夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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6月の兼題

「青梅」

4月の審査結果発表

兼題「亀鳴く」

 お待たせしました!4月の兼題「亀鳴く」の結果発表です。
今月も夏井先生のアドバイスは必見です。「亀鳴く」は想像上の季語ですが、北欧神話にも「猫の足音」「山の根っこ」「魚の息」など、存在しないものを材料にした想像上のアイテムが登場します。ありえないものに軽妙さやおかしみを見出す気持ちは、洋の東西を問わないようですね。
6月の兼題「青梅」もふるってご応募ください。(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

画像:天
亀鳴くや我が法名に見惚れたる

伊藤柚良

夏井いつき先生より

 宗派により「法名」の意味は異なっているようですが、『大辞泉』には以下のように記されています。「① 仏門に入って出家受戒のときに授けられる名。戒名。② 僧が死者におくる名。戒名。」
 さて、下五「見惚れる」という俗な感情が眼目であるこの一句と向き合っていると、亡くなった祖母のことを思い出しました。
 祖父が亡くなって一周忌の納骨の折、祖母も生前戒名をつけて頂きました。墓石に夫婦の戒名を並べて彫り、生きている方は赤字にする風習をこの時初めて知りました。俗名の一字を入れつつも美辞麗句のような文字が並ぶ自分の戒名を、祖母はお尻がむず痒いと苦笑しておりました。「我が法名」の見事さに見惚れつつ、この文字に似合う生き方をしてきたかしらと、ささやかにたじろぐ。そんな作者の思いに寄り添うような、「亀鳴く」静かな春夜です。

画像:地
亀鳴くや眠らぬ魚として木魚

伊藤映雪

 傍題「亀の看経」を踏まえての発想でしょうか。和尚が経を唱え出すと「眠らぬ魚」になってしまうものは? という一休さんの問答みたいな一句です。下五「木魚」の体言止めの後の余白に、亀の鳴き声が静かに重なってくるかのようでもあり。

薄味に雁もどき煮て亀鳴く夜

絵十

「雁もどき」という名前の由来にも諸説あるようです。雁もどきを関西風の薄味に煮て、「亀鳴く」静かな夜を過ごす。「雁」「亀」と生き物の名が二つ入っているのに、どちらも生き物ではないというほのかな可笑しみもまた一句の隠し味です。

亀の鳴く周波数まで声とする

ギル

 そもそも亀には声帯がないので鳴かないのだけれど、俳人たちは「亀鳴く」という架空の季語を作りました。ならば、その季語を信じて「亀の鳴く周波数」までを「声」と規定しようではないか、という俳人らしいウイットの一句です。

亀鳴くという淵にある浄財箱

そぼろ

「亀鳴くという淵」に残るのは、どんな言い伝えでしょうか。その淵を覗き込めば、足元には「浄財箱」。傍らには、苔むした小さな祠もあるのかもしれません。いかにも亀が鳴きそうな静けさが、ぬっと匂ってくるような作品です。

亀鳴くや見たら死ぬ絵の何度目か

ツナ好

 この「絵」を見た人は皆死ぬのだという呪い。それを見せられているのか、はたまた見たくて見ているのか。「何度目か」という下五のオチにはたっぷりと皮肉が含まれています。亀鳴く話も、死ぬ絵も、ずいぶんな嘘っぱちであることよ、と。

