乃

  • 行き違う風の狭間の蜻蛉かな田上南郷

  • 蜻蛉やロードバイクを組み立てて田畑整

  • 神籠もる田の黄を蜻蛉ほしきまま玉家屋

  • 何物も映さぬごとき蜻蛉の眼玉響雷子

  • 蜻蛉きて平八郎の墓を避く田村利平

  • 干し蛸の風止む夕や蜻蛉湧く丹波らる

  • 蜻蛉の橋を渡れば会えるのに千夏乃ありあり

  • 三条の擬宝珠の傷や夕蜻蛉竹庵

  • 寝くじの子抱きゆらゆら蜻蛉飛ぶ智幸子

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  • 野を満たす蜻蛉の翅のうすき影沖庭乃剛也

  • ここはまた蜻蛉の多い市営墓地蒼空蒼子

  • とんぼとんぼ滝を見逃す高尾山津幡GEE

  • 東京の蜻蛉とエウロパのこどもうえともこ

  • あきつとぶ古今伝授の櫓跡EarlyBird

  • とんぼうや街角ピアノ調律中きなこもち

  • とんぼうととんぼう重ねあふ一途さかえ八八六

  • 群れ飛んでいくさは正義かと蜻蛉じゃすみん

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  • 蜻蛉とぶ芭蕉献句の除幕式高尾一叶

  • 逆光の屋島青とんぼの数多二十八

  • 25°尻を撓はせ蜻蛉発つ藤白真語

  • とんぼうは水の記憶を翅にのせはるの風花

  • とんばうに水の記憶や雨後の庭福井桔梗

  • 空に書く蜻蛉の文字のとめ、はらい小川しめじ

  • おほぞらをとめはねはらい蜻蛉とぶ斉藤立夏

  • マラソンのあとはラーメン赤蜻蛉秋月あさひ

  • 友達の友達もいて赤とんぼいとへん製作所

  • 赤蜻蛉つれて家路の猫車岡田ひろ子

  • 風に聞く風の抜け道赤蜻蛉加田紗智

  • 都から通信使来たり赤とんぼ加藤麗未

  • 薬師堂のお供当番赤とんぼ川村湖雪

  • ささくれの舳先に暮れの赤蜻蛉木下昇吾

  • 子の墓碑の裏に静かに赤蜻蛉古知野朝子

  • 赤蜻蛉仁王門超えそれっきり佐々木佳芳

  • 赤とんぼ喧嘩の理由(わけ)も忘れけりすずしろ桂

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  • マラソンののぼりパタパタ赤とんぼ鱈瑞々

  • 石仏の鎖骨のあたり赤とんぼ中尾鎖骨

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  • 赤とんぼ裏玄関の御用聞き和脩志

  • 狛犬の苔むすかうべ秋茜伊藤恵美

  • 交わりて叩く汀や秋茜小川さゆみ

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佳作
  • 蜻蛉見て宙に漢文浮かびけり相生三楽

  • 出すものを出して蜻蛉と母屋入る居並小

  • 墓囲み連れ去る何か群れ蜻蛉梅里和代

  • 魚焼く煙過りし蜻蛉かな麗し

  • 蜻蛉ややぶさかでなきちゃんちゃんこあが野みなも

  • 先生は机間巡視で蜻蛉来る太田怒忘

  • 窓は夜蜻蛉黙して蝶番加山シンゴ

  • とんぼ捕り瞬きとめて息とめて君塚美蕉

  • 蜻蛉や声変はりした餓鬼大将木村弩凡

  • 手配書を刷るや「∞」を描く蜻蛉草臥れ男

  • 口開けて弓手で円描く蜻蛉取り黒瀬三保緑

  • 蜻蛉や部活帰りのおにごっこ黒山万牛

  • ぞんざいに捕まる蜻蛉子ども部屋紅紫あやめ

  • 森閑の蜻蛉の眼には銀河あり五島潮

  • じいちゃんは蜻蛉つり僕は蜻蛉とりこむぎ

  • 蜻蛉来よ肩に止まれよ夫ならばさかたちえこ

  • 蜻蛉過ぐ走馬灯より仄速く坂本雪桃

  • 蜻蛉とんぼこゝろの六割はお湯か笹野夕

  • 断捨離の着物預けて蜻蛉かな佐柳里咲

  • 音の無い林の奥に蜻蛉浮く百日紅

  • 蜻蛉の消えれば空の朱くなり慈雨

  • 「作麼生」竿の先から鬼やんま末広野暢一

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  • 祖母のおしめを買い行く道に蜻蛉鈴木季良恵

  • 蜻蛉立ち水の輪ひとつ残しけり高々多佳志

  • 滅びゆく物に蜻蛉のホバリング高木音弥

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  • 飛行機の止まつてゐさう鬼やんまアーモンドよーせい

