夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
9月の審査結果発表
兼題「蜻蛉」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
蜻蛉で蓋されたみたいな空だな
菱田芋天
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夏井いつき先生より
こんな視点で「蜻蛉」という生き物を見たことがなかったので、一読ハッとしました。飛ぶ生き物は多いですが、「蓋されたみたい」と感じるような群れで飛ぶものは、そんなに多くありません。例えば、夕暮れに集まってくる椋鳥の群れは、蓋ができるほどの数ではありますが、あの忙しない動きは「蓋」の感じではありません。また、農作物に被害を及ぼしたりもする蝗の群れは、「蓋」というよりはもっと禍々しいイメージ。掲出句から感じ取れる静けさのようなもの、それはまさに「蜻蛉」ならではのものです。音もなく群れ飛ぶ「蜻蛉」から、ゆっくりと背後の秋の「空」へ、作者の思いは移っていきます。口語の静かな呟きが、読者の心に染みとおっていきます。
家だつた木と土と紙とんぼ来る
綾竹あんどれ
木と土と紙で出来ている日本の家屋。老朽化して取り壊したのでしょうか、被災した残骸でしょうか。「家だつた」という事実のみを語り、「とんぼ」という季語にその思いを託すのが、まさに俳句という文芸のありようです。
海抜はさびしき目盛とんぼとぶ
伊藤映雪
「海抜」という単語から反射的に津波のことを思ってしまうのは、十四年前のあの地震の記憶ゆえでしょう。「さびしき目盛り」という詩語が楔のように刺さります。「とんぼ」は亡くなった方々の魂のように空を埋め尽くしています。
部品みな外れさうなる蜻蛉かな
大岩摩利
「蜻蛉」の大きな目を眺めていると、ポロリと取れてしまうのではないかと思うことがあります。言われてみると、目だけでなく、頭のくびれも体の縞々も「部品」が全部外れそうにも見えてくる。「蜻蛉」のリアルな一物仕立てです。
付き合ふと決めろ色めき飛ぶ秋津
坂島魁文
回文で俳句を作り続けている作者。無理矢理感が残るものが多い中で、これは作品としても成立しました。「決めろ」という命令形に友情があり、「色めき」の一語が前半と後半を繋ぐ、佳き効果を発揮しています。
三叉路に献花の絶えぬ蜻蛉かな
巴里乃嬬
その三叉路は痛ましい交通事故現場なのでしょう。「献花の絶えぬ」という事実を書くだけで、花を抱いてそこを訪れる人たちの情景や心情がありありと伝わります。蜻蛉は魂を呼ぶともいわれる生き物。「かな」の詠嘆がしみじみと伝わります。
飛び交ひて蜻蛉百匹ふれ合はず樫の木
飛び交つてゐて蜻蛉のふれあはず眩む凡
とんぼとんぼ暗渠の終はるところより田邊辺
午後休を四十九日の蜻蛉かな阿部八富利
とんぼうや母校の門の低かりし井納蒼求
水に潤む石蜻蛉に乾く空妹のりこ
その杭に戻るほかなき蜻蛉かな岡一夏
せせらぎのひかり小石へ蜻蛉へと岡田瑛琳
とんぼうの真っ直ぐ飛んで怖い貌亀山酔田
爆音の重機噴火めく蜻蛉きざお
とんぼうは記憶の結節点を飛ぶギル
もつれ合ふ蜻蛉汀に折れし櫂白猫のあくび
とんぼうの翅や夕陽の微電流拙珂
蜻蛉飛ぶ知らぬ会社の求人票鳥田政宗
とんぼうの貌ぎらつかせ噛むわ噛むわ長谷川水素
捕われて蜻蛉の翅の漏電すふるてい
海に出て海の蜻蛉の小さしよまるごとハテナ
隕石にみづの種あり銀やんま三浦海栗
暇さうな洗濯ばさみ塩蜻蛉やまもと葉美
とんぼうや廊下の沈むこことそこゆすらご
軍人のとがつた墓石鬼やんま横山雑煮
とんぼうに大手門ひらかれてをり天風月日
吹抜けの窓へ蜻蛉が痛そうにいたまき芯
鬼やんま馬のたてがみかすめけりあ。うん
皇居より広き大屋根夕とんぼ青居舞
宙を彫(え)る蜻蛉気ままなはやさかな青田奈央
とんぼとぶ黄泉比良坂ひょいと越えあおのめ
鬼のゐる寺へ集ひし蜻蛉かな青星ふみる
従兄弟七人鬼やんまの通り過ぐ赤尾てるぐ
とんぼうがウザいアノ子もアノ人も赤尾双葉
群れなして古墳に停まる蜻蛉かな赤富士マニア
蜻蛉や空の重さを計りをり赤目作
畝傍山よりとんぼうの来て帰る愛柑いつき組note俳句部
とんぼ追ふとんぼを追つて天主堂空地ヶ有
スーパーに大きな蜻蛉迷い込む芥茶古美
茜さす旅の鞄の蜻蛉かな明智明秀
蜻蛉よ煽るでないぞこの恋を浅井翠
水鏡の己突きたる蜻蛉かな朝雲列
五時の鐘蜻蛉の帰る場所いづこ淺野紫桜
法要の窓から出でぬ蜻蛉かな青野みやび
鬼やんま我も車庫入れ苦手なりあさのとびら
暮れ残る蜻蛉や翅の欠けしまま浅乃み雪
蜻蛉が重機にとまる昼休み麻場育子
蜻蛉や飛翔捕食の咀嚼音朝日雫
とんぼうや姉やも嫁ぎ子三人あじさい卓
とんばうやまがつたことはだいきらひ葦屋蛙城
注連張れる黄泉平坂ぎんやんま阿修羅
風も良し蜻蛉の野にて天指しぬ飛鳥井薫
とんぼうは単純なわたしをとおる明日ぱらこ
非常な日常蜻蛉の目に無常麻生恵澄
パトカーのサイドミラーの蜻蛉かな藍創千悠子
誰が転生指に蜻蛉の来て止まるあたしは斜楽
つながつたままのとんぼのゆくゆふべ足立智美
倒立のとんぼ尾端は陽を指してあたなごっち
リハ室のトッカータ窓辺の蜻蛉at花結い
とんぼうや膝つ小僧の血の滲む渥美こぶこ
とんぼうの翅のモザイクあみだくじ我孫子もふもふ
当て逃げの蜻蛉一閃見せにけり阿部斑猫
あの田だけ蜻蛉百匹風止みぬあまぐり
応援の飛び交うなかの蜻蛉かな天鳥そら
遮断機をするり蜻蛉のすり抜けて雨霧彦(木ノ芽)
カシカシと猫に食まれる蜻蛉かな雨降りお月さん
雨上がり蜻蛉の空となる薄暮雨李
とんぼうの群れやPK失敗す綾竹ろびん
蜻蛉や君の街へと続く空綾小路へこ
謹慎の俺を笑ってくれ蜻蛉あらい
スマホ閉ぢとんばうに囲まれてゐる有村自懐
とんばうや恋しゆうてみづ泳ぐごと在在空空
とんばうのひよんひよん風を弄ぶアンサトウ
納骨や蜻蛉の群れに頭垂れ杏っ子
鬱々や蜻蛉の国に迷い込み井若宙
つくよみの宿るひかりや蝶蜻蛉飯村祐知子
池は凪蜻蛉の波紋を除けば家守らびすけ
鬼やんま単線鉄路のすれ違ひ猪狩鳳保
ヤンキーのしゃがむ空き地や鬼やんま郁松松ちゃん
蜻蛉が影に追ひつく杭の先池田桐人
蜻蛉が見てゐるスパイかもしれぬ池之端モルト
鬼やんま子にたくましき示指と母指イサク
蜻蛉の震へ第二次性徴期石井一草
蜻蛉や籠に光を探しをり石井久次
蜻蛉や子を抱きあやす地鎮祭石塚彩楓
輝いた銀翅重し蜻蛉落つ石原しょう
とんぼうも善人もいて伽藍かな石原花野
蜻蛉やサーモカメラの枠に影石原由女
蜻蛉つり絵手紙くれる友も爺石本美津
野に歌う民謡蜻蛉群れにけり泉晶子
ひとしきり暴れしあとの蜻蛉かな和泉攷
蜻蛉や風をつかんでまだ迷う泉諒
兄弟子の私小説閉ず墨とんぼいずみ令香
とんぼうや子守唄めく萩ことば石上あまね
横糸を滑らせ蜻蛉空を染め市川りす
御嶽より風とんぼうを吹き払う伊藤亜美子
蜻蛉や町の小さな船溜り伊藤順女
本物かい君の帽子のとんぼうは伊藤なお
兵器ではなくて蜻蛉ですこれは糸川ラッコ
豆本のやうに蜻蛉をつまみをり井中ひよこ号
目の際を一直線に裂く蜻蛉井上鈴野
とんぼうや人の背中の遠ざかる井上れんげ・いつき組広ブロ俳句部
田舎道背中の風は銀やんま井口良範
とんぼうやデモ行進は銀座へと猪子石ニンニン
とんぼあつまるひるさがりの小児科井原昇
冷たきは蜻蛉の足のとまる指いまい沙緻子
蜻蛉よ水に生まれて空に生きる伊代ちゃんの娘2
そっと寄るそっと退くとんぼかないわさちかこ
夕暮の風の節目を翔ぶ蜻蛉岩清水彩香
鬼やんま気づけばここで二十年上野眞理
古井戸の水は豊かに蜻蛉来る上原淳子
蜻蛉取りやんまは高く日に交じり上原まり
蜻蛉消ゆ誰か出口を教えてくださいうからうから
とんぼうや寝るまえいつも少しこわいうすい木蓮
ひん曲げて結ぶ蜻蛉のやはらかさうた歌妙
蜻蛉や幼虫だった頃の僕空木眠兎
原色の日々過去となる蜻蛉かなうつぎゆこ
蜻蛉らの尻を下げたる翳りかな靫草子
道草に家風送る蜻蛉かな卯の花京
とんぼうや缶蹴り鬼は坊主の子卯之町空
蜻蛉や死すまで羽を開きをり海沢ひかり
蜻蛉翔ぶ影絵の街は茜色梅朶こいぬ
子らの指す蜻蛉のほうを見ておりぬ詠頃
蜻蛉蹴散らして東京ど真ん中江口朔太郎
磔刑(たっけい)の蜻蛉聖業たる介護蝦夷野ごうがしゃ