画像:人
  • 亀鳴くや一塊りの巫女の墓杏乃みずな

  • 臍の緒が欲しき欲しきと亀鳴けり砂山恵子

  • 亀鳴くや喪服の裏地鶴と亀佐藤俊

  • 亀鳴くや寺の宝に柘植の櫛青野みやび

  • 亀鳴くや落とした箸の響く家あかり

  • 亀鳴くや心当たりの有るは有るあじさい卓

  • 一合の米研いでいる亀も鳴く雨降りお月さん

  • 太陽の寿命半ばし亀の鳴くIquedaQuenshi

  • この桶の亀は鳴くから五千円池之端モルト

  • 亀鳴くや波斯ラムプの灯一滴イサク

  • 亀鳴くや出向終へし家の飯和泉園実

  • 亡き祖母と出かけむと母亀鳴けり伊藤恵美

  • こめかみのあたりで亀の鳴くをきく糸川ラッコ

  • あさましく札数えれば亀鳴いて岩本遥

  • 亀鳴くや望遠レンズ磨く夜越冬こあら@QLD句会

  • 人生訓の色紙の傾ぎ亀鳴けり可笑式

  • 亀鳴きぬ補導生徒のうす笑い小川さゆみ

  • 鳴く亀の足は沼地に取られをりオキザリス

  • 真夜の地震蓬莱山の亀鳴けり樫の木

  • 亀の鳴く方へ徘徊して父はかときち

  • 亀鳴くや淋しき耳石あやすため古賀

  • 余命半年亀は鳴く父は呑む雑魚寝

  • 亀鳴くやもう切れそうな玄関灯玉響雷子

  • 月蝕はたれの悪意か亀鳴けり爪太郎

  • 亀鳴くや龍の腹めく登り窯トウ甘藻

  • 亀鳴くと言ひおく老師ご不浄へ花和音

  • 風甘し亀のあの目は鳴くつもり巴里乃嬬

  • 亀鳴くや関守石の座りよし匹田小春花

  • 浅すぎる四番風呂や亀の鳴く森萌有

  • ぢぢづづるづれぢよとただ亀の鳴く山本栄子

  • 亀鳴けば天沼矛はこをろこをろRUSTY=HISOKA

  • 大仏の手の分厚さや亀の鳴く國吉敦子

  • 亀鳴くや薬師如来の手の厚き後藤三梅

  • 亀鳴く夜ギプスにこもる疼きかな藤原涼

  • 亀鳴くや夜半のギプスにゐる痒み百瀬はな

  • 亀鳴くやトランプにジョーカー五枚あたなごっち

  • 亀鳴くやトランプカードばばばかり猪狩鳳保

  • あんまり月がきれいだと亀の鳴くくちなしの香

  • 亀鳴くや「今宵は月が綺麗です」と増山銀桜

  • 亀鳴くや低空を飛ぶ軍用機アーモンドよーせい

  • 亀鳴きしか去りゆく万年の朝相生三楽

  • 亀鳴くや畳の縁につまづいて愛燦燦

  • 亀鳴くやここに円空仏御座す藍野絣

  • 亀なけりスマートキーは電池切れ逢花菜子

  • 亀鳴けり九条を読み返す明けあいれふ葵

  • 亀鳴くや凹面鏡のなかの誰ぞ青井季節

  • 亀鳴くや母は孫より犬のこと青居舞

  • 亀鳴くやいずくに鍵の隠し場所蒼空蒼子

  • 亀鳴くや能面は今照る角度青田奈央

  • 亀鳴くや互ひ違ひの宇宙論青星ふみる

  • 亀鳴けり十五年経し被爆牛赤尾てるぐ

  • 亀鳴けばボクは前世になれますか赤尾双葉

  • 亀鳴くや三角関係の終わりあかねペン銀

  • 亀鳴くや彼方で爆ぜる星一つ赤目作

  • 亀鳴くや母とは後悔する生き物愛柑いつき組note俳句部

  • 古本にパラパラ漫画亀鳴くや彩季子

  • 「みんな持つてる」聞こえぬふりを亀が鳴く空地ヶ有

  • 友だちの手記てふ波紋亀鳴けり秋月あさひ

  • 中腹の池に亀鳴く飴含む昭廣梵字

  • 亀鳴くやマークシートの書き損じ空き家ままごと

  • 亀鳴くやぎりぎりぎりと咬合紙秋山らいさく

  • 片想いは片道切符亀鳴くやアクエリアスの水

  • 亀鳴くを聞きて哲書を開きおり芥川春骨

  • 亀鳴くや祖母の旧姓知らぬまま芥もくた