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  • 古民家を抜けては戻る蜻蛉かな藍野絣

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  • 鬼やんま捕らへたる子の得意顔青井季節

  • 諦めた糸にゆられる蜻蛉かな青井心平

  • 墓に舞う蜻蛉父想い眺める青橘花

  • 昼の地にじつととまつてをりとんばう青空まる

  • 遠い日の蜻蛉はいまも目の前に青松紫雲英

  • 蜻蛉待つ人差し指は天を指し赤鰯

  • 亡き父のアバターなのか蜻蛉来るあかねぺン銀

  • 色褪し畑棒蜻蛉の鮮やかにacari

  • 旅で知る蜻蛉の守る古戦場あかり

  • 懐っこいふりで離れる蜻蛉かな赤尾実果

  • 儚きや番の蜻蛉やもめ住み昭廣凡字

  • リゾートで広つば帽にとんぼうが空き家ままごと

  • あの枝に来ては去り行く鬼やんま秋山らいさく

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  • 蜻蛉の川面叩きて魚呼べり圷小夏

  • 進水式五色テープや蜻蛉群れあくび指南

  • 蜻蛉のとおせんぼ回り道迷い道明後日めぐみ

  • 繋がりて四万十川を翔ぶ蜻蛉あさぬま雅王

  • つーいつい初とんぼ見つけたり朝陽

  • 群蜻蛉北の大地で大滑空亜紗舞那

  • 四万の眼の蜻蛉見つめ合う放課後あさみあさり

  • やまびこをBGMに舞ふ蜻蛉浅紫泉

  • 城跡に蜻蛉群れ飛ぶ雨あがり明日葉

  • 蜻蛉舞う鎮守の森に笛太鼓明日に翔ぶ会

  • 茜野に蜻蛉追いゆく影ひとつ愛宕平九郎

  • とんぼうも人を選びて留まりけりあねもねワンヲ

  • 蜻蛉へ悪戯つ子の回す指甘茶トーシロー

  • 肩止まる蜻蛉逃げるな息止める雨戸ゆらら

  • とんぼうの音なく止まり飛びにけりあみま

  • 編み針に蜻蛉とまる夕暮れ時雨乙女

  • こっちこっち蜻蛉の誘い妖しくて雨森茂喜

  • 反芻の牛のりぼんは蜻蛉なりあらかわすすむ

  • 夕さりのこの指止まれ鬼やんま荒木響

  • 嘘見抜く蜻蛉ひゅと来てつと返す蛙里

  • 息潜め何処を睨むの蜻蛉の眼有川句楽

  • 蜻蛉やペースそれぞれ遊歩道有田みかん

  • 群とんぼダリットの人好きになる蟻馬次朗

  • 丸書いてそっと早業蜻蛉捕る有本としお

  • 蜻蛉や追つ追はれつ園の子等淡湖千優

  • 村寂びて空き家巡りの蜻蛉かな安春

  • 落書きの壁を伝って蜻蛉舞う飯田淳子

  • 夕餉漂う蜻蛉飛ぶ道を行く池田悦子

  • 六甲山和歌山にむけ飛ぶ蜻蛉池田華族

  • 友のよう蜻蛉の飛び交う中にいる伊澤遥佳

  • 逝く父は蜻蛉に乗って三回転伊澤ゆき抄

  • とんぼうや団子の玉の小さくなりぬ石垣エリザ

  • 悪魔にも天使にも見えとぶ蜻蛉石塚碧葉

  • 古希なれどまだ前を向く蜻蛉の眼石堂多門

  • 窓にこつん暦に追われ蜻蛉とぶ石の上にもケロリン

  • 指の間の半世紀ぶり鬼やんま石村香代子

  • 蜻蛉や庭駆け回る孫の顔泉恵風