蜻蛉のみな鋭角にすれ違ひ蝦夷やなぎ
蜻蛉かな思考のかたち手の平に越冬こあら@QLD句会
蜻蛉や感傷的なタクト振る絵十
みどりごととんぼをのせて乳母車えりべり
蜻蛉飛ぶ夕暮れ早くなりにけりANGEL
青空を翅越しに見る蜻蛉かな円美々
とんぼうと国立天文台野辺山延命寺
お披露目の仔象のまつげ初蜻蛉おおい芙南
三度目の防災無線あきつ飛ぶ大江きみ
ホームにて蜻蛉と我れ風を見る大越総
お迎えの自転車停めて蜻蛉見る大嶋宏治
右肩を追い越し蜻蛉の高度増し太田けいこ
蜻蛉や雲の形の散り散りに大塚恵美子
蜻蛉とぶ日暮れへ向かう風を抜き大津美
蜻蛉舞う精霊棚に備蓄米大谷維鶴
翅持たば抗ふ蜻蛉の猛きかな大矢香津
百年の終りに蜻蛉ぶらさがる大和田美信
鬼やんま夫を童へかえしけり岡井稀音
空兵の竝べて蜻蛉に代わるらし岡崎佐紅
夕とんぼ過去から飛んで来たやうな可笑式
塩むすびほおばる空に蜻蛉群れ岡田いっかん
遥かなる水の匂ひの蜻蛉かな岡田雅喜
風に病む蜻蛉の風に逆らへど岡根今日HEY
青空に蜻蛉も止まる交差点岡眞弓
雲水の衣を過る蜻蛉かな岡山小鞠
有松の風に蜻蛉染まりけり小川野雪兎
残照の食餌無心の蜻蛉かな沖乃しろくも
風と樹の吐息に蜻蛉の翅震え奥寺窈子
蜻蛉取る説法印の指をして小倉あんこ
修験者の法螺貝遠し鬼やんまおこそとの
水切りの石の後追ふ蜻蛉かな小田毬藻
とんぼうや子は雲梯に逆しまにおだむべ
手の中に蜻蛉の生のじんじんと越智空子
蜻蛉や召し集ひたる地鎮祭おつき澳吉
子らが追う戦後の空のぎんやんまおにやんましゅう
風かるく前へ前へと鬼やんまおひい
銀やんま2ヘクタールの休耕田海音寺ジョー
哲学の道とんぼうの止まる石海峯企鵝
鉛筆で救出空へ放つ蜻蛉甲斐ももみ
関東平野とんぼの数の広さかな香依蒼
恵林寺の遺偈をよぎる鬼やんま火炎幸彦
とんぼうや立ちこぎの子は雲蹴って風早杏
花嫁は気高し蜻蛉の透くる翅梶原菫
また一人とんぼ目で追う通夜知らせ風かおる
今日も戦死者千人蜻蛉よ飛べ帷子砂舟
戦なき国を貫く蜻蛉かな加塚東隆
自由なる蜻蛉に戻る五時の鐘かつたろー。
影絵なる蜻蛉の翅のやわらかさひだまりえりか
見えぬ物避けて蜻蛉戻り来る桂佐ん吉
追いかけた蜻蛉が噛んだくすりゆび桂葉子
蜻蛉や墨くろぐろと忌中札加藤栗庵
沈下橋浅く沈みてあきつ来るかときち
追い抜いたとんぼうにまた追い抜かれかねつき走流
天空の丘を秋津や國となす釜眞手打ち蕎麦
蜻蛉消え蜻蛉現れ蜻蛉消ゆ神谷たくみ
我をみな追い越してゆく蜻蛉かな紙谷杳子
蜻蛉や今日の空気は重そうだ亀子てん
忍び足とんぼの死角は右後ろかもね
一葉を揺らす蜻蛉の重さかな鴨の里
屋外の舞台マイクに蜻蛉かなかもめ
きらきらと蜻蛉交差す夕野原加裕子
ビル風を知つたばかりの蜻蛉かな絡丸いと
酒と酢の運河の風や銀やんま刈屋まさを
蜻蛉ゆく再開発の基準線川内佳代
蜻蛉や墓地の造花の色褪せて河上摩子
指先にぱりりととんばうの翅は川越羽流
古世代の海色残し青蜻蛉川崎ルル
蜻蛉や鉱石ラジオよりノイズ翡翠工房
蜻蛉やあの秀才の顔に似て河孝
蜻蛉や窓の余白に影ひとつ川端妙松
葬列の旗蜻蛉の群れ分けて河村静葩
蜻蛉捕る指に命のくねる腹カワムラ一重
蜻蛉の目時空のゆがみ映しをり川村昌子
とんぼうや詩集にめくるめく無音喜祝音
とんぼうや小五の姉は不登校季川詩音
指先に蜻蛉のたましひの重さ岸来夢
駅からは蜻蛉三匹徒歩五分季切少楽・広ブロ俳句部
蜻蛉や少年の手に空の青北大路京介
蜻蛉の出入自在に秘密基地喜多丘一路
てっぺんの蜻蛉飛び立つ気配なく北川茜月
石段の長く蜻蛉に追ひ越され木谷智子
とんぼうのへの字しづかに草の端北村環
猿沢の池に蜻蛉の噂する貴田雄介
一斉に蜻蛉の町となりにけり城内幸江
軽すぎた蜻蛉の羽よげんまんよ木下桃白
窓を蜻蛉大部屋にストレッチャー木ぼこやしき
蜻蛉や風を掴みてとどまれり木村カズ
神殿の奥に消えゆく蜻蛉かな木村かわせみ
とんぼ飛ぶ知覧の空は静かなり木村修芳
暮方の蜻蛉を追って黄泉の国木村信哉
水平の正解もとめゆく蜻蛉木村となえーる
父と似し蜻蛉居たり空閑地木元紫瑛
とんぼうやソールの擦れた安全靴Q&A
生き生きと自転車よけて蜻蛉過ぐQちゃん・広ブロ俳句部神奈川支部
蜻蛉翔ぶ跪座となりたる法話かな京野秋水
とんぼうに風の耳ある秋津島杏乃みずな
満塁や蜻蛉の中をボール追ふ煌星アニカ@TFP句会
塹壕の上を休戦日の蜻蛉霧賀内蔵
パドックの馬上に蜻蛉止まりたる霧澄渡
頂は一坪ほどやあきつ舞ふ菫久
履歴書を買ひて蜻蛉を数へをりくぅ
鬼やんま怒りの的の定らず句々奈
風ごとに擬宝珠の蜻蛉いれ替はるくさ
アルプス席団旗に止まる鬼やんま鯨之
留まらぬ蜻蛉の多き高架下くすみ輝く
鬼やんまレクサスぬいてとんでったくちなしの香
関東を対角線に鬼やんま熊谷温古
とんぼうの群れてここより神の山クラウド坂の上
とんばうが明るい人が好きと言ふ倉岡富士子
テストうらがへしとんばうのふうらり栗田すずさん
繋ぎとんぼの波紋ちょんちょんちょーん空流峰山
日へ真すぐ尻を差したる蜻蛉かな久留里61
乾麺の帯はそらいろ蜻蛉澄むげばげば
沼尻の姿ただしき蜻蛉の死謙久
すべからく語らぬ父よ鬼やんまケンG
とんぼうや旅のかばんの傷の痕ケント
蜻蛉や北条五代の海凪げる剣橋こじ
地下街は水の匂ひや蜻蛉とぶ小泉久美子
蜻蛉放す下りケーブル乗車口恋瀬川三緒
蜻蛉や良い川ってすこし臭い公木正
蜻蛉の四匹ゆびに挟み来る幸田梓弓
蜻蛉飛ぶ好きな高さを探しつつこうだ知沙
とんぼ飛ぶ西廻廊は四十間宏楽
堤の静寂蜻蛉の腹映す郷りん
鬼やんま飛んで昭和の遠くありごーくん
とんぼうや鉄条網の内と外郡山の白圭
蜻蛉のみづと交めるやうに産む古賀
蜻蛉よおまえのためじゃない支柱古烏さや
伐採の林を抜ける蜻蛉かな小園夢子
蜻蛉や百円で見る望遠鏡木染湧水
末筈に止まる蜻蛉や的中す小龍
分かれ路蜻蛉の翔んでゆく方へ虎堂吟雅
とんぼうの群れより高き天守かな後藤周平
蜻蛉つぃーっとライブ当たるかな古都鈴
とんぼうの片道きっぷ買いました子猫のミル
群とんぼ空のほつれに消えにけりこのみ杏仁
蜻蛉や障子戸匂ふ番所跡小林昇
シャツを干す視野をかすめる蜻蛉かな小林のりこ
十和田湖の蜻蛉にまみれ子は無言小林風翠
多摩川の蜻蛉素振りの奥の富士駒茄子
蜻蛉捕る直前音の無い世界GONZA
群れとんぼパレットに足す茜色さいたま水夢
滑り込む電車を躱す蜻蛉かな齋藤桃杏
レンズ向けぎうと蜻蛉に睨まるるさおきち
蜻蛉や引く自転車になきサドルさ乙女龍チヨ
蜻蛉の止まり木となる止まれかな酒井春棋
蜻蛉飛ばない赫い夕暮れが来る榊昭広
蜻蛉と吾子の眼待ち伏せの水路肴枝豆
夕蜻蛉ギプスの中を匙で掻く坂野ひでこ
蜻蛉や受けると決めたTOEIC坂まきか
蜻蛉ゆく母のお焦げの握り飯櫻井こむぎ
群蜻蛉新居引き渡し日の空櫻井弘子
とんぼうと恩師の墓を囲み合ふ桜鯛みわ
デイサービス蜻蛉の飛んで来ない朝さくら悠日
青とんぼ海から拒絶されて湖迫久鯨
蜻蛉らの統ぶる古墳の型崩れ雑魚寝
嘴に躰捻じ曲げる大蜻蛉笹桐陽介
蜻蛉を追へぬ母なり声遠し佐藤恒治
さみしい病癒えり蜻蛉に包まるるさち今宵
蜻蛉の空へ空き缶蹴り上げて佐藤志祐
譲り合ふやんまと電動車いすさとう昌石
尾を森へ垂れて祈りの鬼やんま佐藤ゆま
祖母逝きぬ蜻蛉の聲を集め終へ佐藤レアレア
大空に蜻蛉の自由吾の自由里こごみ
次々ととんぼ遊具のさらす骨錆田水遊
とんぼうの機嫌良きかな首傾ぐさぶり
また無職とんぼはすぐに向きを変へ彷徨ういろは
輪郭を太く震はせ鬼やんま沢拓庵◎いつき組カーリング部
翔べぬ吾の前へ後ろへ蜻蛉かな沢山葵
蜻蛉や坂のパン屋は休業中三角山子
機械科の試作混じつてそな蜻蛉三月兎
鬼ごっこ蜻蛉を追って神隠し珊瑚霧
逆立ちの蜻蛉抗う日の光塩風しーたん
東大に並木蜻蛉に十の節柿司十六
矢のごとく三遊間を鬼やんまじつみのかた
蜻蛉や外野のゐない草野球信濃のあっくん
十年経ち父似の蜻蛉来る現場篠雪
蜻蛉ほら闇をかくした空がきれい渋谷晶
とんぼうは我をどんどん巻き戻すしぼりはf22
それぞれがそれぞれ孤独とんぼ飛ぶ島掛きりの
はればれと蜻蛉ゆきかう川ゆたか島田あんず
蜻蛉のしつぽは空でありさうな清水縞午
雨上がりあきつの翅に玻璃の糸清水ぽっぽあっと木の芽
とんぼうやきのふの空を離れざる下村修
十センチ蜻蛉に譲る物干し場秋芳
