夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
10月の審査結果発表
兼題「秋の田」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
秋の田をゆっくり見せて霊柩車
中里凜
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夏井いつき先生より
上五中七「秋の田をゆっくり見せて」とは、誰が、誰に、何のためにやっている行為なのだろう。そう思った瞬間、下五「霊柩車」の一語が飛び込んできました。嗚呼、そうか。この「秋の田」は、霊柩車で運ばれているご遺体が丹精込めて育ててきた田なのだと。霊柩車に一緒に乗っているのは、妻でしょうか、子でしょうか。せめて、この秋の実りの刈取りを終えるまでは生きて欲しかったという思いが、中七「ゆっくり見せて」という表現に込められているのでしょう。霊柩車の窓を開けて、見せてあげているような様子までもが伝わってきます。
季語「秋の田」に、似たような人生の感慨を重ねた句も幾つかありましたが、人物に関する言葉、例えば「父」「義父」「夫」「農夫」などを一切使わずにありありと伝えている。その工夫に、一日の長がある作品でした。
秋の田や県歌に謳ふ大広野
石塚碧葉
新潟、秋田と幾つかの米どころを思いました。「秋の田や」の詠嘆から「県歌」への展開が佳いですね。中七「県歌に謳ふ」は、ご挨拶でしょうか、県民としての誇りでしょうか。米どころの「大広野」が眼前に広がってくるような一句です。
秋の田の微熱に畦のふくらめり
空木眠兎
ゆっさりと実った稲穂。黄金色の「秋の田」には、実りという名の熱が醸されているかのようです。「秋の田の微熱」という詩語もさることながら、その微熱によって「畔ふくらめり」と感じとる。その感覚こそが、まさに俳人です。
さてと言ひ義父は最後の秋の田へ
大岩摩利
「さて」という言葉から、最後の「へ」という助詞まで、切れのない構成によって、一句は動画のように展開していきます。「義父」という人物を見つめる作者の労わりの視線。「最後」の実りが、有難くも、切ない「秋の田」です。
ふるさとは秋の田とそれ以外かな
可笑式
「ふるさと」には何もない。そんな句は時折目にしますが、「秋の田」と「それ以外」という書き方に、そこはかとないユーモアが漂います。微量の自嘲を込めているのかもしれませんが、むしろ誇らしささえ感じる豊かな「秋の田」です。
きんいろに嘶き秋の田はしづか
古賀
「きんいろ」に嘶くのは「秋の田」だと読みました。一面に実った稲穂を嘶かせているのは秋の風でしょうか。豊の秋という収穫の喜びが、金色に嘶いているのかもしれません。「秋の田はしづか」という納め方に、静かな喜びが溢れます。
秋の田の千年前と百年後あみま
秋の田の波間をちさき祠かな飯村祐知子
田の色や神がとほつてゆくのだらうイサク
秋の田や眩しきこゑを見失ふいずみ令香
秋の田を神へ捧ぐや禰宜ひとり猪子石ニンニン
神功皇后陵秋の田を突つ切つて井松慈悦
秋の田を駐在さんのでかい声内田ゆの
秋の田の真なかに古墳鎮座して小田毬藻
空青し秋田はたてがみの匂ひ眩む凡
秋の田や風あるところないところ木染湧水
秋の田や初めての喪主務め上げ三角山子
皆笑ってる秋の田の道祖神清白真冬
能登晴天秋の田へ散るボランティアにゃん
秋の田や俺は地元に残ります梅田三五
秋の田や明日あの子は町を出る麗し
秋の田や天使のはしご降り注ぐ今乃武椪
秋の田へそそぐ光の梯子かな亀田かつおぶし
秋の田や消失点は鳥海山紙谷杳子
秋の田や消失点の先にも田きざお
秋の田の消失点へ雲の銀橋本有太津
町長は五期目秋の田茫茫たり鷹取碧村
町長の義太夫節や色づく田天陽ゆう
町長先づ田の色褒めて着席すRUSTY=HISOKA
秋の田へ踏み切り音の遠音かなアーモンドよーせい
金色に夕陽まみえる秋の田よあいあい亭みけ子
秋の田を横切る山の影速し相沢薫
振り子めく鳥の尾秋の田の寝息青居舞
秋の田や晴れれば富士はあの辺り蒼空蒼子
秋の田の囲むや猫のゐる旧家青空まる
ありふれた絶望秋田のやさしさに青田奈央
秋の田の雨を宿せる薫りかな青野みやび
秋の田を風が裸足で駆けぬけり青葉時雨
秋の田やワンマン列車を待つ暇赤尾てるぐ
秋の田や靡かざるもの靡くもの赤尾双葉
秋の田や技能実習生の声あかねペン銀
秋の田や山古志の牛の目優しあが野みなも
秋の田やバスの遅れを許そうかあかり
秋の田をガルボのように進みゆく阿川凛
秋の田の何処かに吾のDNA赤尾実果
秋の田や大斎原の大鳥居愛柑いつき組note俳句部
諫早や方舟として色づく田空地ヶ有
秋の田の豊かな熱を触りをり秋山らいさく
秋の田やバスの少ない時刻表芥茶古美
秋の田の力かぎりの背伸びかな明智明秀
秋の田はきっと電波の来ぬところ浅井翠
秋の田を循環バスに客二人明後日めぐみ
秋の田や柏手四つ打つ神社あさぬま雅王
秋の田に夕日そのまま止まりぬ淺野紫桜
訪へば今日より秋の田となれりあさのとびら
こぼるるは古曲か秋の田のそよぎ浅乃み雪
秋の田や腰に吊りたる鈴ふやす朝日雫
秋の田の空気は肺を満たしけり浅紫泉
秋の田や風は鬣つくりたる葦屋蛙城
田の色や畔に次男と握り飯阿修羅
秋の田や暮れて猫背の影ひとつ飛鳥井薫
秋の田やひこうき雲は西へ伸び麻生恵澄
秋の田や両の手広ぐ鳥海山あたしは斜楽
迷子の烏いつも秋の田へ帰る足立智美
秋の田を見下ろす吾は今卑弥呼あたなごっち
秋の田や農機回覧板のごと我孫子もふもふ
梳る秋田に獅子の毛並みかな阿部斑猫
色づく田そろそろ人生折り返そ阿部八富利
秋の田の始まる車窓故郷へ阿部由男
秋の田や爆音たぶんオスプレイあまぐり
秋の田の明日は刈らるる予感かな甘茶トーシロー
スイッチバック峠越えたら秋の田雨戸ゆらら
秋の田や果てまでつづく世もつづく天鳥そら
秋の田の夜半の息吹の重きこと雨霧彦(木ノ芽)
秋の田を慕ひだいだらぼつちかな綾竹あんどれ
秋の田やブルーインパルスの余韻綾竹ろびん
秋の田や新幹線はみちのくへ綾小路へこ
夕暮の秋の田ガンジーの最期あらい
埋立地の忌竹黄金の秋田あらかわすすむ
秋の田やながらスマホで通り過ぐ有川句楽
秋の田はゴッホの筆の動きなり有馬裕子
風神の仄かな息を秋の田にアンサトウ
秋の田やつまらなさうな昼の月安春
秋の田の脇の車座呱々の声猪狩鳳保
秋の田や老犬の息乳母車粋庵仁空
秋の田を分けゆく径や村社池田桐人
秋の田を大和の胎と思ひけり池之端モルト
秋の田や大和に風の名の数多石塚彩楓
午睡後の母の手を引き秋の田へ石の上にもケロリン
秋の田や明日の空を疑はず石原由女
雨上がり秋の田甘く重く蒸れ石村香代子
秋の田を仁王立ちする朝日影泉晶子
風止みて秋の田に意志生じけり和泉攷
元伊勢の玉砂利踏んで色づく田石上あまね
秋の田へ帰りつきたるハイヒール板柿せっか
秋の田や下の畑に居た賢治いたまき芯
秋の田や穂の重だるく重なりて一井かおり
秋の田や体験授業の赤白帽市川卯月
役目とし秋の田へさす朝日夕日いちご一会
平家の里や秋の田の光のみ一久恵
秋の田に列車は赤き線を描く一秋子
たちまちに雨の秋田となりにけり伊藤映雪
秋の田のうねり寄せ来る無人駅伊藤順女
秋の田や天辺からは鳶のこゑ糸川ラッコ
秋の田やさらさら校歌口ずさむいとへん製作所
秋の田や地球見たさの熱気球伊ナイトあさか
秋の田の乾く静けさ風の音井中ひよこ号
秋の田や馬耕の鼻息呼び起こす伊那寛太
秋の田や禄高五石家士一人イナホセドリ
秋の田を囲うビルビルビル神社居並小
秋の田や一人に慣れるわけもなく井上鈴野
秋の田をコントラバスの女学生井上れんげ・いつき組広ブロ俳句部
ペダリングゆるらかなるや色づく田井納蒼求
秋の田の北に矯正保護施設伊予吟会宵嵐
秋の田のざわつく年金支給の日岩木順
秋の田や果てなくのたり信濃川岩清水彩香
秋の田や年々増える送り状上野眞理
秋の田を傾け走る鉄路かな上原淳子
秋の田にゐて蹠より吸ふ孤独うからうから
秋の田や休職のしおりが厚いうすい木蓮
臨月を歩く秋の田に合掌うた歌妙
秋の田や人はラッパに振り返りうただねこ科
