夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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10月の兼題

「刈田」

8月の審査結果発表

兼題「初秋」

 お待たせしました!8月の兼題「初秋」の結果発表です。今月も夏井先生のアドバイスは必見です。「初秋」は映像を持たない時候の季語なんですね。色、におい、肌触り……童謡の『ちいさい秋みつけた』にも通じるささやかな気づきに、なるほどとうなずきながら拝読しました。10月の兼題「刈田」もふるってご応募ください。(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

画像:天
初秋の匂ひ函から書を抜けば

谷斜六

夏井いつき先生より

「初秋」は映像を持たない時候の季語です。そんな季語を表現しようとする時、どんな映像に、どんな音に、どんな匂いに、どんな皮膚感に、どんな味に、初秋を感じるのかと考え始めるわけです。作者は、「函」から「本」を抜いた時の匂いに「初秋」を感知しているのですね。「抜けば」は、已然形+「ば」ですから、意味は、①原因理由「抜いたので」②偶然条件「偶々抜いてみると」③恒常条件「抜く時はいつも」の三通りになります。この場合でしたら、偶々「函」から本を引き抜いてみると、かすかな空気の動きと共に感じ取った本の匂いを「初秋の匂ひ」だなあと受け止めている、と解釈すべきでしょう。下五「抜けば」と切れを入れずに作った余韻に、読者も「初秋の匂ひ」を追体験するのです。

画像:地
イパネマの娘初秋は藻のにほひ

七瀬ゆきこ

「イパネマの娘」はボサノバの名曲。アストラッド=ジルベルトの気怠い歌声が耳元に蘇りました。季語「初秋」に対して潮臭い「藻のにほひ」を感知しているのは、海辺の避暑地の休暇明けの気分を思い出しているからなのかもしれません。

初秋の樹間それぞれ汐の音

葦屋蛙城

「初秋の樹間」という空間を作ると、そこには音も生まれてきます。松林の松、常緑樹の椿、団栗を落とす椎、丈高い椰子の木など。様々な樹に「それぞれの汐の音」があるという大きな把握を、季語「初秋」に託した一句です。

初秋の耳はしづかな管楽器

古賀

「初秋」という季節は、何かに耳を澄ませたくなるのかもしれません。秋らしい空気が少し感じられるようになった頃。「耳」は「しづかな管楽器」として様々な音を響かせ、私たちの脳内に秋の訪れをそらせるのでしょう。

初秋の亀のうらがはみづみづし

あゆごん俳句

 夏の間、強烈な太陽に甲羅を晒し続けてきた亀たち。朝夕に秋の空気も感じられるようになった頃、ふと裏返した「亀のうらがは」が「みづみづし」と気づく。そんな光景に秋をキャッチするのは、まさに俳人のアンテナです。

塩パンの空洞屋上は初秋

夏雨ちや

「塩パンの空洞」のアップから始まる一句。塩味という味覚、空洞という映像から、「屋上」の光景に切り替わる構成も良いですね。美味しい塩パンの味も、屋上の風も「初秋」の爽やかさそのもの。体言止めの余韻も効果的です。