蜻蛉群る奇才の思考回路かなシュリ
湿原の軋む木道群とんぼじゅんこ
人魂は透き通るらし鬼やんま順之介@QLD句会
蜻蛉来るくんと青空捨てて来る常幸龍BCAD
夕とんぼ明日からとても逃げきれぬ正念亭若知古
少年の翳り宿して蜻蛉の翅白井佐登志
車椅子蜻蛉の中に置いてきた白石美月
縦列駐車ビシッと決まり銀やんま白沢ポピー
蜻蛉や五尾留まりたる施無畏印不知飛鳥
上段の切っ先に蜻蛉しずかなり四郎高綱
蜻蛉交む列島またぐ雲の端ジン・ケンジ
バトンに蜻蛉分校の四時間目新濃健
薄紙に果てたる蜻蛉包みをり新森大大
息止めてそばだてて鬼やんま来たすがのあき
旅半ば蜻蛉は低く山高く杉岡ライカ
目の上の世界に蜻蛉有り余る杉尾芭蕉
徹夜明け窓に蜻蛉や校了す涼希美月
夕さればとんぼのはねの瞬けり鈴木由紀子
まぐはひの長き蜻蛉や池濁る鈴白菜実
とんぼうの飛ぶと青空広がりて砂山恵子
鬼蜻蜒校舎の裏は古墳塚須磨ひろみ
蜻蛉のすべてつがひの草野かな世子
矢道の草引き吾と蜻蛉の孤独青峰桔梗丘
掛け持ちの制服干せり初蜻蛉瀬央ありさ
あの頃の恋のスピードおにやんま瀬紀
蜻蛉やたった二便の時刻表sekiいつき組広ブロ俳句部
秋津美しパノラマの眼は真赭色摂田屋酵道
調布飛行場の進路クリア蜻蛉とぶせり坊
とんぼうや喧嘩相手と平行線千・いつき組広ブロ俳句部
蜻蛉や消失点で消失す走人
少年の昭和百年とんぼ追ふそうま純香
とんぼうの目に一閃や山の蒼そまり
簪の赫や蜻蛉は夜を刮ぐそよかぜシュレディンガー
とんぼうは探す大人のなくしもの空豆魚
蜻蛉飛ぶ株価チャートのやうに飛ぶぞんぬ
蜻蛉来た自由になった父の空駄詩
塩辛蜻蛉ブルーカラーで何が悪いたーとるQ
蜻蛉起つしなる躰の縞模様大ちはる
とんぼうのみづのしづかを確かむる大地緑
告ぐる事あるかに蜻蛉まつはりぬたいらんど風人
橋渡る一家族につき一蜻蛉高瀬小唄
おほぞらに蜻蛉つけゆく細き創鷹取碧村
ICU蜻蛉と目が合う小窓は晴れ高辺知子
棟上げを終へて蜻蛉の登り飛ぶ高橋手元
とんぼうや軌道修正してばかり高橋寅次
蜻蛉乗る夫の指先夫の息高橋マママリン
甲州に入りて蜻蛉の微炭酸高原としなり
とんばうや漫画のやうに会ひに来て鷹見沢幸
天を指し吾子は蜻蛉の中にありたかみたかみ・いつき組広ブロ俳句部
とんばうや戻つてこない観覧車高山佳風
つけつ放しの野球中継鬼やんま滝川橋
蜻蛉飛ぶ洗いたてなる空の下滝澤和恵
港区のとんぼ港区の子が追って多喰身・デラックス
とんぼうや藍染晒す山の水武井保一
とんぼうや尻打つ水の浅きこと竹内不撚
とんぼうの無限の空でありにけりタケザワサトシ
はないちもんめひとりあまつた子にとんぼ竹田むべ
とんばうの飛び交ふ競馬場久したけろー
蒼と青青と碧とを蜻蛉かな多事
水たたき羽色抜けゆく蜻蛉かなたすく
蜻蛉の空に子午線なかりけり多数野麻仁男
とんばうや泥のにほひと足袋の型ただ地蔵
蜻蛉の行くてはつひに大海原糺ノ森柊
もの思ひて傾ぐや蒼き蜻蛉の目多田知代子
蜻蛉舞う漱石を手に縁側へただの山登家
四万十の蜻蛉の国のあかね空立田渓
有給消化蜻蛉の群の中に居て立田鯊夢
鬼やんま竜の赤子の重さかな立石神流
着水の蜻蛉の尾より波紋かな伊達紫檀
道化師の戯ける鼻へ蜻蛉かな田中みどり
実直に頭胸腹蜻蛉かな谷相
そと叩く紙のピアノや夕蜻蛉谷斜六
蜻蛉の退きしかたちへ風の入る谷しゅんのすけ
湖色と空色ちがうとんぼかな谷町百合乃
行き違う風の狭間の蜻蛉かな田上南郷
蜻蛉やロードバイクを組み立てて田畑整
神籠もる田の黄を蜻蛉ほしきまま玉家屋
何物も映さぬごとき蜻蛉の眼玉響雷子
蜻蛉きて平八郎の墓を避く田村利平
干し蛸の風止む夕や蜻蛉湧く丹波らる
蜻蛉の橋を渡れば会えるのに千夏乃ありあり
三条の擬宝珠の傷や夕蜻蛉竹庵
寝くじの子抱きゆらゆら蜻蛉飛ぶ智幸子
水の味空の匂いのとんぼかな千歳みち乃
川縁を低く蜻蛉のしなる翅千鳥城、広ブロ俳句部カナダ支部
田を駆ける清めのごとき蜻蛉影千葉右白
蜻蛉翔ぶ旗日の旗を躱しつつ彫刻刀
添ふほどに寂しき暮れの蜻蛉かなちろりちろりみゆき
オスプレイときどき蜻蛉オスプレイつえりん
とんぼうや浮いては沈む帰り道ツキミサキ
とんばうや厩舎を洗ふ水しぶきつくばよはく
たましひをかぜにあづけてとんぼかなつくも果音
旅先の道案内の蜻蛉かな辻瑛炎
蜻蛉追ふ忘れし物を追ひかけて辻本四季鳥
己より細きにとまる蜻蛉かなつちや郷里
とんばうの乱れて村八分の家津々うらら
その枝は神様の指鬼やんま綱川羽音
とんぼうやスマホ画面の罅いくつツナ好
焼け跡に並ぶ闇市蜻蛉飛ぶ椿泰文
茜とはふりかへる色あきつ舞ふ坪田恭壱
吹かれ来し蜻蛉眼鏡の内に狂ふ爪太郎
恋人は金曜日に来鬼やんま鶴富士
新レギュラーとんぼの空へ打球音輝由里
鬼やんま空に穢れはありません天雅
勝ち投手帽子に蜻蛉とまりけりてん子
蜻蛉や帰阪を拒むメランコリー電柱
蜻蛉浮く風のうはずみは金色天陽ゆう
糸つける手にとんぼうの尾のふるえ苳
「あ、とんぼ」少年の見る吾の帽子トウ甘藻
恋のやうに鬼やんまに咬まれてゐる冬野志奈
蜻蛉飛ぶ夕日の螺子を巻くやうにとかき星
風を斬る一本槍や鬼やんまときめき人
甲板に増ゆる蜻蛉や陸近し常磐はぜ
明日しか見えぬとんぼうの目の清しどくだみ茶
とんぼうや硝子のやうな航空機戸口のふっこ
鬼やんま土間の白熱灯過るどこにでもいる田中
ノーサイドの笛は高らか、蜻蛉発つどすこい早川
辞めるって聞かされとんぼまみれの道となりの天然水
見送りは要らぬ陸橋よりとんぼ戸部紅屑
表札に加わる名前銀やんま苫野とまや
蜻蛉飛び交うや六時の祖母の訃報冨川ニコ
蜻蛉らの飛び去るを待ちて日は暮れぬ富永武司
とんぼうの余熱の中を疾走す富野香衣
鬼やんま臆病風が身にしみる登盛満
蜻蛉ついてくる読点打つように富山の露玉
とんぼうの父の郷なる水明り富山裕子
地に落ちし蜻蛉の首の細さかなとよ
石工なる熊本城の鬼蜻蜒内藤清瑤
暁の蜻蛉釣りから妻帰る内藤羊皐
蜻蛉つて寂しがりやか群れゆきて内藤由子
蜻蛉とぶ脚は捕獲をするかたち中岡秀次
蜻蛉や影が濃くなる薄くなるなかかよ
あきつとぶ振りかへるなと言ふがごと中島紺
水面をけんけんぽんの蜻蛉かな長嶋無有子
結願の杖を納めり蜻蛉とぶ中藤雅子
蜻蛉の眼現在過去未来と空中十七波
蜻蛉追ふ子を追ふならひ影法師中原柊ニ
妃殿下の御髪にあきつつと止まり仲間英与
独り居の始まる朝や蜻蛉くる中村あつこ
葬列を囃し立てをる蜻蛉かな中村想吉
とんぼうの寂し寂しと白い雲なかむら凧人
別便の荷残す2K夕蜻蛉凪ゆみこ
蜻蛉飛ぶ愚かな物の鼻先に梨山碧
蜻蛉や無職と戯れてくれるか夏風かをる
ヒトケモノ蜻蛉の国に間借りして夏草はむ
蜻蛉の空を溢れて吾の指へ夏椿咲く
五回裏外野の子みな蜻蛉追ふ夏野夏湖
蜻蛉やアンモナイトは石の中夏雨ちや
蜻蛉まだ羽の役目を決めてゐない七瀬ゆきこ
鬼やんま同じ小川をたもとほる7パパ・広ブロ俳句部
とんばうを追ふとんばうも追はれけるなびい
蜻蛉来る背中に赤子を寝かしをり生天目テツ子
改葬の墓碑の我が名や蜻蛉来る奈良素数
寂しがり屋ばかり蜻蛉の二匹ずつ西尾至雲
渓谷の底を空をと蜻蛉かな西川由野
とんぼうは矢風となりて七回忌西田月旦
蜻蛉の入日差す野の乱舞かな西野和香
神橋の擬宝珠へ戻りたる蜻蛉二城ひかる
とんばうに預けしづかな肩となるにゃん
蜻蛉や陽炎よりも薄き翅仁和田永
無言館に絶筆幾つ蜻蛉とぶ沼野大統領
とんぼうや空はやっぱり東京で猫ふぐ
時間軸引いて蜻蛉や群れ飛びぬ猫またぎ早弓
蜻蛉や琵琶湖を渡る風の帯根々雅水
とんばうのめつたにいそぐことの無さ野口雅也
アスファルト蜻蛉の影の沈み入る野の小花
ごみ埋めて人工島や蜻蛉来る野ばら
低空の蜻蛉跨いでコンビニへのりこうし
水輪なすや蜻蛉二匹は恋の刻則本久江
連結の蜻蛉ルンバのリズミカル白山一花
鬼やんま飛べば木立の静かなり白山おこ女
時速40キロの軽トラかすめて蜻蛉橋爪利志美
たてよこに蜻蛉の躱し行く未来蓮井理久
美濃と飛騨行ったり来たり鬼やんま羽住博之
待ち人は来たらず儘の夕蜻蛉畑中幸利
とんぼうや心の荷物降ろす場所葉月庵郁斗
さみしいとさびしいのあわいで蜻蛉八田昌代
胸奥に残る蜻蛉の羽音かな花岡淑子
野つ原を渋滞中の蜻蛉かな花南天あん
とんぼうの飛び立つ翅の影無色花はな
指に羽のふるえ今蜻蛉放つ花豆
防大の制服眩しあきつ飛ぶ花見鳥