  • 山盛りの蜻蛉載せて山笑まう和泉園実

  • とんぼうと追いつ追われつ紀尾井坂一井かおり

  • 蜻蛉の名するり呼びおる夫の声市川卯月

  • ついてこい先達となり黒とんぼいちご一会

  • とんぼうの風に抗い止まるかないつかある日

  • 蜻蛉に邪気見透かされ飛び去られ一秋子

  • とんぼうや朝市に乗る口車一慎

  • 木道に腹ぬくめては蜻蛉飛ぶ五つ星

  • 蜻蛉や「止まれ」の上で一休み伊東海芋

  • 亡き友と蜻蛉追ひかけ夢現伊藤薫

  • バス停をつっと横切る蜻蛉かな伊藤節子

  • とんぼうはとんぼうどうし張り合うて伊藤柚良

  • 蜻蛉追う背には夕日が追いかけて伊藤れいこ

  • オートバイ止めて蜻蛉の翅休め伊ナイトあさか

  • 鬼やんま外灯に溺れ翅輝る伊那寛太

  • 残業を知らぬ蜻蛉と遊ぼうか稲光虎介

  • 糸の先にはめす蜻蛉雄を捕るイナホセドリ

  • 空の色映し草原舞う蜻蛉いまいみどり

  • 初蜻蛉ついとテレビに止まりけりいまいやすのり

  • 高原の帽子にとまれ鬼やんま井松慈悦

  • 蜻蛉飛ぶ野辺にきゃっきゃと追いかける今乃武椪

  • 睥睨す山高帽に蜻蛉ゐて伊予吟会宵嵐

  • 蜻蛉の眼世の裏側を見通して岩木順

  • 湖水面追いつ追われつ蜻蛉の恋岩佐りこ

  • 浮き止まる草の蜻蛉や何時ぞやの上野徹心

  • 鬼やんま要らぬ産道捨ててくらあうただねこ科

  • 絵筆止め画板に蜻蛉の休みおり宇田の月兎

  • 翻る蜻蛉水面に命の環内田ゆの

  • 夕方の黒き雲ともその蜻蛉宇野翔月

  • 畦道に足滑らせて蜻蛉散り海口竿富

  • 蜻蛉のぐにやりと体曲げてをり梅田三五

  • 蜻蛉おり空まっすぐの指の先詠・想風土

  • 老犬と戯れ蜻蛉夕空へ江川月丸

  • 競技場ゴール横切る蜻蛉かな越中之助

  • 擁壁を蜻蛉の影ゆめうつつ江戸きり子

  • 空わたるとんぼ整列よさこいかえのき筆丸

  • 鬱蒼を躱しあっさり翔ぶ蜻蛉榎美紗

  • 前かごに蜻蛉あり息ひそめ見る榎本奈

  • 古戦場群れる蜻蛉雑兵如榎本雅

  • 蜻蛉捕りしてればいいさ明日まで遠藤玲奈

  • 昔蜻蛉琵琶湖の森へ帰り来よ近江菫花

  • 孫悲鳴蜻蛉キライー逃げ転ぶ大江戸小紋

  • 蜻蛉の群れの二つや父の庭大久保加州

  • 蜻蛉や何を躊躇のホバリング大越マーガレット

  • 蜻蛉追ひ駆けたあの頃遠くなり大澤道史

  • 蜻蛉や夕空へ飛び影となる大竹八重子

  • 山を越え麦藁屋根に蜻蛉飛ぶ大舘さと

  • 浅草のサンバの羽根に蜻蛉かな太田一駄歩

  • 蜻蛉の生きる余白は大空へ大富孝子

  • 故郷の友蜻蛉の群れを連れおおにしまこと

  • エコバック小さくたたむ鬼やんま大野美波

  • ゴルフ場吹かれて遊ぶ蜻蛉かな大原妃

  • 駅ホーム鞄に留まる蜻蛉かな大原雪

  • 蜻蛉群れ今年も会いにドライブへ大道真波

  • UFOの動きのごとき蜻蛉かなおかえさき

  • 十一階とんぼう高く赫赫と岡崎未知

  • 幼子の肩を取り合う蜻蛉二匹岡田恵美子

  • 中天をとんぼう十の字にも似て男鹿中熊兎

