夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
1月の審査結果発表
兼題「煮凝」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
煮凝のほどけて時の遠近感
いたまき芯
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夏井いつき先生より
魚を煮て一晩おくと、その魚ごと煮汁が固まります。気温の低い時期は固まりやすいので冬の季語になっているのですね。
「煮凝のほどけて」とあるので、煮汁に戻りかけているものを「煮凝」の句と捉えてよいのかどうか、少々迷ったのですが、この句が表現しようとしているのは、煮凝という季語の成分には時間の要素があるという事実です。
この季語の中にパッキングされているのは、煮魚を作り、食べ、夜のうちに冷え、朝になって「煮凝」になり、更にほどけかかっているという時間そのもの。「時の遠近感」という抽象的な表現には、作者の心情における遠近感も含まれているかのように感じます。この詩語が「煮凝」という極めて具象的な季語の本意を捉えていることに気づかせてもらった作品でした。
煮凝や砂降る街で宿をとる
あおのめ
「砂降る」は黄砂を思いましたが、例えば桜島のような火山の町かもしれませんし、安部公房の「砂の女」の世界かもしれません。口に入れた「煮凝」にジャリリと砂の混じっているような読後感もまた。
煮凝や割り算にゐる余のやうな
カレー亭章之輔
「ゐる」には様々な意味があるため、解釈を少々迷っています。が、「煮凝」という存在を、割り算における「余」と捉えた機知には大いに拍手を送りたい一句。無駄なものは一つもないのだという人生観にも繋がって。
一生幸せに暮らしましたとさ煮凝煮凝
たけろー
五七五を大いに逸脱したやり口。季語「煮凝」の持つ貧乏くさい側面を、日本昔話風に呟きました。下五「煮凝煮凝」という如何にも投げやりなリフレインには、人はこれを「幸せ」と呼ぶのかという自嘲も混じって。
煮凝や借金はせず財なさず
にゃん
煮付けをした翌日の「煮凝」は、熱い白米にのっけて余す所なく食べる。そんな丁寧な暮らしぶりというか、質素な日常の上にある中七下五のような生き方を、世間の人は清貧と呼ぶのかもしれません。
煮凝を切るてふ柳刃の誉れ
葉村直
貧乏くさい「煮凝」ではなく、割烹のような席で饗される上品なものを思いました。こんな美しい煮凝に刃を入れるのは、柳刃包丁にとっての「誉れ」。冬の季語というよりは、上質な無季の趣を感じる作品でした。
煮凝や空き家のままの両隣りあかねペン銀
煮凝をはみ出て魚卵ふてぶてし阿部八富利
煮凝りくずれるラジオから漫才あまぐり
煮凝てふ独居と成りし夜をくづす家守らびすけ
スナックのママの煮凝てふ坩堝池之端モルト
煮凝や人に隠れてする遊びイサク
赴任地に馴染む十年こごり鮒小川野雪兎
煮凝や世帯主とは名ばかりで荻原玲香
煮凝や我慢の滓の沈め先おぼろ月
煮凝や自分で自分の機嫌取る九ゼットン
煮凝のひたひたと喪にこもりゐてげばげば
煮凝や仮病二日目昼静か黒望
煮凝を掬ひて老後とはこんな木染湧水
煮凝や愛は内側から冷めるコンフィ
煮凝や千円札の裏の富士佐藤志祐
お通しは煮凝部下は小生意気白猫のあくび
煮凝の腐つた月のやうな色高田祥聖
中年の諦念煮こごりの融けかかる鷹取碧村
煮凝や喪の手続きの一覧表千葉水路
煮凝や九谷の唐草に歪み坪田恭壱
煮凝や放っておけばよいものを徹光よし季
煮凝や沖には風の産屋ある長谷川水素
煮凝や素面で言へぬなら言ふな弘友於泥
煮凝や家族ごっこは冷えてゆくほしぞらアルデバラン
拳骨が愛かよ煮凝へ箸を三隅涙
煮凝にささめく昼の噂かな森重聲
煮凝のゴリのあたりに骨がある亀田かつおぶし
煮凝のごりの辺りの引っ掛かる酒井春棋
煮凝の濁のところが本音です森毬子
煮凝のふるふる星の欠片出づじゃすみん
煮凝に星の欠片の浮き沈み花見鳥
煮凝や腓返りの続く夜赤尾てるぐ
煮凝や腓返りが痛すぎる糸川ラッコ
煮凝に火入れ昨日の笑ひ声アーモンドよーせい
煮凝の小骨に触る舌の先愛燦燦
煮凝や夫だけゐない家族LINE青居舞
煮凝の中に口惜しさうな鯛蒼空蒼子
煮凝を崩す斜塔はそのままに青田奈央
煮凝りや記憶は夜を去り難し青野みやび
煮凝りや我文豪と酒食らふ青星ふみる
煮凝や失うもののなきからだ赤尾双葉
煮凝や音信不通は生存なりあが野みなも
鍋の煮凝り昨晩のふて腐れあかり
煮凝りの角や光の柔らかさ赤尾実果
煮凝は大味親不孝な味愛柑いつき組note俳句部
煮凝に箸ずぶずぶと伏魔殿空地ヶ有
放置して鍋の形に煮凝りぬ秋月あさひ
煮凝や巣鴨のママは今何処空き家ままごと
煮凝りや猫が勝手に入る家秋山らいさく
煮凝やものの散らかる台所芥茶古美
煮凝や佳き写真ほど褪せてゐる芥もくた
煮凝や友との確執解けぬまま圷美流
煮凝や遠き湖国のみづの色明智明秀
真夜中の煮凝崩す崩す崩す淺井翠
鍋底の煮凝鳴り続く電話朝雲列
上州の男煮凝を凝視す朝方静流
煮凝を箸で崩せば昨日へと淺野紫桜
好きよって言えた煮凝は蕩けたあさのとびら
世はそんなものと煮凝つつく母浅乃み雪
煮凝や母はいつ寝ていつ起きるあじさい卓
煮凝や星の時間を掬ふ匙葦屋蛙城
煮凝や記憶のははの著るきなり阿修羅
煮凝りや主の居らぬ割烹着飛鳥井薫
煮凝を解けば水爆の匂ひ明日ぱらこ
煮凝りを飯に乗せ喰うケの日かな麻生恵澄
煮凝や私の濁りゆく右目藍創千悠子
煮凝や只ひたすらに待つ女あたしは斜楽
煮凝や妻も祝わぬ誕生日あたなごっち
煮凝り受け止めるささくれた心我孫子もふもふ
煮凝や崩れて海が蘇る阿部斑猫
煮凝の目は覚めず陽は昇れども甘茶トーシロー
額に熱冷まシート煮凝美味雨戸ゆらら
煮凝の中からみどり救ひ出すあみま
煮こごりや塩に濁れる厨窓綾竹あんどれ
煮凝や長押に掛かる神楽面綾竹ろびん
煮凝の海を四角に割りにけり有村自懐
煮凝や故郷いまや縁者なし有本としを
煮凝の底に眠れる骨白しあわい
煮凝の意思なき塊を崩す箸アンサトウ
煮凝や介護の父の銀の匙安春
鍋底の煮凝り心のこわばり飯沼深生
鬱屈のいろしてをりぬ煮凝りぬ飯村祐知子
胃の中のやうな煮凝胃の中へ十六夜の花札
煮凝や昨日たくさん笑ったね石塚彩楓
熱以て幽す愛は琥珀か煮凝か石塚壜太呂
煮凝りや吾を誘ふかの風の音石原由女
煮凝の眼に映る父の銛和泉園実
「地球平面説」煮凝に箸いずみ令香
煮凝りの夜を泳ぎきる背鰭かな石上あまね
煮凝や鍋に螺鈿の光りあり市川卯月
煮凝を買って募金箱へ百円市川りす
煮凝や吾が内にある母のさがいつかある日
煮凝や天気予報の当たる夜一久恵
煮凝は箸慈悲深くするらしや一慎
煮凝や父は昭和を生き抜きぬ伊藤亜美子
心残りは煮凝まだ濁りをり糸冬因果
煮凝や夕空は紺使ひ切り伊藤映雪
羊膜にあらず煮凝とは柩伊藤恵美
煮凝りや小さき漁港の定食屋伊藤順女
煮凝や一目惚れにて半世紀伊藤なお
煮凝や出涸らしなれど愛は愛伊藤柚良
煮凝や畳紙の皺の形見分け伊ナイトあさか
また残業また煮凝が待っている稲光虎介
煮凝や古りし事典の紙薄し居並小
嫉妬する夫や煮凝こく匂ふ井上れんげ・いつき組広ブロ俳句部
煮凝りぞうつぼきれいに刻まるる井納蒼求
重力の憂き目に遭ひて煮凝れり井口良範
煮凝や曖昧模糊はこんな色いまい沙緻子
煮凝や生家は疾うに無人なりいまいやすのり
煮凝や拗ねているのに気づかれず井松慈悦
朝ドラ急転煮凝が掴めない妹のりこ
煮凝や鉄の街には朝が無い伊予吟会宵嵐
取り出されたる煮凝のたどたどし岩木順
煮凝りや姉妹で父の酒買ひに岩佐りこ
煮凝や夕影漏るる勝手口岩清水彩香
煮凝りのとけて復縁承諾すうえともこ
煮凝りや殺意多めの隠し味上野眞理