オーボエの稽古割り入る蜻蛉かな花和音
忽然と塩辛蜻蛉川を飛ぶ羽馬愚朗
蜻蛉集う迎うる人の無き駅にはむこ
鬼やんま眠れり四方に翅を張り葉村直
何色の明日を映すや蜻蛉の目葉山れい
風を利く塩辛蜻蛉の眼ざし原水仙
その人の小指に蜻蛉来て二秒原田くろなつ
群れ蜻蛉主峰は雲の湧くあたり春海のたり
蜻蛉高し私は力付きている原善枝
シーソーに鍵つ子と塩辛蜻蛉晴田そわか
朝の黙しづかに破る蜻蛉かな春菜理央
蜻蛉や空の高さをためらはず春野ぷりん
重力を自在とんぼの三億年はれまふよう
蜻蛉の空に昭和の色ありぬピアニシモ
一対の蜻蛉螺旋の風として東沖和季
とんぼうよ無言で座る母の墓東田一鮎
前屈の苦手は遺伝鬼やんま匹田小春花
丁丁と蜻蛉はみづを凹ませて樋口滑瓢
アルプスを借景とする蜻蛉かな樋口ひろみ
蜻蛉とは自由を語り合へる仲ひでやん
木曜の阿蘇の蜻蛉の下の吾日向こるり
とんぼうや定規のささったランドセルヒマラヤで平謝り
父母の墓前に蜻蛉吹かれ来る平井由里子
低く飛ぶ蜻蛉上司は詫びている平手打チメガネ(志村肇)
廃城を飄々と居る蜻蛉かな平野純平
爛れゆく水面とんぼう触れ離れ平本魚水
鬼やんま呼ぶ少年の指反りて比良山
蜻蛉見る蜻蛉の眼にもまた蜻蛉平山仄海
こんな日も進むしかない蜻蛉よ昼寝
留年や膝に休んでゐる蜻蛉広木登一
蜻蛉や森のピザ屋は優男浩子赤城おろし
逆風に身を切り返す蜻蛉かな広島あーやあーや
とんぼうや風の余白をめがけ飛ぶ広島じょーかーず
とんばうのこれほどゐてもぶつからぬ弘友於泥
夕空を蜻蛉の波紋風溺る広野光
蜻蛉の眼セルリアンブルーに融ける広ブロ俳句部三日余子
平日や蜻蛉ばかりの道の駅フージー
蜻蛉の鳴くが如きや無縁塚風慈音
とんぼうやまだ生きていたかったはずふくじん
みじみじみじ蜻蛉の翅脈打つ指頭福田みやき
船頭は喜寿先導は蜻蛉かな武幻琵離吾
とんぼ浮く澄んだあぶらのやうな空ふじこ
いくさとは馬鹿の遊びや墨蜻蛉藤咲大地
蜻蛉の吐息よ休符打つ風よ藤里玲咲
虫を喰う蜻蛉の顎に咀嚼音藤永桂月
もう仕事辞めてしまおう夕蜻蛉藤原涼
蜻蛉の群れ青空ひらく翼かな藤本仁士
見たくないものまで見える蜻蛉かな藤原訓子
とんぼうや清き目の子が育つ川冬島直
大仏の指にとまりし蜻蛉かな冬野捨離
蜻蛉死す地に磔刑のかたちして古織沃
子宮に筋腫とんぼうに琥珀の眼碧西里
鉄棒の順番蜻蛉が抜かしをりペトロア
神域を嚆矢に紛ふ蜻蛉かな房総とらママ
蜻蛉や上司の小言ニ短調暮戯
牧の夕蜻蛉の舞ひのト長調牧場の朝
とんばうの翅弾きたる天の色黒子
とんぼゆく風通し良く義父は逝くほしぞらアルデバラン
大昔とんぼ鳴き声捨てました星田羽沖
子を探す防災無線夕蜻蛉星月彩也華
休憩やとんぼう止まる松葉杖ほしの有紀
特大のファウルフライや鬼やんま細葉海蘭
空開く解体空地蜻蛉群れほたる純子
指をもて蜻蛉を口説く男の子堀邦翔
蜻蛉や青年のごと青天へ舞矢愛
吾が肩の蜻蛉や暫し息あはせ前田冬水
とんぼうの風にハミング待ちぼうけまこと七夕
孫連れて草木と話す蜻蛉追いまこと(羽生誠)
9レースハズレ馬券や舞う蜻蛉正男が四季
とんぼ棲む空あをあをとひろげたる町田勢
とんぼうや水飲む牛の肥ゆる乳松井くろ
病窓に見舞客あり鬼やんま松井酔呆
蜻蛉きて翻したる青き胸松浦姫りんご
蜻蛉の争いごとの無き夕べ松岡さつき
蜻蛉は光逃さず煌めきぬ松坂コウ
蜻蛉追ふ父の子育て餓鬼のごと松平武史
ヴェネツィアや蜻蛉の羽に透かし見ゆ松田寛生
とんぼうや空き瓶の底青深く松田迷泉
馬鹿にした奴を追い抜くとんぼかな松野蘭
蜻蛉や児は残酷な指を持つ松本こっこ
とんぼうや父さんとゆくラーメン屋毬雨水佳
蜻蛉の籠掲ぐ子の目の高さまるにの子
蜻蛉飛ぶ煌めく羽根を持つをとこ丸山美樹
鬼やんま我が物顔はこんな顔慢鱚
戦闘機でなく蜻蛉飛ぶ空が良い満面笑太郎
蜻蛉の翅を透かして見る谷間三日月なな子
翳したる手からこぼるる蜻蛉かな三上栞
蜻蛉や山手線は西へ反れ三河三可
もう飛べぬ蜻蛉が空を掻いている岬ぷるうと
昭和から飛んできたよな鬼やんま三崎扁舟
面会を終へて蜻蛉と帰る道水須ぽっぽ
蜻蛉横切るしょっぱっい風が二秒三隅涙
唐突な別れや蜻蛉の翅透くる三高姫
酔ひさうに荒ぶ飛行の蜻蛉かな三田忠彦
田ん中の旋盤工場夕蜻蛉美津うつわ
翅越しの白雲近し蜻蛉とぶ満生あをね
少年や蜻蛉のちから強き顎みづちみわ
白壁へ影うつすことなく蜻蛉みつれしづく
湧きいづる無双の飛力蜻蛉もつ嶺乃森夜亜舎
とんぼうは風滑るもの統べるもの宮井そら
靴先に蜻蛉リフトは山頂へ見屋桜花
落下の蜻蛉エミールガレの孤独みやかわけい子
とんばうにかこまれてゐる鬼やんま宮坂暢介
銅鐸の音色とんぼの茜色みやざき白水
蜻蛉とぶ風の痼りをかはしつつ宮下ぼしゅん
とんぼうが空の余白を描きなぐるみやま千樹
蜻蛉や勝ち気な姉の涙見てみらんだぶぅ
思ふほど自由なんかぢゃない蜻蛉麦乃小夏
蜻蛉の翅にチラシのやうな空の透け麦のパパ
浮き先を蜻蛉に貸してまた坊主椋本望生
棒先を慈しむかに蜻蛉かな無弦奏
蜻蛉や久女の句碑に赤き文字紫小寿々
蜻蛉や翅は切り絵のやうに舞ふ暝想華
とんぼうや太陽の塔は虚空を見茗乃壱
せせらぎの頂低し青とんぼ藻玖珠
一人旅とんぼに囲まるるリュック望月ゆう
蜻蛉くる雲のにほひを吐きながら本村なつみ
とんばうの声が聞きたく追ひかけるmomo
主人公の団地時代や蜻蛉来るもも
二百七十度の蜻蛉の視野の外にゐる百瀬一兎
恐るべき蜻蛉の群れをちゃりんこ来百瀬はな
とんぼうや水子地蔵のアンパンマン桃園ユキチ
片まひの一歩に蜻蛉まへしりへ森上はな
ジャグラーのボール高々鬼やんま森きやつか
牛小屋の湯気を一刀鬼やんま森佳三
生ひ出づる淵の瑠璃色やんまの眼森茂子
蜻蛉飛ぶ若き従兄弟の通夜終へて森重聲
山風の渦に木の葉もとんぼうも森田祥子
とんばうの死の朝の翅透いてゐる守田散歩
山道が大口開けて待つ蜻蛉森太郎
閉店の張り紙なびく墨とんぼ森ともよ
蜻蛉のダンスあをぞら契りつつ森葉豆
鬼やんま放ち今夜はカレーの日杜まお実
歩行器を蜻蛉ついつと付き添ひぬ森毬子
都会から逃れとんぼの眼が怖い森萌有
とんぼまで美味しい匂い南京町もりやま博士
透き通る蜻蛉の羽はざらついて山羊座の千賀子
マンモスが来てヒトが来てあきつ来て弥栄弐庫
座禅修行中よりによつて蜻蛉野州てんまり
盛り場や蜻蛉の翅が切る淀み安田伝助
右往左往する蜻蛉蜻蛉蜻蛉痩女
蜻蛉の交尾む維新の地の池に八幡風花
図鑑から出できたやうな蜻蛉かな山川腎茶
蜻蛉や八角の香の卵喰ふ山川たゆ
水と地ととんぼと我と平らかに山口愛
目の覚めて蜻蛉の我は空を切る山崎力
とんぼうや水の匂ひの町しづかやまさきゆみ
蜻蛉と頂上までは登ってみる山里うしを
庭先にどんと蜻蛉の大往生山下義人
無垢な蜻蛉あこがれの空並ぶ山田一予
ミルクやる手を止め暫し蜻蛉哉山田啓子
蜻蛉の群れは大河となり流る山田好々子
おにやんま吾に向かいくる貌をして山本栄子
蜻蛉見て前世の恋の相手かな山本さった
とんぼうの空追いぬいて入賞す山本てまり
石舞台蜻蛉に香の波の如山本八角
弾んでる子も蜻蛉も雨ですよ山本美保
ガソリンの臭いのつなぎ夕蜻蛉八幡浜うさの
蜻蛉のつと刺し留むる風の襞有野安津
蜻蛉の飛んでマティスのダンスの絵宥光
蜻蛉飛ぶ高さに空の始まりぬ柚木みゆき
指立てて一人待つ野の蜻蛉かな陽光樹
とんぼとんぼ急発進の縄電車羊似妃
銀色の水と番ひし蜻蛉かな横縞
池の水鏡とんぼとんぼとんぼ横田信一
拝謁を賜り給ふ鬼やんま横浜J子
鬼やんまドローン研修最終日横山ひろこ
群とんぼ古墳の匂い嗅ぐごとく横山道男
教科書を机上に積めば蜻蛉来る吉田春代
蜻蛉や母は八十路のヘルメット吉野川
拮抗の綱の真中に青蜻蛉余田酒梨
とんぼうや大きな指揮の交響詩よみちとせ
自転車も靴もおさがり夕蜻蛉RUSTY=HISOKA
蜻蛉飛ぶ鯨は肺を膨らまし楽花生
我先の棺舁き志願蜻蛉釣らん丸
源平の池を行き交ふあきつかな理佳おさらぎ
使徒の顔してとんぼうの動かざるりこばば
砂利トラの荷台空っぽ鬼やんま柳絮
黒鉄の蜻蛉飛び交うたたら跡料善
鬼やんま右に左に子らを撒き凛
蜻蛉の好きな石らし何度も来ルージュ
ガリゴリと仲間を食むや鬼やんま連雀
とんぼうが追ひ越してゆく川下り若林くくな
風に乗る蜻蛉の翅は空の色わたなべいびぃ
校庭を楽譜のやうに飛ぶ蜻蛉渡部克三度