  • 点滴中窓に一匹蜻蛉かな岡村恵子

  • ため息の窓辺にとまる蜻蛉かなオカメインコ

  • 的目指し前進のみの蜻蛉かな岡本

  • 蜻蛉来て止まりたい指根くらべ丘るみこ

  • 空中を糸で縫うごと蜻蛉かな小川紅子

  • とんぼうの居場所枕木積んである小川天鵲

  • あきつ羽光る炭鉱跡のスパランド小川都雪

  • とんぼうへ西の追ひ風紀尾井坂オキザリス

  • とんぼ湧く遅刻ぎみなる通学路沖庭ノ華風

  • 干し靴をつんつんつつく蜻蛉かな荻原玲香

  • しばらくは併走したる蜻蛉かな沖らくだ@QLD句会

  • 網を振る風に浮かんで蜻蛉去る遅狐

  • 滑走路に鋼の朋輩(とも)待つ蜻蛉かな御成山

  • 散歩中ずっと付いてくる蜻蛉十八番屋さつき

  • とんぼうや愚痴なら聞くよ日曜におぼろ月

  • 山頂で一献眼下を青蜻蛉かいぐりかいぐり

  • 蜻蛉消ゆ赤き原その向こうへと海堂一花

  • 蜻蛉くる掃除終わりし墓石に鹿嶌純子

  • 葉を揺らし塩辛蜻蛉午下に見ゆかじまとしこ

  • 蜻蛉追う孫追う祖父母スマホ追うカズミンスキー

  • あたらしき墓石に蜻蛉とまりたり片岡明

  • とんぼうやロザリオめいて飛び違う花鳥風猫

  • とんぼうの群何処へ行くみゃくみゃくと佳寿

  • 原爆を二度と許さぬ蜻蛉の眼加藤水玉

  • とんぼうの先の青空無限なるかとゆこ

  • もがく日々頭上には蜻蛉の群金澤孝子

  • 山里の沁みる黄昏蜻蛉舞う金子陽

  • 霞みゆく白内障に鬼やんま金子泰山

  • 竿先の蜻蛉の頭よく動く花星壱和

  • 蜻蛉の肩で何やら囁きて神島六男

  • 碧空をきっちり四方に切る蜻蛉神長誉夫

  • 道案内先へ先へと蜻蛉とぶ亀くみ

  • 光射す朝へ蜻蛉の舞にけり亀田かつおぶし

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  • 佃煮で売るほど捕れし蜻蛉かな亀田みのる

  • 後退はしないとんぼの透ける羽根亀山逸子

  • 穏やかな波の音あわせ蜻蛉舞ふカラハ

  • 追うほどに遠くへ誘う蜻蛉かな川代つ傘

  • この指に停まれと祈り蜻蛉追い川辺世界遺産の居候

  • 編隊や蜻蛉数える帰り道岸壁の龍崎爺

  • スマホ忘れ蜻蛉先導田舎道がんも三世

  • 速度違反愛車抜き去る鬼やんまKey

  • とんぼうはレガート眼下に万博如月ゆう

  • カレー屋の行列見下ろしとんぼ飛ぶ季紫子

  • ツー・トンと空に信号やんま飛ぶ紀星

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  • 蜻蛉にピンを打ち眺めし遠き日堀隼人

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  • 領空侵犯とんぼスクランブル町田思誠

  • 蜻蛉や羽根の向こうに落つ夕陽松岡才二

  • 線香がにほひ包みて蜻蛉をり松岡徘徊狂人

  • とんぼとんぼ西方浄土はいずく松岡玲子

  • 蜻蛉逃げ網の影舞う水の上松尾祇敲

  • 銀蜻蜒エメラルドの眼空撮か松尾老甫