  • 亀鳴くやクラスメイトは留学生淺井翠

  • あだ話弾んでをりぬ亀鳴く夜淺野紫桜

  • 亀鳴くを待たず大地は揺れにけりあさのとびら

  • 五時の鐘ご無礼と亀鳴きにけり浅乃み雪

  • 嘱託の初給料日亀鳴けり朝日雫

  • 亀鳴くや入眠剤を頼る二時あさみあさり

  • 御暇の一陣の風亀鳴くや浅紫泉

  • まづは亀やがて鵺鳴く生家かな葦屋蛙城

  • 亀鳴くや通夜の燈明ほそぼりて阿修羅

  • 反照に魅入らるる刻亀や鳴く飛鳥井薫

  • 亀鳴くや墓石無き跡くぼむのみ明日に翔ぶ会

  • 妊娠をしてないにまる亀鳴けり明日ぱらこ

  • 亀鳴くか鳴かぬか蕎麦かラーメンか藍創千悠子

  • 亀鳴くや明日閉店の牛丼屋我孫子もふもふ

  • 働いて働いて働いて亀鳴きます阿部八富利

  • 亀鳴くや無感地震といふ地震甘茶トーシロー

  • 亀鳴くや黄泉に通ずる井戸覗く雨戸ゆらら

  • 亀の鳴く世界にひとつだけの嘘あみま

  • 午前二時亀鳴き終わるのはまだか雨森茂喜

  • 亀鳴くといへば優しき嘘もあり雨李

  • 其処此処に亀鳴き夜を堰き止める綾竹ろびん

  • 亀鳴きて無人トイレに水の音綾小路へこ

  • 傾眠の夫の瞬き亀の鳴く有田みかん

  • かごめかごめに亀の鳴く声紛れけり有村自懐

  • 亀鳴いて六波羅蜜はあがりなり在在空空

  • AIに心あるらし亀鳴けりアンサトウ

  • 亀鳴くを待ちゐる如く逝きにけり飯沼深生

  • 亀鳴くやパンを溢るるケバブ食む家守らびすけ

  • 亀鳴くと信じて亀を飼ひにけり郁松松ちゃん

  • 亀鳴くや女老いても声高し池田桐人

  • 亀鳴くや夜伽の座へと闇震ふ為参

  • 亀鳴くや月の裏なぞ夢にこそあれ石垣エリザ

  • 仕様書の解読不能亀鳴けり石塚碧葉

  • 馴染みある地名は消えて亀鳴けり石塚彩楓

  • 乾きたる葬儀の声や亀鳴く間石原しょう

  • 亀鳴くや子供の頃は飛べた空石村香代子

  • 亀鳴くや帰路に馴染みの石一つ石本美津

  • 亀鳴くや生死の狭きあはひより和泉攷

  • いつよりが長生きだらう亀の鳴くいずみ令香

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  • 亀鳴くや着信拒否を選ぶ夜は大津美

  • 亀鳴くや昔話の落ちの無しおおにしまこと

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  • 数独を解く妻に亀鳴きにけり大家港一

  • 亀鳴いて母の秘密を聞きにけり大和田美信

  • 失恋の兆しある夜亀鳴けり岡井稀音

  • 亀鳴くや何もない町と運転手岡崎未知

  • 亀鳴くや思春期の孫返事せず岡田いっかん

  • 亀鳴くや中華のメニュー選る真顔岡田瑛琳

  • 亀鳴くや不老長寿の薬得て岡田恵美子

  • 亀鳴くや生きる意味など問いません岡田きなこ

  • 亀鳴くや人口減の地図記号岡田ひろ子

  • 亀鳴くや父の思ひは我の名に岡田雅喜

  • 途切れつつ亀は鳴きおり電話置く丘なな実

  • 亀鳴くや手話の「心」は輪を描く岡根今日HEY

  • 達筆の御朱印なりし亀鳴けり岡山小鞠

  • 亀鳴くや同窓会の如き通夜小川しめじ

  • 亀鳴くをマイクに拾う教育長小川野雪兎

  • かごめかごめ亀鳴く方へ向ける耳小川都雪

  • 亀鳴くや手水舎の屋根落ちたまま沖庭ノ華風

  • 甲羅透く心音のごと亀鳴けり沖庭乃剛也

  • 占いに再婚せよと亀鳴けり荻原玲香