「ただいま」は秋の田の香を纏いけり宇田の月兎
秋の田を薙ぎて一閃風疾る**内海七奏
秋の田や実家じまいはまだ早い卯之町空
秋の田は続き成田の滑走路うましか(志村肇)
かの陽射しのちも秋の田疲れ無し海口竿富
亡き人の合図か秋の田は揺れる梅里和代
秋の田であゝ神様がはしゃいでる梅朶こいぬ
秋の田や氏神様の幟旗うめやえのきだけ
秋の田の知らぬ屋根にも暮れの色HN
天職と言い切る姪の秋の田よ江川月丸
捨てた町に居場所はあった色づく田江口朔太郎
駅前に立てば秋の田ばかりなり蝦夷やなぎ
秋の田や今日という日に貼る付箋越冬こあら@QLD句会
秋の田をコンバインめく相模線江戸きり子
無人駅下車秋の田の中無人榎本雅
ひとつぶひとつぶ漲り秋の田よえりべり
雨も陽も寿ぎ受くる秋の田よ遠藤玲奈
秋の田の先に秋の田と秋の田延命寺
田の色や微かに揺れる跨線橋近江菫花
秋の田や歩幅あわせて犬二匹おおい芙南
秋の田や花嫁行列風唄ふ太田一駄歩
秋の田や幼馴染は上京す大津美
秋の田や号砲二発めし二杯大谷維鶴
秋の田や盲ひの母と見た景を大矢香津
秋の田や天との距離の透きとほる大和田美信
秋の田や見渡すかぎり我らだけ岡井稀音
秋の田や継ぐと決めたる十町歩おかえさき
秋の田や愉快な婆が隣人に岡田瑛琳
秋の田に夕日のバターめく時間岡田ひろ子
秋の田を一番美しき風通る岡田雅喜
秋の田や祠にカンロ飴ひとつ丘ななみ
秋の田を両手に抱え佐賀平野岡本
秋の田やローカル線は手動ドア岡山小鞠
秋の田を虫喰ひのごと分譲地小川しめじ
秋の田の防鳥テープぶぶぶぶぶ小川天鵲
ストリートビューに故郷の色づく田小川野雪兎
渇ききる秋の田けふを踏ん張りぬ小川都雪
秋の田へ斜めに入るコンバインオキザリス
秋の田やこの地に生くる証とす沖庭乃剛也
秋の田や捨て猫金の産毛持ち沖乃しろくも
秋の田や庄内訛り抜けぬ母小倉あんこ
秋の田の空と交わる細き道お品まり
秋の田に木食仏の御堂かな尾田みのる子
秋の田や日差しがシャツを膨らますおだむべ
秋の田を抜けた辺りで夕景に小野ぼけろうじん
秋の田や軽トラックの三世代おひい
秋の田や朝日夕陽の透過あとおぼろ月
秋の田に小さきもののための漣海音寺ジョー
秋の田や永遠いつも揺れている海峯企鵝
だいだら法師踏みし痕の秋田かな甲斐ももみ
秋の田は紙飛行機の八百機香依蒼
秋の田や指揮官として米寿立つ風早杏
秋の田や渇けば固き喉仏樫の木
黄金の秋の田つづく関ケ原かじまとしこ
秋の田や遠近法の無限大梶原菫
秋の田を抱いて蛇行の仁淀川加田紗智
秋の田や風の道敷く割れ戻り加塚東隆
コッペパン秋の田続く下校道かつたろー。
秋の田や風の綺麗に撫でた色ひだまりえりか
秋の田を老犬起こすほどの風桂佐ん吉
秋の田や子どもを背負ひ里帰り加藤水玉
秋の田を抜けて診療所は満車加藤栗庵
秋の田よ面子盗んでしまつたよかときち
秋の田や斜塔のごときポンプ小屋金子泰山
秋の田を映画フィルムのごと車窓かねつき走流
秋の田や廃虚になつたラヴホテル花星壱和
秋の田や角なき風の広々と釜眞手打ち蕎麦
秋の田やIターンして十年目神島六男
秋の田の縫つてKubotaの修理班神谷たくみ
秋の田や隣もついにビルになり亀子てん
秋の田を来る門付の恐い顔亀山酔田
秋の田のぼっちまみれの秘密基地かもね
秋の田の真ん中を行く会津線鴨の里
秋の田に「今日刈らんば」と声通る加裕子
秋の田の切れては続く車窓かな絡丸いと
秋の田にずぶり長靴浸かりけり刈屋まさを
日の丸の真白の韻き色づく田川内佳代
秋の田や俵むすびを十人ぶん河上摩子
秋の田の風あかるくてかるくつて川越羽流
秋の田や隣に静かな家ありて川崎ルル
秋の田のひかりは粒におわす神川代つ傘
秋の田の切り取り線のやうな道翡翠工房
秋の田や水のかすかに息をせり川端妙松
秋の田やハンドクリーム手に馴染む川辺世界遺産の居候
秋の田を三反過ぎて彼の家河村静葩
秋の田やみんな長靴校舎横岸壁の龍崎爺
秋の田や農転許可を市役所へkey
秋の田や耳鳴りは子宮の記憶喜祝音
秋の田や百万石は加賀の国菊池克己
秋の田を吼ふバインダーの吐く束如月ゆう
秋の田を太陽朗らかに祝意岸来夢
秋の田に聞こゆラジオのK-POP季切少楽・広ブロ俳句部
秋の田を見下ろす小屋に妻の文北大路京介
秋の田の山より暮るる茜色喜多丘一路
秋の田やコンビニ一つ浮かびをり木谷智子
秋の田や瑞穂の国の休耕地北美三風
秋の田や道標の文字彫り深し北村環
秋の田や摂津あちこち古戦場木寺仙游
秋の田のあそこにボール着弾すきなこもち
秋の田や重き乳房と子守唄城内幸江
秋の田にあまたなる鳥湧きて金木下桃白
秋の田や自由は五十路の今にあり木下風民
秋の田に組合帽子見え隠れきべし
秋の田や若者はみな移住組木ぼこやしき
秋の田や氏神様の献茶祭木村かわせみ
秋の田の風よ神楽の鈴の音よ木村となえーる
秋の田が囲む庄屋の屋敷跡木村弩凡
秋の田や鴉の慕うトラクター木元紫瑛
休職の吾子を連れ来る秋田かなQ&A
秋の田の国の始めの物語鳩礼
校内放送聴こゆ秋田のど真ん中杏乃みずな
月光の余波めく風雨秋の田へ煌星アニカ@TFP句会
山裾をどんと敷き詰め秋の田は霧賀内蔵
晩年の越後の旅ぞ秋の田ぞ霧澄渡
生き死にのまばらな村を色づく田ギル
秋の田を絞りあげたる信濃川菫久
秋の田や歩けばメロディー湧きいでる近未来
秋の田や母は昭和の嫁だつたくさ
秋の田の陽を集めたる匂ひかな鯨之
秋の田やあそこらへんが県境くすみ輝く
秋の田や集結させる鉄の機具くずもち鹿之助
首塚をかこむ秋の田飛鳥今くちなしの香
秋の田を見下ろす丘に牛の墓くつのした子
秋の田やゆっくり刻む老いの恋くにとうりん
秋の田や駅で頬張る握り飯國吉敦子
秋の田や若き太鼓の高きばちくぼたみどらー
秋の田や風道に置く旅かばん熊谷温古
秋の田や教科書に無い古戦場蔵豊政
秋の田の夕を連呼の選挙カー栗田すずさん
秋の田の黄金らに値をつけてみよ栗田芳文
のびのびと自由秋の田なんてのは空流峰山
秋の田や親子狛犬座に遊び久留里61
秋の田や氏子ぬかづく苅穂祭愚老
秋の田の吾子呼ぶ声が低くなり黒猫さとみ
秋の田や夫婦になりし日の帰宅黒山万牛
秋の田や水路点検あと僅か慶唯
秋の田や鼻歌はサビからサビへ月下檸檬
秋の田や背筋よろしき巫女埴輪げばげば
秋の田や畦漕ぐ技能実習生ケビンコス
秋の田や葬儀の列の賑々し健央介
秋の田や人形たちは物言わぬ紫雲英
秋の田よ東京夢見た日もあったケンG
秋の田のまんなかにゐる母似かなケント
秋の田の義兄の講師めく一日剣橋こじ
宝なる秋の田誰か継がんかえ恋瀬川三緒
秋の田に休耕田という余白剛海
須磨からの風秋の田を撫でてをり幸田梓弓
秋の田を揺さぶり一機飛び立てり幸田柝の音
秋の田や自治会長の三年目こうだ知沙
秋の田や始発駅より続きをり宏楽
秋の田を一筆書きに風のゆく郷りん
秋の田に一人座りて一人影ごーくん
握り飯美味し秋の田あと二反古烏さや
秋の田や清しく一人歩き行く越乃杏
秋の田も神社幟もはためけり小杉泰文
婚礼の幟か秋の田の遠く古知野朝子
秋の田やけふは一粒万倍日五島潮
秋の田に倒れ込んだる風の跡虎堂吟雅
納屋で注ぐホットワインや色づく田後藤周平
太巻の桜でんぶと秋の田と古都鈴
黄金の竜らと秋の田を駆け抜け粉山
秋の田や都会へつづく送電線このみ杏仁
試験の手応え金色の秋の田小箱守
汽車過ぎて秋の田揺るる暮光かな小林昇
秋の田は黄金の湖や墓三基小林脱太郎
秋の田のたわわ切り裂くレンタカー駒茄子
秋の田や義父の一字を子にもらふ小山晃
秋の田の烏天狗の落し胤GONZA
秋の田やトパーズ色の風連れてさいたま水夢
極楽てふ駅秋の田の真ん中に彩汀
秋の田へ朝はひかりの手を広ぐ齋藤桃杏
岩戸の開きし音秋の田をひかり斉藤立夏
秋の田に鬼の宴や尻の跡さおきち
秋の田や右向け右は肩が凝るさ乙女龍チヨ
秋の田へ向かふツナギの背に「KUBOTA」さかえ八八六
秋の田や戦禍なき日が老いてゆく坂口いちお
寛いだ手足押し当て田色づく坂島魁文
秋の田やモネのタッチで写生会さかたちえこ
秋の田や邪馬台国はどの辺り坂野ひでこ
秋の田のきっぱり空と地を分けて坂まきか
揺れそむる秋の田果ては大波に咲まこ