喉荒れの喉に煮凝り降りてゆく上原淳子
煮凝ややはらかに箸退けて鵜飼ままり
煮凝つつくや正解はつまらないうからうから
煮凝の一匙美しき余韻うた歌妙
煮凝や土地半分の遺言書うただねこ科
ポジションは親友煮凝りの胡乱内田ゆの
煮凝や崩せば戻る海の味空木眠兎
煮凝や私立の方は受かったとうつぎゆこ
煮凝や換気扇から貨車の音靫草子
海鳴りに煮凍り震え鯛の鯛海口竿富
煮凝や焼き場の空の薄浅葱海月のあさ
煮凝は遠いあの日の戀のやう梅朶こいぬ
煮凝やしづかな憤怒張りつめるうめやえのきだけ
煮凝や法事の客の奥座敷浦城亮祐
ネクタイほどき煮凝にほどけゆく江川月丸
実家へは帰らぬ煮凝へ穴江口朔太郎
煮凝りは祖父の匙から貰う物蝦夷の珪化木
煮凝のひかり沁みたり旅の夜蝦夷やなぎ
煮凝や隠れしものを匙の跡蝦夷栗鼠の風
煮凝や思い出の夜の舌触り越冬こあら@QLD句会
煮凝や心の棘をそつと抜く絵十
燗冷まし煮凝喰らい時事放談榎本雅
前菜は煮凝古き洋食屋えりべり
床鳴りの台所煮凝ぷるんANGEL
煮凝やお皿に琥珀色の影延命寺
煮凝や目玉の底にある泪近江菫花
煮凝や婚家の朝のぎこちなさおおい芙南
断面にときめくものに煮凝も大岩摩利
ハラールの煮凝右にございます大岡秋
煮凝に閉じ込めたるは昨晩の嘘大久保加州
煮凝や父母出会ふ話聞く大嶋宏治
煮凝の飯に沿はむと凸凹す太田けいこ
煮凝や鼻先皿に乗せるごと大塚恵美子
煮凝や夜の匂ひを透明に大和田美信
煮凝つつく同窓会の出欠欄おかえさき
煮凝に虚しき穴のふたつ三つ可笑式
ローン組み今日の煮凝甘からい丘ななみ
燗銅壺硬し煮凝軟らかし岡根今日HEY
煮凝や視界の濁り澄むを待つ岡山小鞠
煮凝や笑い上戸の妻へ酌小川さゆみ
煮凝の溶けきるまでに和解せよ小川しめじ
煮凝りをあひだに夫婦会話なく小川天鵲
煮凝や似て非なる具の断面図小川都雪
煮凝や惚れた腫れたはこりごりとオキザリス
煮凝や祖母の初恋透けてをり沖庭乃剛也
煮凝や欠けし器を捨てられず沖らくだ@QLD句会
煮凝や櫂なき舟のごと揺らぎ小倉あんこ
煮凝のやる気なさそなだらけ方おこそとの
煮凝や来世は別の連れ合いと小田毬藻
煮凝や鍋幾つ捨て転居するおだむべ
祥月に煮こゞり二つ供へけりおつき澳吉
煮凝りや疑念は解けぬ席を立つ御成山
煮凝に天窓の星青白くおひい
煮凝りや白内障の不透明海堂一花
煮凝や宇宙のどこか膨らんで海峯企鵝
女房と呼べる齢や煮凝れる香依蒼
日帰りの湯や定食の凝鮒火炎幸彦
煮凝や陋屋揺らす夜半の風案山子<いつき組広ブロ俳句部
煮凝やだんまり続く箸の先風花まゆみ
煮凝や六法全書閉ぢしまま風花美絵
煮凝りや相場のラジオ聞く男風早杏
煮凝や支所に勤続十五年樫の木
煮凝や人も闇夜を泳ぎきり梶原菫
煮凝を崩し光の生まれけり加田紗智
煮凝やスマホ無き昭和の厨帷子砂舟
朝食の煮凝り越しに夫のあり花鳥風猫
取り寄せの煮凝まず角を少しかつたろー。
煮凝や柱時計の遠き音ひだまりえりか
煮凝りや酒の加減を月に問う桂葉子
煮凝が骨身に沁みる病ひ明け加藤水玉
このマンションは煮凝の出来がいい加藤栗庵
相続は拗れに拗れ凝鮒かときち
煮凝やあなたのものじゃない私叶田屋
煮凝や愚痴言う吾の愚痴こぼし金子美鈴
庭園の池を切り取ったような煮凝かねつき走流
煮凝の秘宝館めく暗さかな神島六男
キッチンの惨劇粛と煮凝れり神長誉夫
煮凝の崩れ居酒屋の相席神谷たくみ
煮凝りやなかなかとけぬ夫婦仲亀くみ
煮凝や言い訳めける君の顔亀山酔田
煮凝りや帰路はるかなる一人旅かもめ
煮凝の透視図に棲む海と骨唐澤うに
煮凝や夫の涙腺弱くなり河上摩子
煮凝や尾鰭背鰭の武勇伝川越羽流
煮凝や魚の涙の追熟す翡翠工房
煮凝や箸をあてなば箸の痕川端妙松
煮凝や大字を離れぬ暮らし喜祝音
煮凝や家系図に無き祖先の名季川詩音
逢引や未明の手羽の煮凝れりきざお
煮凝をはみ出す尾鰭海を乞ひ岸来夢
救急車来て煮凝の鍋静か季切少楽・広ブロ俳句部
煮凝や今宵めでたき普通食喜多丘一路
煮凝やこよりで塞ぐ鍋の穴北の星
煮凝をやうやう呑み込み父末期北美三風
煮凝や結婚差別無くならず貴田雄介
煮凝や魚の一生侮れず木寺仙游
煮凝は固し養育費は高しきなこもち
煮凝の過去いま未来切り分ける城内幸江
煮凝に沈む夢のようなもの木下桃白
煮凝や電話も鳴らぬ日を終えるきべし
煮凝や蕩ける春を食うここち木ぼこやしき
退院や煮凝り用意されており木村かわせみ
賄いの煮凝りさすが二つ星木村修芳
煮凝に閉じ込められて世は静か木村信哉
煮凝はほどけて月食は今夜木村弩凡
煮凝の育つ間のアルミ鍋鳩礼
煮凝や輪島の箸にをどりけり京野秋水
煮凝の味も分からぬ若造め稀余人
煮凝や朝日はまるで半熟で煌星アニカ@TFP句会
鶏の脚虚空掴みて煮凝れる霧澄渡
煮凝に華やぐ角をくづしけりギル
煮凝や明日のプレゼン出来は良し近未来
煮凝や母の海馬は縮こまる句々奈
煮凝や拝むかたちの鯛の鯛くさ
煮凝が最後に食べた固形物くすみ輝く
骨董のごとき五徳や煮凝れりくずもち鹿之助
煮凝や円やかに角ばってをり愚禿忍
煮凝を鍋を揺らして確かめぬ國吉敦子
煮凝や世のはしつこを生きてゐる熊谷温古
煮凝は冷めて程良き恋のやう倉岡富士子
雪舟に贋作あまた凝鮒眩む凡
母と祖母煮凝好きの瀬戸の嫁ぐりぐら京子
煮凝や水晶体の濁り濃し栗田すずさん
煮凝りやまた自室へと引き篭もる空流峰山
煮凝や袖よりたたむ割烹着久留里61
煮凝や磨き抜かれしカウンター中十七波改め黒岩牡丹
煮凝や大吟醸を所望せる愚老
煮凝と納豆飯で見る大河くろだ@しろい
煮凝りを掻き集めまた掻き集めくんちんさま
煮凝や御伽噺のやうな雲恵勇
煮凝や膝関節の摩擦音月下檸檬
煮凝や指輪の抜けぬ薬指健央介
煮凝や目玉の洞の透きとほる謙久
煮凝や老いらくの恋も恋のうちケンG
卓上の煮凝義母からの訃報原神かたな
煮凝や右目の欠けし仁王像ケント
煮凝やグラスを置きて打つ碁石剣橋こじ
煮凝や父は断酒と宣言す小泉久美子
煮凝や家族がゆえに憎みたり公木正
煮凝へ刃を濁世へ鳥黐を紅紫あやめ
父思う煮凝のみが残りし夜郷りん
爆弾埋めます煮凝の死角へ幸田梓弓
家族にだけ解る冗談凝鮒こうだ知沙
煮凝りや心の澱を写したり河野スミヰ
煮凝や小骨の一つ言わんどこ虹博筋
煮凝や何故か嬉しい妻の留守神戸のカズくん
煮凝にもて遊ばるる塗りの箸宏楽
煮凝や凝りそこねし詩の尾鰭古賀
煮凝りの揺れ睨む母なゐの夜古烏さや
煮凝りへ箸の顫える腑分けかな胡秋興
煮凝を独り深夜に反抗期五島潮
煮凝や酒の仲間の一人逝く後藤周平
煮凝に取り残されし一尾かな後藤三梅
暗がりの厨煮凝生まるる音古都鈴
大理石めく煮凝り削る一箸目粉山
煮凝や他人のような父でした子猫のミル
せうゆ濃き煮凝り舟宿の宴このみ杏仁
煮凝の口溶け秘密の暴露小箱守
身近なる都電の音や煮凝りぬ小林昇
煮凝やカンバスの絵の具を剥がす小林脱太郎
煮凝りや骨埋まりたる堆積層小林澄精
煮凝に溺れた魚救ひけり小林久女
煮凝や戦争を知る祖父の酒小林風翠
溶けそうな煮凝見つつ長電話小林理真
煮凝と昭和気質の友が良い独楽
煮凝や母の年忌の指を折る駒形さかつ
煮凝や無口な祖父母待つ祝宴駒茄子
煮凝や発掘の壁のどに融け小山秀行
煮凝の今日のはレベル七とみた今藤明
煮凝や地震速報流れだすさいたま水夢
煮凝や裸電球ぢぢと鳴く彩汀
煮凝や昭和歌謡に浸る夜齋藤桃杏
喜びの上澄みだけや煮凝はさおきち
二人して煮凝崩しゆく無言さかえ八八六
煮凝や時が馳走の鄙の宿坂口いちお
喪に来しが煮凝此処に彼処にも坂島魁文
煮凝を崩し安吾の堕落論櫻井こむぎ
煮こごりや銀婚祝ふ隠れ宿桜鯛みわ
煮凝や印判皿に畏まり桜月夜
煮凝や浄土ケ浜の紺透かす桜華姫
煮凝のあれば一夜を語りけり佐々木佳芳
舌の上煮こごりの意思ほどけゆき笹靖子