  • 亀鳴くや祖父の手掘りの池あたり小倉あんこ

  • 亀鳴くと座敷童子も鼻鳴らしおこそとの

  • 亀鳴くや終の棲家に池の跡おだむべ

  • この男きつと俳人亀の鳴く越智空子

  • 亀鳴くや隣人何処へ行く歩幅十八番屋さつき

  • 襖絵のはしる筆先亀鳴けりおひい

  • 亀鳴くや城下町にて飴細工海音寺ジョー

  • 亀鳴くや眼鏡の重さ受ける鼻海峯企鵝

  • 宇宙船来ず畦道に亀鳴けり甲斐ももみ

  • 亀鳴くや膝の軋みの音ひとつ影夢者

  • 亀鳴くやいつのまにやら古希の来て風花まゆみ

  • 亀鳴くや「星の王子さま」処方して風早杏

  • 甘やかな記憶の切れ端亀鳴かむ梶浦和子

  • 青春に深き影あり亀の鳴く梶原菫

  • 泥濘に雨の匂ふや亀の鳴くかすかべえやん

  • 千人針死語と言ひたし亀の鳴く加田紗智

  • 亀鳴くや逝きし猫みな集ふ宵帷子砂舟

  • 亀鳴くは聞こえぬ右の耳からか金井双波

  • 亀鳴くや結納金の倍返し金子泰山

  • 亀鳴くや最下位のまま終われない金子美鈴

  • 鉄道の曲線カント亀鳴けり神島六男

  • ダリの髭噛んで伸ばして亀鳴けり神谷たくみ

  • 水底の孵化告げるごと亀の鳴く紙谷杳子

  • 亀鳴くや海底火山発光す亀田かつおぶし

  • 亀鳴くを待ちて一日終わりけり亀山逸子

  • 尋常の闇にはあらず亀の鳴く亀山酔田

  • 瑞鳥と亀鳴く父の長寿園かもね

  • マケルモンカB三病棟亀鳴くやかもめ

  • 終止線越えては亀の鳴く夜かな唐澤うに

  • 外来の亀も鳴きけり裏参道絡丸いと

  • 大仏の後ろ回りて亀鳴けり刈屋まさを

  • 亀鳴くや肩書とれた夫とゐて川越羽流

  • 亀鳴くや一人刺繍をする夜半に川崎ルル

  • 亀の鳴くこゑは浅葱の色湛へ翡翠工房

  • 代筆で届く手紙や亀鳴けり河村静葩

  • 亀鳴くや耳たぶの豊かな牧師喜祝音

  • 亀鳴くや蟻は象に勝つだろうか季川詩音

  • 亀鳴くやムンクが聞きしはその声か菊地義明

  • 亀鳴いて術後五年の傷かゆしきざお

  • 迷惑メール削除作業に亀鳴くや季紫子

  • みづの香の重し亀鳴く闇の底岸来夢

  • 亀鳴くや大和三山神代より喜多丘一路

  • 薬も杖も仕方なし亀鳴けり北平春風

  • 亀鳴くや空指す平和祈念像きなこもち

  • 亀鳴いて滲む万年筆は青城内幸江

  • 亀鳴くや再び開く世界地図木下風民

  • 亀鳴くや引越しの荷が出発すきべし

  • 亀鳴くや雲母煌めく岩静臥木ぼこやしき

  • 亀鳴くや藩主菩提の月照寺木村修芳

  • 亀鳴くやなにせ甲羅が窮屈で木村信哉

  • 亀鳴くや喉に閊えるオブラート木村となえーる

  • 鉛筆を削る香立ちて亀の鳴く木村弩凡

  • 亀鳴くや社の龍の眼の赤み木元紫瑛

  • 型落ちのセダンを買うて亀鳴けりQ&A

  • カラオケ喫茶の主百歳亀鳴けりきゅうもんde木の芽

  • 亀鳴くや参加者以上の椅子並ぶ鳩礼

  • 亀鳴くや鞍馬不動の滝を切る京野秋水

  • 古着のやうに生家売られて亀鳴けり霧賀内蔵

  • 亀鳴くや役小角は空を飛ぶ霧澄渡

  • 亀鳴くや落語のまくらもう笑う近未来

  • 亀鳴くや異国を知らぬ外来種句々奈

  • 亀鳴くや睡眠薬は甘露めきくさ

  • 亀鳴くや遺影の埃撫で取ったくすみ輝く

  • せんべろの酒をちびちび亀鳴きぬくつのした子

  • 独り身の黄昏時は亀鳴けりくにとうりん

  • 亀鳴くや実家売却契約日ぐりぐら京子

  • 亀鳴くや義父の最期の手の力栗田すずさん