軽トラへ乳母車積み秋の田へ櫻井こむぎ
秋の田や母乗せ弔い上げの法要へ櫻井弘子
秋の田にとぷんとつかる落暉かな桜鯛みわ
ほろ酔いて秋の田揺るる音色かな桜華姫
秋の田や石蹴りの児と石去りぬ雑魚寝
天に鳶けらばに雀色づく田笹桐陽介
秋の田の先にふるさと待ちゐたるさざれいし
秋の田や軽トラ揺るる美空節佐藤恒治
秋の田や五分遅れの知事と秘書佐藤茂之
秋の田や伊勢路はずつと風うまし佐藤志祐
秋の田や鎮守の森に幟立つ佐藤俊
秋の田をゆつくり過ぎりたし出勤さとう昌石
秋の田に風跡取りに良か嫁御さとうナッツ
秋の田を風さんばららさんばらうん佐藤ゆま
秋の田や出羽三山の影蒼し佐藤レアレア
秋の田や村のホールのブラームス里こごみ
秋の田の囁きにつれさられさう錆田水遊
秋の田や揺るる落暉を宿しゐてさぶり
秋の田や家族葬告ぐ回覧板彷徨ういろは
ビル建ちてここより秋の田のいびつさむしん
少しずつ秋の田となる曲がり角紗藍愛
故郷の田の色やはし帰り道佐柳里咲
秋の田の車窓を伴に婚約者珊瑚霧
前後左右秋の田にして離婚の日慈雨
秋の田や祖父に外泊許可おりる四王司
秋の田の一号車から刈られけり塩田奈七子
秋の田や日は曇天を切り分けて柿司十六
秋の田や秋田大潟一直線篠雪
秋の田の金のかやくのにほひかな渋谷晶
津軽路や田の色を来て田の色へしぼりはf22
古き傷疼く朝ただ秋の田眺むシマエナガ深雪
谷あいの秋の田他県ナンバー来島田あんず
秋の田の発火しさうな風の饐ゑ清水縞午
秋の田に牛方荒き息あはせ清水ぽっぽあっと木の芽
秋の田の燃えつきそうな入日かな清水容子
秋の田や十年ぽっちの自負の色霜月詩扇
スマホからYAZAWA秋田は黄金色霜月シナ
窓辺は秋の田蕎麦の注文待つ下丼月光
まつすぐに空と向き合ふ秋の田は下村修
豊作や秋の田の重き心音じゃすみん
秋の田を斜めに新幹線真直ぐ洒落神戸
集落と横たふ秋の田や湖北柊二@冨美夛
秋の田は舞を舞ふよにかしこまる種種番外
秋の田や神世を継ぎし陽の器シュリ
機影過ぐ秋の田の波重たげにじゅんこ
秋の田や風は風へと転生す常幸龍BCAD
秋の田も波立つや子の初安打白井佐登志
秋の田の線の向こうは日本海白沢ポピー
黄金の祈りくくりて秋の田に白よだか
秋の田を分厚き風や佐賀平野ジン・ケンジ
秋の田や囃子遠くに山車の影新森楓大
秋の田の芳し今日は快晴だ深幽
秋の田に影つらなりて棺ゆく水都かほりこ
秋の田や近江国を渡る雨杉浦萌芽
秋の田の四隅の土を起こしをり杉森大介
秋の田やおこげ混じりのむすび飯鈴木由紀子
秋の田のゆらぎヨナ抜き音階に鈴白菜実
ご苦労に様つける秋の田の畦鈴野蒼爽
秋の田へ山裾延ばす高御座静江
能登の海何事もなく色づく田青児
秋の田が揺れ海女小屋に火を入れる青峰桔梗丘
秋の田の夫婦ますます顔の似て瀬央ありさ
術後なる眼裏に秋の田はとうとうと瀬紀
秋の田や軽トラたたた初背広宗珂
秋の田やリンゲル液に風見ゆる走人
秋の田や奥羽山脈雲の中そうま純香
秋の田の鳥居の幣の白さかな草夕感じ
秋の田に埋もれる土地の広告板そぼろ
秋の田のぐるりを走る卓球部染井亀野
ちんまりと古墳浮かばせ秋の田は空豆魚
平日の秋の田の風がだだ漏れぞんぬ
秋の田や母の自慢の兄達が駄詩
秋の田をそよがす風のフェルマータたーとるQ
秋の田の我に鬣ありさうな大地緑
秋の田や健やかに老い祖母白寿高尾一叶
ぼうぼうと流るる河よ秋の田よ高木音弥
秋の田や皺深き祖母の手の見事高嶺遠
秋の田の風を封蝋として閉づ高橋手元
秋の田の座標がきれい弧がきれい高橋寅次
越後路を真つ直ぐ秋の田を真つ二つ鷹見沢幸
秋の田や海へなだるる明るき黄たかみたかみ・いつき組広ブロ俳句部
秋の田へ扉を放つ退院日高山佳風
秋の田へ農機の機嫌聞きながら滝川橋
秋の田やところどころにつむじあり竹内不撚
秋の田やにはかに風のかうばしくタケザワサトシ
手のひらを太陽に秋の田の万歳武田豹悟
秋の田を足下虎臥城聳ゆ竹田むべ
秋の田や誰も初めは三輪車たけろー
秋の田の防災無線ひづみけり多数野麻仁男
姨捨や川流るごと色づく田ただ地蔵
カンバスや秋の田の音閉じ込めむ糺ノ森柊
着陸態勢ぐんぐんと秋の田ただの山登家
病窓をあけて秋の田ながめけり立田渓
秋の田やあの作業着は僕の父立田鯊夢
秋の田や工具だらけのメットイン辰巳電柱
秋の田や棒読みの校内放送立石神流
スマホからカーペンターズ秋の田を谷斜六
秋の田の凹んで風の波しぶき谷しゅんのすけ
秋の田やベートーべンの曲うねり谷町百合乃
秋の田や名前連呼の選挙カー田上南郷
秋の田や株価伝えるカーラジオ田畑整
秋の田や風はひかりを織るやうに玉家屋
鎌の子が熊手の子呼ぶ秋田かな玉木たまね
秋の田の出来確かむる腕若し玉響雷子
秋の田を手のひらで撫で匂ひ芳ぐ玉響海月
秋の田を指して全ては売らぬとふ田村利平
腐蝕土は楚々秋の田の不発弾丹波らる
秋の田をE6系の警笛がチームニシキゴイ太刀盗人
秋の田や鎮守の森は雨催竹庵
秋の田の根元ぬらりと潜みたるちさいちそく
太陽が味方秋の田引き返す千歳みち乃
秋の田の四つ辻ひらく風の神千葉右白
秋の田や元野球部の腿太きチバミロ
助手席に社長秋の田暮れかかる彫刻刀
風の間の祖母の鼻唄秋の田にちょうさん
秋の田や阿龍吽龍天翔るちろりちろりみゆき
からくり箱開ければ秋の田のひかりつえりん
秋の田の傾ぐや風は神の慰撫つくばよはく
秋の田の香にサモエドの尾の崛起つちや郷里
秋の田や売りの看板かかげらるつついぐれちゃん
酒の来て秋田の地蔵しやべりだす津々うらら
余所者にゃ売らぬと秋の田へ沈むツナ好
垂れて垂れてまた秋の田の暗がりに爪太郎
秋の田や空鉄砲は効き目なしツユマメ・広ブロ俳句部
秋の田に別れの風の渡りけり手嶋錦流
秋の田や花嫁行列の長し哲庵
秋の田に夕日堕つ明日どうなる哲山(山田哲也)
秋の田や都会へ帰る靴磨く土井あくび
秋の田やお顔のちがふ壱萬圓トウ甘藻
秋の田へ言祝ぎのごと天気雨とかき星
兄妹の稽古太鼓や色づく田ときめき人
ロープウェイ上る秋の田どこまでも常磐はぜ
病みて瞼に秋の田は黄金徳庵
秋の田にすうと落ちたる雲の影Dr.でぶ
秋の田ざわざわと真ん中にイオンどくだみ茶
秋の田や電車の眩しいほうの窓どこにでもいる田中
秋の田やはろばろと皆飛び立ちぬとなりの天然水
秋の田の野良猫背中かゆいかゆいとなりの天然石
夕つづの饒舌秋の田のよぢれ戸部紅屑
人の子も神も秋の田通りゃんせ苫野とまや
秋の田の刈られてゆくを見る三限冨川ニコ
秋の田や酔拳めきし風の波富野香衣
秋の田や空の分だけ広がれり登盛満
秋の田の中の我家の売れにけり富山の露玉
秋の田や新幹線の過ぎる町とよ
後継ぎはいない色づく田だけある鳥田政宗
秋の田や前に耳成背に畝傍豚々舎休庵
秋の田は月の匂ひをそよぎけり内藤羊皐
生徒皆鎌を手にして秋の田へ内藤由子
秋の田や賢治の手帳の走り書き中岡秀次
秋の田を縫うてキハ40来中尾鎖骨
絹糸の手触り秋の田の湿りなかかよ
秋の田の果てに海の音ありにけり中島紺
後継の子と秋の田の昼餉かな中島走吟
秋の田や厄割玉に息を吹き永田千春
秋の田と父の口癖継ぎにけり中原柊ニ
秋の田の風のつなぎし主旋律仲操
秋の田に埋もれる体操服の子ら中村明日香
秋の田の左右に見ゆるひとり旅夏草はむ
秋の田をシャチのやうなる機影行く夏野夏湖
汽車はよぎる秋の田を舟のやうに夏雨ちや
秋の田のひかり賜はる寡婦として七瀬ゆきこ
一駅を秋の田だけの芸備線7パパ・広ブロ俳句部
陽のひかり集め秋の田豊けしやなびい
水落ちてふくらむ秋の田の四辺奈良素数
秋の田の波間に岬めく城址西川由野
秋の田や晒に仕舞ふハイライト西田月旦
秋の田に祖母煮しめたるいなごの香西原佳黎
秋の田を風は背泳ぎしてゆけり二重格子
秋の田や遺産分割協議果つ二城ひかる
看板は秋の田にあり喫茶店入道まりこ
秋の田のうねり夕日を宥めをり仁和田永
駅発てばたちまち秋の田になりぬ庭野環石
秋の田は己に祈るようであり布川ユウリ
秋の田を狙ふ豪雨となりにけり沼宮内かほる
秋田凪ぐ古墳に定礎あるやうに沼野大統領
コンバイン船出のごとく秋の田へ猫塚れおん
塊の風が秋の田転がりぬ猫ふぐ
秋の田や誰ともなしに詫びたき日猫またぎ早弓