昨日といふ時間はどこへ凝鮒さざれいし
煮凝を大事にすくふ酔ひちくれさち今宵
煮凝のやさしい赤とこわい赤佐藤茂之
煮凝や灯油の臭ふ湯治宿さとう昌石
落選句肴に妻の凝鮒佐藤浩章
煮凝や海の骸の美しき佐藤ゆま
煮凝をゆすつて鬱を見てをりぬ佐藤レアレア
煮凝の鍋ほのぐらき愛国心錆田水遊
煮凝の鍋の凹みも形どりぬさぶり
煮凝や箸で掬へる夜の澱彷徨ういろは
さうねと言ひつつ煮凝り崩しつつさむしん
煮凝を崩して忘るることにする紗羅ささら
煮凝や街の夜空のあはき紺佐柳里咲
残業をしたぶん煮凝のいい感じさるぼぼ17
煮凝やゆふべのハレの日の火照り沢拓庵◎いつき組カーリング部
煮凝や今きみの目が泳いだわ澤田紫
煮凝を出すような割烹は無縁澤野敏樹
煮凝に小骨のざらり続く地震三角山子
許さうか煮凝り舌にほどけゆく三月兎
煮凝やパンゲアに国境はない慈雨
煮凝や湖底遺跡の尖底土器塩風しーたん
煮凝に玻璃の模様の残りけり柿司十六
煮凝や未来に朽ちた巨大団地芝歩愛美
薄つぺらな愛か煮凝あまきこと渋谷晶
固まらぬ決心煮凝は未完成島掛きりの
煮凝や戦友会を語る父島桜
まってまってまだ煮凝に道なかば島田あんず
煮凝や本家の嫁のおし黙り島田ユミ子
煮凝やまたねで終わる母の文霜川このみ
母と似た皺映る煮凝啜る霜月詩扇
煮凝や共に六十路の丙午霜月シナ
煮凝の皿にきのふの崩れけり下村修
煮凝を崩し始まる反省会沙那夏
煮凝りや娘も保健室登校砂楽梨
浜松を過ぎて煮凝くづしおり柊二@冨美夛
煮凝を問わば昭和を語る母秋芳
煮凝や泥炭なごるウヰスキー種種番外
煮凝の目は正しさを笑はない常幸龍BCAD
老いの身の懐に燠煮凝れる庄司芳彦
くつと喉狭まる煮凝に小骨正念亭若知古
煮凝りもあのほとぼりも冷めし頃不知飛鳥
煮凝と枕ご飯の堅き通夜白よだか
煮凝や父饒舌な検査あと神宮寺るい
人恋し煮こごりのふるへる夜はジン・ケンジ
煮凝を翫味せし夜母逝けり新濃健
煮凝の鯛透け光る珊瑚婚新森楓大
煮凝やしゃがれた音のタンバリン西瓜頭
白飯があの煮凝りを待っているすがのあき
煮凝の眼張るは写楽好みかなすがりとおる
煮凝や先づはさうでもない話杉浦萌芽
煮凝や百尋の鮫嗤いだす杉岡ライカ
煮凝の首の根つこに箸入れて杉尾芭蕉
煮凝やほどろの夢のなまなまし杉本果ら
煮凝に置き忘れたる目玉かな涼風亜湖
煮凝の並ぶ漁師の祝い膳すずきじゅん
喧嘩した翌朝煮凝味が濃い涼希美月
ぼやぼやの煮凝あすは木曜日鈴木由紀子
雪平の煮凝り在りし日の赤貧すずしろ桂
慰めないで煮凝の強情を鈴白菜実
虚空見たまま煮凝の魚融けてゆく清白真冬
煮凝ゆれる電車がたがたガード下鈴野蒼爽
煮凝のいろがかたちをはみ出さうすまいるそら
煮凝や卓に添へたる木曽の匙須磨ひろみ
煮凝の照りぬらぬらと夜の海せいしゅう
失恋の磨く綺麗や煮凝喰ふ瀬央ありさ
思慮深き目玉の黙や煮凝とろん摂田屋酵道
煮凝りに閉じ込められし涅槃かな走人
煮凝や別れ話はすぐ決まる惣兵衛
煮凝やけんかのなみだ甘かりき草夕感じ
宝くじはハズレ煮凝りを食らう曽田利江
煮凝やプラの器のお祝い膳外鴨南菊
煮凝りの底におわする翁面そぼろ
煮凝になってこの世の浮き沈みそまり
口中の煮凝仲直りのライン染井亀野
「日本人はいませんでした」煮凝突く空豆魚
煮凝は厚し会談遅々としてたーとるQ
煮凝の中に宇宙の見えしかな大
煮凝りを好むあの娘に決め給へたいらんど風人
里帰りつるっと煮凝に涙高上ちやこ
打ち直す夫婦座布団凝鮒高尾一叶
煮凝りや舌にひそかなる火傷高瀬小唄
煮凝を溶かすヒマラヤキャンプ飯小鳥遊こはく
上役に相づち打っている煮凝り高嶺遠
煮凝や軈て化石になるものら高橋手元
煮凝りや金子みすゞの童話集高橋基
煮凝の無垢になるまで読み返す高原としなり
煮凝や歌麿の描くをんなたちたかみたかみ・いつき組広ブロ俳句部
夕星の凝り煮凝におよばず高山佳風
誰そ真夜の煮凝に穴一匙分滝川橋
ふかざめの煮凝古志の吟醸と武井保一
煮凝を掻き寄せ失言悔やみおり竹内不撚
煮こごりに父の癇癪なだめらるたけぐち遊子
煮凝のかすかな地震でありにけりタケザワサトシ
煮凝に沈んで魚の目は寂し竹田むべ
鍋底に残る煮凝り母帰郷多胡蘆秋
煮凝つても鯛と云わぬばかり哉多事
引越の朝餉タッパーの煮凝多数野麻仁男
煮凝の角丸く溶け再再婚糺ノ森柊
それじゃサァ煮凝にしてヨ僕の分多田知代子
煮凝り割る屋台の闇を深くして田鶴子
煮凝やすぷすぷすぷと震えたり立田渓
煮凝や背骨を得るといふ進化立田鯊夢
煮凝やこの世に未練いくつある辰巳電柱
煮凝のふるえ余震のつもる郷立石神流
煮凝や妻の意見に異議はなし伊達紫檀
煮凝や蟠りては澱となり谷斜六
煮凝や箪笥の底に母子手帳谷町百合乃
煮凝や白紙のままに押印す田上南郷
両家の顔合わせ煮凝も綺麗田畑整
煮凝と豊かに待てり子のおくび玉家屋
尼寺の鍋に煮凝る人魚かな玉木たまね
煮凝や箸の先陣争へる田丸匡女
煮凝やもらつた酒があつたはづ田村利平
煮凝の箸にふるるとため息は鱈瑞々
煮凝や差しだす人に指輪跡丹波らる
とろとろ煮凝ちびちび手酌酒智恵子
煮凝や疎遠の実家右隣竹庵
累代の家果つる夜の煮凝よちさいちそく
煮凝や盥に昨夜の作業服ちやあき
煮凝りや今夜は布団増やし寝る千夜美笑夢
煮凝に残る深夜の博多の灯ちょうさん
煮凝りや今日も一日楽しがりつえりん
煮凝やしゃっくり続く娘の胎児塚本隆二
煮凝の地盤沈下を防げないツキミサキ
煮凝りやおうむが歌う桃太郎月見人
三猿の吾よ煮凝の半透明つくばよはく
あの店の煮凝父の月忌かなつちのこ
煮凝や絶交したる友の遺影津々うらら
救急の夜更け煮凝る鯛を哭く都築減斎
煮凝や起抜けに根を下ろす椅子ツナ好
じょんがらのバチの音(ね)止まず煮凝れり椿泰文
煮凝や泣くしかできぬ夜があるつぶ金
煮凝にひかり凝らずゐたりけり爪太郎
煮凝の澄めば澄むほど我独りツユマメ・広ブロ俳句部
急逝の報煮凝は鍋の底手嶋子犬
琥珀めく煮こごり化石めく目玉天雅
意固地なる目玉の芯の煮凝りぬ天陽ゆう
煮凝溶ける離婚届隠す土井あくび
煮凝の次に苦手な隠しごとトウ甘藻
鍋しずか煮凝の湖骨を抱く苳蕗
煮凝や漁港めしやの客まばら遠峰熊野
煮凝の底の明るし能登の朝とかき星
煮凝や能登鬼太鼓奉納すときめき人
冷たさは静かさに似て凝鮒常磐はぜ
煮凝の蕩くる舌を鯛小骨戸口のふっこ
煮凝のうを生きかへる熱き飯どすこい早川
煮凝やゆうべの団居五年ぶり杼けいこ
煮凝や昭和硝子の分かつ部屋となりの天然水
お師匠はんそら殺生や凝鮒戸部紅屑
煮凝の目玉を晒す夫の家苫野とまや
煮凝の眼球海を湛へたり富野香衣
煮凝や籍を入れずに熟年婚登盛満
本音言わぬままの別れや煮凝れる友@雪割豆
煮凝の鍋置く渡り廊下かな富山の露玉
煮凝や転職先を問わぬ親豚々舎休庵
煮凝りや仕舞湯はいつも母だつた内藤清瑤
煮凝や亡弟の妻再婚す内藤羊皐
煮凝になると決めたる形相や長岡美衣珠
煮凝りや存外かたくすぐに溶けなかかよ
煮凝やこれは大人の鼈甲飴中島紺
煮凝や口内炎にあたる魚中島葉月
煮凝や膝折り畳む朱の壺湯永田千春
煮凝の申し分なき琥珀色中原柊ニ
煮凝りに潜む小骨や吾の如し仲間英与
煮凝やこれは四国ぞこれは隠岐仲操
煮凝のなかの秘密をほじり出す中村想吉
煮凝に踊る昨夜の至福かななかむら凧人
煮凝を解けぬパズルとして食ひぬ梨山碧
煮凝や正方形の海と空夏風かをる
煮凝や見栄張らなけりや澄むこころ七瀬ゆきこ
煮凝や焼け木杭の火のぷるる7パパ・広ブロ俳句部
煮凝やしゃべり始めも鼻濁音名計宗幸
煮凝や微熱を越えぬ老いの恋奈良素数
三角法講釈煮凝をあてに西川由野
煮凝や五十になれば五十肩西田月旦
煮凝や母の食譜の染みなぞる西原佳黎
煮凝やテレビは昭和のバラエティ二十八
煮凝の断面言いそびれたこと仁和田永