  • 亀鳴くや赤クレヨンの逆さ文字久留里61

  • 亀鳴くや孤村にぎはす村長選黒岩牡丹

  • 亀鳴くや四畳の宿の床固し玄琶小篇

  • 壇ノ浦潮の底より亀鳴けり桑島幹

  • 亀鳴くや落ちて死ねない橋ばかり恵勇

  • 亀鳴くや星に酔いたる恋心月下檸檬

  • 亀鳴くや啓蒙学の落丁本げばげば

  • 忘却は生きるコツなり亀鳴けり健央介

  • 亀鳴くや掛け湯をはじく片乳房謙久

  • 亀鳴くや憂きも浮気も埒の外ケンG

  • 亀鳴くやホテルの通路迷路めく小泉久美子

  • 亀鳴くや玉依姫の子守唄恋瀬川三緒

  • 亀鳴くや私は水でできている剛海

  • 亀が鳴いてる俺がモテてる変だ公木正

  • 亀鳴くや壁の向こうの母眠る柑たちばな

  • 一呼吸ずれる柏手亀鳴けり幸田梓弓

  • 亀鳴くや光ゆらめく観音像幸田柝の音

  • 騙し絵の出口入口亀の鳴くこうだ知沙

  • 亀鳴いて鎮火御守護の煤けかな河埜スミヰ

  • 亀鳴くや宇宙旅行に百億円宏楽

  • 腰骨のきしむ響きや亀の鳴く黒望

  • 屡雨の廃品回収亀の鳴く苔間きい

  • 亀鳴くや地球三周ほどの嘘越村和行

  • 蔵蔵に馬繋ぎ石亀鳴けり木染湧水

  • 戦なら殺人良しか亀鳴きし古知野朝子

  • 亀鳴くや鍵つ子腹を空かせをり五島潮

  • 亀鳴くや月に現身刻みたし虎堂吟雅

  • 墓を閉じ捨てるふるさと亀鳴けり後藤周平

  • 光害の薄朱き夜亀鳴けり来冬邦子

  • どこまでも空の豚舎に亀鳴く夜粉山

  • 亀鳴くや半世紀経つ膝の傷子猫のミル

  • 亀鳴く夜茶葉開く音沈む音小箱守

  • 能面の裏の鑿跡亀鳴けり小林久女

  • 亀鳴いて見つけられたきかくれんぼ小林風翠

  • 亀鳴くや神の名思ひ出でざりき五味海秀魚

  • 亀鳴くや戸棚に隠す魔方陣古味鳥椋人

  • 座して待つ移動スーパー亀鳴けり小山晃

  • 亀鳴けりいまだ戻らぬ鳩一羽さいたま水夢

  • 亀鳴くや忘れかけたる古き唄彩汀

  • 亀鳴くや遅刻理由をちよいと盛る齋藤満月

  • 亀鳴くや嘘と知りつつ待つ電話齋藤桃杏

  • ゆるやかに亀鳴く昼の鎮痛剤さおきち

  • 針の穴糸通らずに亀の鳴くさかい癒香

  • 床柱森にありし日亀鳴けりさかえ八八六

  • 亀鳴くや地下に氷がねむる月坂口いちお

  • 馬鹿な目が風呂傍揃ふ亀鳴かば坂島魁文

  • 亀鳴くや星の図鑑を綴じ直す坂野ひでこ

  • 亀鳴くやこれも油でできている坂まきか

  • 亀鳴くや月に裏側なかりける坂本雪桃

  • 亀鳴くめり蛾の幼虫も鳴くゆゑに咲まこ

  • 亀鳴くや花いちもんめの売れ残り櫻井こむぎ

  • 亀鳴くやブラウン管を叩く癖桜鯛みわ

  • 亀鳴く夕外耳少しこそばゆい桜月夜

  • 着信のなき闇深く亀鳴けり桜華姫

  • 亀鳴くや失せものふいに現れるさざれいし

  • 呼び捨てに驚く君や亀鳴けりさち今宵

  • 裏窓のガラスに耳紋亀鳴けり佐藤志祐

  • 亀鳴く夜膨らむ目薬の滴さとう昌石

  • 亀鳴くや遺品となりし麻雀牌佐藤レアレア

  • 尼寺の闇あさましく亀鳴けり錆田水遊

  • 不揃ひの墓前の読経亀鳴けりさぶり

  • 亀鳴くやダムに沈みし村も夜彷徨ういろは

  • 亀鳴くやじんとくるぶし痛む夜さむしん

  • 亀鳴いてみづの匂ひのやけに濃き紗羅ささら

  • 亀鳴くや爆心地下に眠る皿佐柳里咲

  • 亀鳴くや塵も統べらば星となりさるぼぼ17

  • 亀鳴けり雨の匂ひの銀の月三月兎