画像:人
  • 初秋や耳は真珠をかざるとこ桜鯛みわ

  • 初秋のピアノきゆむきゆむ磨きけり青井えのこ

  • 安つぽいひかりや初秋のカラン明日ぱらこ

  • 初秋や愁い付け入る隙だらけ一秋子

  • 初秋やぱちんと恋の冷める音江口朔太郎

  • 初秋の塗れば影持つ白ペンキおだむべ

  • 初秋や裏表ある葉と人と城内幸江

  • 水占に水輪の影や秋はじめげばげば

  • 蝶番ぎいいと初秋の書棚剣橋こじ

  • トロフィーのほのかに昏し秋はじめ河埜スミヰ

  • 友は内定初秋のうっすい水割り虹博筋

  • 仏像の細き指彫る初秋かな郷りん

  • 初秋や岬二つを結ぶ橋ごーくん

  • 朝刊の手触り初秋だと思ふ独楽

  • 初秋の窓きんいろに痛みたる五味海秀魚

  • 初秋の富士初秋の富士の影齋藤満月

  • 初秋や真っ直ぐ立っているきりんさくもも

  • 貝殻の棘の砕けて秋浅し十八公

  • 初秋や象形文字としての耳杉浦萌芽

  • 耳打ちに息の先立つ秋はじめ高田祥聖

  • 桟橋に初秋の波たぱんたぱん坪田恭壱

  • 貝殻にみづの年輪秋初め天陽ゆう

  • 反戦のコラム初秋の朗読会トウ甘藻

  • 初秋と言へば確かにとも思へ中島紺

  • 初秋のチョークは貝殻の匂ひにゃん

  • 職安の椅子軋む初秋それぞれ平野純平

  • 就活や初秋の空がだだつ広い平本魚水

  • 新品のナイフ初秋の水弾く桃園ユキチ

  • 階段は海へ初秋の石鳥居桃猫

  • はつあきは玻璃や破片のやうに島RUSTY=HISOKA

  • 東京へ戻る子の影のび初秋相沢薫

  • 秋浅しバゲット焦げるパリの宿藍空macco

  • 初秋や出どころ隠す古物商藍野絣

  • 初秋や砂場に残る帽ひとつあいれふ葵

  • 初秋や墨の香清き写経の宵あ。うん

  • 初秋や抱けばほどよき猫の熱青井季節

  • 初秋や三口食べては眠る母蒼井小桃杏

  • 点滴を終へ初秋の軽四へ青居舞

  • 初秋や嗽に甘き水道水蒼空蒼子

  • 秋浅し海に朦朧体の風青田奈央

  • 初秋や亡き子に似たる郵便夫青野みやび

  • 初秋や大仏薄目薄笑いあおのめ

  • 初秋の言語中枢よく回る青星ふみる

  • 思ひつく言葉と遊ぶ初秋かな赤岩量子

  • 波音や初秋の後尾警戒車あかねペン銀

  • 初秋の夜ゾンビ映画も悪くないあかり

  • 団子虫なべて初秋の句読点空地ヶ有

  • 放射線当て初むる胸秋浅し秋月あさひ

  • この垣根曲がりて頬に初秋かなあきみ

  • 初秋や本屋のあとはカラオケ屋芥茶古美

  • 初秋や雲を巻き取り紬織る圷美流

  • 初秋や甍の火照り残る蔵明智明秀

  • 初秋や義兄再婚なさるとか淺井翠

  • 濾されたる初秋の風みづかをる浅乃み雪

  • 赤本の二回目終わる初秋かな朝日雫

  • 初秋の風に口笛乗せてく子あじさい卓

  • くるぶしの辺り初秋の汀かな阿修羅

  • 初秋や伐採されし古老の樹あすなろの邦

  • 初秋の靴紐風を結びけり藍創千悠子

  • 初秋や首筋のタトゥ生き生きとあたしは斜楽

  • 初秋や汽笛三度の島航路あたなごっち

  • 初秋や夫のポッケへ五苓散at花結い

  • 初秋の口笛ちよつと古き唄甘茶トーシロー

  • 初秋やブラスバンドのチューニング雨戸ゆらら

  • 初秋のおどうぐばこの有象無象天宮ほたて

  • 初秋や槍は穂先を覗かせてあみま

  • 初秋の風に目覚める真昼かな綾竹ろびん

  • 初秋やテープで補強せし絵本綾小路へこ

  • 初秋や宿題捨てる散歩道あらいゆう

  • 初秋や父の代わりの伯父の席荒木ゆうな