煮凝や溶けはじめたる隠し事沼宮内かほる
煮凝のこごらされつづけゐて余震沼野大統領
その考古学者の好物は煮凝りねこの☆さんぽ
煮凝や眠る赤子の夢のごと猫またぎ早弓
煮凝や冷えた心のわだかまり根々雅水
煮凝を食むや琥珀の光ごと野地垂木
煮凝や水琴窟の音に溶けてののクラブ
煮凝や琥珀の古代魚は無言野の小花
煮凝りが好きで明日が楽しみで野ばら
煮凝の味の濃き角薄き角のりこうし
生き甲斐は食後の煙草凝鮒白山一花
煮凝や厨の隅に通ひ箱白山おこ女
伊香保の湯出れば煮凝り待つお膳馬笑
野望とはうつくしきもの煮凝れり蓮井理久
煮凝や器は魯山人が良い蓮見玲
煮凝や指に刺さりし棘二本葉多豊
煮凝や卓に何やら走り書き葉月庵郁斗
煮凝の朝を揺らして起こすなり八田昌代
煮凝りも吾も待ちぼうけの夜更け初野文子
凝鮒祝いの膳に父あらば花岡淑子
煮凝をつついて昼のワイドショー花南天あん
卓袱台へ鰓のとびだす凝鮒花はな
煮凝を口へ冷たき星の果てはなぶさあきら
まかないの煮凝はれて卓飾る英凡水
琥珀なる眠り淡海の凝鮒花水木
煮凝りに骨なし妻の機嫌よし花和音
煮凝りや第三惑星軋みをり林省造
煮凝を煮込む時間や免罪符原田くろなつ
煮凝や億年前の銀河系原田民久
煮凝をつついて悩む物忘れ原善枝
煮凝や厨ふたつの設計図巴里乃嬬
煮凝や機嫌よろしく米の上春爺
水銀ランプ煮凝はぬらぬらと晴田そわか
宿坊に異国の二人凝鮒春の幸
閉じ込める風の寝息よ煮凝よはるの風花
煮凝や母と叶へる十のこと春野ぷりん
煮凝や己のおくび抜けぬまま春海のたり
煮凝に母の手つきの残りけりはるるん1号
草体の美し口中の煮凝もはれまふよう
情事のまへ煮凝食つてをりにけり半熟かさぶた
煮凝を平和な音でいただきぬ万里の森
書き置きとあらの煮凝卓袱台にピアニシモ
とけてゆく煮凝ガザの分離壁東沖和季
舟宿の煮凝堅しそば枕東田一鮎
煮凝や魚拓の並ぶ考の部屋疋田千優
煮凝や水屋箪笥の小暗がり樋口滑瓢
傾きのまま煮凝れり薄明り菱田芋天
煮凝や宇宙は多分やはらかしひでやん
煮凝にちびりちびりや日をまたぐ一石劣
夢見る頃を過ぎ月曜の煮凝日向こるり
煮凝のおどろおどろしきを籠めり鄙び梅乃香
煮凝や二膳の箸は一つ冷え檜風呂
昇華せし閨怨のごと煮凝れり比々き
煮凝のぷるんWi-Fi繋がらぬヒマラヤで平謝り
タッパーは重し母からの煮凝飛来英
煮凝やインクの滲むレシピ帳平井由里子
煮凝や豆腐と角を競いけり平野純平
煮凝や優しい嘘の崩れゆく平林政子
煮凝の息吐くやうにくづれけり平本魚水
煮凝の甘じょっぱさは罪の味比良山
煮凝の溶けゆく中の無音かな平山仄海
煮凝や朝昼かねし白ごはん浩子赤城おろし
煮凝りの底の濁音めく煮汁広島じょーかーず
永遠の愛の果てとか煮凝よ広瀬康
煮凝りや彼の日通ひし神楽坂風慈音
煮凝りや葬る如く着物仕舞う風蘭草和
煮凝やまーろい底でまんまろい深蒸し茶
煮凝や正義はいつも半透明ふくじん
煮凝や斯くあるべきを緩めつつ福田みやき
煮凝や明日も雨は降らぬらしいふくろう悠々
震えたる妻と煮凝また余震無才句
すっぽんの煮凝女将の挨拶藤井かすみそう
煮凝や底ほの暗き海の音ふじこ
煮凝りや凝固の水の解剖図藤咲大地
煮凝にはらりと月の鱗かな藤里玲咲
これは鬱の煮凝あれはすこし躁藤白真語
煮凝にラジオのノイズ吸い込まれ藤永桂月
煮凝や一夜で化石めく魚藤原涼
煮凝や返事を待てば夜深し藤本仁士
東京や煮凝固く知らぬ味舟端たま
「ひとりがいい」煮凝突つくさみしがりふにふにヤンマー
煮凝や止まりし父の腕時計冬木礫
煮凝やそろそろ月も潤むだらう冬島直
煮凝りの溶けて後悔だけ残る古織沃
昨夜の口げんか煮凝の濁りおり古川しあん
煮凝や嘘で固めた本音なる古庄萬里
煮凝や桐の箪笥の母子手帳古道具
煮凝や遠くの海のとろけだす文室七星
煮凝に魚の欠片の舌触り房総とらママ
煮凝を透かしてみれば金閣寺暮戯
煮凝りや笑はせ泣かす高座芸北斗星
プロポーズ返事は煮凝のなかに星雅綺羅璃
煮凝の中に鰓とも背鰭とも星田羽沖
煮凝や毎晩母の長電話星月彩也華
煮凝できてるよ敬語もういいよほしの有紀
煮凝や瘡蓋われを覆いたる細川鮪目
煮凝や夜へほどけゆく心細葉海蘭
煮凝や罠のネズミがキィと鳴きポップアップ
煮凝や我欲で濁りゆく世界堀卓
煮凝りを供す暖簾に戻す縒り堀邦翔
煮凝の骨をしゃぶりて差し向かい凡狸子
煮凝りや母音で繋ぐ会話術舞矢愛
煮凝や吾が整へし粥白し牧場の朝
煮凝を琥珀と住める骸かな槇原九月
煮凝に鉄黒のまなこありにけり牧茉侖
煮凝やスレた魚の眼がイケズまこと七夕
煮凝りや貧乏神が膝抱えまこと(羽生誠)
ふしあわせ半透明に煮凝りて正川素宇
煮凝や父の椅子まだ空けたまま町田勢
賄いは煮魚お代わりは煮凝松浦美紅(姫りんご改め)
独白や闇の中より煮凝れり松坂コウ
フクシマの煮凝の骨噛みにけり松田寛生
煮凝りや亡き父の口癖を吐き松田迷泉
煮凝やなほ生臭き祖母と母松知
漸くに深まる夜と煮凝れり松原鈴子
煮凝や終活ノートといふ遺書松本こっこ
煮凝や指で叩くはボブディラン松本牧子
煮凝は鍋にそのまま床みがくまやみこ恭
煮凝やうなじの似をる祖母と孫毬雨水佳
黄金の煮凝出来た飯炊こか丸井ねこ
煮凝を飯へ海ある国を寿ぐまるごとハテナ
煮凝の切り口宝石めく斑まるにの子
鶏の煮凝エジプトの砂の色丸山隆子
煮凝や生死のあはひゆらめける丸山美樹
煮凝やみかじめ料を拒みたる慢鱚
手のひらの煮凝へ老犬の舌三浦海栗
煮凝と出席惑ふ招待状三日月なな子
煮凝に箸遊ばれてをりにけり三上栞
煮凝や一人になりて濁り無く三河三可
煮凝に透ける夜空の星を食べ三毛乱次郎
好物に煮凝入る齢かな三茶F
煮凝の目玉のんきにぐれている岬ぷるうと
煮凝を煮返す星を砕くやう水須ぽっぽ
煮凝の揺れて壊さぬ夫婦仲水巻リカ
煮凝りのたちまち溶ける海馬かな三高姫
煮凝や当てにされない次男坊三田忠彦
刻々と増える死者数煮凝崩す巳智みちる
二層の煮凝団地の団欒美津うつわ
煮凝や知恵の輪匂う鋼の夜みづちみわ
「煮凝があるよ」「それじゃあ飯炊くよ」みつれしづく
煮凝や昨夜の吾子の合格膳みなづき光緒
煮凝りや箸持つ妻の指白し湊かずゆき
夫よ口の端に煮凝のついてます源早苗
煮凝や尖る鰓の矛治め美春
凝鮒顔は浮かべど名の出ぬ師三群梛乃
煮凝や戯言さらり聞き流し見屋桜花
島唄の宴を残る煮凝よみやかわけい子
煮凝のわかるよはひになりにけり宮坂暢介
母と義母通話煮凝の半透明宮下ぼしゅん
プロポーズ煮凝くずし終えてから麦乃小夏
煮凝や喉へ崩れ落ちて海麦のパパ
煮凝や四本脚のテレビ台椋本望生
煮凝りて光の絡む直方体無弦奏
星こぼれ煮凝の闇揺れんとす紫小寿々
煮凝や標本のごと尾を広げ村崎水晶
煮凝や膝関節の油欲し村先ときの介
遠くにて氷河崩るる朝の煮凝明月詩悠
煮凍や雪平鍋の清き円茗乃壱
煮凝や奥の仏間に妻の影恵のママ
煮凝のほのか魚愁の朝餉かな目黒青邑
前菜の煮凝は正四面体藻玖珠
煮凝やとろんと歪む海馬まで百瀬はな
煮凝の地平傾く朝餉かな桃園ユキチ
たましひの立体喰らふ煮凝森捷子
煮凝や母と気の合ふ吾の娘森上はな
煮凝や鬼平語るカウンター森佳三
煮凝に軍律二十七回忌もりさわ
煮凝や湖魚の脂の残る匙森茂子
煮凝やパトカー長居する隣家森太郎
愛は突然に煮凝はじわわわと森ともよ
煮凝ひと匙眠たさうな母へ森中ことり
煮凝と店任さるる次男かな森葉豆
煮凝や暴れし文字の日記帳杜まお実
箸の穴たちまち閉ぢて煮凝れる森萌有
煮凝の四分休符なる荒木町もろ智行
煮凝のゆれて火のつく猜疑心八神てんきゅう
煮凝もしんしん眠る社食の夜山羊座の千賀子
小雨のち愚痴ところにより煮凝弥栄弐庫
煮凝の中に玄界灘うねる八幡風花
煮凝の頬をせせりて打解けて山内彩月
お三時に聞く煮凝のふがいなく山河穂香
好物は煮凝祖母の箸使い山川腎茶