秋の田や六人乗せた乳母車根々雅水
秋の田に風の出入り口無数野口雅也
秋の田や駿馬駆けゆくごとき風野地垂木
金箔に競ひて揺るる秋の田よ野瀬博興
秋の田へ西寄りの風甘い風のなめ
秋の田を水琴窟の音が渡るののクラブ
秋の田や大臣揺れて穂も揺れて野の小花
秋の田や帰つて来いと風の言ふ野ばら
秋の田や大切なのは心の向き野原一草
秋の田はきらい荒んだ手もきらい野山恵生
秋の田の波よわらべの拍動よのんきち
秋の田の穂波を裂いて救急車波止浜てる
秋の田を愛でているよな岩木山馬笑
秋の田や明日も百年後も人は蓮井理久
秋の田を終日風と観ていたり羽住博之
秋の田や小舟のごとき合戦碑長谷川水素
秋の田や家庭科室の洗濯機葉多豊
演奏を終えて音符は秋の田へ八田昌代
秋の田に神が居るらし風騒ぐ花咲春
見下ろせば眩しき秋の田に神話花南天あん
秋の田の風より出でし翁かな花はな
秋の田にきらり縄文土器欠片花彼岸
秋の田や童謡の溶けゆく暮光はなぶさあきら
秋の田や眼下の海へ茜色英凡水
神が落とした扇は黄金色づく田花見鳥
秋の田を四角く父は歩きけりはむこ
秋の田の磐座へ日の隠れけり葉村直
秋の田や週に一度のとくし丸原島ちび助
秋の田のあぜをひよこひよこ画板の子原水仙
風通ふ秋の田移動動物園原田くろなつ
釈迦如来微笑む先に秋の田ぞ原田民久
秋の田に神も一服なさりやうぞ巴里乃嬬
秋の田を辻馬車ぽくりぽくりかな晴田そわか
秋の田や荷台の猫は風来坊春野ぷりん
秋の田をほのぼのと抱く最上川春海のたり
秋の田の続く車窓や三回忌はれまふよう
秋の田や木の根に父母の魂います東沖和季
秋の田や双子の吾子の小さき歯東田一鮎
秋の田に柏手のごと鳥祓う匹田小春花
単線のホーム秋の田せまりをり樋口滑瓢
秋の田をゴム長靴の陛下かなひでやん
よき時に来られなさつた田の色の一石劣
秋の田やコロッケねだる子のLINE日向こるり
学校にいけないまんま色づく田ヒマラヤで平謝り
秋の田を刈りゐる若きボランティア平井由里子
秋の田や荼毘の煙のふくらかに平本魚水
秋の田や移住募集の立看板比良山
秋の田や吹かねど風のあるやうで平山仄海
秋の田の黄金の海を漕ぎ出づる浩子赤城おろし
秋の田や虫害という穴ふたつ廣重
防鳥紐びよよん秋の田の小鬼広島じょーかーず
秋の田を覆へる神の見えざる手広瀬康
秋の田の穂浪の寄せる庵かな廣田惣太郎
秋の田と富士山走る車窓かな琵琶京子
秋の田の実家に戻るハイヒールフージー
郷音や秋の棚田の忘れ水風慈音
秋の田や金、銀、鉄なら僕は金ふくじん
秋の田や風にこぼれる千の鈴福ネコ
秋の田や重機の上で握り飯ふくのふく
秋の田や水飲む祖母の腰太し福弓
秋の田やたとえ逃げても吾のルーツ藤井かすみそう
秋の田の朝を車輪の翼いろ藤里玲咲
鎌で刈る重さに感謝秋の田よ藤沢・マグネット
星に応ふるよ秋の田ささめくよ藤白真語
秋の田やしこ踏む祖父の帽子飛ぶ藤永桂月
秋の田や立ちこぎ少女点になる藤本だいふく
捨て畑に挟まれ秋の田に浮力ふみづきちゃこ
秋の田のいよいよ猛る電気柵冬島直
秋の田の中に取り残されし風古織沃
秋の田や火の神とひかりの王と古瀬まさあき
真間の井の手児奈が影の秋田かな文室七星
ささやけば祈りは風となる秋田碧西里
秋の田やトシ坊んちも墓じまいペトロア
秋の田や遠き祝歌は風にのり芳醇
秋の田の穂波の垂水光りけり房総とらママ
農水大臣秋の田にようこそ暮戯
秋の田や子に金の鈴銀の鈴黒子
秋の田や海の香吸うて千枚田星雅綺羅璃
秋の田を背負ふやじきに星が落つ星屑今日子
原付の警官秋田をぷぷぷぷほしぞらアルデバラン
誕生日殊にかがやく秋田かな星月彩也華
秋の田のまぶし抜毛症つらしほしの有紀
最後かなじいじ呟く秋の田にほたる純子
ふる里を捨て秋の田の美しき堀卓
夕闇に秋の田匂ふ戻り道前田冬水
秋の田の透き間縫ひたる駅伝部槇原九月
冠水の秋の田に雲こぼれけり牧茉侖
秋の田の似合う二宮金次郎まこと七夕
秋の田や老いたる友へ遠会釈正男が四季
秋の田に田舎のぽるしぇ置きっぱ正岡田治
秋の田を抜けて豚小屋叔母とゆく正川素宇
通学路の家の狭間に色づく田増山銀桜
秋の田や風の揮毫のやはらかき町田勢
秋の田やわっしょい届け蘇我神社松岡才二
黄泉国へ境界として色づく田松坂コウ
秋の田や筑波二峰の嶺青し松平武史
秋の田や成仏前の父の影まっちゃこ
秋の田や戦跡を隣り合わせに瑪麗
秋の田の芯まで乾くけふの風毬雨水佳
秋の田やじいちゃん今日も音痴やな丸井ねこ
秋の田やうちの屋号は精米所丸山隆子
秋の田や星落ちゆくと噂あり丸山美樹
色づく田死は昔ほど怖くない慢鱚
秋の田のはろばろ水城を芯に三浦海栗
秋の田は赤子のかほりやや甘し三日月なな子
秋の田や晴れの日鎌の連絡帳三河三可
秋の田や瑞穂の国の芯の芯三茶F
秋の田の田ごとに貌と仔細あり岬ぷるうと
車窓から秋の田揺れて乾く指みさわこゆき
いくつかのシャッター音や秋の棚田水越千里
秋の田を任せし人に手を振りぬ水須ぽっぽ
秋の田やここでスパート持久走mr.kikyo
秋の田はどの田が誰か雄弁に巳智みちる
レンタルの大鍋秋の田をいそぐ満生あをね
秋の田や讃岐の富士を浮かばせてみつれしづく
秋の田や集ふ母校の解体日港のパン屋
いろは坂降りて秋の田風匂ふみなみはな
空っぽの吾や秋の田は黄金源早苗
秋の田を斜めによぎるハイウエイ嶺乃森夜亜舎
秋の田にさびしんぼうのいる気配深森明鶴
秋の田や目の奪はるる石包丁みやざき白水
秋の田のゆれればそこに在るいのち宮下ぼしゅん
秋の田をロバのパン屋のチンカラリンみやま千樹
秋の田やこきりこ節のひとつでもみらんだぶぅ
秋の田や媼の黒き顏と爪麦乃小夏
警官人形秋の田にだうだうと椋本望生
秋の田をドローン畔を行く女優無弦奏
秋の田や背広を脱いでみちのくへムシ・ミカミ
蒼天をささえ秋の田みじろがず霧想衿
秋の田やドミノ倒しの風吹きて村上の百合女
秋の田熟す腰もかうべもひとも垂る紫小寿々
秋の田を光刈り取り風わたる暝想華
畦といふ罫秋の田のあふれ出づ茗乃壱
秋の田や風神来るえくぼ跡恵のママ
人一人逝きぬ秋の田青の空目黒青邑
秋の田を滑りゆくダイダラボツチ藻玖珠
秋の田へ陽のまなざしの柔らけし本村なつみ
秋の田に加はる立体ハイウェイ百瀬はな
秋の田や空を打ち抜くラッパの音桃園ユキチ
秋の田の水に棲むもの消えしづか森上はな
秋の田や古寺巡りのペダル音森佳三
秋の田や浮島のごと無人駅森茂子
秋の田を漲らせたる地球かな森重聲
秋の田は朗らか異邦人の列森太郎
秋の田を抜ければ給食センター森中ことり
秋の田よ胸に鳴らしてゐる太鼓森葉豆
秋の田や6年生の鎌2本杜まお実
秋の田や地を踏み返すアキレス腱森毬子
秋の田の濁点として飛ぶドローン森萌有
秋の田の風かんばしき京番茶もりやま博士
秋の田に電車は2両猫1匹諸岡萌黄
佐藤さん秋の田も実習指導もろ智行
秋の田をひっぺがすてふ義父の腕山羊座の千賀子
恋をして異国の秋の田に眠る弥栄弐庫
風わたる秋の田神の撫でるごと安田伝助
秋の田の香り吸い込む生きている痩女
秋の田や今年の粒は大きいぞ柳とうふ
秋の田を抜け花嫁は神社まで八幡風花
田の色に歪む認知を正しけり山口絢子
秋の田の大海原に立ち尽くす山口愛
秋の田や吾子は健康優良児山崎力
秋の田や風たおやかに地震の国やまさきゆみ
雨の日も洗濯秋の田は光る山里うしを
風猛りつむじ曲りに秋田折れ山田季聴
秋の田や渋谷乗り換え四千歩やまだ童子
秋の田や最後の学費払い込み山田はつみ
秋の田を長者となりてどこまでもやまぶき
秋の田やみぎとひだりのあしでゆくやまもと葉美
会心の笑み秋の田の仁王立ち山姥和
秋の田や生活水路生きている八幡浜うさの
秋の田を天に捧ぐる器とす有野安津
秋の田の真中の字の吾の在所宥光
秋の田や合鴨を潰す祖父の爪雪鶏
秋の田へ入れば人も暮色なる柚木みゆき
秋の田やセロ弾きの音の窓ゆする柚子こしょう
風の道神渡りのごと秋の田に宙美
秋の田や都土産の四合瓶陽花天
秋の田をディーゼル列車被くかに羊似妃
秋の田や月夜が描く金の海横浜順風
五円玉覗く秋田のなか秋田横山雑煮
秋の田や「おらいの嫁」と紹介す横山ひろこ
秋の田やここは未踏の惑星か吉成小骨