  • レプリカの勾玉碧し秋はじめ有村自懐

  • 太陽を呑んで初秋の海ぬるしアンサトウ

  • 新秋や鳥それぞれに空を持ち杏樹萌香

  • 初秋の風の重さのかはりけり安春

  • 初秋や卓に琥珀のガラスペン石塚彩楓

  • モンキーターン初秋跳ね上ぐ五号艇飯村祐知子

  • 初秋や肺胞やはらかく膨る家守らびすけ

  • つくばひの水入れ替ふる初秋かな猪狩鳳保

  • 初秋や五分遅れののぞみ着く粋庵仁空

  • 初秋や佳き筆のよきふでばらひIquedaQuenshi

  • 窓通ふ風へ寝返る秋初め池田桐人

  • 初秋てふ君のうなじのやうなもの池之端モルト

  • 俎板にあたらしき血や秋初めイサク

  • 泥の手の掬ひし初秋のひかり十六夜の花札

  • 初秋や靄の運河を舟ひとつ伊沢華純

  • 初秋や調律師のドビュッシー伊澤遥佳

  • 初秋や顔洗ふ水のいさぎよし為参

  • 秋口の畳や背中ふくらはぎ石垣エリザ

  • 初秋や仏壇ばらす役回り石塚壜太呂

  • ダイレクトメール初秋の色をして石原しょう

  • 初秋や何を嘆くか鳩くくと石原花野

  • 初秋や腕に四度目の注射痕石原由女

  • 初秋や身体の芯の目覚め初む石村香代子

  • 手水舎に初秋の空の深きかな石本美津

  • 描きかけの絵を塗り潰し秋初め和泉攷

  • 上京か送金か初秋の引越し和泉園実

  • 馬駆くる南部鉄瓶秋初めいずみ令香

  • ポケットに小指通らぬ穴初秋石上あまね

  • 初秋の風切り羽の軽さかな板柿せっか

  • 猿山の頂き初秋の日照雨一阿蘇鷲二

  • 秋浅し傷の治りの遅きかな一井かおり

  • 初秋にいまだ癒えざる傷のあり市川卯月

  • 初秋や瓦礫にバッハ弾くをのこゐつしん

  • 初秋の鳥海山に火を産む痛み伊藤映雪

  • 初秋や外つ国の人選る煎茶伊藤恵美

  • 初秋の産毛ひそかにゆらす風伊藤節子

  • 膝裏に老いの戸惑ひ秋初め伊藤柚良

  • 秋はじめ舗装道路に疲れあり糸川ラッコ

  • ふぁさと落ち初秋の風を生むタオル井中ひよこ号

  • 初秋なり開けた画面に風を待つ伊那寛太

  • 転勤転校退去入居初秋居並小

  • 病む母の耳朶やわらかく初秋かな井上鈴野

  • 青空へ亀の息継ぎ秋初め井上れんげ

  • ストライド伸ぶ初秋の千メートル井納蒼求

  • 爪切りのぱちん初秋のありにけり猪子石ニンニン

  • 薄荷味ブルー初秋のハミング井原昇

  • 初秋の規則正しき喉仏いまい沙緻子

  • 初秋や猫の寄り来る漁師町いまいやすのり

  • 初秋や車懸かりの千切れ雲今村大儀

  • 初秋や校庭二周してひとり藺牟田ボンド

  • 初秋や油膜きれいな水溜り妹のりこ

  • 初秋の空くっきりとヘリコプタいわさちかこ

  • 褥には風の匂ひや秋初め岩清水彩香

  • 子亀還る初秋の波に抗ごうてうえともこ

  • 初秋の紙面に拾ふみすゞの詩上原淳子

  • 初秋の喪服に風を通しけり鵜飼ままり

  • 治癒しては延びて潮時かも初秋うた歌妙

  • 段ボールを猫の棺に初秋の夜内田ゆの

  • 言葉より重き息吐く初秋かな空木眠兎

  • 初秋や足湯に火照りゆく身体海原夏帆

  • 自販機の小銭を選りて秋初め海原帆布

  • 初秋や胡椒の粒と星一つ宇野翔月

  • 朝市のかけ声高き初秋の空海口竿富

  • 白砂利のきしみ初秋の尾根の道梅里和代

  • 初秋の空へふうはりエレベータ梅朶こいぬ

  • 背表紙に悲しき未来秋浅し梅田三五

  • 初秋や定期に届く書の香り麗し

  • 初秋の気配密やかに耳朶へ江川月丸