  • 水切りのととんと石に散る蜻蛉まっちゃこ

  • 緑目の蜻蛉の誘う畦の奥松知

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  • 明けの朝肩越しに蜻蛉の気配瑪麗

  • 群れ蜻蛉色づく空に溶けてゆく真理庵

  • 蜻蛉飛ぶ奈良町歩くハイヒールまりい木ノ芽

  • 蜻蛉行く今日も領空異状なし丸山隆子

  • 自転車で蜻蛉の群れを割り進む美衣珠

  • 我が肩にとんぼの止まる無人駅みかん成人

  • 風の道飛び行く見遣る蜻蛉かな三木崇弘

  • とんぼうの淡き影引く土塀かな三茶F

  • 裏返るファーの叫びや蜻蛉の群れ水越千里

  • 蜻蛉来るとんぼのめがね唄ふ吾子mr.kikyo

  • 休日の都心の運河とんぼ発つ水巻リカ

  • 一等の旗のてっぺん蜻蛉おり巳智みちる

  • 痩せ細りし指にも蜻蛉とまりなむ光月野うさぎ

  • 気流乗り頂き向かう蜻蛉かなミナガワトモヒロ

  • 放課後やショパンに揺れる蜻蛉の羽みなづき光緒

  • 夕暮れに母の呼ぶ声蜻蛉とり湊かずゆき

  • 野に数多野を狭くして飛ぶ蜻蛉みなみはな

  • 小さく意見を言ふ婦人会とんぼ飛ぶ源早苗

  • 蜻蛉飛ぶ園児のリレー追いかけるみはやななか

  • 譜面を蜻蛉空へとハイトーン美村羽奏

  • とんぼうの背に乗り僕はテニアンへ深森明鶴

  • 蜻蛉舞い夕暮れ空のコンダクター宮城海月

  • 蜻蛉見た公園の道また行こう美山つぐみ

  • 夕暮れて祠に蜻蛉羽やすめ宮村寿摩子

  • いにしへの神殿の跡鬼やんまミラベル

  • あちこちに蜻蛉飛び交う我が水郷むじか

  • 蜻蛉追いセカンドライフの幕が開くムシ・ミカミ

  • 尾を落とし半身だけで去る蜻蛉睦月くらげ

  • とんぼうの真っ直ぐに来るガラス窓むねあかどり

  • 蜻蛉や夫の沙汰なく時止まる村先ときの介

  • とんぼうや夕日の色に馴染みおり恵のママ

  • スイっと蜻蛉川面は鏡朝まだき百瀬つきか

  • 踏切を越えて先ゆく蜻蛉かな森海まのわ

  • 一つ行く風に乗らんと蜻蛉かな森嶋ししく

  • 真剣な貌して蜻蛉水を打つ森中ことり

  • ツートトツー行きつ止まりつ飛ぶ蜻蛉森野恵

  • とまるところ探すために飛ぶ蜻蛉かな森日美香

  • 童謡を歌いし蜻蛉追いかける森茉那

  • トンボに蜻蛉トラックは大歓声諸岡萌黄

  • 三次元蜻蛉の引いた設計図もろ智行

  • 夕日さす白壁一面とんぼかな矢澤かなえ

  • 思秋期や蜻蛉の羽を透かしみる矢澤瞳杏

  • とんぼうのヒラリといなす昼寝言安元進太郎

  • 蜻蛉が合間抜いたり防災訓練柳とうふ

  • 迷ひなく風を切裂く鬼やんま野風庵

  • 入り乱れいつか蜻蛉の広場となる山内彩月

  • 前を行く夫の肩に蜻蛉かな山内文野

  • とんぼうとバックパッカー舟でゆく山口絢子

  • 托鉢の雲水の傘蜻蛉のせ山口笑骨

  • 蜻蛉が誘う眼下で膨む燈山下智

  • 鬼やんま網で追う子と逃げる子と山育ち

  • 凸凹の羽根渦起こし浮く蜻蛉山田季聴