日の出づる国の秋の田あらたかに余田酒梨
秋の田や代わり番こに九九唱え楽和音
天照秋の田美しき民の圀楽花生
秋の田の葉擦れやヒメミコの噎びらん丸
秋の田や累代の墓によつきりと理佳おさらぎ
秋の田の神と杯交わす父りこばば
秋の田や里の訛りの鼻濁音柳絮
竜の尾のごとき風秋の棚田へ竜退治の騎士
秋の田や柄振の胝に馴染む手箕ろまねす子
秋の田や考の仕事と考の香と若林くくな
秋の田やうっとり倒れ女たち渡辺香野
秋の田や男鰥に嫁の来し渡邉花
秋の田や秒針のなき地平線渡邉わかな
選挙カーぬかるみ朝の秋の田へ亘航希
秋の田を褒めて僧侶のスクーター笑笑うさぎ
南部藩の広き平野よ秋の田よ越智空子
水郷を田舟や秋の田の権座川村湖雪
長靴に秋の田の泥乾きおり北乃大地
千枚の秋の棚田の畦細し京野秋水
秋の田やお菓子みたいなラブホテル公木正
実家無き常念岳と秋の田と沢拓庵◎いつき組カーリング部
秋の田や干されしままの洗濯物鈴木秋紫
見晴るかす平野秋の田津軽富士天童光宏
秋の田や雨に濡れをるゴムボール天王谷一
秋の田の片隅に建つ開墾碑豊岡重翁
集合は秋の田十時「わらの会」ねこの☆さんぽ
穀の力とふ幻想や秋の田の支配逢來応來
秋の田や八十八の手間をかけ秋月あさひ
伏す向き同じ電柱も秋の田も朝雲列
秋の田や祖母の腕の匂いかな藍創千悠子
石包丁こっそり試す秋の田で池田華族
歩いても歩いてもなお秋の田やカワムラ一重
秋の田や期間限定散歩コースちえ
黄金を極む落暉と秋の田と冬野志奈
秋の田の歌は懐かしフォークソング遠峰熊野
秋の田やドローンに攻撃されてゐる西尾至雲
秋の田や白山仰ぐ背中丸く白山おこ女
秋の田や肩たたき券使用決め伏見レッサーレッサー
秋の田や下校のチャイム遠くより冬野捨離
秋の田の余白は園児の植えし田か古川しあん
広角に収まらぬほど秋の田よ古澤久良
秋の田の刈機を操りたるサテライトへほの香庵
秋の田は時給一円の結晶や三高姫
秋の田や昭和歌謡のステーション森きやつか
秋の田のやまぶき色のほかになし山本栄子
秋の田やおっぱい大きかったよなぁ吉野川
時満ちて傷癒ゆる日よ秋の田よ相生三楽
秋の田を夕日舐めるがことくなり愛燦燦
年の瀬と隣り合わせの秋の田や会田美嗣
秋の田や空を狭める千枚田あ。うん
奥能登の海に向こうて色づく田青井季節
秋の田に一人ぼっちの影法師青井心平
秋の田へ少年集まり自主映画蒼井憧憬
隧道を抜けて開けた秋の田よ青橘花
秋の田に飛び込む犬を見失うあおのめ
秋の田にムーンウォークの影法師青星ふみる
秋の田を全速力に駆ける君赤富士マニア
秋の田を我が物顔ぞ鳩すずめ赤目作
秋の田や頭垂れるは誰のため空き家ままごと
実りあり秋の田のうえ星降りて芥川春骨
色づく田日昇り初むる海のごと圷小夏
真昼どき波打つ秋の田輝けり朝陽
あおそらに秋の田映えて我躍る亜紗舞那
義父負傷土砂降りの夜の秋の田にあさみあさり
秋の田や紀州は五十五万石あじさい卓
秋の田の畦道遠し帰り道あすなろの邦
秋の田や段々畑は2部合唱明日に翔ぶ会
秋の田や守りつゞけてくれと父明日ぱらこ
秋の田に幼な子走る日の匂ひ愛宕平九郎
秋の田の風も嵐もうっせぇわ渥美こぶこ
秋の田を見遣る父の手母の手へあねもねワンヲ
黄帽子の見隠る秋田過疎の郷雨乙女
秋の田やチョウサジャの声響きおり雨降りお月さん
秋の田を眺めバス待つ日曜日雨李
秋の田や枯れゆく我の黄金期新井ゆう
秋の田やパッチワークの夕景色荒木響
秋の田の畦を埋むる赤き花荒木ゆうな
「増やせ減せ」ゆらぐ秋の田夕日貯め蛙里
秋の田を進む列車よ北陸路有田みかん
秋の田の波打つひかり豊かなり有本としお
秋の田の粒の丸みを愛で歩く在在空空
田の神のお坐す秋の田穂は重し淡湖千優
秋の田をナンバーワンの新車行く杏っ子
秋の田へ早い者勝ち米店主飯田淳子
秋の田や山を境に青と金郁松松ちゃん
陽が落ちてにぎやかなりし秋の田は池田悦子
秋の田よ自転車漕ぎの通り過ぐ伊澤遥佳
車窓に秋の田あらわれし世界遺産伊澤ゆき抄
秋の田の倅の問ひに「んだねっ」為参
秋の田の今年も光る稔りかな石井久次
秋の田のコンバイン君の前腕石垣エリザ
秋の田や鎮守の森に一礼す石堂多門
秋の田やベビーカー押す碁盤道石原しょう
明日は刈る秋の田圃は父の汗石本美津
秋の田や道で語らふすずめ達泉恵風
秋の田の波渡る伯父小康や和泉園実
占いは小吉眩しき秋の田や市川りす
秋の田やまだ刈り取らぬ夫の黙無花果邪無
秋の田の仮庵の庵の昔かないつかある日
秋の田や鷺追い抜いてラジコン機一慎
秋の田をドローンの波探索中五つ星
秋の田の風は金色陽の匂い伊藤亜美子
柴の背と秋の田に日の照映える糸冬因果
秋の田へ祝詞足元には手鎌伊藤恵美
故郷の秋の田映すスクリーン伊東海芋
秋の田や捲る敷物コンバイン伊藤薫
恵那山にいだかれ秋の田照れり伊藤節子
秋の田や一番偉い時は過ぎ伊藤なお
秋の田やおこぼれ狙う鷺三羽伊藤ゆかり
秋の田やあちらこちらで捲れゆく井口良範
秋の田をまた秋の田を朝日さす井原昇
秋の田の呼吸する穂の香ばしきいまい沙緻子
満面の笑みを浮かべし秋の田よいまいみどり
秋の田の真青の空にジェット音いまいやすのり
秋の田を越えて越えてコンビニへ伊代ちゃんの娘2
秋の田にかがめば五歳の吾のいていわさちかこ
秋の田や赤べこ列車ガタゴトと岩佐りこ
秋の田や黄金の上の空青し岩田秋雀
秋の田や笛や太鼓やちゃんぎりや上野徹心
秋の田を被うアートや空の青上原まり
秋の田や山裾までは継目なく鵜飼ままり
秋の田をゆく子かける子うつむく子うつぎゆこ
秋の田の音に沿って人進む宇野翔月
秋の田や風に実りの現聴く卯の花京
秋の田に風のいたずら残りけり海沢ひかり
秋の田の風が再び土匂ふ浦城亮祐
秋の田に今年の成果現れる越中之助
秋の田や忘れたはずの空騒ぎ絵十
秋の田やコンバインから穂の香りえのき絵巻
コンバイン秋の田走り雷紋にえのき筆丸
秋の田に満ちる宝をすくい取り榎本奈
秋の田の田んぼアートに酔いしれるえみくれ
秋の田に腰の曲がりし母一人ANGEL
風一陣秋の田の面を騒がする遠藤千草
秋の田の揺れる黄金とトの教え大江戸小紋
秋の田や明日はいよいよ刈る日とす大久保一水
秋の田へリコーダー吹く子らの列大久保加州
秋の田よ磐梯山よ青空よ大越総
秋の田や午後の緑茶と徒話大越マーガレット
早朝の靄る秋の田薄黄金大阪駿馬
秋の田やここにあったか家の鍵大澤眞
秋の田はプレイランドや昭和の子大澤道史
秋の田や夕日の色の濃くなりぬ大嶋宏治
秋の田や祖父母に父母に子らの声大竹八重子
秋の田の犬と散歩や立ち話大舘さと
秋の田や櫛へ任せる黒い髪太田怒忘
秋の田の香やしみじみと心まで大塚恵美子
秋の田の父親参観手を上げておおとみたかこ
トンネルを抜け秋の田に迎へらるおおにしまこと
秋の田や叱って叱って叱られて大野美波
秋の田を通る電車に渡る風大原妃
秋の田を手繋ぎ帰る参観日大原雪
光揺らめかせ秋の田揺るぎなし岡一夏
秋の田の待てど緑の褪せぬとは岡崎佐紅
秋の田や黄金の緞帳杭列に岡崎未知
秋の田やこれが最後じゃ叔父なみだ岡田いっかん
秋の田や古人の歌が舞い岡田恵美子
風とおり秋の田帽子おいかけるおがたみか
秋の田を吹けり荒野の用心棒男鹿中熊兎
秋の田の風害測る蓑濡らし岡根今日HEY
秋の田や角(すみ)刈り励むおじじ様オカメインコ
秋の田や美しさ映ゆ金の色丘るみこ
息を飲むごとの黄金秋の田よ小川紅子
秋の田や鳳凰の今羽ばたきぬ小川さゆみ
秋の田を明日刈ると爺うなづく婆荻原玲香
ミニバスの巡る秋の田二枚かな沖らくだ@QLD句会
秋の田や葬送の列見送りぬ奥寺窈子
風乱れ起きて倒れて色づく田おこそとの
秋の田や遅延電車へ頭垂れおつき澳吉
秋の田は夢路の先に米坂線御成山
秋の田の一枚二枚と外来種おにやんましゅう
秋の田の黄金の実り憂う朝十八番屋さつき
秋の田をガタンゴトンと地平なり海堂一花
秋の田や遠くコンバインの響き案山子<いつき組広ブロ俳句部
秋の田に曲がる腰が見え隠れかきとみかん
秋の田にメタバースへの門ひらく影夢者
色づく田はしゃぐ雀の声ふたつ風花
秋の田に呼ばれし鳥虫急ぎ来る梶浦和子
地図中に秋の田を刈る生きる祖母甲糸寿
秋の田や光る穂先へ一礼す鹿嶌純子