  • 初秋の波のこゑする点字かなえぞりすの風

  • 初秋や手品の如く年老いて越冬こあら@QLD句会

  • 初秋とは拾ふ小石の軽さかな絵十

  • 初秋や長野支店と内示あり江戸きり子

  • 焼き鳥の油煙スーツに初秋の夜榎本咲

  • 手遊びに折る薬包紙秋浅しえりべり

  • 初秋のD判定の空元気遠藤玲奈

  • 初秋や武人の埴輪動きさう円美々

  • 秋初め軸なほ青きガラスペン近江菫花

  • 初秋に頤解きし阿形像大井道芥

  • 初秋の日暮れ舐め取る海の舌大岩摩利

  • 初秋や母を看取りし友の隈大内とら

  • 初秋や耳ぷるぷると浮かぶ河馬大越マーガレット

  • 初秋や今日も座禅に行きますか大滝茂生

  • 初秋の指紋残りて硝子窓大富孝子

  • 肉球の濡れて初秋の川堤太田一駄歩

  • ため息の一つ落ちたる初秋かな大塚恵美子

  • 初秋の入口となる夕まぐれ大津美

  • 路線バスヘアリキッドにむせる初秋おおばあば美智子

  • 初秋やたまには部屋を留守にして大道真波

  • 鼻歌と合はす歩幅や秋はじめ大和田美信

  • 初秋や苔の筵に降る光岡井稀音

  • 初秋の直角となる二礼かなおかえさき

  • 初秋の空の掠るる疲れかな可笑式

  • 秋浅し眼下にポツンとクジラ島岡田いっかん

  • ゴールテープ切って初秋の空岡田きなこ

  • 抗えぬ雨よ地球の歪む初秋岡田さわこ

  • 初秋やかへす波より摩擦音岡田ひろ子

  • 初秋や搬入係てふ部活岡田雅喜

  • 磯に尻ほてりし海女の初秋かな男鹿中熊兎

  • 秋はじめ眉間やわらぐ鬼瓦丘なな実

  • 鉱塩に牛のひしめく初秋かな岡根今日HEY

  • 朝ぼらけ肺の奥まで初秋くるオカメインコ

  • 葬送は初秋の風とヘイ・ジュード小川さゆみ

  • 雲遠く土の香近くなり初秋小川しめじ

  • 白乾の田に術も無く立つ初秋小川天鵲

  • 芯を持つ夕の風ある初秋かな小川柳花

  • 前傾の騎手に初秋の風生るオキザリス

  • 合奏の仕上げに入る風は初秋沖庭ノ華風

  • 初秋のみづへとさらす真黒き手沖庭乃剛也

  • 初秋や遠くの雲までにほひたる沖乃しろくも

  • 初秋や風景印にビルの群れ沖らくだ@QLD句会

  • 初秋来て夜空に居場所なき星座奥田晃弘

  • 初秋や輪郭滲む白き雲おこそとの

  • 顔彩の黄を橙へ初秋かな小高恵子

  • 縁談の文が母から秋初め小田毬藻

  • 聞香をつつむ指先初秋かなおひい

  • 初秋や母の手にちょうどの湯呑み恩田堤防

  • ヒーローの来ない街にも初秋は海音寺ジョー

  • Pの字の空洞にある初秋かな海峯企鵝

  • 初秋や四隅の折れた古雑誌甲斐ももみ

  • 靴音の迅き背筋や秋初め火炎幸彦

  • 初秋や選り取り見取りの風が吹き風音

  • 初秋や喉の奥より老いた息風早杏

  • 初秋や父のかたちに吊る背広樫の木

  • 初秋や流るる砂のホ短調鹿嶌純子

  • 自画像のざらつき初秋のシーレ梶原菫

  • 初秋や湯の香くぐらす白タオル風かおる

  • 蝋の火のゆらぎて初秋の風となる風乃絣

  • 親の送り方肴に初秋の夜片岡一月

  • さざなみはみづのささやき秋はじめ加田紗智

  • 初秋や硬き踵を湿らせるかつたろー。

  • 初秋や秘仏に注ぐ祈りの眼ひだまりえりか

  • 擦り切れた魂つつむ風初秋桂葉子

  • 抜歯窩の鹹うすらぐ初秋かなかときち

  • 初秋や表情筋のヨガ予約金子美鈴

  • 初秋や腕の産毛を風さらり花星壱和

  • 初秋や四角き風の交差点神島六男

  • 初秋や市電の窓に文字拾ふ神長誉夫