  • 蜻蛉追ふ子らの手染むる夕日かな山田翔子

  • 前後横蜻蛉引連れ山頂へやまだ童子

  • 髪染めに来て窓の外蜻蛉かな山田はつみ

  • 肩沈め露天の湯気に蜻蛉追う大和杜

  • 人工の芝をいおりとす蜻蛉山野花子

  • 知らぬ顔膨れて蜻蛉採る息子山本葉舟

  • 蜻蛉や浅間の朝を二つ三つ山姥和

  • いにしへの夕日をながむ蜻蛉かな雪子

  • 人差し指クルクル小川の蜻蛉かなユキト

  • 黄金の棚田万枚蜻蛉の眼雪鶏

  • 蜻蛉の翅のしやりしやり君に言ふ柚子こしょう

  • キャッチボール夕暮れ蜻蛉に促され夢散人

  • 蜻蛉舞う空に音符を散らすやにYOKOCHAN

  • 蜻蛉行くこの暗がりや我も行くよしぎわへい

  • 海外の地図のやうなる蜻蛉の羽ヨシケン

  • 蜻蛉舞ふ母の帰りを待つ子かな吉田蝸牛

  • オス同士睨む蜻蛉の恐い口吉藤愛里子

  • 「とんぼはなめがねかけとる!じいちゃんじょ」Yoshimin空

  • 曼荼羅や蜻蛉の目には数多の吾米山カローリング

  • とんぼうの眼に数多吾の寄目楽和音

  • フェアウェイの白球の先蜻蛉飛ぶ梨花

  • 蜻蛉の群れなす朝よいざ畑へリコピン

  • 銅山のからみ煉瓦に銀やんま竜退治の騎士

  • 風に舞い風を操る蜻蛉かな瑠璃ホコリ

  • 塾帰り蜻蛉横目にランニング麗詩

  • 里山の蜻蛉の羽音幽しやわかなけん

  • 蜻蛉追いし子らの歓声蒼天へ海神瑠珂

  • 蜻蛉の羽ステンドグラスめく夕日渡辺香野

  • 野を飛んで千の精霊蜻蛉かな渡邉花

  • 切り上げて川辺に寄れば夕蜻蛉渡辺陽子

  • 白壁の斜光に並ぶ蜻蛉かなわをんはな

  • 戸口開き揺るる蜻蛉のやじろべえ月石まちこ

  • 蜻蛉すわインベーダーを撃ち落とす後藤葉羽

  • 青藍へボンボニエール出づ蜻蛉三群梛乃

  • 故郷やどこもかしこも赤蜻蛉浦城亮祐

  • 石橋に留まる吾に赤蜻蛉大久保一水

  • 俺を詠め右へ左へ赤蜻蛉片岡一月

  • 山辺より実りの里へ秋茜亀岡恵夢

  • 時すでに遅き戦や赤とんぼ高岡春雪

  • 風熱し視線の先行く赤蜻蛉田上コウ

  • 赤とんぼ塔婆の先へ止まりけり那須のお漬物

  • 岸壁を宙と化したる赤とんぼふるかわしげ子

  • 身動ぎせず子等は群れ飛ぶ赤蜻蛉本間美知子

  • 進路先決めて仰げば赤蜻蛉またあ

  • みずうみを風と渡るか秋茜柚木啓

  • 品川の駅構内を赤とんぼ平井千恵子

  • 拝殿の先客二匹秋茜荒木ゆうな

  • 子供らを導くような赤とんぼ近未来

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

◆俳号のお願い二つ

  • ①似たような俳号を使う人が増えています。
     俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。

  • ②同一人物による複数俳号を使った投句は、堅くご遠慮下さい。
    「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。