秋の田よ鎮守の森よ里人よ赤い花弘
フレームに秋の田誇る四世代雅翠
秋の田や6年2組四十(しじゅう)の手風かおる
はさがけの穂の香よ満ちて秋の田や風の川
「もういいかい」ひそむ子どもと秋の田と風の母
秋の田を鈍行列車通り過ぐ片岡明
単行列車秋の田を日に五本帷子砂舟
秋の田や「こまち」の窓は黄金色花鳥風猫
皓月に恋うる秋の田恥ずかしげ桂葉子
秋の田に一陣の風迷路めくかとゆこ
年毎に遠く懐かし秋の田よ金澤孝子
秋の田や自転車のベル放り込む叶田屋
秋の田の沁みる黄昏茜雲金子陽
秋の田や永遠の命もあるかもね神長誉夫
風吹けば波の合唱秋の田よ亀岡恵夢
我が街に残る秋の田鳥を呼ぶ亀くみ
秋の田を行く自転車のヘルメット亀田ミノル
秋の田や風の形に稲倒れ亀山逸子
秋の田の左の道を病院へかもめ
黄金色染まる秋の田明日は雨カラハ
秋の田を進む車窓や温容とかろりーな
秋の田に熟した我を重ね想ふがんも三世
秋の田や開封済みの備蓄米季川詩音
秋の田はドミノ倒しに変わりゆき季紫子
秋の田にゆらゆら動く老夫婦酒暮
秋の田の色ぬりかえるコンバイン北川茜月
秋の田の兄の秒針すれ違ふ貴田雄介
秋の田や車検の切れた軽トラよギックリ輪投げ
園児らの声音響ける秋の田へ黍団子丸
秋の田やパッチワークに紡がれて君塚美蕉
秋の田や土鍋ごはんにバターの香木村カズ
秋の田を談笑しつつ祖父と父木村修芳
秋の田に遠く鋭く鬨の声木村信哉
秋の田や田んぼアートの古代米Qさん
秋の田の金色眩し夕空にQちゃん・広ブロ俳句部神奈川支部
秋の田これから農繁いざ出陣京極江月
秋の田の一本道よペダル漕ぐ清鱒
秋の田をかすめて飛ぶやオスプレイくぅ
秋の田や地球亡びる五分前句々奈
都会より秋の田刈りに来る笑顔國本秀山
秋の田を刈る手止めれば遠山かな窪田和子
にいにいがほつとしてゐる秋田也倉岡富士子
秋の田や曾孫に会う旅伊予の母ぐりぐら京子
秋の田や帰っておいでと光る朝黒瀬三保緑
秋の田にメジャーリーガーの夢集う黒田良@しろい
秋の田の畔でほおばる握り飯桑田栞
一面の秋の田ゆくり雲の影くんちんさま
秋の田やひかりと風の媾ひて恵勇
秋の田やお下げの髪の通ふ畦家古谷硯翠
田の色のミラーまばゆし北陸道謙久
秋の田やたゆる電線鳥の列河国老保忠
秋の田を餌の住処となりにけり紅紫あやめ
秋の田や風の形に波打ちて柑たちばな
二百キロ真ん中走る秋の田をこきん
秋の田の真ん中貫く新幹線黒望
秋の田やたわわなる穂に笑み分ちココヨシ
車窓越す満員の目に秋の田や胡秋興
秋の田やゴッホの彩り広がりて湖水鈴
秋の田の黄金を愛づる鳶の笛コダマヒデキ
峠道越えれば秋の田黄金萌ゆ後藤真昼
秋の田や紅白帽の見え隠れ後藤三梅
金色に輝く雲と秋の田と後藤葉羽
秋の田や空砲に散る群雀来冬邦子
秋の田に猫一匹のすみかあり子猫のミル
秋の田や黄金波打つ強き風小林澄精
秋の田に最後の手入れ日の落ちぬ小林のりこ
秋の田や稔りのゆらぐ音となる小林久女
とろ箱の田も秋の田となりにけり小林理真
秋の田や観音様の笑みそよと独楽
秋の田に遮ぎるものなし大鳥居こむぎ
秋の田の畔に座りし絵描きかな碁練者
秋の田や黄色一色晴ればれだコロンのママ
秋の田のランランララランランラン今藤明
秋の田に茜さしたる明日香かな埼玉の巫女
秋の田は黄色と緑交わって齋藤鉄模写
秋の田に生きるヒトあり獣あり酒井春棋
豊作の金波がうねる秋の田や坂本千代子
秋の田や長雨になほ凛と立ち坂本雪桃
秋の田の賑やかな鳥追えど来る相良まさと
秋の田に機窓は黄金旅初日咲代咲
秋の田を満願成就願いつつさくら悠日
秋の田や赤き自転車黄金裂く佐々木佳芳
秋の田や人任せなる父遺産さざんか
秋の田や風の奏でるアルペジオ砂月みれい
寄り道をして秋の田に出合いけり佐藤公
秋の田やアートフレーム畔の赤佐藤佳子
秋の田や託す決心人知れず沙羅双樹サリー
秋の田に手を合はせハーフマラソン百日紅
秋の田や山村留学マユミさん澤田紫
秋の田やソーラーパネル点々と沢山葵
秋の田やサイドミラーに黄金色さんなんぼう
秋の田やコウノトリ舞う奥出雲塩風しーたん
秋の田に家族総出のよろこびよ塩沢桂子
秋の田のソーラーパネル堕ちた空塩の司厨長
秋の田やおおらかに飛ぶ鳥の群れじきばのミヨシ
軽トラに鎌とイーゼル秋の田へじつみのかた
ミステリーサークルまた生むか秋の田島掛きりの
秋の田や一面暮色にしづまりて島田ユミ子
故郷の秋の田思ひ飯を炊く霜川このみ
しばらくは会えぬ祖父母の色づく田沙那夏
秋の田に義父はかつらと繰り返す砂楽梨
秋の田やコンバイン描く四角形秋芳
空の下凪の秋の田波打ちて春光響
秋の田や鳥居と風と神と空じょいふるとしちゃん
秋の田に見とれる父母の姿なし正見
秋の田や鳥渡りぬれ来ぬ何も白石鈴音
秋の田へピンクと青のランドセル白石美月
秋の田の牛はうとうとするよだれ白井百合子
秋の田に飽いた子雀また明日不知飛鳥
秋の田やワインディングの手向花四郎高綱
秋の田を愛でつシルバーカーの歩度白猫のあくび
秋の田や茜の眩し山の影しわしわ
黄金色満つ秋の田の農日記新濃健
晴朗のそぼつ秋の田輝けり西瓜頭
秋の田や路に数多の土の跡末広野暢一
秋の田や出雲駅伝穂がゆれる杉浦あきけん
秋の田に首を垂るる祖母の影杉岡ライカ
秋の田を眼下に走る日光路杉尾芭蕉
秋の田やいかるがの塔を夕景に杉本果ら
秋の田にUFOの降りた跡涼風亜湖
秋の田よ稲刈る汗とGショック鈴木季良恵
秋の田や啄ばむ鳥のにぎわいにすずきじゅん
倒伏す秋の田明日旅に出る涼希美月
秋の田の千枚凪ぐや能登の風すずしろ桂
秋の田や蒼穹に聴く黄金波素敵な晃くん
秋の田に陽は輝きて沈みけり砂山恵子(すなやまけいこ)
秋の田や走る生徒へ夕日差し数哩
千枚の秋の田に吹く千の風須磨ひろみ
秋の田や風に黄金の波を打ち晴好雨独
ザクッザク刈る音も楽し秋の田よせいしゅう
秋の田や電動シニアカーのあり清仁
墓石の見える隣に秋の田や星夢光風
秋の田の堤防隔て碧と青sekiいつき組広ブロ俳句部
秋の田の畦道通るお嫁さん瀬野広純
秋の田へほほほと風と歌ひゆく千・いつき組広ブロ俳句部
秋の田や錆たる鎌の主はなく惣兵衛
秋の田や玄き火葬場煙立つ外鴨南菊
連写する新幹線と秋の田とそまり
秋の田や金色の内的宇宙大
嗚呼国旗青空抱く秋の田は大ちはる
秋の田や爺の帽子行き交えり平たか子
秋の田の濃淡の帯幾重にもたいらんど風人
車窓から秋の田と白馬に別れ高上ちやこ
鎌を持つ父の汗落つ秋の田よ高杉光水
秋の田に鐘ひとつ落ち風動く高瀬小唄
秋の田に古代米描く艶の線高々多佳志
秋の田の波打つ先が吾が母校高田博子
秋の田を観測者としてドローン行く小鳥遊こはく
秋の田を眺めて嬉し畦の道高橋こう
秋の田や窓開けて読むサリンジャー高橋マママリン
秋の田に弥生人みる昼下がり田上コウ
秋の田や車窓に望む山遠し高見正樹
万物の流転はしづか秋田あり滝上珠加
秋の田や神の居る山祀るごと武井保一
秋の田を「空飛ぶクルマ」の影はしるたけぐち遊子
秋の田や乗合バスが日に三度多胡蘆秋
秋の田をモーセのごとくコンバイン太之方もり子
色づく田ななつき屈めた背こえてたすく
秋の田や背後の山はどっしりと祐紀杏里
山峡の今ぞ夕陽の秋の田や多田知代子
生命生み黄金にかわる秋の田や立花かおる
秋の田や手入れを急ぐコンバインたていし隆松
秋の田の風を味わう犬の舌伊達紫檀
秋の田と同じリズムで揺れる尾よ田中紺青
秋の田や埋蔵金のありさうな田中みどり
秋の田に品川の友の歓声谷相
突風に翻弄されし秋の田よ田畑せーたん
秋の田やコイン精米フル稼働旅女
今はただ眺めるばかり秋の田をtabei白芙蓉
秋の田よ神社の裏道石の苔鱈瑞々
秋の田は光病床より見ると智同美月
秋の田を見下ろす山の休憩所千鳥城、チーム広ブロカナダ支部
秋の田を眼下に望みて握り飯茅野ともぞう
秋の田や堂々揺れる眩しき穂千夜美笑夢
秋の田をやわき日ざしと潮の香と千代之人
秋の田の群れなし飛ぶやすずめ達司蓮風
秋の田や日を追うごとに母老ゆる月城龍二
秋の田やおかずいらずの白飯に月ノイス
輿入れの列迎えざざめく秋の田や月の莵
秋の田やソーラーパネルの黒光り月見里ふく