  • みづいろの風吹く島の初秋かな亀田かつおぶし

  • 初秋や稜線ことに際立ちて亀山逸子

  • 初秋の夕風もらひ帰帆せり亀山酔田

  • 初秋のブルグミューラーぽつぽつと鴨居南蛮

  • 警報は止まず壊れかけの初秋花陽

  • 初秋や袋の底のシリカゲル刈屋まさを

  • おぼろげな記憶の輪ゴム解く初秋河上摩子

  • 初秋や手に乗りさうな雲のあり川越羽流

  • 初秋やクレヨンにある虹の種翡翠工房

  • 初秋や水に向かいて亀動く川蝉小鈴

  • あのひとは初秋の風になりました河孝

  • 初秋やマルケの海の青柔し河村静葩

  • 初秋の朝刊指先の湿り岸壁の龍崎爺

  • 初秋の指に碁石の素肌かな喜祝音

  • 洗顔の濡れ刷く風の初秋かな菊池克己

  • 初秋の未明古着屋営業中きざお

  • 初秋の梢を歌ふ風の羽化岸来夢

  • 初秋や背中に風の通り道北大路京介

  • 山の端の輪郭あらたなる初秋喜多丘一路

  • 初秋や細身の鳩の姿勢良く木谷智子

  • 初秋の夜ピアノトリオはハ短調北乃大地

  • 初秋や鏡の中の百面相北美三風

  • カーナビと意見よく合ふ秋初め木寺仙游

  • 影薄くなる初秋の夫婦岩きなこもち

  • 初秋や見知らぬ国の涙壺木下桃白

  • 初めてのろくろ回しや秋初め木下美樹枝

  • 初秋やリハビリ室の笑い声きべし

  • 客五人ぽつち初秋の映画館木ぼこやしき

  • 本宮へつづく石段秋初め木村カズ

  • 初秋やショパンのコンチェルト間近木村かわせみ

  • 御魂抜く初秋の日暮れ墓じまい木村修芳

  • 初秋やできないことがまたひとつ木村信哉

  • 塗りたての愛犬の小屋秋浅しQ&A

  • 朝刊の行間白き初秋かな九ゼットン

  • 思い出に番号をふる初秋かな鳩礼

  • 初秋や獅子の胴幕洗ひをり共通因数

  • 借景は初秋縁側に雪駄京野秋水

  • 初秋の庭の湿りや虚子旧居杏乃みずな

  • 初秋や杣道に獣の匂い霧澄渡

  • 一滴の初秋溢すや空の青希凛咲女

  • 指の皮剥いて初秋の痛みギル

  • 初秋やゆっくり手動で豆を挽く近未来

  • 初秋や掩体壕の空あをし句々奈

  • あけすけな初秋の井戸端会議かなくさ

  • 初秋や水やる腕に触れる風楠さくら

  • 初秋や干物のごとき青絵の具くずもち鹿之助

  • 父の社章母の指輪や秋初めくちなしの香

  • 奉納のプロレス初秋のゴング國本秀山

  • ぐたぐたと生き初秋の風に会ふ熊谷温古

  • うがいしてもしてもたりぬような初秋曇ゆら

  • 封筒の中に初秋と知らぬ鍵クラウド坂の上

  • 初秋の瑪瑙のごとき湖面かな眩む凡

  • 秋初め壊れたミシン直したしぐりぐら京子

  • 初秋や岩波新書白亜めき久留里61

  • 掻き跡に袖の触れたる初秋かなくろかわ宗珂

  • 初秋や機雷撤去といふ虚報玄琶小篇

  • 初秋やフラスコの底の結晶桑島幹

  • 手水舎の水初秋を知らされて桑田栞

  • ワイエスの余白の空や秋初めくんちんさま

  • 初秋や地軸傾げる通ひ道家古谷硯翠

  • 初秋やマヌカハニーに薬の香月下檸檬

  • テーブルに射的のミルキー秋初め謙久

  • 初秋や机遺品の動かざる紫雲英

  • 初秋や旅の人弾く駅ピアノケンG

  • 初秋や翅あるものは透き通るケント

  • 初秋の富士の紺青深めけり小泉久美子

  • しなやかに風鐸響く初秋かな恋瀬川三緒

  • 初秋の風こま切れに入りけり剛海

  • 初秋の乳へ子牛の頭突きせり公木正

  • 初秋や恋の宿題買う指輪河国老保忠

  • 初秋の光の溜まり場へ微風紅紫あやめ