振り向く人と振り向かぬ蜻蛉かな渡邉わかな
コンビニの天低く鬼やんまかな亘航希
子離れはゆふぐれの香よ蜻蛉来よ笑笑うさぎ
野を満たす蜻蛉の翅のうすき影沖庭乃剛也
ここはまた蜻蛉の多い市営墓地蒼空蒼子
とんぼとんぼ滝を見逃す高尾山津幡GEE
東京の蜻蛉とエウロパのこどもうえともこ
あきつとぶ古今伝授の櫓跡EarlyBird
とんぼうや街角ピアノ調律中きなこもち
とんぼうととんぼう重ねあふ一途さかえ八八六
群れ飛んでいくさは正義かと蜻蛉じゃすみん
本殿の千木のうえゆく鬼やんま草夕感じ
蜻蛉とぶ芭蕉献句の除幕式高尾一叶
逆光の屋島青とんぼの数多二十八
25°尻を撓はせ蜻蛉発つ藤白真語
とんぼうは水の記憶を翅にのせはるの風花
とんばうに水の記憶や雨後の庭福井桔梗
空に書く蜻蛉の文字のとめ、はらい小川しめじ
おほぞらをとめはねはらい蜻蛉とぶ斉藤立夏
マラソンのあとはラーメン赤蜻蛉秋月あさひ
友達の友達もいて赤とんぼいとへん製作所
赤蜻蛉つれて家路の猫車岡田ひろ子
風に聞く風の抜け道赤蜻蛉加田紗智
都から通信使来たり赤とんぼ加藤麗未
薬師堂のお供当番赤とんぼ川村湖雪
ささくれの舳先に暮れの赤蜻蛉木下昇吾
子の墓碑の裏に静かに赤蜻蛉古知野朝子
赤蜻蛉仁王門超えそれっきり佐々木佳芳
赤とんぼ喧嘩の理由(わけ)も忘れけりすずしろ桂
夕映えのリフト止まりし赤とんぼ数哩
マラソンののぼりパタパタ赤とんぼ鱈瑞々
石仏の鎖骨のあたり赤とんぼ中尾鎖骨
赤とんぼふるさとまでは飛べないよ蓮見玲
一輪車乗れぬ子の上赤とんぼ満月
赤とんぼ裏玄関の御用聞き和脩志
狛犬の苔むすかうべ秋茜伊藤恵美
交わりて叩く汀や秋茜小川さゆみ
秋茜捕食に群れて空昏く青児
蜻蛉見て宙に漢文浮かびけり相生三楽
出すものを出して蜻蛉と母屋入る居並小
墓囲み連れ去る何か群れ蜻蛉梅里和代
魚焼く煙過りし蜻蛉かな麗し
蜻蛉ややぶさかでなきちゃんちゃんこあが野みなも
先生は机間巡視で蜻蛉来る太田怒忘
窓は夜蜻蛉黙して蝶番加山シンゴ
とんぼ捕り瞬きとめて息とめて君塚美蕉
蜻蛉や声変はりした餓鬼大将木村弩凡
手配書を刷るや「∞」を描く蜻蛉草臥れ男
口開けて弓手で円描く蜻蛉取り黒瀬三保緑
蜻蛉や部活帰りのおにごっこ黒山万牛
ぞんざいに捕まる蜻蛉子ども部屋紅紫あやめ
森閑の蜻蛉の眼には銀河あり五島潮
じいちゃんは蜻蛉つり僕は蜻蛉とりこむぎ
蜻蛉来よ肩に止まれよ夫ならばさかたちえこ
蜻蛉過ぐ走馬灯より仄速く坂本雪桃
蜻蛉とんぼこゝろの六割はお湯か笹野夕
断捨離の着物預けて蜻蛉かな佐柳里咲
音の無い林の奥に蜻蛉浮く百日紅
蜻蛉の消えれば空の朱くなり慈雨
「作麼生」竿の先から鬼やんま末広野暢一
実家の木戸重し肩に蜻蛉の影涼風亜湖
祖母のおしめを買い行く道に蜻蛉鈴木季良恵
蜻蛉立ち水の輪ひとつ残しけり高々多佳志
滅びゆく物に蜻蛉のホバリング高木音弥
午後五時のとんぼ結界超え彼岸武田豹悟
飛行機の止まつてゐさう鬼やんまアーモンドよーせい
鳴る鐘に蜻蛉と競う帰り道あいあい亭みけ子
水際の逢魔が時の蜻蛉かな愛燦燦
電線の蜻蛉の眼鏡茶色かな会田美嗣
古民家を抜けては戻る蜻蛉かな藍野絣
視野二百七十度あり蜻蛉かな逢花菜子
鬼やんま捕らへたる子の得意顔青井季節
諦めた糸にゆられる蜻蛉かな青井心平
墓に舞う蜻蛉父想い眺める青橘花
昼の地にじつととまつてをりとんばう青空まる
遠い日の蜻蛉はいまも目の前に青松紫雲英
蜻蛉待つ人差し指は天を指し赤鰯
亡き父のアバターなのか蜻蛉来るあかねぺン銀
色褪し畑棒蜻蛉の鮮やかにacari
旅で知る蜻蛉の守る古戦場あかり
懐っこいふりで離れる蜻蛉かな赤尾実果
儚きや番の蜻蛉やもめ住み昭廣凡字
リゾートで広つば帽にとんぼうが空き家ままごと
あの枝に来ては去り行く鬼やんま秋山らいさく
かざす網するりとかわし過ぐ蜻蛉アクエリアスの水
蜻蛉の川面叩きて魚呼べり圷小夏
進水式五色テープや蜻蛉群れあくび指南
蜻蛉のとおせんぼ回り道迷い道明後日めぐみ
繋がりて四万十川を翔ぶ蜻蛉あさぬま雅王
つーいつい初とんぼ見つけたり朝陽
群蜻蛉北の大地で大滑空亜紗舞那
四万の眼の蜻蛉見つめ合う放課後あさみあさり
やまびこをBGMに舞ふ蜻蛉浅紫泉
城跡に蜻蛉群れ飛ぶ雨あがり明日葉
蜻蛉舞う鎮守の森に笛太鼓明日に翔ぶ会
茜野に蜻蛉追いゆく影ひとつ愛宕平九郎
とんぼうも人を選びて留まりけりあねもねワンヲ
蜻蛉へ悪戯つ子の回す指甘茶トーシロー
肩止まる蜻蛉逃げるな息止める雨戸ゆらら
とんぼうの音なく止まり飛びにけりあみま
編み針に蜻蛉とまる夕暮れ時雨乙女
こっちこっち蜻蛉の誘い妖しくて雨森茂喜
反芻の牛のりぼんは蜻蛉なりあらかわすすむ
夕さりのこの指止まれ鬼やんま荒木響
嘘見抜く蜻蛉ひゅと来てつと返す蛙里
息潜め何処を睨むの蜻蛉の眼有川句楽
蜻蛉やペースそれぞれ遊歩道有田みかん
群とんぼダリットの人好きになる蟻馬次朗
丸書いてそっと早業蜻蛉捕る有本としお
蜻蛉や追つ追はれつ園の子等淡湖千優
村寂びて空き家巡りの蜻蛉かな安春
落書きの壁を伝って蜻蛉舞う飯田淳子
夕餉漂う蜻蛉飛ぶ道を行く池田悦子
六甲山和歌山にむけ飛ぶ蜻蛉池田華族
友のよう蜻蛉の飛び交う中にいる伊澤遥佳
逝く父は蜻蛉に乗って三回転伊澤ゆき抄
とんぼうや団子の玉の小さくなりぬ石垣エリザ
悪魔にも天使にも見えとぶ蜻蛉石塚碧葉
古希なれどまだ前を向く蜻蛉の眼石堂多門
窓にこつん暦に追われ蜻蛉とぶ石の上にもケロリン
指の間の半世紀ぶり鬼やんま石村香代子
蜻蛉や庭駆け回る孫の顔泉恵風
山盛りの蜻蛉載せて山笑まう和泉園実
とんぼうと追いつ追われつ紀尾井坂一井かおり
蜻蛉の名するり呼びおる夫の声市川卯月
ついてこい先達となり黒とんぼいちご一会
とんぼうの風に抗い止まるかないつかある日
蜻蛉に邪気見透かされ飛び去られ一秋子
とんぼうや朝市に乗る口車一慎
木道に腹ぬくめては蜻蛉飛ぶ五つ星
蜻蛉や「止まれ」の上で一休み伊東海芋
亡き友と蜻蛉追ひかけ夢現伊藤薫
バス停をつっと横切る蜻蛉かな伊藤節子
とんぼうはとんぼうどうし張り合うて伊藤柚良
蜻蛉追う背には夕日が追いかけて伊藤れいこ
オートバイ止めて蜻蛉の翅休め伊ナイトあさか
鬼やんま外灯に溺れ翅輝る伊那寛太
残業を知らぬ蜻蛉と遊ぼうか稲光虎介
糸の先にはめす蜻蛉雄を捕るイナホセドリ
空の色映し草原舞う蜻蛉いまいみどり
初蜻蛉ついとテレビに止まりけりいまいやすのり
高原の帽子にとまれ鬼やんま井松慈悦
蜻蛉飛ぶ野辺にきゃっきゃと追いかける今乃武椪
睥睨す山高帽に蜻蛉ゐて伊予吟会宵嵐
蜻蛉の眼世の裏側を見通して岩木順
湖水面追いつ追われつ蜻蛉の恋岩佐りこ
浮き止まる草の蜻蛉や何時ぞやの上野徹心
鬼やんま要らぬ産道捨ててくらあうただねこ科
絵筆止め画板に蜻蛉の休みおり宇田の月兎
翻る蜻蛉水面に命の環内田ゆの
夕方の黒き雲ともその蜻蛉宇野翔月
畦道に足滑らせて蜻蛉散り海口竿富
蜻蛉のぐにやりと体曲げてをり梅田三五
蜻蛉おり空まっすぐの指の先詠・想風土
老犬と戯れ蜻蛉夕空へ江川月丸
競技場ゴール横切る蜻蛉かな越中之助
擁壁を蜻蛉の影ゆめうつつ江戸きり子
空わたるとんぼ整列よさこいかえのき筆丸
鬱蒼を躱しあっさり翔ぶ蜻蛉榎美紗
前かごに蜻蛉あり息ひそめ見る榎本奈
古戦場群れる蜻蛉雑兵如榎本雅
蜻蛉捕りしてればいいさ明日まで遠藤玲奈
昔蜻蛉琵琶湖の森へ帰り来よ近江菫花
孫悲鳴蜻蛉キライー逃げ転ぶ大江戸小紋
蜻蛉の群れの二つや父の庭大久保加州
蜻蛉や何を躊躇のホバリング大越マーガレット
蜻蛉追ひ駆けたあの頃遠くなり大澤道史
蜻蛉や夕空へ飛び影となる大竹八重子
山を越え麦藁屋根に蜻蛉飛ぶ大舘さと
浅草のサンバの羽根に蜻蛉かな太田一駄歩
蜻蛉の生きる余白は大空へ大富孝子
故郷の友蜻蛉の群れを連れおおにしまこと
エコバック小さくたたむ鬼やんま大野美波
ゴルフ場吹かれて遊ぶ蜻蛉かな大原妃
駅ホーム鞄に留まる蜻蛉かな大原雪
蜻蛉群れ今年も会いにドライブへ大道真波
UFOの動きのごとき蜻蛉かなおかえさき
十一階とんぼう高く赫赫と岡崎未知
幼子の肩を取り合う蜻蛉二匹岡田恵美子
中天をとんぼう十の字にも似て男鹿中熊兎
点滴中窓に一匹蜻蛉かな岡村恵子
ため息の窓辺にとまる蜻蛉かなオカメインコ
的目指し前進のみの蜻蛉かな岡本
蜻蛉来て止まりたい指根くらべ丘るみこ