秋の田や出来高試算弾く農夫月光一乙
秋の田や刈り待ちの鷺練り歩く月見人
秋の田に乾いて落ちた抜け殻が月夜案山子
秋の田に今年話題のユニフォーム辻瑛炎
秋の田に遠の嶺より朝日差す辻美佐夫
秋の田に群るる雀の食の欲辻本四季鳥
秋の田の水平線に落つ陽かな辻栄春
秋の田や戦(いくさ)止まらぬ青き星椿泰文
秋の田の群れる野鳥や畦畔沿い津幡GEE
秋の田や走り抜けたる女学生つぶ金
秋の田の中の地蔵の笑みにけり坪田恭壱
タメ口の女子高生や田色づく鶴富士
秋の田や神代の粒のひとつから徹光よし季
秋の田が笑う特大塩むすびてつねこ
秋の田や潮騒の風見てゐたり苳
秋の田を走る八時起きの少女とき
ドジャーズの不吉なデータ田色づく戸口のふっこ
秋の田を近道車走る音とくねん
秋の田の風やはらかく沈みけりどすこい早川
秋の田に囲まれながら握り飯杼ケイコ
秋の田の金の海原泳ぐ風戸根由紀
ねを上げるどちらが先か秋の田よ智史
秋の田にほわりほわりと雲の影友@雪割豆
秋の田やずしりと重き一掴み頓堀頓
秋の田や高層群の照り返し内藤清瑤
秋の田に命をつなぐ明日思う中澤孝雄
秋の田にランドセルの子遠くなり中島葉月
みいつけたすずめ出たつ秋の田や中島はるな
秋の田や太鼓を子らの夜稽古長嶋無有子
秋の田や満身創痍顔も泥中嶋緑庵
秋の田や百人一首を諳んじる中藤雅子
秋の田に日がな一日車椅子中十七波
秋の田にゴーンご恩と夕の鐘中西千尋
秋の田や一枚残る住宅地仲間英与
秋の田や友に逢えたか逝し夫中村あつこ
秋の田を駆け逝く君の笑顔見む中村こゆき
秋の田の真中に疑問符のオブジェ中村想吉
秋の田に鳩一斉の翻りなかむら凧人
秋の田や旅立つ朝の最敬礼中村雪之丞
秋の田や金管の音の一面に中山由
秋の田穂が揺れたんたたたん七五三五三
空知野の秋の田いちめんの黄金梨山碧
秋の田に片隅座るコンバイン那須のお漬物
ところさす明るき夜空秋の田を那須乃静月
秋の田や廃農助くボランティア夏目坦
秋の田や斬首のごとし鎌ふるい名取秀
秋の田の畦の草をも輝けり名計宗幸
秋の田や吾も実りているや問う奈保
秋の田や道行く人の車椅子生天目テツ子
唐突に波たつ秋の田吾ひとり波彦小町
日が落ちて日向残り香秋の田よ奈良華咲
秋の田を子の自転車の赤が行くにいやのる
秋の田や農夫の汗が粒となりにえ茉莉花
秋の田の皆それぞれに違ひけり西原氷彩
秋の田の中のコスメの大看板西村小市
秋の田やレインコートはレモン色二十八
秋の田や穂に乗り損ね雀舞う庭野せんたく
秋の田を渡る口笛竜の声暖井むゆき
秋の田や病窓からの家の道猫辻みいにゃん
秋の田に風のいたずらミステリーサークル農鳥岳夫
よもろともに継ぐ秋の田や土匂う野三弓
秋の田や父母の居た景まなうらに野原蛍草
秋の田やおむすび甘し穂はさやさや昇椿
秋の田の四方八方ゆれてをりのりこうし
寝屋古墳の裾野黄金や秋の田に則本久江
秋の田や表彰状の手に重しのんのんた
秋の田へ落ちたドローンから煙白山一花
秋の田の朝日に鷺のつがいかな橋爪利志美
秋の田や土の香りで深呼吸橋野こくう
秋の田やふるさと遠く草枕蓮見玲
秋の田のすぢかふ道や風の跡畑中幸利
秋の田や一夜で変わる政事葉月庵郁斗
秋の田へ足取り軽き老夫婦初野文子
秋の田は黄金の匂い放ちけり花笠きく
故郷は吾を田の色に染めにけり花水木
秋の田の霊気の夕日黄金色離れ庵
晴れ晴れと秋の田見つめ深呼吸羽馬愚朗
秋の田に口笛渡りスナフキン早足兎
秋の田や豊穣の音抜ける風葉山れい
色づく田米殻枕秋の田へ原口竹九
やまあいの里埋め尽くす秋の田よharu.k
秋の田や競う稲の穂神楽舞うはるのうらら
秋の田や穂を揺らしたる湖の国はるの風花
秋の田に腹いっぱいの深呼吸はるるん1号
秋の田や赤銅色の千枚田HNKAGA
秋の田のさわさわ鉄橋に一両車ピアニシモ
秋の田や子犬の鼻腔くすぐりて東原桜空
エンジンと爪切りの音秋の田よ火車キッチンカー
晩年の実りの多き秋の田よピコリス
秋の田や終わった文化祭のビラ菱田芋天
秋の田の風の刹那を覚えしか鄙び梅乃香
秋の田やアラフィフといふ初婚の子比々き
秋の田やぐわり入り来るコンバインヒマラヤ杉
秋の田を縫って孫が走り去りひめりんご
秋の田を分けて軽トラゆるゆると日吉とみ菜
海風や色づく能登の千枚田平井千恵子
踏み入れば秋の田の鳥散り散りに平岡梅
秋の田や腰の曲がりを祖父競い平野純平
青き空横一文字に秋の田や平松一
秋の田や通勤途中に広がりし平本文
秋の田の雑草ともに刈られけり昼寝
秋の田や吾が行きずりの頭垂る広野光
秋の田を愛でるがごとく風そよぐFUFU
秋の田に鬼滅の刃黄金色深蒸し茶
秋の田や能登の棚田はひび残し福井桔梗
秋の田や手数尽くせる晴れ舞台福川敏機
秋の田や篠笛十指照り映ゆる福田みやき
色づく田ラーメンで食ふ御飯かな福間薄緑
秋の田や病魔にデコピン食らわせるふくろう悠々
秋の田に朝日が満ちて黄金色藤丘ひな子
秋の田に項垂れ飛行機雲二本藤咲大地
弥栄を祈るがごとし秋の田よ藤田一男
ふくふくと秋田の昼や握り飯藤原涼
秋の田やひかりたゆたふ里つづく藤本仁士
建売に囲まれ秋の田一枚藤原訓子
ちろりんと猫潜りいく秋田かな舟端たま
秋の田をパパの二輪と駆けくらべ風友
秋の田や刈られ現はるマイボトル古道具
リハビリの妻の目の先秋の田かな古谷芳明
月映し揺らぐ秋の田散歩道鳳凰美蓮
秋の田を眺むる農夫深き皺峰晶
秋の田に子の影が消ゆ風が吹く北人
秋の田に父の寛解報告す北斗星
秋の田のむせかえるほど黄金色細葉海蘭
坂道発進2速で落ちる秋の田にポップアップ
秋の田へ駆けつけたるやボランティア堀隼人
秋の田や眼下に金の等高線堀邦翔
秋の田や米騒動は昔より本間美知子
秋の田に光る三日月鎌のごと凡狸子
秋の田の落暉へ走る陸部の子舞矢愛
秋の田や一直線に風わたる牧場の朝
秋の田や黄金と畦の完成形槇まこと
秋の田に感謝感謝と呟いて雅蔵
千金を抱きし秋の千枚田町田思誠
秋の田や黄金の波打つ美しさ松井英雄
秋の田や明日は刈らむと腰伸ばす松浦姫りんご
秋の田や温泉めぐる二人旅松岡さつき
色づく田コンバイン音たくましさ松尾祇敲
秋の田に小さき手がた残りたり松田寛生
見つけたの金色の杵秋の田で松知
祖母の道手つなぎ子らと秋の田へ松永まつげ太
高速のくだり坂には色づく田松野蘭
青空や太陽連写す秋の田よ松原善枝
秋の田や鉄道地図とチーズ鱈松本裕子
秋の田や腰を伸ばせば昼時か松本牧子
秋の田に一息ついてLINE打つ松和幸太郎
秋の田やぐるり囲まれ校舎ありまやみこ恭
雨風の爪痕残す秋の田や真理庵
秋の田や黄色の風の踊りたるまりい木ノ芽
秋の田に波打つ黄金最高値まりおR
秋の田の隣よりちと豊かかなまるごとハテナ
秋の田を隣るソーラーパネルかなまるにの子
秋の田や畦に紫煙の立ち上る満月
我日本人ぞ帰国の秋の田や美衣珠
秋の田の市松模様謎めいて三木崇弘
秋の田やみんなこつそりかくれんぼ三崎扁舟
秋の田からの友のふみコメオクル水玉水平線
秋の田や昏き月日の少女過ぐ三隅涙
重箱の仕切りのやうな秋田かな三田忠彦
まなうらに雨の秋の田那須の旅美津うつわ
秋の田に降り立つ鳥の影延びつ光月野うさぎ
病室の秋の田想ふ窓辺かなミナガワトモヒロ
引率で明日香秋の田かみしめるみなづき光緒
秋の田や村人笑顔収穫日湊かずゆき
秋の田に農道狭しコンバインみはやななか
秋の田の庵何処や奈良一路三群梛乃
農道に軽トラ二台秋の田や見屋桜花
秋の田や歓びのうた風にのりみやかわけい子
秋の田に夕餉の献立相談中宮城海月
秋の田を金の刺繍の野球帽宮坂暢介
秋の田へ走り出しそな子の手持つ美山つぐみ
秋の田や一念一植の光あり宮村寿摩子
秋の田の一本道を通いけり三輪白米
秋の田に集ひて弥生の人となり麦谷てっぽうのき
日射して黄金に輝く秋の田よむじか
秋の田を割りて過ぎ去る新幹線睦月くらげ
秋の田やただいまの声かき消さりむねあかどり
秋の田やいずこ眩しい陽の光村先ときの介
秋の田へ母とおやつと長靴と村田ノリタマ
守りし十五代目よ秋の田よ望月ゆう
車窓より秋の田光る一人旅momo
黄金の香の秋の田をすぎる百瀬つきか
秋の田を眺める古き焼却炉森捷子
秋の田や小波ひかり吾踊る森嶋ししく