酔ってけと煮凝り前に浜男山口雀昭
煮凝や年下となる父と祖父山崎力
煮凝ふるふる淋しき拠り所やまさきゆみ
煮凝やどうせ溶けちゃうんだとしても山里うしを
供養なる煮凝舌のまろやかに山田季聴
煮凝や漁師は験を担ぐらし山田啓子
人の影掬う煮凝我も影山びこ
煮凝や厨の窓に月ありて雪子
二年ぶりの「おはよう」煮凝を温める雪鶏
煮凝や夕べの母に醤油の香柚木みゆき
煮凝や海鳴り怖しと母ぽつり宙美
昼メロや煮凝掬う玉杓子湯屋ゆうや
煮凝や時計だらけの漁師宿陽花天
古妻の煮凝にある離岸流羊似妃
煮凝や競って食べし家を売る横田信一
もうこりごりですって恋も煮凝も横浜J子
煮凝りに毛布はあるか米あるか横浜順風
煮凝の固まる距離に居を構ふ横山雑煮
煮凝や湖の底なるやうなもの吉田蝸牛
煮凝や土佐の宿坊煤け梁吉田春代
煮凝の重さ嫉妬の重さかな吉成小骨
煮凝や一夜限りの痴話げんか余田酒梨
罪の文字さがし寝ぬる夜煮凝れりらいかの星
煮凝や階級章の褪せし紅RUSTY=HISOKA
煮凝の崩れて昭和とほくなり楽花生
蔵の叔母煮凝夜ごと所望せりらん丸
アラバマのをんな帰化せり煮凝れり柳絮
煮凝りに埋まる手羽先もう一杯凛
煮凝は好物直言は苦しルージュ
煮凝や「返信不要」と打ち終へる礼子
煮凝の中に俺が沈んでる連雀
逞しきほね煮凝にしのばせてろまねす子
煮凝や何者かにもなれずしてわかなけん
美しき煮凝背筋伸ばす妻若林くくな
アルミ鍋寝かせ窓辺の煮凝やわたなべいびぃ
熱傷の舌に転がる凝鮒渡部克三度
煮凝や父在れば頬緩めしに渡辺陽子
天を裂き煮凝の空あかるうす亘航希
煮凝が旨い給料上がらない笑笑うさぎ
煮凝のために炊く飯夜勤明け板柿せっか
煮凝や終末時計85秒沖庭ノ華風
煮えきらぬ話ばかりよ煮凝よ冨川ニコ
鍋底の煮凝ぬぐう破局の夜廣重
煮凝や母の怒りの凝固点麦野光・いつき組広ブロ俳句部
煮凝や混沌として透きとほる睦月くらげ
日本酒と旅の疲れと煮凝りと望月ゆう
煮凝や昨日の不満閉じ込めてmomo
煮凝を捨てて舅に叱らるるひと粒の種
煮凝を捨てて老母に叱られぬ片岡明
煮凝や家人眠りて酒のあてあいあい亭みけ子
煮凝や愉しかったと迎え酒むじか
煮凝は大人のものぞ手酌酒じゅんこ
煮凝や月命日のひとり酒有川句楽
煮凝や酒飲むときは時止まり松平武史
煮凝りを不思議な顔に子の食みぬ福井桔梗
煮凝りの不思議に子供箸つつく瑪麗
わが庵は煮凝の生る家子ら呼ぶ相生三楽
煮凝やリハビリ箸を滑り落ちあいれふ葵
老けたねと息子とつまむ煮凝りよ青井心平
煮凝や苦労話の佳境入る赤富士マニア
煮凝や新居の番地を語呂合わせあさぎりななみ
重箱や煮凝ひかり固まりぬアツシ
誰からも箸つつかれぬ煮凝や天鳥そら
煮凝や病める姑の咳ばらい綾小路へこ
煮凝や宇宙の塵をぎゆつと詰め荒木響
煮凝の暗黒ゆらし解放す蛙里
煮凝やおかわりをして古希近し郁松松ちゃん
煮凝や昨日と同じ妻の服池田悦子
溶けてまだ主張している煮凝伊澤ゆき抄
煮凝やはるか囲炉裏の火の恋し石原花野
煮凝や弥生人骨皆海を向く泉晶子
煮凝や平日休み三年目いとへん製作所
語りつきぬ夜皿に残れる煮凝の井原昇
煮凝を朝日が溶かす旨さかな伊代ちゃんの娘2
煮凝に指入れてみる鈍い朝大越総
煮凝のごりに舌なめづりの猫大越マーガレット
煮凝や標本鑑賞のやうな宴おおにしまこと
煮凝や夫食べこぼし老いの黙大矢香津
煮凝や犬の透けたる波硝子大和出ユウスケ
煮凝やうたた寝をして亭主待つ岡田瑛琳
煮凝りや戦死者たちの絵の個展加塚東隆
煮凝や皿傾けて出来をみる加裕子
煮凝が息をしさうな湯灌の間刈屋まさを
煮凝や妻と選びし伊万里皿北田ひまり
煮凝りは嫌いか山国の我が夫季紫子
煮凝りのひと匙舌をほどけゆくこきん
煮凝つて気持ち悪いよねえ母ちやん坂田雪華
寄りそうて世界地図めく煮凝や坂まきか
深海魚なんやかんやで煮凝に咲代咲
立たされし廊下は長し煮凝れり佐藤恒治
初めての煮付け知らぬ間に煮凝り佐藤公
病む吾子の後姿や凍鮒塩沢桂子
煮凝や人間界も良き所塩田奈七子
煮凝や人魚が壁を叩いてるシュリ
つるりんと逃げる早さに煮凝れり白井百合子
煮凝や逝き急がぬを艶めきて白沢ポピー
煮凝や還暦の膝さすりおり水都かほりこ
煮凝や煮汁に映る母の顔杉浦あきけん
煮凝や中身さておき形ありすず耀子
煮凝や断面模様舌で解き素敵な晃くん
煮凝や練炭匂ふ山手より宗珂
煮凝やたどれぬ味と知った夜たすく
煮凝や親父は今朝も二日酔い玉響雷子
煮凝や説教といふ父の愛哲庵
悪心を煮凝にして凶をだす戸倉田面木
煮凝にならずに犬に食はれけり中島走吟
煮凝や妣の味にはいまひとつ夏目坦
煮凝りや帰省の亜子は夫連れ奈良華咲
煮凝りやちさきプリズム飯のうへ猫塚れおん
煮凝の中に紛るる乳歯かな野村齋藤
煮凝や祖母の薄味今に継ぐ則本久江
煮凝や父に二合半足らぬ酔ひ畑中幸利
煮凝りに誘われふっと夜半の酒羽馬愚朗
日のさして煮凝は藍皿に緩みはむこ
煮凝や母の寝息を確かめて日吉とみ菜
三日目の煮凝ありて君を待つ松岡さつき
煮凝りや艶のある過去親父にも三崎扁舟
煮凝りや口にほどけて私にもどる宮城海月
煮凝や口を開けば夫の愚痴みらんだぶぅ
だまされて帰宅し魚は煮凝れり霧想衿
煮凝や足袋のすり足のかさこさむねあかどり
煮凝りや母の琥珀と父は呼び村上の百合女
金色の煮凝昨夜のおしゃべり百瀬つきか
福来魚の透きたる煮凝古九谷に森田祥子
煮凝や形見となりしレシピメモもりやま博士
煮凝りや孫の寝息も腕の中山下義人
煮凝と言った途端にしかめ面夢一成
煮凝や目玉を探し箸入れる夢華
煮凝りや隣の席が写メを撮る相沢薫
この瞬間(とき)を煮凝にして更に食ふ藍野絣
煮凝のなべをさらうや鯛の目玉あ。うん
煮凝や透けて世界の震ひをり青井季節
煮凝りは未練と共に喰っちまえ赤目作
煮凝るは夕べの悔悟目を逸らす阿川凛
朝飯に煮凝のせる夫の顔秋星子
煮凝は昨夜の肴鯛のあら昭廣梵字
忌明けして煮凝り含む母亡き朝アクエリアスの水
煮凝を褒められ一時停戦中明後日めぐみ
煮疑にぼっかけ入るる夫の里朝日雫
ほっかほかの上に煮凝沁みゆきて亜紗舞那
深海魚の煮凝父に作る祖母あさみあさり
煮凝りに薄き小さき指の跡浅紫泉
煮凝を掬いて遅きあさげかな明日葉
煮凝りや波乱に満ちた我が生涯あすなろの邦
煮凝やまだ煮詰まってない管理職明日に翔ぶ会
寛解やご褒美カヴァと煮凝とat花結い
煮凝やチュルッとするはゆとりとす渥美こぶこ
行く末といふ甘味も煮凝らすあねもねワンヲ
泣く用意煮凝り肴に砂の器雨乙女
煮凝の淀みの底の海の幸雨霧彦(木ノ芽)
煮凝を食べたいが為魚買う雨降りお月さん
煮凝に「鯛の鯛」見つけし朝餉雨李
煮凝の手羽元供ふ母忌日荒木ゆうな
煮凝りに残る目玉や争奪戦有田みかん
「ピンピン」と婆ちやんの云ふ煮凝よ在在空空
サハリンの煮凝旨し父の味杏っ子
煮凝や砥部の文様写しおり井若宙
煮凝や小難しきこととじ込める飯田淳子
煮凝りの小骨吐き出す一人酒飯沼比呂倫
煮凝を丸ごとのせる厨飯猪狩鳳保
二日目の煮凝ぶっかけ飯ねぶり粋庵仁空
煮凝にお湯かけしゃぶるぼっち飯池田華族
煮凝や真夜の独酌卓ひろし池田桐人
煮凝や祖母のエプロン牡丹色伊澤遥佳
だいどこに女がふたり煮凝や石垣エリザ
冷飯に煮凝を乗せ留守居かな石塚碧葉
煮凝りを何の化石と問う孫よ石の上にもケロリン
煮凝が溶けて涙が溢れ出る石原しょう
煮凝や目瞑り喰みし父は無く石村香代子
煮凝にそっと手を出すロボット犬石本ミツ
煮凝や酒酌み交わす友がいる泉恵風
煮凝や骨の標本妻の技和泉攷
煮凝やじゅっと飛び出す汁となり一井かおり
白飯に溶けて煮凝香を放ついちご一会
幾とせや煮凝つつく同期会五つ星
煮凝や旨き宇宙が広がりて伊東海芋
煮凝や熱いご飯に姿消す伊藤薫
煮凝や母亡き後の台所伊藤節子