●「蜻蛉」について書いた句だろうとは……

  • 尾を伸ばし秋を抱いて舞い上がる享子

  • 指先に止まれば母の化身大西真佐美

 兼題「蜻蛉」はテーマではないので、「蜻蛉」という季語を詠み込む必要があるのです。


●「糸蜻蛉」「川蜻蛉」は夏の季語

  • 付け爪に戸惑いながら糸蜻蛉あすなろの邦

  • 吾の住まふ羽黒蜻蛉の来る垣根野の菫

  • 物干し台肌着に潜む糸とんぼ茅野ともぞう

  • 湖に波紋命繋ぐかイトトンボ風之川

  • 黒蜻蛉二回開いて羽閉じる北の星

 兼題の説明文にも記載はしておりましたが、「糸蜻蛉」「川蜻蛉」は、夏の季語になります。



  • 蜻蛉生る青竹の如にほひけり牧茉侖

  • 蜻蛉羽化命懸けなり一時間中嶋緑庵

「蜻蛉生る」も夏の季語です。歳時記を開いて、季語を確認するところから、作句を始めましょう。


●季重なり

  • とんぼ来る揚羽ヒラッと舞いて去る小野ぼけろうじん

  • 夕焼けに赤味つよめて蜻蛉とぶtabei白芙蓉

  • 赤蜻蛉私の気持ちは長き夏明日翔

  • 野空飛ぶあれは蜻蛉か蜉蝣か木公山鳥言周

  • 蜻蛉の群れに迎えられたる墓参り遠藤千草

 一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「蜻蛉」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。


●季語として微妙?

  • 展翅され羽根ひと欠けの蜻蛉かな栗田芳文

 確かに、蜻蛉の句ではありますが、展翅されている状態で、どこまで季節感を受けとめてもらえるのか。微妙です。例えば、剥製の鷹とか鹿とかに、季節感を抱けるのか、という疑問と同じです。


●「赤蜻蛉」「秋茜」について

 本来は、独立した季語と考えてよいかと思いますが、歳時記によっては、「蜻蛉」の傍題として「赤蜻蛉」「秋茜」を載せているものもありますので、秀作・佳作の最後にまとめて載せました。


●季語の片仮名表記

「蜻蛉」の場合もそうですが、動物・植物の季語は、特別な意図がない限り片仮名書きを避けるのが定石です。(勿論、「チューリップ」などのような季語は、片仮名書きにしますが。)以下の句は、特別な意図は読み取れません。

  • オニヤンマ律儀に守る折返し菊池克己

  • トンボ皆同じ顔して浮かびおりきべし

  • トンボの目地球はいくつあるだろう小山秀行

  • 羽化したるギンヤンマ剥き豆の艶捷雅

  • 蒼天の時を止めるや鬼ヤンマ

  • 整形外科の外にますぐトンボ行く目黒青邑

  • 発掘中伸びをすればトンボ群れ相沢薫

  • 煙突の空一文字鬼ヤンマ粋庵仁空

  • 日だまりのトンボ朝の布団のボク一久恵

  • 川面の虫よオニヤンマ来るぞ岩田秋雀

  • オニヤンマひと休みかな己に止まるえのき絵巻

  • オニヤンマ威厳を示す飛行かな大阪駿馬

  • 孫の肩にトンボ止まって何の話樺久美

  • その昔トンボ追いかけ今眼で追いかける京極江月

  • 万華鏡の如みつるやトンボの眼桜月夜

  • トンボ羽の薄きに似合わぬ眼ぢからそしじみえこ

  • 繋がって塩辛トンボ宙返り高橋基人

  • 風に乗り威風堂堂オニヤンマ田畑せーたん

  • 病に臥す窓の外には群れトンボ月光一乙

  • 銀ヤンマ父は施設に足重く月見人

  • 連れし吾子トンボの群れにごあいさつつついぐれちゃん

  • トンボ行く鉄塔の先縹ブルー野三弓

  • トンボ舞う光るパネルの海原を花笠きく

  • トンボ先導す万博の人波を廣重

  • 田に追いしトンボのめがね黄金色まりおR

  • ギンヤンマ尾落とす流れ水の綾美月舞桜

  • 大空にトンボ描きし線画追う村上の百合女

  • 思い出はこの指止まれ赤トンボ松井英雄


●切字の併用

  • 複眼に世の裏表や蜻蛉かなアツシ

 一句に「や」「かな」のような切字が重なるのは、感動の焦点がブレるとして、嫌われます。どちらかを取れば、問題は一つ解消されます。


●今月の選外

 兼題が入っていない人、別の投句欄の兼題と勘違いしていた人、前回の兼題の人などが、今月もいらっしゃいました。
 更に、何か表現しようと格闘しているのは分かるけれど、句意が読み切れないものもありました。早めに作って、しばし時間をおいて読み返すことを推奨いたします。少し時間を置くだけで、客観的な目を持てることもあります。是非、試してみて下さい。

ご応募はこちら

11月の兼題

「冬晴」

過去の審査結果

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