  • 亀鳴くや医者の勧める再検査珊瑚霧

  • 亀がかと鳴けば阿亀がめと鳴きぬ柿司十六

  • 失せ物出づ待ち人来たる亀鳴けりじつみのかた

  • 亀鳴くや亡き山姥の座してをり糸野句丹

  • 国策と言ふ名の不義や亀は鳴く篠雪

  • 亀鳴くや不一致で済ませる離婚芝歩愛美

  • 亀鳴くや帰ってこないブーメラン渋谷晶

  • 終電は酒の匂ひや亀鳴けりしぼりはf22

  • 亀鳴くか巨樹に問うても応えなしシマエナガ深雪

  • 亀鳴くや女仙の殻にひびひろぐ島掛きりの

  • 山頭火おそその句碑に亀鳴けり島田あんず

  • 亀鳴くや「気配」は神に返へし済島田ユミ子

  • 亀の鳴く月のあばたの掠れけり清水縞午

  • 亀鳴きて湖心に生まるる紋の翳清水ぽっぽあっと木の芽

  • 亀鳴くや池はここから主のもの志村肇

  • 亀鳴いて河童の百寿祝ひけり霜川このみ

  • 大利根や亀鳴く空の暮れ急がず下總和沙

  • 亀鳴くや一里四方はビルの街下村修

  • 空色の亀を鳴かせてグリムかなじゃすみん

  • 飛行機の後退できず亀の鳴く砂楽梨

  • 亀鳴くやもろびとこぞりてうそをいひ洒落神戸

  • 命日や亀鳴く北の浮御堂柊二@冨美夛

  • 亀鳴くや宇宙を受信するラヂオシュリ

  • 亀鳴くや斬られ役また兄の番焼菓おやじ

  • 亀鳴くを亀の聞いてる黄泉の底常幸龍BCAD

  • 亀鳴くや糸電話から母の声庄司芳彦

  • かめなきぬらむまりあくわんのんのかげ正念亭若知古

  • 亀鳴くや化石の鳥が高層の街白井佐登志

  • 亀鳴くや阿吽揺らがぬ石の狛白石花仙

  • 亀鳴くや砂糖を少し減して煮る白井百合子

  • 亀鳴くや産道めける小糠雨白沢ポピー

  • 亀鳴けば鯉も鳴くらむ池の底白岩座匠

  • 亀鳴くや人身御供のありし沼白猫のあくび

  • 怪文書に亀鳴く理由「空の殻」白よだか

  • 亀鳴くや徐福の裔といふ村民ジン・ケンジ

  • 亀鳴くやさびしき夜の友得たり新濃健

  • 亀鳴くや惚れし男の名残なく水鳥レイ

  • 亀鳴くや無口な夫の卵焼きすがのあき

  • 亀鳴くや鍵穴錆ぶる貞操帯すがりとおる

  • 亀鳴くや傘寿のあとはどの世へと杉浦あきけん

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  • 鳴く亀の心意心耳を欹てり牧茉侖

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  • 枡酒の老黙なるや亀の鳴く町田勢

  • 亀鳴くや肝心なことし忘れき町田思誠

  • 亀鳴くや夜半に聞こゆる母の声松岡才二

  • 我が影も車道に伸びし亀鳴くや松岡徘徊狂人

  • 万年の齢重ねた亀の鳴く松岡玲子

  • 雨上がり晴れたみそらに亀の鳴く松尾祇敲

  • 廃村に亀の看経地蔵尊松尾老圃

  • 亀鳴くも昔の大志今いずこ松平武史

  • 亀鳴くや人それぞれの青があり松田迷泉

  • 外来の亀鳴く池や六時堂松原鈴子

  • 亀鳴くや君とのミサの帰り道松本笑月

  • 亀鳴くや午前二時の店じまい松本牧子

  • 亀鳴きて隈なし岸を渡りをりまやみこ恭

  • 亀鳴いて数珠頂戴の人のあり瑪麗

  • 亀鳴くやパスキーだけのチェックイン毬雨水佳

  • 亀鳴くや鎌倉宮の太鼓橋真理庵

  • 亀鳴く日耳鼻科の検査終えにけりまりい木ノ芽

  • 亀鳴くや目覚めぬ姉の息静かまり子

  • 口笛を吹くほかなきと亀鳴きぬ丸山美樹

  • 子育ての喧騒さなか亀鳴けりまるり