ぐずる子の声和らぎゆく秋の田森田祥子
秋の田や返せぬままのスニーカー森ともよ
秋の田や「二男誕生」と送信森野恵
秋の田の畦の逝く道輪の音と森茉那
秋の田や幼き頃の鎌の傷矢澤かなえ
秋の田や黄金の穂から銀の舎利矢澤瞳杏
秋の田の真中墓石の黒光り野州てんまり
秋の田のざわめきを亡き祖父とゆく山内彩月
秋の田やしばし踏み入る人も無し山内文野
秋の田の夕映え遠き子守唄山岡寅次郎
秋の田や恵みを紡ぐ大神宮山川腎茶
秋の田を抜けた先には道の駅山川たゆ
秋の田や早く刈ってと頭垂れ山口雀昭
色づく田雀も人もほくそ笑み山口笑骨
子も猫も呼ぶや秋の田ビックウェーブ山下智
秋の田や風水かほるお昼時山下義人
秋の田や母の笑顔の総仕上げ山育ち
秋の田の鳥二羽目線別方向山田一予
秋の田や黄金の波揺らぐ午後山田啓子
オーナー制秋の田黄金重く垂れ山田好々子
秋の田や雀の命も紡ぎをり山田翔子
秋の田やレールの響き誘われ大和杜
手植えした秋の田に稗茂りおり山野花子
秋の田を花嫁ゆくや金屏風山びこ
秋の田は国の礎汽車に乗り山本さった
秋の田や飛行機雲に鴉飛ぶ山本てまり
秋の田やシャンソン響くまちの駅山本美保
秋の田や鎌入れる手の皺の数山本葉舟
金色の波押し寄する秋の田よ友鹿
夕暮れの秋の田にほふ幼き日雪子
秋の田よ夫の手術の日の決まるゆすらご
秋の田や中を貫く散歩道柚木啓
秋の田の一本道の佐賀平野夢一成
秋の田や今もう少し生きてみるYOKOCHAN
移住の親と子ら秋の田の手刈横田信一
秋の田に影落とし去るグライダー横山道男
秋の田の頭は垂れて大行進よしぎわへい
秋の田を眺むは若き就農者ヨシケン
秋の田や水路を流るる水もなし吉田蝸牛
秋の田や村はゆっくり老いにけり吉田春代
力作の秋の田眩し農夫の目吉藤愛里子
秋の田の刈り取り待ちの黄金かなYoshimin空
秋の田や明日から刈るや鎌を研ぐ米山カローリング
秋の田やかすかに聞こゆ御立ち酒よみちとせ
秋の田に去年の父の背中見え来知万郷
秋の田や天より降りそそぐ黄金リコピン
秋の田に鴉群るなりゴッホの絵料善
赤トンボ一緒に歌った秋の田で良柚
秋の田の刈り入れ嬉し虫や鳥凛
電車旅窓に秋の田続きけりルージュ
秋の田や頷き返す三代目麗詩
秋の田や函南の里パラが飛ぶ麗仙
秋の田にすめらぎの歌想いやる連雀
秋の田に古代の風や壱岐の島わかなけん
風のみが巡りて渡る秋の田を海神瑠珂
畦道に踏まれし軍手秋の田やわたなべいびぃ
秋の田やパンの味する米粉パン渡部克三度
秋の田を一枚づつや犬待てり渡辺陽子
秋の田や眺む労農目はへの字和脩志
波立ちぬザザザ黄金の秋の田にわをんはな
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
◆俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物による複数俳号を使った投句は、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。
●季重なり
秋の田や夕焼け空を呑み込みぬはままこみかん
秋の田に肩いからせて立つかかしカズミンスキー
中天に世相案山子映え秋の田小夜ひと月
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「秋の田」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●稲や稲穂も季語
秋の田に駄々を捏ぬるや稲倒れ西尾照常
色づく田黄金も稲も風に舞うアツシ
秋の田の稲の根っこの土のこと雨森茂喜
秋の田の一束ずつの稲が能登沖庭ノ華風
秋の田や稲穂下がりて惑わざるせいだるま
秋の田や嵐に耐えて立つ稲穂原善枝
秋の田やおらもおらもと稲穂揺れ松井酔呆
サワサワと秋の田抜くる稲穂の音三上栞
秋の田に子の笑み光る稲穂かな八巻孝之
「稲」「稲穂」も独立した季語ですから、「秋の田の稲」だと季重なりになります。そもそも、「秋の田」とあれば、「稲」「稲穂」であることは分かるので、言葉の経済効率として勿体ない使い方です。
●「秋の田」のことだとは思いますが……
黄金田稲寄り添えばひそやかな声蒼月白
稲穂揺れ歩幅に銀の風の道田中圭
田の中や釣瓶落としと秋の声恵美笑
黄金のチクチク香り脱穀季涼子
本選句欄では、兼題として季語を出題しています。兼題「秋の田」とあれば、その季語を詠み込む必要があります。
●「刈田」は別の季語
老農夫刈田眺める日暮れ時松尾老圃
「刈田」は、稲が刈り取られた状態の田。「秋の田」とは、別の季語になります。
●これは既に「刈田」になった状態では?
秋の田の刈穂の匂いも薄れゆき昭廣凡字
秋の田や藁くず燃やし蛇を待つ木村波平
秋の田の刈り入れ後は野鳥園喜楽胤
秋の田の藁焼く煙低くたなびく駒形さかつ
秋の田やキャタピラ跡は地上絵めき摂田屋酵道
秋の田に藁マンモスの闊歩かなななかまど
秋の田を刈り終え黄土水溜りねがみともみ
秋の田の並ぶ切株つつく鳥野の菫
風を見る秋の田沁みる田焼きの香一人男
干した稲下で寝ころぶ秋の田よひまわりと蒼い月
秋の田や藁の香乗せて風渡る野風庵
「秋の田」とは 稲穂が熟して穂を垂れ、黄色に色づいている田を意味する季語です。「刈田」は、その稲を刈り取ってしまっている状態になります。ですから、一句に「秋の田」と刈り取った状態が同居するのは、問題があります。
●季語に対する解釈のブレ
べつかふ飴透けて金色晴稲田有村自懐
石包丁に残る稲田の記憶かな小泉久美子
父の目に円形に伏す稲田かな高原としなり
奥伊勢の御食国なる稲田かな富永武司
陽だまりの匂ひを籠める稲田かな広島あーやあーや
はんぺんはしろしほがらかなる稲田みづちみわ
歳時記編者の考え方によって、季語の解釈は微妙に違ってきます。本サイトの底本を講談社『カラー版新日本大歳時記』としているのは、歳時記によって季語の扱いが違うからです。
講談社版では、「稲田」は、別の季語「稲」の傍題とされています。が、角川書店の旧版『角川俳句大歳時記』では、「秋の田」の傍題として「稲田」が載っています。
稔り田の二割となりぬ千枚田伊藤柚良
稔り田を囃すおひさんここまでおいで正念亭若知古
みのり田や手配のAIトラクター円美々
実り田をキャンバス見立てアートなす花岡淑子
「稔り田」に関しては、講談社版にも旧角川版にも載っていませんが、また別の歳時記には採録されている可能性はあります。
稲熱田やなほ引きこもる雀をり花和音
「稲熱田」は、講談社版には載っていませんが、旧角川版には、「秋の田」の傍題に入っていました。
八百の棚田を撫づる稲田風佐藤浩章
「稲田風」、勿論意味は分かりますね。とはいえ、講談社版、旧角川版ともに掲載はありませんでした。作者の造語ということも考えられますが、インターネット上には根拠の希薄な季語が載っていることもあります。
季語は、認定委員会の類いがあるのではなく、歳時記編者の考えによって採録する種類や数が変わってきます。旧版と新版でも、変更がでてくる場合もあるのです。
本サイトで折々にオススメしていますのは、例えば兼題「秋の田」と出題されれば、まずはその季語と正面から取り組んで頂きたいということです。その試みが、強靱な俳句の筋肉作りに役立つと考えております。
●今月の選外
兼題が入っていない人、兼題を読み違えている人、前回の兼題で〆切を過ぎてしまった人など、今月もおられました。
更に、何か表現しようと格闘しているのは分かるのだけれど、どうしても句意が読み取り切れないものも散見しました。
早めに作って、しばし時間をおいて読み返すことを推奨いたします。少し時間を置くだけで、客観的な目を持てることもあります。是非、試してみて下さい。


お待たせしました!10月の兼題「秋の田」の結果発表です。今月も夏井先生のアドバイスは必見です。金色に波打つ稲穂は、風のたびにさざめいて、季節の深まりを知らせてくれます。刈り入れ前の田んぼには、土と稲わらの匂いがどこか懐かしく、記憶の片隅をそっと呼び起こします。12月の兼題「冬薔薇」もふるってご応募ください。(編集部より)