煮凝りは嫁には出来ぬ母の味伊那寛太
煮凝りは佛の口唇と同じイナホセドリ
煮凝になれど鰈が抱く卵井上鈴野
二丁目の髭のママお通しは煮凝り猪子石ニンニン
煮凝りやプルンプルンと箸の先いまいみどり
煮凝や三日坊主の日記帳今乃武椪
煮凝は皿の色ごと姿変えいわさちかこ
煮凝や苦き句もあり楽しき句も上野徹心
煮凝はぷるんと白身透かしいて上原まり
割烹着のまま白飯に煮凝宇田の月兎
煮凝の飯に溶けゆく遅き昼内田こと
煮凝やフォックは今日の道化師さ宇野翔月
煮凝や母の遺しし焦げし鍋卯の花京
煮凝や飯台囲む大家族卯之町空
煮凝やひやりふるりと溶けにけるうましか(志村肇)
煮凝や突く男ら声太し梅里和代
煮凝をぺんぺん弾く匙の裏梅田三五
煮凝の溶けだす鍋や夫帰る麗し
老いた仔の口入れ終えて煮凝りやえだまめ
初煮凝夫の生家の顔合わせ江戸きり子
極上の朝げ煮凝白い飯えのき絵巻
朝さんぽ煮凝りあると弾む声えのき筆丸
煮こごりや琥珀と呼ばれて六年目榎美紗
煮凝に包丁入れる固さあり榎本奈
おせち食べ煮凝り食べて箸休めえみくれ
煮凝に凝る昨日のあれやこれ遠藤玲奈
煮凝に大魚の目玉睨みけり円美々
煮凝をつついて笑ふピアスの子大江きみ
竈ありし日々の暮らしと煮凝と大川すまき
煮凝やエプロンの紐結ぶ朝大久保一水
煮凝がつるり箸より滑り落ち大阪駿馬
煮凝の琥珀に旨き化石あり大澤道史
煮凝や志ん生ゆらす肘まくら太田一駄歩
煮凝や同じやり取り好む吾子大津美
煮凝にふるんと弾け存える大富孝子
煮凝や自分が大事それだけだ大野美波
煮凝や昨夕の膳にも手を合はすおおばあば美智子
煮凝に詰めた腸(はらわた)飲み込んで大原那穂
煮凝や愉しむ家族遠い日々大原妃
煮凝を取り合いし君今いずこ大原雪
煮こごりをつつく1人に慣れました大道真波
煮凝や色とりどりのロング缶大谷維鶴
煮凝や残した祖母の割烹着岡井稀音
いくたびも煮凝り揺すり兒の騒ぐ岡崎佐々紅
煮凝やアウグストゥスもカエサルも岡崎未知
煮凝りの中にたしかに母の味岡田いっかん
煮凝や揺れる心の迷い似て岡田恵美子
煮凝と教へ食むるを待ちにけり岡田雅喜
夕べ煮た魚泳ぐは煮凝り海おがたみか
炊き立ての飯に煮凝曾祖母ちゃん岡村恵子
煮凝やあの片口とぐい呑とオカメインコ
魚煮て煮凝待や鍋のぞく丘るみこ
煮凝の弁当へにはためらひて小川紅子
家猫や煮凝横目に通り過ぎ奥寺窈子
煮凝に前夜の口論思い出しお品まり
祖母守りし暗き厨よ煮凝よ越智空子
煮凝でほろ酔いの箸遊んでる小野ぼけろうじん
婦人部の推し煮凝に蕩けつつおんちゃん。
病む父に崩し煮凝すくいけり甲斐ももみ
煮凝や佐久の鯉煮の艶やかに影夢者
濁り目が透けて沈むや煮凝の風音
煮凝りに残り野菜で又一献梶浦和子
亡き母の煮凝甘辛くとけて鹿嶌純子
煮凝や道路工事の音ひびくかじまとしこ
煮凝や零時またがぬ痴話喧嘩華胥醒子
煮凝や同窓名簿空の数風かおる
煮凝は愛しや朝の二杯飯風之川
煮凝やヒョウは孤高の戦士らし風の母
煮凝を解けばテレビの人文字も片岡一月
煮凝や肌へ沁みゆく膠かな勝烈庵
喰みそびれし鼈の煮凝母逝きぬかとうようこ
煮凝に箸つけ浮かぶ父の顔かなこと舞い結び
剣呑も煮凝り出せばおさまりぬ金澤孝子
鍋の中ふと見た煮凝妻の影金子今音
煮凝や親の意見に無駄はなし金子泰山
煮凝や祖母の馴染んだ帆前掛け花星壱和
煮凝のじわり溶けゆく飯の上釜眞手打ち蕎麦
白飯や魚嫌いの煮凝好き紙谷杳子
美味なるは喉越しとろり煮凝よ亀岡恵夢
煮凝や明日ごめんね言ってみる亀子てん
煮凝はどんなものかと問はれけり亀田みのる
煮凝に沈む小骨と身のかけら亀山逸子
溶けかかり煮凝り香る茶碗飯かもね
煮凝に秘めたる恋の二つ三つ鴨の里
煮凝りに閉じ込められしお楽しみかろりーな
煮凝りや九谷の皿に昇格す川崎ルル
煮凝の誘惑アダムとイブになる河孝
独り身の朝に煮凝り御同輩川辺世界遺産の居候
認知症の義母の雑言煮凝に川村湖雪
盗難に遭った煮凝忘れてたカワムラ一重
煮凝や母の鼻歌口ずさむ岸壁の龍崎爺
息ひそめ煮凝見据える猫に倣うがんも三世
煮凝の底から凝視魚眼かなkey
煮た鰈その煮凝も酒のあて菊池克己
煮凝りや夫婦喧嘩を眺むのみ如月ゆう
煮凝を勧めるおやじ前歯欠け酒暮
煮凝りを肴に吸いし銀の杯義想
煮凝や息が世界を抱いている北大路京介
病める吾に母の煮凝りいとやさし北川茜月
煮凝の魚抱く皿波青し木谷智子
煮凝に朝の日差しの乱反射北乃大地
煮凝と酒器二つ置き父を待つギックリ輪投げ
宴あと黒き思ひの煮凝れる木下風民
煮凝を透かして見えた大家族君塚美蕉
煮凝りは骨も食べてとおかみさん木村カズ
菜箸でつつく煮凝帰宅待つ木村となえーる
冷や飯や煮凝かけて腹満たす木村波平
煮凝や昨日の骨の浮いてをり木元紫瑛
煮凝やぷるんぷるんとこきざみにQさん
煮凝りやまだガラケーの同窓会旧人がいど
煮凝を食ぶ大叔母のでつかい琥珀きゅうもんde木の芽
煮凝の思い出話に花が咲く京極江月
煮凝や染み込む飯は二杯目に清鱒
プルプルの煮凝肴にまず一献喜楽胤
煮凝りって琥珀の化石みたいだなキン肉アタル
煮凝に青みを添えて吾の主菜銀のグランマ
煮凝を猫へ一匙遅き朝くぅ
煮凝の粗ばかりなり鍋の中鯨之
煮凝を銀シャリにのせしみじみと楠田草堂
煮凝に目玉がふたつわれにらむくちなしの香
煮凝や熱の冷めても夫婦なりくつのした子
煮凝りや病みし夫の舌に置くくにとうりん
翌朝の皿に煮凝朝餉とす國本秀山
煮凝りや母の背円く咳一つ黒瀬三保緑
鍋中固まる煮凝に我を見る黒猫さとみ
煮凝と指とろかせるやかん酒桑田栞
残り飯煮凝かけて贅の内家古谷硯翠
オペを終えスプーンに替え煮凝をケビンコス
艶光つるり煮凝漆箸紫雲英
煮凝りを喰う母歳もまた一つ鍵盤タロウ
煮凝や互いに探る腹の内恋瀬川三緒
煮凝に魚類の頃の記憶あり剛海
煮凝や宴の後に溶かす夢河国老保忠
煮凝や今夜も遅き夫を待つ柑たちばな
煮凝に透けゐる小夜の海の層幸田柝の音
煮凝りや単身赴任の父帰る苔間きい
煮凝りや主役なくとも進む酒越乃杏
煮凝のぴよよんずるん胃袋か越村和行
煮凝りや直会すみて残りなし小杉泰文
煮凝の角光いて祖母偲ぶ古知野朝子
煮凝や虫を抱く琥珀の記憶虎堂吟雅
還暦や煮凝とかす独り酒呉桃周行
煮凝や饗する青き九谷焼来冬邦子
煮凝りや四角の中のグリンピース小林のりこ
煮凝りの椀揺さぶりて何問わん小町波彦
釣り人は明日煮凝と釣果置くこむぎ
煮凝と「尾瀬の雪どけ」上機嫌碁練者
煮凝の匂い漂う猫来たるコロンのママ
煮凝や盗み稽古の複雑味紺雪ぬくし
鍋底に光りて煮凝り琥珀色財光寺日向
煮凝や姫の館は琥珀色埼玉の巫女
煮凝りや誰も来ぬまま昼の膳西柊
残業後遅い食卓煮凝や齋藤鉄模写
煮凝や強情の芯父譲り齋藤満月
煮凝に鯛の目ありて睨みをりさかい癒香
煮凝りやプルンふるふる口の中さかたちえこ
煮凝や祖母の大きな雪平鍋坂野ひでこ
煮凝の鍋ごと運ぶ母の笑み坂本千代子
カスベの煮凝ガリリ骨のあり坂本雪桃
老いて尚煮凝固執母の肌相良まさと
煮凝や行こか止めよか同窓会咲まこ
煮凝や灯りも点けずに母の家櫻井弘子
レシピと格闘し新妻の煮凝笹桐陽介
にこごりやさかなふたきれひらなべに砂月みれい
煮凝や昨夜の宴閉じ込めて佐藤俊
煮凝りや丸いちゃぶ台子沢山佐藤佳子
煮凝や魚の目玉をせせる母里こごみ
早朝の煮凝り覗きほくそ笑む沙羅双樹サリー
煮凝りや箸で確認する固さ紗藍愛
煮凝や煮しめの旨味凝縮し佐波乃屋あ季
食細き子への煮凝具沢山沢山葵
煮凝やお猪口を鳴らし喉鳴らす珊瑚霧
うたかたの煮凝食すや独り膳さんなんぼう
煮凝りや友の消息知れぬまま四王司
煮凝の正体見たり母の愛しかの光爺
煮凝りや80歳のクラス会じきばのミヨシ
盗み食いひとくち煮凝こりごり篠雪
煮凝の貧しき中の豊かさよしぼりはf22