  • 初秋の遣ひ八百屋と楽譜屋へ幸田梓弓

  • 初秋の風のくすぐる膝小僧幸田柝の音

  • 一撃の課題へ響く初秋かな越村和行

  • 衣擦れのやうな波おと秋はじめ木染湧水

  • 初秋や江州米は湖囲ふ児玉ひでき

  • 亡き猫のお皿割れたり秋浅し五島潮

  • 飼育ケース洗ひ終へては干す初秋虎堂吟雅

  • 初秋の宮の空駆く白き龍呉桃周行

  • 初秋の風を嗅ぎ分け盲導犬後藤周平

  • 初秋や高層ビルの窓掃除来冬邦子

  • 初秋の虫の骸の軽からむ粉山

  • 初秋や尿瓶に浮かす腰の骨子猫のミル

  • 初秋や遠く雲めく石舞台このみ杏仁

  • 初秋の雲簡単に壊れけり小箱守

  • 残り飯にぎり初秋のバスを待つ虎八花乙

  • 甲斐初秋十指軽やかなる農夫小林浮草

  • 初秋や入日まどろむ山の湖小林昇

  • 初秋や祖父の肥溜め休眠す小林脱太郎

  • 初秋や空のゴンドラ擦れ違ふ小林のりこ

  • 換気扇油の粘る初秋かな小林久女

  • 初秋や赤子泣きだすまでの無音こひつじ@QLD俳句会

  • 初秋や穂先一枝の天を突く小巻淑乃

  • 校了や初秋の空を胸いっぱい駒茄子

  • 秋浅し割れたメガネに映る雲小望月あうる

  • 骨を撒く初秋の海に息遣ひ小山晃

  • 初秋や木管ミ音を吹き抜け来小山秀行

  • 初秋の浜や砂鉄を集むる子紺雪ぬくし

  • 初秋やでんと置かれし兜焼きさいたま水夢

  • 震へつつ初秋を吐くファクシミリ彩汀

  • 初秋の風に滑らか腿の裏斎藤マカロン

  • 初秋や草木震はす翅の音齋藤桃杏

  • 初秋の眠り喪ふ窓に顔榊昭広

  • 初秋や寄り添ふやうな椅子の影坂口いちお

  • 嫁知らじ新秋神事知らしめよ坂島魁文

  • 初秋や子供食堂がらんどう坂田雪華

  • 初秋やぞうの絵本を語り継ぐ坂まきか

  • C#の熱戻りたる初秋かな坂本雪桃

  • 待ち人は来ない初秋の観覧車櫻井こむぎ

  • 初秋の風嵐電と町を過ぐ雑魚寝

  • 初秋やポストにぽとり請求書佐藤恒治

  • 初秋や屋台のありし街をゆくさち今宵

  • 初秋や病床に置く封の風佐藤桜月

  • 初秋や生贄めきて献血す佐藤志祐

  • 初秋の希望のやうにシーグラスさとうナッツ

  • 初秋のにほへば雲のとほくなり佐藤ゆま

  • 断捨離の本に押し花秋浅し佐藤レアレア

  • 新刊に異国の神話あり初秋錆田水遊

  • 初秋や鳥語の和せるウトナイ湖さぶり

  • 金継ぎの金の径ゆく象初秋さむしん

  • ハムうすきミックスサンド秋初め紗羅ささら

  • 風わたる露天風呂なり秋初め紗藍愛

  • 幸不幸問うや初秋の薬指澤田紫

  • 襟足に羽音掠むる初秋かな佐和粉骨砕身

  • 陽の落ちて引力強くなり初秋沢山葵

  • 馬運車の去りて初秋の競馬場三角山子

  • 秋浅し名前にさんの抜けにけり珊瑚霧

  • 空を濾過して初秋の江戸切子慈雨

  • 補助輪を取って初秋の向こうまで四王司

  • 初秋や空き家にひとつ灯のともる塩風しーたん

  • 初秋の空は掌からはなれ塩の司厨長

  • 初秋や子豚十二の吸う乳房柿司十六

  • 初秋やふわり床屋の蒸しタオルじつみのかた

  • 初秋とは湘南の夜の一雫信濃のあっくん

  • 初秋やだまし絵の龍白みゆく糸野句丹

  • 城崎へひとり初秋のロープウェイ渋谷晶

  • 初秋や看取り期ですと主治医言ふしぼりはf22

  • 初秋や中途覚醒なき目覚め島掛きりの

  • 初秋を賜はり人は人となる島田あんず

  • 初秋の光の丸き水皺かな清水ぽっぽあっと木の芽