空中を糸で縫うごと蜻蛉かな小川紅子
とんぼうの居場所枕木積んである小川天鵲
あきつ羽光る炭鉱跡のスパランド小川都雪
とんぼうへ西の追ひ風紀尾井坂オキザリス
とんぼ湧く遅刻ぎみなる通学路沖庭ノ華風
干し靴をつんつんつつく蜻蛉かな荻原玲香
しばらくは併走したる蜻蛉かな沖らくだ@QLD句会
網を振る風に浮かんで蜻蛉去る遅狐
滑走路に鋼の朋輩(とも)待つ蜻蛉かな御成山
散歩中ずっと付いてくる蜻蛉十八番屋さつき
とんぼうや愚痴なら聞くよ日曜におぼろ月
山頂で一献眼下を青蜻蛉かいぐりかいぐり
蜻蛉消ゆ赤き原その向こうへと海堂一花
蜻蛉くる掃除終わりし墓石に鹿嶌純子
葉を揺らし塩辛蜻蛉午下に見ゆかじまとしこ
蜻蛉追う孫追う祖父母スマホ追うカズミンスキー
あたらしき墓石に蜻蛉とまりたり片岡明
とんぼうやロザリオめいて飛び違う花鳥風猫
とんぼうの群何処へ行くみゃくみゃくと佳寿
原爆を二度と許さぬ蜻蛉の眼加藤水玉
とんぼうの先の青空無限なるかとゆこ
もがく日々頭上には蜻蛉の群金澤孝子
山里の沁みる黄昏蜻蛉舞う金子陽
霞みゆく白内障に鬼やんま金子泰山
竿先の蜻蛉の頭よく動く花星壱和
蜻蛉の肩で何やら囁きて神島六男
碧空をきっちり四方に切る蜻蛉神長誉夫
道案内先へ先へと蜻蛉とぶ亀くみ
光射す朝へ蜻蛉の舞にけり亀田かつおぶし
電車から電車の窓へまた蜻蛉亀田亀五朗
佃煮で売るほど捕れし蜻蛉かな亀田みのる
後退はしないとんぼの透ける羽根亀山逸子
穏やかな波の音あわせ蜻蛉舞ふカラハ
追うほどに遠くへ誘う蜻蛉かな川代つ傘
この指に停まれと祈り蜻蛉追い川辺世界遺産の居候
編隊や蜻蛉数える帰り道岸壁の龍崎爺
スマホ忘れ蜻蛉先導田舎道がんも三世
速度違反愛車抜き去る鬼やんまKey
とんぼうはレガート眼下に万博如月ゆう
カレー屋の行列見下ろしとんぼ飛ぶ季紫子
ツー・トンと空に信号やんま飛ぶ紀星
蜻蛉の目借りて見たしや天象儀酒暮
蜻蛉追いし野に建売の赤い屋根北乃大地
蜻蛉や一斉飛び立ち重力波北美三風
ベンチに先客ペアルックの蜻蛉ギックリ輪投げ
華の池水を求めて蜻蛉来る木村波平
バス待ちの三才の吾子蜻蛉追ふQさん
早技を蜻蛉に倣う研修生鳩礼
とんぼうや電車のとびらよりひらり清鱒
散歩道蜻蛉に囲まれ足とめる喜楽胤
白バイを追ひかけまはす蜻蛉かなくずもち鹿之助
一匹は指に止まりし蜻蛉かなくつのした子
一人めし窓辺に蜻蛉にらめっこくにとうりん
蜻蛉のずらりと並ぶ武者のごと國本秀山
耳元をついと摺り抜けとんぼかな國吉敦子
葉の先に蜻蛉とまればふわり揺れ窪田和子
ビーズ刺繍レースの上蜻蛉来ぬぐりぐら京子
風に身を任せ徒然なる蜻蛉栗子
ジャンボ機の消えたる空を鬼やんま愚老
18番OB杭に蜻蛉かな黒田良@しろい
同じとこ回る蜻蛉に我重ね黒猫さとみ
強風に向かうごと飛ぶ鬼やんま桑田栞
てっぺんの枝に成りきる蜻蛉かなくんちんさま
やぶにらみか細き蜻蛉徘徊す家古谷硯翠
枝先に逆立ちしたる蜻蛉かな月下檸檬
国東やホバークラフト舞う蜻蛉ケビンコス
蜻蛉や悠々三十八度線健央介
蜻蛉のタンデム飛行水面打ち紫雲英
縄文を模した公園鬼やんま剛海
肩泊まり老いと自嘲や鬼やんま河国老保忠
公園に一人は寂し蜻蛉かな柑たちばな
渋滞のサイドミラーを蜻蛉飛ぶこきん
カランコロン蜻蛉と入る喫茶店黒望
誰が指にとまるか蜻蛉そオっと待つココヨシ
茜色蜻蛉溶け込む薄明や越乃杏
複眼の蜻蛉もんどり天気知る胡秋興
葉と羽が風のデュエット蜻蛉かな湖水鈴
川べりの楽しむ変化舞ふ蜻蛉小杉泰文
己が影引き連れ蜻蛉帰りけりコダマヒデキ
墓までを行きつ戻りつ蜻蛉かな後藤三梅
蜻蛉の一筆書きや水たまり来冬邦子
売地の看板家主は蜻蛉小箱守
農業用どろうんに追はれゆく蜻蛉小林脱太郎
とんぼうの群るる中吾も混ざりけり小林澄精
靴先に羽根を休める蜻蛉かな小林久女
糸つけて蜻蛉と散歩幼き日小林弥生
とんぼうや気づくそばから飛び去りて小林理真
蜻蛉や老いたる我の前に出て独楽
藁焼きの煙の上を飛ぶ蜻蛉駒形さかつ
蜻蛉や万博もあと二週間小山晃
川面行くカヌーに並ぶとんぼかな碁練者
蜻蛉飛ぶメガネが一つ転げてるコロンのママ
懐かしい顔に出会ったかの蜻蛉今藤明
一陣の隙間抜け行く蜻蛉かな埼玉の巫女
父の後追うて網振る蜻蛉取り彩汀
ファインダー狙ったところに蜻蛉なし齋藤鉄模写
蜻蛉舞い季節の巡りに安堵する宰夏海
蜻蛉追ふ子らの背中に夕日影さかい癒香
鬼やんま地球の終わり救えぬか坂口いちお
植木手入れすませた庭で蜻蛉待つ坂本千代子
上下する風に逆らう蜻蛉かな相良まさと
急停止急発進のとんぼ群れ咲世咲
蜻蛉や風を操りあやつられ咲まこ
風やみて蜻蛉とんぼに届かぬ手桜華姫
少女の像光る髪留めめく蜻蛉佐々木ヨウジ
蜻蛉は前だけを見て生きてゐるさざれいし
草刈り機唸り蜻蛉の狩り場かな佐藤公
とんぼうやイチロー取れば凡フライ佐藤茂之
とんぼう上空百センチの逢瀬佐藤俊
蜻蛉や高齢多き登山口さとうナッツ
グライダーのバルサモデルか鬼やんま佐藤浩章
高感度カメラ搭載蜻蛉ドローン佐藤佳子
めをつむり垂らした指へ蜻蛉かなさむしん
寄って散る蜻蛉ざわざわ宴終わり沙羅双樹サリー
坂の上の田んぼの蜻蛉四千歩紗藍愛
決まらない進路迂回する蜻蛉澤田紫
上りホームへ通勤快速と蜻蛉澤野敏樹
レンズ越し雲のきれ目に蜻蛉かなさんなんぼう
自由って怖いと知らず飛ぶ蜻蛉四王司
とんぼうや一直線に風の中塩沢桂子
また逃げた笑う蜻蛉の宙返りしかの光爺
蜻蛉飛ぶ小学生の田んぼかなじきばのミヨシ
嘘つけぬ嘘はバレるや鬼やんま芝歩愛美
白壁越えし蜻蛉追い風2メートルシマエナガ深雪
悲しい目しても後ろは見ぬ蜻蛉島じい子
読経のお堂や蜻蛉のぬけてゆく島田ユミ子
鬼やんま顔中目玉竿の先清水容子
耳たぶを切られたるかと鬼やんま霜川このみ
廃校のグランド蜻蛉の賑やか霜月シナ
一時間待ちの駅線路に蜻蛉下丼月光
蜻蛉を追う兄を追う三輪車沙那夏
五合目へ風に乗り来い群れ蜻蛉朱胡江
指の輪に迎えられたる蜻蛉かな柊二@冨美夛
悠悠と皇居の蜻蛉人見つむ種種番外
蜻蛉を追うて追ひつき群の中じょいふるとしちゃん
蜻蛉消え玄関脇に籠と網正見
一輪車送っかけて行く蜻蛉かな白井百合子
貴方なの忌日の蜻蛉ホバリング白いねこ
夕映えを待つや蜻蛉の影法師しわしわ
蜻蛉来てまた来てとまり露天の湯深幽
駄菓子食う蜻蛉は傾げホバリング西瓜頭
彼の地では進むほかなしとんぼかな水都かほりこ
蜻蛉くるひとりぼっちの露天風呂杉浦あきけん
すーと来てふいと過ぎたる蜻蛉かな杉浦萌芽
蜻蛉はひと息つけり吾の隣り杉本果ら
とんぼうの地軸傾け夕日差し杉森大介
蜻蛉や秘密の庭に導びかれ杉山すもも
灯明や蜻蛉となりて君還る鈴木縦横女
蜻蛉のモールス信号饒舌に鈴木秋紫
尾の先を池にちょいちょいとんぼなるすずきじゅん
上滑りしてるスピーチ群れ蜻蛉清白真冬
駐輪場のかくかくと行き交う蜻蛉鈴野蒼爽
芝生寝る空にひと筆描くとんぼ素敵な晃くん
蜻蛉の眼メガネが隠す父の嘘静江
とんぼうの水面なんども蹴りあがり晴好雨独
窯出しの小壺で休む蜻蛉哉せいしゅう
鬼やんま零戦のごと風をきりせいだるま
文化祭終わりの頃や蜻蛉飛ぶ星夢光風
あきつの儚き命つむやつまざるや瀬野広純
蜻蛉には見えていそうな新時代全美
日陰にて飛ばぬ蜻蛉を看取りたり惣兵衛
鬼やんまの瞬間移動や雲かなた素偶
蜻蛉の翅筋赤子の細御髪外鴨南菊
茜空山より降りく蜻蛉そまりそぼろ
びくつく子蜻蛉とまるや立てた指染井亀野
蜻蛉はや魔女の叫びに塵と化す大康
飛行機雲を蜻蛉と見やる夕べ高上ちやこ
ハートがた蜻蛉の恋の命懸け高田博子
行進の肩に蜻蛉の誇らしげ高嶺遠
一人待つ乗り換え駅に蜻蛉飛ぶ高橋こう
透けた羽日に当たり飛ぶ蜻蛉かな高橋紀代子
青空や蜻蛉の羽の透き通る高橋ひろみこ
指回す間もなく蜻蛉飛び立ちて高旗三紀子
産卵や番蜻蛉の飛ぶ湖面高見正樹
剪定の隙間を蜻蛉行く空を滝上珠加
飛べ蜻蛉矜持を守り天を衝け竹九
ゆきつもどりついざなふやうに蜻蛉たけぐち遊子
蜻蛉が先導2学期初日の通学路多胡蘆秋
吾の行く手阻むや蜻蛉ホバリング太之方もり子
蜻蛉やポールに止まりひと休み祐紀杏里
すくい取れば網に噛みつく蜻蛉なり立花かおる
やれ蜻蛉みちを空けてよ朝散歩たていし隆松
蜻蛉の震え目線の合う日まで田中勲
息潜め蜻蛉の背へと手を伸ばし田中紺青