震るる匙煮凝すくう父母老いしシマエナガ深雪
煮凝りのプルンプルンになる時間島じい子
煮凝や眼玉もろとも飲み込みぬ清水容子
増税や皿は煮凝増大す下丼月光
煮凝やがさがさな手も愛おしく順之介@QLD句会
箸入るる煮凝魚の髄揺るるじょいふるとしちゃん
幼き日煮凝り嬉し朝ごはん正見
煮凝を分けあいて朝のラッシュに白井佐登志
煮凝の温め直しの残り香よ白石鈴音
煮凝の食卓かこむ老夫婦しらはまのぞみちゃん
煮凝りの臭いに祖母の背中浮かぶ四郎高綱
煮凝のバットふるふると切り分く深幽
皿にタッパーの型のまま煮凝り末広野暢一
煮凝やお鍋でぷるんコンロ前鈴木季良恵
煮凝りやふわりと溶けて残る骨鈴木秋紫
煮凝に透けて鬼太郎親父の目砂山恵子
煮凝りや箸つつき合い夫婦酒数哩
煮凝りやつつけば揺れる祖父の腹澄川ちい
小カレイの煮凝り澄みて瀬戸の朝静江
煮凝や母の真白き割烹着晴好雨独
漆黒の煮凍り崩し酒進み青児
煮凝の皿迄照らす白熱灯青峰桔梗丘
呑兵衛の集まり旨味煮凝や星夢光風
祖母のゆび昭和の匂う煮凝よ瀬紀
煮凝りや緩く絆されルビー婚千・いつき組広ブロ俳句部
煮凝りの光集めし琥珀なるそうま純香
大鍋の煮凝りにまた火を入れる祖母駄詩
脇役の煮凝人気我先に大ちはる
煮凝や非常ボタンの間に合わず大地緑
火を入れる煮凝四方に流れゆく平たか子
煮凝りの小骨残して昼餉かな妙子
煮凝に冷や飯入れし母の味高杉光水
煮凝の皿に残りし醤油の香高田博子
煮凝で酒酌み交わし亡き父と高橋紀代子
ニンマリと煮凝つつき酒旨し高橋こう
白米に煮凝なじませる夜中高橋寅次
煮凝や食べない夫の分までも高橋ひろみこ
煮凝りの固まらぬまま洗ふ鍋高橋マママリン
煮凝りや幼き我と父の味高橋光加
煮凝りの玉子ご飯は亡母の味高旗三紀子
割烹着指で煮凝一掬い田上コウ
煮凝の奥に女の隠し事鷹見沢幸
煮凝に先ず箸をつけ老夫婦高見正樹
煮凝りに母の手料理思い出し武部博臣
煮凝の飴いろ箸に目にやさし太之方もり子
煮凝りや記憶の薄くなりし母田代充
煮凝や角のとんがり琥珀色祐紀杏里
煮凝や喰ひて至福目玉ごとただ地蔵
煮凝にいにしえ思う琥珀色ただの山登家
朝餉にて残り一尾は煮凝りて立花かおる
煮凝りや消えゆく中洲灯のしびれ橘路地
母作る煮凝を乗せ白飯にたていし隆松
煮凝の溶け際言葉飲みこんだ田中勲
煮凝や「ジュラシックパーク」の琥珀田中紺青
煮凝の小さなくぼみ指の跡田中みどり
煮凝のとろけるまで君の部屋谷相
煮凝やたまの祖母に会ふ夜かな谷口ロレッタ
煮凝や撮む箸先覚束ず田畑せーたん
鍋の形のこす煮凝父の笑みたべい白芙蓉
煮凝や舌で味わう多様性玉響海月
煮凝をはんぶんこして着信音チームニシキゴイ太刀盗人
煮凝や夫と歩みし五十年智幸子
煮凝を小さく摘んで口にせる千鳥城、広ブロ俳句部カナダ支部
煮凝や宴の余韻閉じ固め茅野ともぞう
ザ・ぼんちの漫才煮凝の卓よ彫刻刀
煮凝や息殺し置く箸の微音ちろりちろりみゆき
煮凝やキムタク風に髪切つて月城龍二
魚は煮凝にきっと始発前月ノイス
金継ぎの杯と煮凝りと静寂と月の莵
猫の療餌吾の前日の煮凝月見里ふく
煮凝やご飯の上で踊り出す月光一乙
どの酒とあいつ送ろか煮凝で月夜案山子
煮凝を土産にもらう里帰り辻瑛炎
翌朝の煮凝り思う晩御飯辻ホナ
煮凝の未だほどけぬ想いかもつついぐれちゃん
三回忌母の煮凝真似てみる津幡GEE
ブラックホールの絶叫煮凝れる鶴富士
煮凝りに想ひを沈め夜が更ける手嶋錦流
煮凝りと女将と夜あけ生姜飯哲山(山田哲也)
煮凝が好物と言う孫二才てん子
作句了え安堵や酒と煮凝と天童光宏
煮凝を突く孫叱る娘かな天王谷一
海に生れ今煮凝りて鍋底に冬野志奈
煮凝崩し彷徨う妻の脳内徳庵
ダンプ通過煮凝揺れる安普請Dr.でぶ
煮凝や團十郎を語りをりどくだみ茶
捨てようか煮凝すくい手が止まる徳永恵楓
煮凝りや足の爪切る難儀さよとくねん
舌上に煮凝とろけゆく本音どゞこ
キラキラと熱々ごはんに煮凝戸根由紀
煮凝や命の器と覚へたり富永武司
煮凝を泳ぐ魚の半身かなとよ
煮凝や吾が身固まる思ひして豊岡重翁
うさまるに煮凝とおにぎりあげる鳥田政宗
煮凝の褥に寝入る鰈かな頓堀頓
煮凝や厨に父のにんまりと内藤由子
煮凝の魚眼に見つめられてをり中尾鎖骨
ロボットアーム煮凝を掬ひけり中里凜
上着脱ぎ煮凝膳と酒を待ち中澤孝雄
煮凝やもてなす母の割烹着長嶋佐渡
パパ見知り巧みに躱し煮凝へ永嶋夜久
煮凝りで家族団欒過去のこと中嶋緑庵
煮凝や目玉に魅入られ箸止まり中西千尋
皿の隅しんとしっかりと煮凝中村明日香
朝飯の煮凝りとけし仲なほり中村あつこ
鍋底に煮凝トロリ骨ヒソリ中村こゆき
お供えの煮凝猫の口デロリ中村雪之丞
煮凝りや昨夜の話ほろほろと中山由
箸先に琥珀揺るる煮凝りや流れ星
千秋楽観終へて父は煮こごり飯渚
ひと匙の煮凝にある琥珀色那須のお漬物
白米とシワシワの手とにこごりと那須乃静月
煮凝や胸にしまって墓場まで夏草はむ
煮凝や小鉢を取って並ぶ店夏椿咲く
水屋に煮凝の小皿ふきん煮る夏雨ちや
煮凝や命の雫捧げたり名取秀
亡き人は皆煮凝を好みをりななかまど
煮凝を僥倖なりと祖母笑まふなびい
煮凝やあの日の言葉現れる奈保
ごはんの上の煮凝消えて児は泣けり生天目テツ子
煮凝や最後の一葉落ちる朝南全星びぼ
煮凝に化学見いだす子供達にいやのる
煮凝の贅沢を知る四十路かなにえ茉莉花
煮凝の金箔をなす加賀の膳西尾至雲
煮凝や桎梏を溶く熱き意志西尾照常
煮凝や五十半ばで父は逝き西野和香
煮凝や煮しめに箸は付けず有り西原氷彩
煮凝のかすかに揺れるカウンター西村小市
煮凝のぷるん昨夜のちわ喧嘩二城ひかる
煮凝や徹夜仕事の小説家入道まりこ
煮凝や夜更けの匙のひと掬ひ庭野環石
煮凝りやつと透かし見る白き朝庭野せんたく
煮凝りや家路を急ぐテールランプねがみともみ
煮凝りや湯気に卵をすべらせて猫辻みいにゃん
煮凝りとはうれし不意打ち子の料理農鳥岳夫
ママの煮凝り客に吐く毒もコク野口雅也
辻売りの鰈煮凝飯二杯野三弓
見合いの日煮凝ばかり目で追ってのなめ
煮凝を父いそいそと皿に取り野の菫
煮凝や今を詰め込み明日を観る野原一草
煮凝に武鯛の目玉埋もれおり野原蛍草
家康公鯛の煮凝召す久能山昇椿
煮凝りやメイク落としの午後十時のんのんた
煮凝を啜る昔日懐かしき橋爪利志美
煮凝をどぶろくで食んだ高架下波止浜てる
捕らわれの雑魚の煮凝吾食す橋本有太津
キッチンのこそっと煮凝一欠片橋本諒駿
煮凝や老いてしみじみ母の愛羽住博之
煮凝りの闇をうろつく箸の先花弘
煮凝に僅かに生きる獣臭花彼岸
煮凝やただそれだけの月の夜花見川微風
煮魚の煮凝り舌にじんわりとはままこみかん
皿型の揺れる煮凝所在なし早足兎
煮凝や骨透き通る琥珀色林智哉
煮凝や座敷に匂ふ鯵の陰原口竹九
食細き父煮凝りを完食す原島ちび助
煮凝の映えスポットはアルミ鍋針子の猫
煮凝りは母の味から義姉の味haru.k
煮凝りを奪い合いたり幼き日はるっち
煮凝や広ぐ雲海果てしなく春美
煮凝や時の化石を溶かす舌HNKAGA
茜空父の煮凝りお使いにひーちゃんw
煮凝の溶けゆく湯気やワンルーム東原桜空
食卓の煮凝りしこり仲直りピコリス
こごりぶなつつく箸先笑みになるひまわりと蒼い月
煮凝りの中に薄ら鯛睨みひめりんご
お茶漬けに煮凝乗する子の笑顔平井千恵子
煮凝りや立方体に封ぜられ平岡梅
煮凝や母の背中の小さきこと平松一
煮凝の固さで計る夜の冷え広島あーやあーや
煮凝とおこげ好みし父の影廣田惣太郎
煮凝や頬杖外れ箸動く広野光
煮凝の震える先の割烹着広ブロ俳句部三日余子
家だから煮凝の箸二度舐めるフージー
煮凝を熱き飯のせかっくらうFUFU
煮凝や八人家族だった頃福ネコ
鍋の底煮凝の中魚の目ふくのふく
お袋の味の手羽元の煮凝福間薄緑