  • 初秋の夜の深みを掛時計志村肇

  • 初秋やへろへろと剥ぐ湿布薬霜川このみ

  • 初秋の真水で洗ふ錆ナイフ下總和沙

  • 初秋やきのふと同じ家に住む下村修

  • 初秋を匂ふや友の反魂丹じゃすみん

  • 雲の名をいくつ言えるか秋初め沙那夏

  • 初秋の映画涙腺の点検シュリ

  • 初秋や心許なき靴の溝純名開

  • 縦笛を初秋のみづに分解す常幸龍BCAD

  • 初秋やローカル線に相撲取り庄司芳彦

  • 鐘楼に闇や初秋の地獄絵図正念亭若知古

  • 初秋や岩転がして貝ひとつ白井百合子

  • 初秋や電車触れるほど近し白沢ポピー

  • ドリップの一滴一滴愛で初秋四郎高綱

  • 初秋のオイル切れたるジツポかな白猫のあくび

  • 緑青の天守初秋の風渡るしわしわ

  • 初秋の糺の森の葉擦れかなジン・ケンジ

  • 初秋や手振りゆたかに手話交はす新濃健

  • 本を繰る指に初秋の軽さかな深幽

  • 雲だけが正直に居り初秋かな水都かほりこ

  • 新秋や山窩の飛ばす竹とんぼすがりとおる

  • 金箔のこぼれし笑みや秋はじめ鈴木秋紫

  • 新秋や書棚の空きを作りける鈴木由紀子

  • そぼぬれし馬のまつ毛や阿蘇は初秋すずしろ桂

  • 一礼の女性庭師や秋はじめ鈴白菜実

  • 番の鳩のつつく初秋の金の土清白真冬

  • 初秋や句帳に文字の乾き浮く鈴花あこ

  • 消しゴムの角の白さや秋初め砂山恵子

  • 初秋や教室といふただの箱すまいるそら

  • 初秋を駆けるバギーの二人乗り須磨ひろみ

  • 初秋なり陸奥に追いつく武蔵の風隅のボレロ

  • どのポストにも初秋の納品書すりいぴい

  • 初秋は包丁研いで百恵聴くせいしゅう

  • 癌検査逃れ初秋の街ふわり瀬紀

  • 初秋の夜ぷくりふくらか発芽米摂田屋酵道

  • 初秋や蝶の抜け殻透けてをり千・いつき組広ブロ俳句部

  • 初秋や犬に曳かるる朝の道千徒らん

  • 秋浅し会釈で過ぎる転入生全美

  • 初秋や旗振る人の恐ろしき惣兵衛

  • 亡き夫のチョッキを洗ふ初秋かなそうま純香

  • 初秋や城壁めけるパンの耳草夕感じ

  • 宇宙港にロケット十基秋初め外鴨南菊

  • 初秋の日はやわらかき水を指すそまり

  • 初秋なり塩せんべいの塩きららたーとるQ

  • 窯出しの白磁初秋の風に照る大河滔々

  • 初秋の日君駆け上がる男坂大ちはる

  • 初秋の水に濯ぎて眉凛々し大地緑

  • 初秋に生まれ変わりしみづを汲むたいらんど風人

  • 新秋や定刻に鳴く鳩時計高尾一叶

  • 初秋の鳥の水場に光散る小鳥遊

  • 自転車を止めて初秋すぐ横に高橋こう

  • 初秋きて還暦あたりと思ひけり高橋すずめ

  • 山なりの温泉卓球秋初め高橋寅次

  • 廃線の軽げなレール秋初め高原としなり

  • 初秋のポストへかたり乾く音たかみたかみ・いつき組広ブロ俳句部

  • 出勤の空の余白へ初秋来高山佳風

  • 初秋やひとりの髪の濡れてあり宝毛

  • 桟橋に物影のなき秋はじめ武井保一

  • 初秋やスパイク仕舞ひつ十五歳竹内不撚

  • 初秋の浜に伏せたる舟一艘竹田むべ

  • 初秋や幟新たな唐揚げ屋田代充

  • 二階までニョクマム臭ふ初秋かな多数野麻仁男

  • 初秋やファの鍵盤に羽箒糺ノ森柊

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画像:佳作
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  • 旅に出る「初秋の候」と書きかけて伊藤なお