蜻蛉やうす羽影映えホバリング旅女
オペ室へ移りし夫よ鬼やんま玉井令子
翅脈てふ進化史持ちて蜻蛉飛ぶ玉木たまね
靖国の英霊なのか蜻蛉よ玉響海月
階下から嚔三回連れ蜻蛉チームニシキゴイ太刀盗人
味見ると塩辛蜻蛉を口に入れ智同美月
ランデブー飛行へ移る蜻蛉かなちやあき
蜻蛉群れ初のお使い送り出す千夜美笑夢
一陣や蜻蛉の無き翅の音ちょうさん
羸痩の少女の睨む蜻蛉かな千代之人
蜻蛉やスマホ忘れてウォーキングつーじい
物干しに羽を休める蜻蛉かな司蓮風
鬼やんま首を回して世俗見る塚本隆二
早起きの蜻蛉が弾く空の色月井文
リハビリの吾を抜き去る蜻蛉かな槻島雫
町なかが涅槃となりし蜻蛉かな月城龍二
蜻蛉持つ手は無遠慮幼き我月ノイス
蜻蛉やくるんくるんと鼻先を月の莵
水溜まり逢引き中の蜻蛉たち月見里ふく
蜻蛉がね虹色メガネ諦めた月夜案山子
門に来て薄羽畳む蜻蛉かな辻美佐夫
忘れじと畑仕舞に蜻蛉舞ふ辻栄春
次々と蜻蛉飛び立つ茜雲つぶ金
野を駆けて蜻蛉を追ひし声高し手嶋錦流
結納の席に飛びこむ鬼やんま哲庵
銀やんま水平飛行どこまでも哲山
蜻蛉や関せずばまた踏み出せる徹光よし季
老犬の背に蜻蛉の来て止まるてつねこ
鬼やんま獲れば英雄昭和の子天童光宏
蜻蛉を肩にそのまま帰り道天王谷一
園庭の子ら一斉に追ふ蜻蛉土井あくび
蜻蛉や群れて帰るはニュータウン遠峰熊野
とんぼとんぼビームを放つ五秒前とき
蜻蛉の眼に焼き付けし熱大地徳庵
見上ぐればへの字への字と飛ぶ蜻蛉Dr.でぶ
ズームされ肩に留まる蜻蛉かなとくねん
老犬を先導しつつゆく蜻蛉杼けいこ
蜻蛉よ前に後ろに伴にゆく戸根由紀
ショーウィンドウ覗いてゐたる蜻蛉かな友@雪割豆
開け放つ座敷についと来る蜻蛉豚々舎休庵
メビウスの弧を描きたる蜻蛉かな頓堀頓
救急車受け付け蜻蛉の群れ来内藤未来仁
生涯を昆虫館の蜻蛉かな中里凜
参道に同行一匹夕とんぼ中島葉月
索道はぴんと蜻蛉はふんわりと永田千春
飛行機雲真青切り裂く鬼やんま中西千尋
蜻蛉から逃れて一人買うお菓子中原美香子
強風に蜻蛉らくらくホバリング中村こゆき
朝五時の追えぬ蜻蛉や命乞い中村雪之丞
蜻蛉やひたすら瞬間移動して中山由
蜻蛉や夕陽に透ける羽根の色流れ星
スクランブル人と一緒に渡る蜻蛉七五三五三
蜻蛉に誘導されしウオーキング夏目坦
蜻蛉取り草間を網が移動する夏目りる
とんぼうの尾は瑠璃色に生まれけりななかまど
蜻蛉の翅脈や油めきてひかる七兎子
踊り場に逆光連れて蜻蛉かな菜の畑キイロ
細き葉の先に蜻蛉のやじろべえ名計宗幸
定年後水辺の街へ蜻蛉飛ぶ奈保
カーテンに蜻蛉の影の飄々と南全星びぼ
潤む目に羽根の破れた蜻蛉ゐてにいやのる
蜻蛉の眼指先見つめ身じろがずにえ茉莉花
青空へ我は勝虫蜻蛉飛ぶ西尾照常
蜻蛉の群れめがけ放つよティーショット西原氷彩
つながって末広がりの蜻蛉かな西村小市
蜻蛉とはタイムマシンの動きして二重格子
目が回り真っすぐ飛べぬ蜻蛉かな入道まりこ
とんぼうの腹打ちつけし庭潦庭野環石
耳ピクリ馬をからかう蜻蛉かな庭野せんたく
セロファンのやうな翅音の蜻蛉かな沼宮内かほる
俗世間ホバリングして蜻蛉往くねがみともみ
おそらくは来世も番う蜻蛉かな猫塚れおん
蜻蛉の大軍舞ひてロープウェイ猫辻みいにゃん
オピネルの刃先に止まる蜻蛉かなねこの☆さんぽ
大空の十字懸垂蜻蛉ぴたり農鳥岳夫
自転車のはじめて乗れた蜻蛉飛ぶ野地垂木
とんぼうも生きる糧かと脱北者野瀬博興
病室の窓三センチから蜻蛉のなめ
蜻蛉取り網回旋度達人度ののクラブ
蜻蛉舞う泣きたい日にも嬉しき日も野原一草
嵐去り薄羽黄蜻蛉空に群る野原蛍草
とんぼうや美辞麗句しか言わぬ口野山恵生
蜻蛉に生きる力をもらひけりのんきち
とんぼうに負けし吾子撫で帰る夕羽織茶屋
とんぼうの田圃守りのホバリング橋野こくう
病室を蜻蛉旋回檄届け波止浜てる
蜻蛉飛ぶ線路まっすぐ新ホーム橋本有太津
蜻蛉みなじっとしてくれパーパット馬笑
山間の鐘響きける蜻蛉かな葉多豊
整列の子らは目で追う群れ蜻蛉初野文子
齟齬ありし友の背中にあきつ留る花彼岸
ボートの櫓流し蜻蛉の休息所はなぶさあきら
美ら島の泳ぐ蜻蛉や風に乗り英凡水
ふいと吾のそば離るるか鬼やんま花水木
過ぎし日の君と夕日とドラゴンフライパパクーラ
よーいドン不意に蜻蛉に抜かれけりはままこみかん
行き先が手帳に踊る蜻蛉かな波見頓
息を止め一筆描きの蜻蛉かな早足兎
とんぼうやのぞみの通過待つこだま原島ちび助
蜻蛉の水面に輪っかつくりをり原田民久
蜻蛉追い兎穴に入りて君遊ぶ針子の猫
しなやかな菩薩の指に蜻蛉くる春あおい
夕陽浴び羽根キラキラの群れとんぼharu.k
蜻蛉よ流れの上をスイスイとはるるん1号
とんぼうが繋がり空を滑ってくひーちゃんw
人類の夢の続きをゆく蜻蛉柊琴乃
蜻蛉らや網振る甥をふりまわす東原桜空
外待機発熱外来舞う蜻蛉火車キッチンカー
川を超え風より速く飛ぶ蜻蛉ピコリス
蜻蛉よ今宵は此処に泊まらぬか一石劣
蜻蛉の群れて私の友となり鄙げし
曇天もわっと広がる群れ蜻蛉鄙び梅乃香
蜻蛉追ひ吾と橋川を遡る比々き
ハタハタと蜻蛉飛び立つ竿の先ひまわりと蒼い月
蜻蛉追う孫の背中に時を知りひめりんご
墓掃く手蜻蛉の翅に思い寄せ百夜
とんぼうの万の眼玉とくじらぐも日吉とみ菜
複眼の昏き深淵蜻蛉の死平岡梅
古の里巡る旅蜻蛉行く平松一
背が尻が蜻蛉を跳び越して自己新広瀬康
おはやうさんあたま傾ぐ蜻蛉かな廣田惣太郎
まて蜻蛉老いは初めて難儀なり琵琶京子
武士(もののふ)の心知るのかおい蜻蛉FUFU
突然の蜻蛉われらを祝ひけり風民
夕闇の顔面かすめ群蜻蛉深蒸し茶
蜻蛉の眼大空ふたつ映しをり福ネコ
刈入れの終わりし畑蜻蛉舞うふくのふく
雨あがる虹色に染む蜻蛉かな河豚蛇燕花子
足に蜻蛉不動の山と化す身体福間薄緑
田の蜻蛉観ては画き足す二十の瞳福弓
蜻蛉の張りつく窓や菓子工房藤井かすみそう
清流を行きつ戻りつ群蜻蛉藤丘ひな子
蜻蛉の目指にぐるぐる手づかみす藤沢・マグネット
ベンチ外フェンスの蜻蛉五度数え伏見レッサーレッサー
自転車に寄り添うように蜻蛉来て藤本だいふく
とんぼうよ車列が好きか邪魔なのか舟端たま
蜻蛉や宙の交信めきてをり風友
蜻蛉らよ逆らひ遊び風となる古川しあん
蜻蛉止むピントの先の静けさや古澤久良
竿先に止まる蜻蛉は見張り役古道具
病室の見上げる空に蜻蛉舞う古谷芳明
忘れたる杖の上にも蜻蛉かな文室七星
とんぼ捕り指に挟みし翅四枚芳醇
蜻蛉やチャイムちょっぴり早く鳴るほうちゃん
凸凹の翅を乾かす蜻蛉かな北斗星
つつきたるとんぼうの影つまみけり星屑今日子
蜻蛉が目指したくなるヒトとなる北海道県民
捕らわれのメスが交尾をする蜻蛉ポップアップ
ゼロ戦の強さ脆さよ鬼やんま堀卓
蜻蛉にピンを打ち眺めし遠き日堀隼人
凸凹す翅の厚みや蜻蛉捕り凡狸子
雨上がり蜻蛉よそこはにわたずみ槇まこと
国道の風を横切る蜻蛉かな増山銀桜
領空侵犯とんぼスクランブル町田思誠
蜻蛉や羽根の向こうに落つ夕陽松岡才二
線香がにほひ包みて蜻蛉をり松岡徘徊狂人
とんぼとんぼ西方浄土はいずく松岡玲子
蜻蛉逃げ網の影舞う水の上松尾祇敲
銀蜻蜒エメラルドの眼空撮か松尾老甫
水切りのととんと石に散る蜻蛉まっちゃこ
緑目の蜻蛉の誘う畦の奥松知
蜻蛉舞うベンチで泥む夕日ありまやみこ恭
明けの朝肩越しに蜻蛉の気配瑪麗
群れ蜻蛉色づく空に溶けてゆく真理庵
蜻蛉飛ぶ奈良町歩くハイヒールまりい木ノ芽
蜻蛉行く今日も領空異状なし丸山隆子
自転車で蜻蛉の群れを割り進む美衣珠
我が肩にとんぼの止まる無人駅みかん成人
風の道飛び行く見遣る蜻蛉かな三木崇弘
とんぼうの淡き影引く土塀かな三茶F
裏返るファーの叫びや蜻蛉の群れ水越千里
蜻蛉来るとんぼのめがね唄ふ吾子mr.kikyo
休日の都心の運河とんぼ発つ水巻リカ
一等の旗のてっぺん蜻蛉おり巳智みちる
痩せ細りし指にも蜻蛉とまりなむ光月野うさぎ
気流乗り頂き向かう蜻蛉かなミナガワトモヒロ
放課後やショパンに揺れる蜻蛉の羽みなづき光緒
夕暮れに母の呼ぶ声蜻蛉とり湊かずゆき
野に数多野を狭くして飛ぶ蜻蛉みなみはな
小さく意見を言ふ婦人会とんぼ飛ぶ源早苗
蜻蛉飛ぶ園児のリレー追いかけるみはやななか
譜面を蜻蛉空へとハイトーン美村羽奏
とんぼうの背に乗り僕はテニアンへ深森明鶴
蜻蛉舞い夕暮れ空のコンダクター宮城海月