ニコニコと皺手が運ぶ煮凝や福弓
煮凝りの匙で掬うて喉仏藤丘ひな子
煮凝溶けし白米かっこむ旨し藤沢・マグネット
煮凝や匙ですくって目玉食う藤本だいふく
母昇る楚々たる空と煮凝とふじ山れいこ
煮凝の嗚呼口溶ける一瞬よ藤原訓子
鮟鱇の煮凝りうれし口のなか古川しげ子
煮凝の固まるほどに孫遠し古澤久良
赤魚や煮凝囲む皿の上古谷芳明
煮凝や頬に手をやる癖の人碧西里
家族会締めは自慢の煮凝をべびぽん
煮凝や鍋の形のそのままに芳醇
昨晩の煮凝乗せて食む二膳峰晶
煮凝やアルバムに母をさがしてほうちゃん
煮凝や母の教え(一汁一菜)と(後生大事)なりほのちゃん
思はざる煮凝の味侘び住ひ堀隼人
煮凝や母の味なる深き里本間美知子
煮凝や亡父の破顔甦り前田冬水
白磁皿煮凝盛れば景色有り馬門宗太
煮凝やひと口ねだる父の膝槇まこと
煮凝りの口にほどける小宇宙正男が四季
二人目の安定期なり煮凝れり正岡田治
煮凝りをじっと見つめて独り言雅蔵
煮凝も憂鬱も溶かしてしまへ増山銀桜
箸軽し義母のつまみし煮凝よ松岡才二
酒あおり煮凝りつつき箸止まる松岡徘徊狂人
煮凝のぷるりと揺れてひとり酒松岡玲子
妻逝きて昼餉の皿の凝鮒松尾祇敲
煮凝りをあての晩酌人心地松尾老圃
煮凝や祖母の愛とは琥珀色まっちゃこ
後ろ手に好物隠す煮凝りや松和幸太郎
煮凝りや地震の友に安否問い真理庵
煮凝の好きな母さん天国でまりい木ノ芽
煮凝や秘密にあらず過去語りまり子
亡き義姉の煮凝愛を知る夕餉ミースミース
煮凝りの色煌いて切子鉢三木崇弘
タッパから落ちぬ煮凝だだっ子か水井良柚
煮凝や魚嫌ひの吾子が食むmr.kikyo
煮凝に集ふはらから七回忌満生あをね
煮凝に言葉の棘も封じ込め光月野うさぎ
煮凝りをちゅるんと吸いてほかめしへ光森光
煮凝りや母の面影有る夕餉ミナガワトモヒロ
介助する煮凝を食べ安堵するみはやななか
煮凝りの香りに過る祖母の声深森明鶴
厳しき祖母の煮凝あまいあまい宮井そら
煮凝や愚痴も零さず嫁の背みやざき白水
煮凝が好きな父来て鍋覗く美山つぐみ
煮凝や姿なき魚現る宮村寿摩子
煮凝や荒神の守り厨澄む麦谷てっぽうのき
煮凝を猫が半分我が半分ムシ・ミカミ
膨れ面昨夜の煮凝また溶けりむらた典珠
煮凝を持ち寄り婆の嫁談義暝想華
煮凝やどんぶり飯は三膳目茂木りん
煮凝の小さき叔母の二杯目ぞ木公山鳥言周
煮凝のかたち斑に未完成本村なつみ
煮凝や妻が鳥をば宝にす森嶋ししく
鍋蓋を開けて煮凝おはようさん森野恵
父ひとりおかずは煮凝浜に出る森茉那
煮凝は全てを琥珀のその中に諸岡萌黄
煮凝の食べたくて煮る魚かな矢澤かなえ
煮凝は煮魚からの贈り物矢澤瞳杏
煮凝りの底より目玉覗きをり夜寺耕太
煮凝やガレの器に負けまいと野州てんまり
箸先に煮凝の小さき震え安田伝助
煮凝りのための昨夜の作りすぎ痩女
煮凝や早朝ごほうび独り占め柳とうふ
煮凝の溶ける早さや二人酒野風庵
煮凝を離乳の口にそっと入れ山内文野
ふるさとの煮凝り香る日本海山岡寅次郎
煮凝や角を崩さず皿に盛る山川たゆ
煮凝を掬ふ姉妹や子に返る山口絢子
溶け急ぐ煮凝よ摘めぬ箸よ山口笑骨
煮凝りやすするそばから舌の熱山口愛
煮凝に静かに一礼午前様山下智
煮凝りの味や我が身の内にあり山育ち
煮凝や亭主朝から迎え酒山田好々子
煮凝や慎ましきなかに笑み溢る山田翔子
煮凝や予約取らないビヤホールやまだ童子
煮凝を口いっぱいのえびす顔山田未知子
煮凝や海を煮詰めた水族館大和杜
煮凝とどんぶり飯を食らう兄山野花子
煮凝を溶かして食ぶる人のをり山本栄子
煮凝や温めとける仲直り山本てまり
煮凝や燗待つ父を懐かしむやまもとのり。
金継ぎの皿の煮凝一人酌む山本八角
出来の良い煮凝舌で崩れたり山本葉舟
二の膳や煮凝越しのご返杯山姥和
煮凝ぷるぷるアマギフ贈られる八幡浜うさの
煮凝の粗炊きつつく祖母白寿友鹿
煮凝や底に溜まりし過去の事宥光
生々しき煮凝や痛みのアート柚子こしょう
煮凝や我慢を強いる壁の詩ゆすらご
煮凝を求め庫内のあかあかと柚木啓
煮凝や思い出もかためちまって横山ひろこ
鍋底の形残して煮凝れり横山道男
煮凝りやこの世の闇に迫りたしよしぎわへい
帰宅待つ皿は煮凝もう夜更け吉藤愛里子
煮凝の美しきかな料理本Yoshimin空
煮凝りに母とわたしの内緒ごとよみちとせ
煮凝の目玉集めて義母は喰い楽和音
吾ら古希蟹煮凝りや杯の音蘭帆星
しやばしやばと真夜の煮凝ぶつかけ飯理佳おさらぎ
煮凝や昨夜の姿ひきずらずりこばば
妻の留守三日食卓に煮凝竜退治の騎士
皿に挑む冷えた煮凝の暗がり瑠璃ホコリ
煮凝をせせる夫はなお無口麗詩
煮凝りに亡き父思う帰らぬ日麗仙
煮凝や奇跡のやうに海を割る黎明
煮凝へ孤単の箸や想夫恋ロジック・ファットフィールド
煮凝の明日は父の一周忌わきのっぽ
煮凝よ嘘で固めたような女(ひと)わたこと
手土産は煮凝友よいざ飲まん海神瑠珂
朝まだき煮凝つつく厨かな渡邉花
残り物いつしか煮凝る一品渡邉わかな
煮凝りや鎌倉彫の棚の奥和脩志
煮凝や戻り行く子の椀の中わをんはな
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
◆俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。
●「煮凝り」を詠んだ句ではありますが
煮凝鍋に金目鯛泳ぎだす岡本
煮凝や化石となりし金目鯛白岩座匠
むしろ、この二句は「金目鯛」を詠んだ句というべきかもしれません。「煮凝り」が季語として主役に立つように。それが、有季定型における基本的な考え方です。
●季重なり
煮凝りや今日も散歩に寒き午後琵琶京子
煮凝も融け行く春の肉淋したた
こごりぶな炬燵の奥で足重ねちがちゃん
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「煮凝り」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●煮凝りが比喩に
煮凝りの体となりて寝返りす岩本遥
煮凝りめく息子との関係はまだ詠・想風土
海風よ夜のコンビニは煮凍れり綱川羽音
寝泊りの人ら煮凝めく空港二重格子
哀惜が煮凝るやうに顕るる匹田小春花
つれあひは煮凝つてもの柔らかき町田思誠
絶対にダメというわけではないのですが、季語を比喩に使うと、季語としての鮮度が落ちます。無季との句として自覚して書く場合もあることを申し添えておきましょう。
●添削例
煮凝や妹には多く分けき母岩田秋雀
「分けき」という使い方には問題があります。語順を変えて、意味が通るようにするとこんな感じでしょうか。
【添削例】 妹に煮凝り多く分けし母
●今月の選外
煮凝のある場所は台所や食卓、店のカウンター等かと思うのですが、例えば「煮凝りや家路を急ぐテールランプ」のような情景の句は、どう読めばよいのか悩みました。家に帰れば煮凝りがあるという句意ならば、季語である煮凝りはここにはないですし、煮凝りを買って帰る? となれば、季語自身がいかようにも動いてしまいそうです。同じく、「水辺」「舞台」など、煮凝りがどういう状況でそこにあるのかが、分かりにくい句が散見しました。
更に、句意の解読に到達できないものも一定数。自句にとっての最も甘い批評家は作者自身。作った句は、しばし時間をおいて、客観的な目で自句を推敲する習慣を身につけましょう。


お待たせしました!1月の兼題「煮凝」の結果発表です。
今月も夏井先生のアドバイスは必見です。冬の気配が器の中に留まっているような「煮凝」。ひんやりした朝の空気をまとう言葉です。投句からも、生活を背景に時間の経過や心情の移ろいを感じました。
3月の兼題「木の芽」もふるってご応募ください。(編集部より)