  • 亀鳴く野良猫の侵入を禁ずミースミース

  • 亀鳴けり手術の前の母の声みかりん65号

  • 亀鳴くや美人の洩らす生欠伸三木崇弘

  • 友作り終へて亀鳴く部屋の隅三倉もの

  • 鳴く亀や夜明けの晩に浮かび出る三毛乱次郎

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  • 亀鳴けば亀のあくびの吾にうつり岬ぷるうと

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  • 亀鳴いて発射準備の準備待ち森太郎

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  • 亀鳴くや届けてくれよ我が想い森野恵

  • 亀鳴くや1人病室天井見森茉那

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  • 事済んで裸電球亀鳴く夜山口愛

  • 亀鳴くや水面に映る利通碑山崎力

  • 亀鳴くやパンの膨らむ時間待つやまさきゆみ

  • 亀鳴いてコリオリ力じゃ進めない山里うしを

  • 待ち人はみえず亀鳴く池の暮山下智

  • 天地の吐息亀鳴く独り杯山下義人

  • 亀鳴くやあれこれそれと老夫婦山育ち

  • 亀鳴くや歯医者へ向かふ道淋し山田翔子

  • 亀鳴くや寝息の乳児腕の中やまだ童子

  • 亀鳴くや南無阿弥陀仏寺の池山田未知子

  • 亀鳴けば空耳にても聞こえけり山田文妙

  • 風吹くと音楽室で亀が鳴く山野花子

  • 亀鳴くや退職記念の夫婦茶碗ゆきのこ

  • 亀鳴くや長さか幅か試し履きゆすらご

  • 亀鳴くや生命線の少し伸び夢華

  • 飛鳥京上代の亀や鳴くらむ陽花天

  • 亀鳴くやお迎えの爺じと園児陽光樹

  • 特養の窓辺亀鳴く夕べかなYOKOCHAN

  • お隣の名前も知らず亀は鳴く横縞

  • 亀の鳴く浦島太郎それっきり横山ひろこ

  • 亀鳴くや古墳の傍の用水路横山道男

  • 亀鳴くや怪談噺に徘徊すよしぎわへい

  • あの人も辞めるかもよと亀鳴けり吉成小骨

  • 亀鳴くぞ命は一度きりなのだ吉藤愛里子

  • 亀鳴くや同窓会の賑ははしYoshimin空

  • 亀鳴くや身勝手が仇独り身に吉哉郎

  • 亀鳴くやグリコじゃんけん最初はグ米山カローリング

  • 太閤も所詮人の子亀の鳴く楽花生

  • 亀鳴くや午後の講義のまばらなりリコピン

  • 色褪せり亀鳴く音色温暖化龍斗

  • 十和田湖の藍い湖面に亀鳴くや

  • 亀鳴くやへのへのもへじ泥に描く麗詩

  • 亀鳴くとなにか良いことありそうな麗仙

  • 亀鳴くは泰然やまた備蓄急くロジック・ファットフィールド

  • 外は雨「明暗」読みて亀鳴けりわかなけん

  • 亀鳴くや紫煙ひとすじ兄の墓若林くくな

  • 亀鳴くや一人ぽっちはさみしいな若宮直美

  • 亀鳴くや吾も泣きたい青切符渡邉白梅

  • 亀鳴くや戦後生まれの父の皺渡邉わかな

  • 亀鳴くや池の鯉たち餌を欲す渡俊一

  • 亀鳴くとわが宿に君来たりけりわをんはな

画像:今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

●俳号のお願い二つ

①似たような俳号を使う人が増えています。
 俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。