蜻蛉見た公園の道また行こう美山つぐみ
夕暮れて祠に蜻蛉羽やすめ宮村寿摩子
いにしへの神殿の跡鬼やんまミラベル
あちこちに蜻蛉飛び交う我が水郷むじか
蜻蛉追いセカンドライフの幕が開くムシ・ミカミ
尾を落とし半身だけで去る蜻蛉睦月くらげ
とんぼうの真っ直ぐに来るガラス窓むねあかどり
蜻蛉や夫の沙汰なく時止まる村先ときの介
とんぼうや夕日の色に馴染みおり恵のママ
スイっと蜻蛉川面は鏡朝まだき百瀬つきか
踏切を越えて先ゆく蜻蛉かな森海まのわ
一つ行く風に乗らんと蜻蛉かな森嶋ししく
真剣な貌して蜻蛉水を打つ森中ことり
ツートトツー行きつ止まりつ飛ぶ蜻蛉森野恵
とまるところ探すために飛ぶ蜻蛉かな森日美香
童謡を歌いし蜻蛉追いかける森茉那
トンボに蜻蛉トラックは大歓声諸岡萌黄
三次元蜻蛉の引いた設計図もろ智行
夕日さす白壁一面とんぼかな矢澤かなえ
思秋期や蜻蛉の羽を透かしみる矢澤瞳杏
とんぼうのヒラリといなす昼寝言安元進太郎
蜻蛉が合間抜いたり防災訓練柳とうふ
迷ひなく風を切裂く鬼やんま野風庵
入り乱れいつか蜻蛉の広場となる山内彩月
前を行く夫の肩に蜻蛉かな山内文野
とんぼうとバックパッカー舟でゆく山口絢子
托鉢の雲水の傘蜻蛉のせ山口笑骨
蜻蛉が誘う眼下で膨む燈山下智
鬼やんま網で追う子と逃げる子と山育ち
凸凹の羽根渦起こし浮く蜻蛉山田季聴
蜻蛉追ふ子らの手染むる夕日かな山田翔子
前後横蜻蛉引連れ山頂へやまだ童子
髪染めに来て窓の外蜻蛉かな山田はつみ
肩沈め露天の湯気に蜻蛉追う大和杜
人工の芝をいおりとす蜻蛉山野花子
知らぬ顔膨れて蜻蛉採る息子山本葉舟
蜻蛉や浅間の朝を二つ三つ山姥和
いにしへの夕日をながむ蜻蛉かな雪子
人差し指クルクル小川の蜻蛉かなユキト
黄金の棚田万枚蜻蛉の眼雪鶏
蜻蛉の翅のしやりしやり君に言ふ柚子こしょう
キャッチボール夕暮れ蜻蛉に促され夢散人
蜻蛉舞う空に音符を散らすやにYOKOCHAN
蜻蛉行くこの暗がりや我も行くよしぎわへい
海外の地図のやうなる蜻蛉の羽ヨシケン
蜻蛉舞ふ母の帰りを待つ子かな吉田蝸牛
オス同士睨む蜻蛉の恐い口吉藤愛里子
「とんぼはなめがねかけとる!じいちゃんじょ」Yoshimin空
曼荼羅や蜻蛉の目には数多の吾米山カローリング
とんぼうの眼に数多吾の寄目楽和音
フェアウェイの白球の先蜻蛉飛ぶ梨花
蜻蛉の群れなす朝よいざ畑へリコピン
銅山のからみ煉瓦に銀やんま竜退治の騎士
風に舞い風を操る蜻蛉かな瑠璃ホコリ
塾帰り蜻蛉横目にランニング麗詩
里山の蜻蛉の羽音幽しやわかなけん
蜻蛉追いし子らの歓声蒼天へ海神瑠珂
蜻蛉の羽ステンドグラスめく夕日渡辺香野
野を飛んで千の精霊蜻蛉かな渡邉花
切り上げて川辺に寄れば夕蜻蛉渡辺陽子
白壁の斜光に並ぶ蜻蛉かなわをんはな
戸口開き揺るる蜻蛉のやじろべえ月石まちこ
蜻蛉すわインベーダーを撃ち落とす後藤葉羽
青藍へボンボニエール出づ蜻蛉三群梛乃
故郷やどこもかしこも赤蜻蛉浦城亮祐
石橋に留まる吾に赤蜻蛉大久保一水
俺を詠め右へ左へ赤蜻蛉片岡一月
山辺より実りの里へ秋茜亀岡恵夢
時すでに遅き戦や赤とんぼ高岡春雪
風熱し視線の先行く赤蜻蛉田上コウ
赤とんぼ塔婆の先へ止まりけり那須のお漬物
岸壁を宙と化したる赤とんぼふるかわしげ子
身動ぎせず子等は群れ飛ぶ赤蜻蛉本間美知子
進路先決めて仰げば赤蜻蛉またあ
みずうみを風と渡るか秋茜柚木啓
品川の駅構内を赤とんぼ平井千恵子
拝殿の先客二匹秋茜荒木ゆうな
子供らを導くような赤とんぼ近未来
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
◆俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物による複数俳号を使った投句は、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。
●「蜻蛉」について書いた句だろうとは……
尾を伸ばし秋を抱いて舞い上がる享子
指先に止まれば母の化身大西真佐美
兼題「蜻蛉」はテーマではないので、「蜻蛉」という季語を詠み込む必要があるのです。
●「糸蜻蛉」「川蜻蛉」は夏の季語
付け爪に戸惑いながら糸蜻蛉あすなろの邦
吾の住まふ羽黒蜻蛉の来る垣根野の菫
物干し台肌着に潜む糸とんぼ茅野ともぞう
湖に波紋命繋ぐかイトトンボ風之川
黒蜻蛉二回開いて羽閉じる北の星
兼題の説明文にも記載はしておりましたが、「糸蜻蛉」「川蜻蛉」は、夏の季語になります。
蜻蛉生る青竹の如にほひけり牧茉侖
蜻蛉羽化命懸けなり一時間中嶋緑庵
「蜻蛉生る」も夏の季語です。歳時記を開いて、季語を確認するところから、作句を始めましょう。
●季重なり
とんぼ来る揚羽ヒラッと舞いて去る小野ぼけろうじん
夕焼けに赤味つよめて蜻蛉とぶtabei白芙蓉
赤蜻蛉私の気持ちは長き夏明日翔
野空飛ぶあれは蜻蛉か蜉蝣か木公山鳥言周
蜻蛉の群れに迎えられたる墓参り遠藤千草
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「蜻蛉」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●季語として微妙?
展翅され羽根ひと欠けの蜻蛉かな栗田芳文
確かに、蜻蛉の句ではありますが、展翅されている状態で、どこまで季節感を受けとめてもらえるのか。微妙です。例えば、剥製の鷹とか鹿とかに、季節感を抱けるのか、という疑問と同じです。
●「赤蜻蛉」「秋茜」について
本来は、独立した季語と考えてよいかと思いますが、歳時記によっては、「蜻蛉」の傍題として「赤蜻蛉」「秋茜」を載せているものもありますので、秀作・佳作の最後にまとめて載せました。
●季語の片仮名表記
「蜻蛉」の場合もそうですが、動物・植物の季語は、特別な意図がない限り片仮名書きを避けるのが定石です。(勿論、「チューリップ」などのような季語は、片仮名書きにしますが。)以下の句は、特別な意図は読み取れません。
オニヤンマ律儀に守る折返し菊池克己
トンボ皆同じ顔して浮かびおりきべし
トンボの目地球はいくつあるだろう小山秀行
羽化したるギンヤンマ剥き豆の艶捷雅
蒼天の時を止めるや鬼ヤンマ大
整形外科の外にますぐトンボ行く目黒青邑
発掘中伸びをすればトンボ群れ相沢薫
煙突の空一文字鬼ヤンマ粋庵仁空
日だまりのトンボ朝の布団のボク一久恵
川面の虫よオニヤンマ来るぞ岩田秋雀
オニヤンマひと休みかな己に止まるえのき絵巻
オニヤンマ威厳を示す飛行かな大阪駿馬
孫の肩にトンボ止まって何の話樺久美
その昔トンボ追いかけ今眼で追いかける京極江月
万華鏡の如みつるやトンボの眼桜月夜
トンボ羽の薄きに似合わぬ眼ぢからそしじみえこ
繋がって塩辛トンボ宙返り高橋基人
風に乗り威風堂堂オニヤンマ田畑せーたん
病に臥す窓の外には群れトンボ月光一乙
銀ヤンマ父は施設に足重く月見人
連れし吾子トンボの群れにごあいさつつついぐれちゃん
トンボ行く鉄塔の先縹ブルー野三弓
トンボ舞う光るパネルの海原を花笠きく
トンボ先導す万博の人波を廣重
田に追いしトンボのめがね黄金色まりおR
ギンヤンマ尾落とす流れ水の綾美月舞桜
大空にトンボ描きし線画追う村上の百合女
思い出はこの指止まれ赤トンボ松井英雄
●切字の併用
複眼に世の裏表や蜻蛉かなアツシ
一句に「や」「かな」のような切字が重なるのは、感動の焦点がブレるとして、嫌われます。どちらかを取れば、問題は一つ解消されます。
●今月の選外
兼題が入っていない人、別の投句欄の兼題と勘違いしていた人、前回の兼題の人などが、今月もいらっしゃいました。
更に、何か表現しようと格闘しているのは分かるけれど、句意が読み切れないものもありました。早めに作って、しばし時間をおいて読み返すことを推奨いたします。少し時間を置くだけで、客観的な目を持てることもあります。是非、試してみて下さい。


お待たせしました!9月の兼題「蜻蛉」の結果発表です。今月も夏井先生のアドバイスは必見です。空中を自在に舞い、ぴたりと静止する蜻蛉の姿は、いつ見ても心惹かれます。久しぶりに捕獲へ挑むもまったく歯が立たず、その俊敏さには到底敵わないと痛感しました。11月の兼題「冬晴」もふるってご応募ください。(編集部より)