  • 理由(わけ)もなく遠回りする初秋かな伊藤れいこ

  • 親指の棘まだありぬ初秋かないとへん製作所

  • 初秋や一人の朝の家出され伊ナイトあさか

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  • くすくりて初秋ぬけゆく御蓋山イナホセドリ

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  • 初秋の駅メロからだ動いちやうやまもと葉美

  • 初秋や馬群れ走る都井岬山本葉舟

  • 初秋や君のうなじへ熱となり八幡蝶一

  • 初秋を探せば高く雲の刷く友鹿

  • 初秋や後ろ姿の子に朝日雪子

  • 初秋や木陰の風の肌撫でる柚香

  • 初秋の肘掛け窓の囲む空ゆすらご

  • 初秋の飛行機雲は短命か夢一成

  • 初秋や進路決まらずアルバイト夢華

  • バジルの葉ほどほどに乾き初秋かな夢野いろは

  • 節電のバッセンに風秋初め陽花天

  • 水やりの日課も初秋鳥の声横田信一

  • 割れ目から汁が出てゐる秋初め横浜J子

  • 濡縁を初秋の風が撫でて行く横山道男

  • 初秋や頬に触った温い風吉田山茶花

  • 初秋に少し近づく今朝の風吉田春代

  • 鈍器本あと二頁の初秋かな吉成小骨

  • 独り待つ初秋の窓辺父手術吉藤愛里子

  • 一日中家に籠りて初秋かなYoshimin空

  • 初秋や積読の本数え出し米山カローリング

  • 道場より禅師の喝よ秋浅し理佳おさらぎ

  • 広報の声に初秋の響きありリコピン

  • 初秋や鍋と茣蓙持ち河川敷竜退治の騎士

  • 初秋や夜風に何か羽織るもの凛

  • 緩やかに吾の扇ぐ手の初秋かなるう

  • 緑内障術後の朝の初秋かなルージュ

  • 町中華出ての一服初秋かな瑠璃ホコリ

  • 摘み草に雨の匂いか初秋や麗詩

  • 初秋や阿弥陀の笑みに空青く麗仙

  • 東照宮遺訓裏張り初秋満つロジック・ファットフィールド

  • 一日を働く支度初秋かな若林くくな

  • 何もかもやや気忙しき初秋かな海神瑠珂

  • 西窓の封印解きて初秋やわたなべいびぃ

  • 初秋の風に不安と嬉しさと渡辺香野

画像:今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

●俳号には苗字を!

 俳号とは、その句が自分のものであることをマーキングする働きもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増えています。
 皆で気持ちよく、この広場にて共に学び楽しめますよう、俳号の付け方にご留意ください。


●今月の選外

 本俳句サイトでは、兼題(予め出題されるお題)に沿った投句を募集しています。今回は、季語「初秋」での募集でした。兼題の入っていない投句が、見られました。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。
 また、句意が判読し難いもの、極端な散文、稚拙な季重なりなども選外としております。


●季語深耕

 今回の兼題「初秋」は、「しょしゅう」と読めば三音、「はつあき」と読めば四音になる季語。
 特に押さえておかなくてはいけないのは、時候の季語である点です。「秋」という季節を三つに分けて、「初秋・仲秋・晩秋」。その最初の頃を指し、陽暦では八月頃になります。
 同じ時候の季語で「立秋」もありますが、こちらは暦の上で今日から秋になるという日を意味します。全く違う季語ですので、注意が必要です。

  • 初秋風頬にふれゆく赤子の手焼菓おやじ

「初秋風」は、「秋の初風」の傍題(関連季語)です。「秋風」がそうであるように、天文に分類されます。「初秋」という文字があるので、うっかり使いがちですが、気をつけましょう。


  • AIの別人となる初の秋大富孝子

 下五に置きたいために、「初の秋」としたお気持ちは分かりますが、この書き方だと「初めての秋」という意味になってしまいます。


●切字の重なり

  • 初秋や替へし枕に寝落ちかな杏っ子

  • 明け方に消す冷房よ初秋や青橘花

  • 干したての麻の硬さや初秋かなおでめ

  • 強き陽に葉も萎れけり初秋かな久保よしあき

  • すじ雲や一瞬の風初秋かな槇まこと

  • 初秋や古い日記を捨てにけりまやみこ恭

  • 初秋や眉に浮かべる疲れかな連雀

 一句に「や」「かな」「けり」等の切字が重なると、感動の焦点がブレるということで嫌われます。最も簡単な対処方法は、どちらかの切字を無くすことではありますが、語順そのものを見直してみるのも一手です。

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10月の兼題

「刈田」

過去の審査結果

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