②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。


●兼題とは

  • 幾生紀カメの惑星ウミ満ち嬉なかゆくい

 本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「亀鳴く」での募集でした。「カメ」の一語はありますが、兼題には沿っていません。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。



  • 亀の声聞いた証拠なんかないいたまき芯

  • 亀の声聞かむとすれば止みにけり眩む凡

  • 為家と共に聞きたき亀の声内藤清瑤

「亀の声」+「聞く」というアレンジに工夫があるのは分かるのですが、「亀の声」を傍題としている歳時記はなさそうで、悩ましいところです。


●入力ミス

  • 亀泣けリ昇進を告ぐ子のLINE駒茄子

  • 亀泣くや片っぽ失くすAirPod川村湖雪

  • 亀泣くや散歩する身も輕やかに松井英雄

  • 結婚記念日か亀は鳴りにけり宇野翔月

○入力ミスによる誤字等はよくあります。送信ボタンを押す前の、最後の確認を習慣にしましょう。



  • 亀啼くやうつらうつらの昼餉あとさかたちえこ

 敢えて「啼く」としたのか、あるいは変換ミスでしょうか。この「啼く」は①鳥や獣などが鳴く。②人が涙を流して泣く。の意のようです。一句の内容からして、普通に「亀鳴く」で良いかと思います。


●季重なり

  • 春ひとり亀鳴くような風あたる村田真

  • 亀鳴いて夕焼けの道手をつなぐ石の上にもケロリン

  • 亀鳴くとふたえの初虹かかりけりかろりーな

  • 亀なくや松の林の落椿たなか里

 一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「亀鳴く」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。



  • 亀鳴くや今夏は酷暑てふ予報豊岡重翁

 季重なりかどうか、微妙なラインではありますが、季語でもある「夏」「酷暑」という言葉のほうが印象強くなってしまっています。


●季語が比喩に?

  • 静寂を破りて亀の鳴くが如牛美

  • 生きたいよ亀鳴くよりも大声で夢野翡翠

 季語を比喩に使うと、季語としての鮮度が下がるということで嫌われます。勿論、意図的にそれをやることも可能ではありますが、かなり高度なテクニックです。


●読み解きにくい句意……

  • 亀鳴きて翠の炎木々に立つ安藤牧

「翠の炎」とは、若葉の比喩なのでしょうか? 最近よく起こっている山火事?



  • 亀鳴くやパンにサンボはトラのバタおんちゃん。

 ちびくろサンボはパンに虎のバターを塗る……ってことを、端折って書いてみたのか?



  • 夕の白みかつき恋せし亀鳴く亜紗舞那

「三日月」なら古語でも「みかづき」ですが……「白み/かつき」という二語でしょうか?



 他にも、意味の切れ目がどこにあるのか、判断を迷う句。意味自体が推測し切れない句などもありました。
 〆切ギリギリに作るのではなく、余裕をもって作っておいて、作品を少し寝かせることで、客観的に自句を評価する目が育っていきます。選外だった皆さんへの、いつも変わらぬアドバイスです。

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6月の兼題

「青梅」

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